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OCuLinkでRTXを生やしAIを静かに回す、GMKtec「EVO-X3」レビュー
2026年9月7日 06:04
Ryzen AI Max+ 395が登場してから1年以上が経ち、このプロセッサを積んだPCは珍しくなくなった。最大128GBで4チャネル、かつ8,000MHz駆動メモリを搭載でき、そのうち96GBをVRAMとして使える構成は、ローカルLLMを回したいユーザーにもってこいだ。
1年前に登場したGMKtecの「EVO-X2」は、弊誌では西川和久氏がすでにレビューしている。AIで期待通りの動きをしてくれる製品だったが、このたび後継となる「EVO-X3」が登場した。今回これについてレビューしていこう。
いきなり結論から言おう。EVO-X3の性能はEVO-X2とほぼ同じで、「標準設定」ではむしろわずかに低い。しかしEVO-X3はよりAIのヘビーユーザーに向いた製品となった。理由は2つで、1つ目は劇的に静かになった動作音、2つ目は背面に増えたOCuLinkポートだ。
価格は63万6,656円、記事執筆時点のセールで60万7,999円。1年前のEVO-X2が39万3,990円、クーポン適用で28万円台だったことを考えると、ずいぶんと値段が上がってしまったが、これも昨今のメモリ高騰を受けてのことだろう。
とはいえ、同じメモリ128GBの「DGX Spark」が110万円するので、お釣りでビデオカードを増設したり、ハイエンドゲーミングPCを買ったりできる……と思うと、べらぼうに安いとも言える。
スペックはEVO-X2とほぼ同じ。しかし筐体は超スリムタワーに
まずスペックを確認しておこう。プロセッサはRyzen AI Max+ 395。Zen 5アーキテクチャの16コア32スレッドで、最大クロックは5.1GHz、L2キャッシュ16MB、L3キャッシュ64MBと贅沢な仕様。GPUはRDNA 3.5世代のRadeon 8060SでCU数は40、性能的にはミドルクラスのディスクリートGPUに相当する。NPUはXDNA 2で、単体50TOPS、CPU/GPUを含めたシステム全体では126TOPSをうたう。
メモリはLPDDR5X-8000をオンボードで128GBだ。バス幅は256bitで帯域は約256GB/sに達する。ユーザーによる増設はできないが、そもそも128GBが最大構成なので不満はない。BIOSからGPUへの割り当てを最大96GBまで引き上げられる点も、従来のEVO-X2と同様だ。
ストレージはM.2 2280(PCIe 4.0 x4)が2スロットで、最大8TB×2の計16TBまで拡張できる。試用機は2TB×1の構成、直販では4TBも選択できる。有線LANは2.5Gigabit Ethernet、OSはWindows 11 Pro。
ちなみにCore Ultra X7 358Hを搭載した「EVO-T2S」では、ローカルAIエージェントの「GMKtec Claw」がプリインストールされていたが、本機にはプリインストールされていなかった。その理由は不明だが、本製品を購入するユーザー層はすでに上級者であるということを踏まえてのことかもしれない。
こうしたスペック面だけ見ると、正直なところEVO-X2の焼き直しだ。大きく変わったのは筐体だ。
EVO-X3のサイズは41×186×353mm(スタンド除く)、重量は約2.3kg。フルメタルのCNC切削筐体で、本体色はグレーにグリーンのアクセントが入ったスタイリッシュなもの。左側面は上下に通気口が2基、右側面は中央に通気口が1基搭載されている。厚さ41mmの「ブレードデザイン」を掲げているが、「ノートPCからバッテリを抜いたらこうなった」感が強い。EVO-X2が重箱サイズだったのに対し、EVO-X3は超薄いタワー型とでも表現できよう。机の上に置くとそれなりの存在感がある。
実際分解してみたところ、ノートPCで使われるバッテリやeDPコネクタのパターンが残されているのが確認でき、元々ノートPC向けにあつらえた基板であることがうかがえる(あるいは本製品のようなデスクトップとの両用を想定しているのかもしれないが……)。
ただ、筐体の大型化により、かなりの静音化ができている。EVO-X2も高発熱なRyzen AI Max搭載PCの中ではかなり静かな部類だったが、EVO-X3はCPU冷却に3本のヒートパイプと2基の大口径ファンを配置している(+裏面にも1基)。放熱面積を、高さではなく広さで稼ぐノートPCのようなアプローチだ。標準状態では、負荷をかけても気になるような騒音は発生せず、これなら気兼ねなくAIを回し続けられると思った。
ちなみに動作モードは静音が54W、バランスが85W、パフォーマンス最大が140Wの3段階で、用途や好みに合わせて変更できる。キモは標準で設定されているバランスの85Wだ。発熱を抑えて高い静音性を実現する。メモリ帯域律速であることが多いAI処理においては、ほとんどの場合、静かな標準状態のままが好ましいだろう。今回のベンチマークも標準のまま実行している。
インターフェイスは物足りないが、AIでヘッドレス運用前提?
