Hothotレビュー
デル 「New XPS 12 2-in-1」
~12.5型4K IGZO液晶搭載の2in1タブレット
(2016/3/22 06:00)
デルの2in1タブレット新モデル「New XPS 12 2-in-1」は、メインストリーム向けの「XPS」シリーズでは初となる2in1仕様の製品で、4K(3,840×2,160ドット)表示対応の12.5型IGZO液晶を搭載する点が大きな特徴だ。また、常に持ち運んで利用することを想定し、優れた堅牢性も実現している。既に発売中で、標準構成モデルの直販価格は159,980円となっている。
シンプルで堅牢性に優れる筐体
「New XPS 12 2-in-1」(以下、XPS 12)は、単体でWindowsタブレットとして利用できるのはもちろん、専用のキーボード付きカバーを装着することで、クラムシェルPCとしても利用できる2in1だ。近年特に人気が高まっている、Microsoft Surfaceシリーズに代表される2in1タブレットを多分に意識した製品と言えるが、競合製品にはない特徴を備える製品に仕上がっている。
タブレット本体は、比較的オーソドックスなデザインを採用する。角こそ丸いラウンド形状だが、基本的には直線および平面がデザインの基調となっており、これぞタブレットと言ってもいいほどのシンプルなデザイン。本体色はブラックで、背面のデルのロゴもあまり目立たないように配慮されている点も、シンプルさが強調されているように感じる。
タブレットのみの本体サイズは、291×193×8mm(幅×奥行き×高さ)。12.5型液晶を搭載しているものの、液晶左右側面のベゼル幅がかなり狭められており、フットプリントは十分にコンパクトだ。厚みが8mmという薄さも、このクラスのタブレットPCとしては十分な魅力と言える。なお、本体を自立させるスタンド機構は備えていないが、これも本体の薄型化に寄与しているはずだ。
筐体はアルミニウム合金とカーボンファイバを採用するとともに、液晶表面のガラスには、Corning製の強化ガラス「Gorilla Glass NBT」を採用。これによって、本体の剛性は非常に優れており、やや強めの力で本体をひねってみてもビクともしない。また、Gorilla Glass NBTはタッチ対応PC向けの強化ガラスで、耐擦傷性が大きく高められているため、液晶面にキズが付く心配も低減されている。常に持ち運んで利用することを想定している2in1タブレットとして、この仕様は大きな魅力となるだろう。
本体重量は公称で790gだが、実測では712.5gと、それを下回る重量だった。12型クラスの液晶を搭載する競合製品と比べて、実測の重量で比較するとかなり軽くなっている。これは、筐体にアルミニウム合金だけでなくカーボンファイバも採用し軽量化を図っているからだろう。ただ、700gを超える重量は、実際に手にして軽いと感じることがないのも事実。それでも、優れた堅牢性を確保していることを考えると、まずまず納得できる重量と言えるだろう。
着脱式キーボードカバーにスタンド機構を備える
先ほども紹介したように、XPS 12のタブレット本体には、Surfaceシリーズなどに見られるキックスタンド機構は備わっておらず、本体を自立させることは不可能。しかし、付属の着脱式キーボードカバー「Folioスリムキーボード」には、背面側にキックスタンド機構が備わっており、Folioスリムキーボード装着時には本体を自律させてクラムシェルPC相当で利用可能となっている。
Folioスリムキーボードは、本体底面と背面部分でマグネットによって固定する仕様。着脱は容易だが、マグネットの固定力は比較的強く、装着時に簡単に外れてしまうこともない。また、Folioスリムキーボードを装着することによって、XPS 12本体背面部のほとんどがカバーで覆われることになるため、全体をしっかり保護してくれる点も嬉しい。本体背面のカメラ搭載部は切り抜かれているため、Folioスリムキーボードを装着した状態でも問題なくカメラが利用できるように配慮もされている。
Folioスリムキーボードの背面側には、本体を支えて自立できるスタンドを備える。このスタンドは、背面中央付近から下部が開くような構造で、可動範囲内であれば好きな場所で本体を支えられるため、液晶面の角度を自由に調節できる。また、十分なテンションで本体を支えられるため、タッチ操作時でも本体がぐらついたり、指の力で奥に開いてしまうこともない。この辺りは、利用者の利便性がよく考えられていると感じる。
キーボードは、キーの間隔が開いたアイソレーションタイプ。バックライト機能を備えており、暗い場所でのタイピングも快適に行なえる。主要キーのキーピッチは実測で約19mmと余裕があり、タッチタイプも問題なく行なえる。Enterキー付近の一部キーはピッチが狭くなっているが、それも我慢できる範囲内。ストロークがかなり浅い点はやや気になったが、クリック感は申し分なく、打鍵感は競合製品のキーボードカバーと比べても劣ることはない。全体的には、利便性は悪くないと言える。
ポインティングデバイスはクリックボタン一体型のタッチパッドを備える。こちらは十分な面積が確保されており、ジェスチャ操作もサポートするため、利便性は申し分ない。
ただし、Folioスリムキーボードには気になる部分が1つだけある。それは重量だ。Folioスリムキーボードの重量は公称で680g、実測では685.5gと、本体に匹敵する重さとなっている。XPS 12本体とFolioスリムキーボードを合わせた重量は、公称で1.47kg、実測では1,398gに達する。この重量は、競合製品でキーボードカバーを合わせた重量よりも重く、実際に手にしてもかなり重量感を感じてしまう。
カバー側にしっかりとしたスタンド機構を用意したことなどが、重量増に繋がっていると考えられるが、できればもう少し軽くして欲しかった。この点は少々残念に思う。
4K表示対応の12.5型IGZO液晶を採用