フォームファクタが変わったついでに、インターフェイスもかなり整理された。前面はUSB 3.2 Gen 1とUSB 2.0、3.5mm音声入出力。背面はUSB 3.2 Gen 2、HDMI 2.1出力、USB4、2.5Gigabit Ethernet、そしてOCuLinkを搭載している。
従来のEVO-X2ではUSB 3.2がすべてGen 2だったし、USB4もUSB 2.0も2基ずつあり、SDカードスロットやDisplayPort 1.4もあった。これは、EVO-X2は一般的なミニPCとして利用されることを想定していたのに対し、EVO-X3は完全にAIを走らせることに特化したためなのだろう。ディスプレイ出力が少ないことを踏まえると、ヘッドレス運用すら想定しているのかもしれない。
また、OCuLinkの搭載も決定的な“AI要素”だ。EVO-X2ではいざGPUを使おうと思うと、空いているM.2から引っ張り出す必要があったが、本製品ではそのまま背面から接続できる。規格はPCIe 4.0 x4で帯域は64Gbps。USB4/Thunderboltの40Gbpsを上回るうえ、プロトコル変換を挟まないのでレイテンシも小さく、ディスクリートGPUを接続してAI処理を高速化できる。
ちなみに、同じくRyzen AI Max+ 395を搭載したMINISFORUMの「MS-S1 MAX」にはPCIeスロットがあるが、明確にビデオカード非対応と記載されている(USB4 Version 2.0などでは接続できるが)。電源をすでに所持していて、OCuLinkで安くあげたいといった場合、EVO-X3のほうがいい選択肢だ。
ベンチマークはEVO-X2よりわずかに低め。理由は85W標準設定
続いてはベンチマークだ。利用したベンチマークは、「Cinebench 2026」、「PCMark 10」、「3DMark」、「ファイナルファンタジーXIV 黄金のレガシー ベンチマーク」で、今回はちょっと前にリリースされたCore Ultra X7 358Hを搭載した「EVO-T2S」、そしてEVO-X2のスコアの一部(過去記事から流用、PCMark 10のみ再計測)を掲載する。
Cinebench 2026だが、これはSingle ThreadでEVO-T2Sをやや下回ったものの、マルチスレッドで大きく上回った。すべてが高性能コア、かつ16コア/32スレッドあるのが大きく効いている。
PCMark 10は1万1,492でEVO-X2を上回った。Productivity系が突出しているが、EVO-X2は編集部がしばらく使った環境であるため、参考値にとどめたい。一方EVO-T2Sよりも高いスコアが出ているのはさすが。特にRendering and Visualizationが圧倒しており、CPUやGPUがCore Ultra X7 358Hより高速であることがうかがえる。
一方3D回りのEVO-X3のスコアは、過去に取得したEVO-X2のスコアをわずかに下回った。3DMarkは、Fire Strikeで約4%、Wild LifeとNight Raidで約9%、Speed Way/Steel Nomad/Port Royalで5~7%低い。同じプロセッサ、同じメモリなのだから、差が生まれた理由が電力枠であるのは確実だろう。EVO-X3の標準設定はバランスの85Wで、EVO-X2より控えめに振られている。ピーク性能をわずかに削り、静音性に回したと見てよい。
OCuLinkにGeForce RTX 3090を生やし、Qwen3.8-Flash-Nextを動かす
せっかく背面にOCuLinkを搭載しているので、今回はGTBOXのeGPUドック「G-DOCK」を利用して、GeForce RTX 3090を装着した。G-DOCKはサーバー用の電源を内蔵し、かなりコンパクトなフットプリントを実現できるため、EVO-X3との相性はすこぶるいい。
接続そのものも簡単。ケーブルを挿し、eGPUドックに電源を接続してからEVO-X3を起動すると、何事もなかったかのようにGeForce RTX 3090が認識されるので、ドライバをインストールすれば普通のGPUのように扱える。電源も自動で連動するので、基本的に放置していい。逆に、素のPCIeプロトコルが走っている以上、USB4やThunderboltのeGPUドックのようにホットプラグができないので、この点だけは十分に注意したい。
というわけで、936GB/sのメモリ帯域を持つ24GBのVRAMを搭載したGeForce RTX 3090が加わるとAIでどうなるか試してみたいところ。そしてちょうどこのタイミングで、「Qwen3.8-Flash-Next」が登場したので、試してみよう。
Qwen3.8-Flash-NextはAlibabaが8月26日に公開したばかりの最新モデル。本体は125B(1,250億)パラメータのMoEに加えて、51B(510億)ものN-gram埋め込み(Per-Layer Embedding)を持つ。トークンあたりのアクティブパラメータはわずか6Bで、対応コンテキスト長は262,144トークンだ。
モデルはUnslothのDynamic GGUFを使ったUD-Q4_K_XL(111.3GB)を選択した。本来ならば弊誌お馴染みの「LM Studio」などを介して使うべきかもしれないが、LM Studioから離れて久しく、AIエージェントばかり使っている筆者は、Claude Codeを使って「Qwen3.8-Flash-Nextをセットアップしてくれ」と頼んだところ自動的にllama.cppとなった。
なお、この環境では、リリース当初に入れたドラフト版(pr-27742)で素の設定(-ub 512/-t 16)で得られた結果に対し、9月5日に改めてmaster版をインストールし最適化をかけてもらった(-ub 4096/-t 24)ところ、プリフィルは231.5tok/sで約3倍、デコードは20.9tok/sで約1.26倍高速化した。125BのMoE、N-gram埋め込みを含めれば実質176B規模のパラメータを持つモデルを、60万円のPC 1台+GeForce RTX 3090で回せたのはなかなか衝撃的だ。これなら、コーディングといった長いコンテキストを使う作業でも、「待てば」完成させられる。
| 旧設定 (pr-27742、 -ub 512/-t 16) | 新設定 (master、 -ub 4096/-t 24) | |
|---|---|---|
| プリフィル | 77tok/s | 231.5tok/s |
| デコード | 16.6tok/s | 20.9tok/s |
当然、クラウドで使えるフロンティアモデルと比べて大きな性能差はある(筆者はClaudeを使っているので、なおさらそうだと感じる)。だが、外に一切データを出さず、電気代だけでこの規模のモデルがローカル動作するというのは、やはり衝撃的だ。
ちなみに話題の「FreeToken」も試してみたが、対応しているのは基本的にNVFP4量子化モデルのみで、RTX 3090では効果が限定的(GGUFはGemma系のみ)。加えてFreeTokenが想定しているのは高帯域幅のPCIeを使って重み自体をGPUのVRAMに転送する構想のため(llama.cppはメインメモリに置くだけ)、OCuLinkではボトルネックになる。
EVO-X3の最大のポイントは「静かさ」
EVO-X3をAIで回して「これは優秀だ!」と思ったのは、やはり圧倒的な静音性だ。筆者はこれまで数々のRyzen AI Max+ 395搭載PCを見てきたが、EVO-X3の静音性は圧倒的。足元に置いて50cm離した状態では、動いていてもほとんど気にならない(RTX 3090の方がうるさいレベル)。アイドル時は無音に近い。
先述の通り、本体を分解した際に2基の巨大なブロワーファンが見えるのだが、風量を稼ぐためブレードを薄くしたり枚数を増やしたりといった工夫が特に見られなかった。しかし実際は耳障りな高周波成分がほとんどなく、「サー」という低い風切り音程度で済んでいる。
この静音性は、AIエージェント用途で叩くLLMを走らせるPCとしてはかなり効く。そもそもの話、Ryzen AI Max+ 395は(残念ながら)ものすごく高速にAIを走らせられるわけではないので、実際に大規模モデルでコーディングさせてみたら4時間、6時間と回りっぱなし、ということも考えうる。終了時間が予測できないのでなおさらだ。本機ならば近くで寝ていても気にならないレベルに騒音が抑えられているので、ワンルームでも躊躇なくAIを回しっぱなしにできるだろう。
排熱についても、風量が穏やかなためか、熱いという印象はない。もちろん高パフォーマンスモードでは相応の熱が出そうだが、上下から逃がしているぶん、風圧と温度そのものは低く抑えられている。デスクの上に置いて、その風が手当たっても気にならない。
24時間回して気にならない、正真正銘のAIワークステーション
EVO-X3は、Ryzen AI Max+ 395の絶対性能で殴るマシンではなくなった。同じプロセッサと同じメモリだが、ベンチマークはむしろわずかに低い。それで当初より20万円高くなっているので、これだけ見ると新製品としての説得力は弱い。
しかし実際に使ってみると、この製品が何を狙って作られたのかがよく分かった。GMKtecは「ただただ速いミニPC」ではなく「家庭内でAIをずっと回せるマシンを作った」のだ。
たとえば、金に糸目をつけず絶対性能で組もうと思えば、確かに超強力なデスクトップCPUにメモリを256GBつっこむことはできる。だが、正直電力消費量も高いし、騒音もかなりのものなので、24時間回すのをためらってしまうだろう。EVO-X3なら気にする必要はない。
また、背面のOCuLinkは、Strix Haloの唯一にして最大の弱点である“CUDA非対応”を、外付けで補える手段だ。手元に眠っているGeForce RTX 3090を挿すだけで、125Bクラスの先進的なMoEモデルが20.9tok/sで動くマシンが出来上がる。EVO-X2にはこの手軽な逃げ道がなかった。
自宅内でローカルAIを本気でやろうとすると、問われるのはピーク性能ではない。結局のところ処理の待ち時間が大半なので、サーバーのように電源を入れっぱなしにしておけるかどうかだ。速いがうるさいマシンは、いつの間にか電源を切られ、必要なときしか使われなくなる。
その点、EVO-X3は24時間回しても気にならず、正真正銘のAIワークステーションとしての完成度は非常に高い。60万7,999円という価格は、決して気軽に出せる額ではないが、ローカルAIを本格的に回したいと考えているのなら、筆頭に挙げるべき1台だといえるだろう。





































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