XPS 12の最大の特徴となるのが、搭載液晶だ。XPS 12では、3,840×2,160ドット(4K)表示に対応する12.5型IGZO液晶を採用している。パネルの方式はIPS。広視野角はもちろんのこと、高精細、広色域表示をサポートしており、表示品質は競合製品と比較しても飛び抜けていると感じる。まず、圧倒されるのはその高精細表示で、肉眼では画素はまったく認識できない。デジタル一眼レフカメラで撮影した写真を表示しても、本来の品質を失うことなく、細部までクッキリ表示されるのは圧巻。また、コントラスト比が1,500:1と、一般的な液晶よりも高いこともあってか、明暗差をしっかり表示できている点も、表示品質の高さを感じさせる部分。液晶表面は光沢仕様となっているため、外光の映り込みはやや気になる。
加えて、バックライト輝度が400cd/平方mと、かなり高められている点も特筆すべき部分。これによって、野外などでの視認性も申し分なく、はっきりと表示されている情報を確認できる。これも、外出時に利用することの多い2in1タブレットとして大きな魅力となるだろう。
ただし、12.5型で4K表示に対応していることで、等倍表示時の文字はかなり小さくなってしまう。実際に、デスクトップアイコンの文字サイズを測ってみたところ、1文字は1mmを大きく下回っていた。おそらく、ほとんどの人が等倍表示では文字を見づらく感じるはずだ。そのため、文字サイズを拡大して利用するのが基本となるだろう。ただ、文字サイズと情報量のバランスはユーザーが自由に調節できるため、等倍表示時の文字の小ささがデメリットになることはほとんどないだろう。それよりも、優れた表示品質を実現している点は大きなメリットとなるはずで、XPS 12の魅力を大きく高めていると言える。
液晶表面には、静電容量方式のタッチパネルを搭載。タッチでの操作性は申し分なく、特に不満を感じる部分はない。また、オプションとして用意されているアクティブペン「Dell Active Pen PN556W」もサポート。2,048段階の筆圧検知に対応するアクティブペンで、軽快なペン入力が可能とのこと。今回はアクティブペンの試用ができず、書き心地など確認できなかったが、ワコムの技術を採用するアクティブペンということで、信頼しても良さそうだ。
Thunderbolt 3/UBS 3.1兼用のUSB Type-Cを2ポート備える
ではXPS 12の主な仕様を確認していこう。
プロセッサは、Core m5-6Y54を採用。低発熱かつ省電力性に優れるプロセッサで、Core m搭載の競合製品同様に、ファンレス仕様を実現している。メインメモリは8GB、内蔵ストレージは256GBのSSDを標準搭載する。通信機能は、IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠の無線LANとBluetooth 4.1を搭載。無線LANは2×2通信に対応し、11ac時で最大867Mbpsの通信速度に対応する。カメラは、背面に800万画素、液晶面に500万画素のカメラを搭載。
外部インターフェイスは、左側面にThunderbolt 3/UBS 3.1兼用のUSB Type-Cを2ポートとmicroSDカードスロットを備える。USB Type-Aポートは備えないが、標準でUSB Type-C→Type-A変換ケーブルが付属するため、通常のUSB機器の利用も問題ない。映像出力もUSB Type-Cポート経由で行なうことになる。なお、オプションで用意されているアダプタを利用することで、VGAやHDMI、有線LANポートなどを拡張できる。
付属のACアダプタもUSB Type-Cポートに接続して利用する仕様となっているが、USB Type-Cを2ポート備えるため、ACアダプタ接続時でもUSB機器を利用可能となっている点は嬉しい。なお、2つあるUSB Type-Cポートのうち、一方にのみ電源マークが記されているが、今回試した限りでは、どちらのポートにACアダプタを接続しても内蔵バッテリの充電が可能だった。このACアダプタは比較的小型で、側面にケーブルを巻き付けてコンパクトに持ち運べるが、付属の電源ケーブルがやや太くかさばる点は少々残念だ。
十分に快適な処理能力が発揮される
では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 8 v2.6.517」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark Professional Edition v1.5.915」、Maxonの「CINEBENCH R15」、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」の5種類。比較用として、「LAVIE Hybrid ZERO HZ300/DA」の結果も加えてあるが、一部ベンチマークソフトのバージョンが異なるので、参考値として見てもらいたい。
New XPS 12 2-in-1 | LAVIE Hybrid ZERO HZ300/DA | |
---|---|---|
CPU | Core m5-6Y57(1.10/2.80GHz) | Core m3-6Y30(0.90/2.20GHz) |
チップセット | ― | |
内蔵ビデオ機能 | Intel HD Graphics 515 | |
メモリ | LPDDR3 SDRAM 8GB | LPDDR3 SDRAM 4GB |
ストレージ | 256GB SSD | 128GB eMMC |
OS | Windows 10 Home | |
PCMark 8 | ||
v2.6.517 | v2.6.512 | |
Home Accelerated 3.0 | 2365 | 2467 |
Creative Accelerated 3.0 | 2915 | 2813 |
Work Accelerated 2.0 | 3415 | 3594 |
Storage | 4948 | 4115 |
PCMark 7 v1.4.0 | ||
PCMark score | 3651 | 3487 |
Lightweight score | 2279 | 2008 |
Productivity score | 1594 | 1491 |
Entertainment score | 2589 | 2602 |
Creativity score | 7359 | 6246 |
Computation score | 10190 | 9670 |
System storage score | 5305 | 3741 |
Raw system storage score | 4748 | 1362 |
CINEBENCH R15.0 | ||
OpenGL (fps) | 24.99 | 21.96 |
CPU | 166 | 159 |
CPU (Single Core) | 88 | 58 |
3DMark Professional Edition v1.5.915 | ||
Cloud Gate | 3205 | 3130 |
Graphics Score | 4285 | 3867 |
Physics Score | 1703 | 1878 |
Sky Diver | 1562 | 1868 |
Graphics Score | 1524 | 1806 |
Physics Score | 2306 | 2420 |
Combined score | 1209 | 1728 |
Fire Strike | 334 | 418 |
Graphics Score | 362 | 457 |
Physics Score | 2355 | 2797 |
Combined score | 117 | 144 |
ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク | ||
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC) DirectX 9 | 2258 | 2288 |
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC) DirectX 9 | 1456 | 1382 |
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC) DirectX 11 | 1756 | 1393 |
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC) DirectX 11 | 1152 | 747 |
結果を見ると、比較用のLAVIE Hybrid ZERO HZ300/DAに対し上位のプロセッサを搭載していることもあって、多くのテストでスコアが上回っている。ただ、中には劣っている部分もある。そこで、高負荷のベンチマークテスト中にプロセッサの動作クロックがどう推移するか確認してみたところ、クロックが低下する場面がやや多く見られた。また、テスト中に本体を触ってみると、高負荷時には背面や液晶面がやや高温になることを確認できた。Folioスリムキーボードを装着した状態では、背面の大部分がカバーで覆われることで放熱性能が下がると考えられるため、本体のみでも検証してみたが、結果に大きな変化は見られなかった。
ただ、実際に各種アプリを利用してみても、動作の重さを感じる場面はほとんどなく、キビキビと利用できた。Core iプロセッサを搭載する競合製品に比べると、高負荷作業時の快適度に違いを感じる場面もあるとは思うが、Officeなどビジネスアプリの利用や、ちょっとしたフォトレタッチなどの作業で動作の重さを感じる場面は少なく、全体的には動作に不満を感じる場面は少ないはずだ。
次にバッテリ駆動時間だ。XPS 12の公称のバッテリ駆動時間は約5時間とされている。それに対し、XPS 12本体のみの状態で、Windowsの省電力設定を「バランス」、バックライト輝度を40%に設定し、無線機能は無線LANのみを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約4時間19分だった。もともとバッテリ駆動時間はそれほど長くないが、4K液晶を搭載によって消費電力が高まっていることが、駆動時間の短さに繋がっていると考えられる。なお、XPS 12は液晶バックライト輝度が高く、輝度を40%以下に設定してもまだまだ十分に明るいため、さらにバックライト輝度を下げることで、駆動時間を延ばせられるだろう。
優れた液晶表示品質を備える2in1タブレットとして魅力
XPS 12の魅力は、なんと言っても4K表示対応の超高精細かつ表示品質に優れる液晶にある。おそらく、現在発売されている2in1タブレットの中でもトップクラスの表示品質を備えており、映像表示や処理用途としてかなり便利に活用できるはずだ。また、ワコム製アクティブペン対応という点からも、クリエイティブ用途への対応度が高いといっていいだろう。
性能的には、Core m5-6Y54搭載ということで、特別優れるわけではないが、特別処理の重いアプリを利用しなければ、実利用時に動作の重さを感じる場面は少なく、不満は少ない。唯一不満時感じる部分があるとすれば重量で、特にFolioスリムキーボード装着時の1.4kgに迫る重量は、2in1タブレットとしてかなり重く感じてしまう。毎日持ち歩くことを考えると、この点はやや気になるかもしれない。また、バッテリ駆動時間の短さもやや残念な部分。
それでも、製品としての完成度は申し分なく、ビジネス用途はもちろん、液晶の表示品質の高さを活かした映像などのクリエイティブ用途にも柔軟に対応できる2in1タブレットとして、魅力的な存在と言える。