Hothotレビュー
日本エイサー「Aspire Revo Build M1601-H12N」
~スピーカーやHDDを親亀子亀のように乗せて機能拡張
(2016/3/25 00:00)
最近はNUCを筆頭に、幅や奥行きがCDケース並みのコンパクトなPCが増えている。そうしたPCでは、ローエンドに近いグレードのパーツが組み合わされていることが多いが、CPUや内蔵GPUなどの性能が底上げされたことにより、軽作業が中心なら十分「使える」ようになってきた。
しかしこうした小型PCでは、当然だが拡張性には期待できない。筐体が小さいため、拡張カードを組み込むスロットや、HDDを増設するためのスペースを装備しにくいからだ。
日本エイサーが2月19日に発売した「Aspire Revo Build M1601-H12N」(以下、Revo Build)は、平べったい拡張ユニットを追加することで、小型PCでは難しい機能拡張を楽しめるようにしたPCだ。今回はこのユニークなPCと、その拡張モジュールの使い勝手を検証していこう。
拡張ユニットは専用インターフェイスと磁石で固定
Revo Buildの本体サイズは135×135×56mm(幅×奥行き×高さ)と、正方形の弁当箱に似たサイズの小型PCだ。CPUはCeleron N3050(1.6GHz、ビデオ機能内蔵)、標準搭載のメモリは2GB、ストレージは32GBのeMMCと、このタイプの小型PCとしては平均的なスペックである。電源は付属のACアダプタで供給する。
磁石で固定された天板を外すと、端に14点の接点が見える。これがRevo Buildと、各種拡張ユニットを接続するインターフェイスだ。この接点と各ユニットの接点を合わせて重ねていくことで、機能拡張が行なえるようになっている。
現状で発売されている拡張ユニットは、1TBのHDDを組み込んだ「HDD Block 1TB for Revo Build M1」、サウンドチップとステレオスピーカー、ヘッドフォン端子などを装備する「Audio Block for Revo Build M1」の2つだ。無線充電規格「Qi」に対応し、11,960mAhのバッテリを内蔵する「Wireless Power Bank Block for Revo Build M1」も近々発売される予定だ。
Wireless Power Bank Block for Revo Build M1は、機材が日本エイサー社内での検証途中で借りられなかったので、前者2つでその使い勝手を検証していこう。
インターフェイス部分には磁石が組み込まれており、しっかりと固定できる。多少揺らしてもRevo Buildからユニットが外れてしまうことはなかった。ただしガッチリはまりすぎて取れなくなってしまうこともなく、拡張ユニットの底面右横近くを持ち上げると、簡単に外れるようになっているので、組み替えは楽だ。
拡張ユニットを乗せると、拡張ユニットの天板にあるインターフェイスがむき出しの状態になる。しかしRevo Buildの天板カバーをかぶせることによって、このインターフェイスが隠れて保護された状態になる。
専用インターフェイスはUSB 2.0対応
拡張ユニットには、個別に電源を供給する必要はない。Revo Buildに乗せて電源を入れれば、Revo Buildから専用インターフェイスを通じて電源も供給される。
サウンドを司るAudio Block for Revo Build M1では、前面のつまみでボリューム調整が可能だ。スピーカーのサイズは小型なので低音域は弱いが、透明感のあるなかなか良い音を聞かせてくれた。前面にはマイクを搭載しており、Cortanaの音声入力やSkypeの音声通話も楽しめる。マイクを使っている時は前面のLEDが点滅するというギミックもある。
HDD Block 1TB for Revo Build M1は、Revo Buildが起動すると外付けHDDとして認識される。システムドライブの容量は32GBしかないので、大容量ファイルを保存したいなら必須の装備と言えるだろう。
ただしRevo Buildの上に載せて使う場合、USB 2.0接続になる。最初はUSB 2.0対応のAudio Block for Revo Build M1を挟んで接続していたためかと思ったのだが、置き場所を入れ替えてもUSB 2.0接続のままだった。もちろんファイルの転送速度はかなり遅いので、容量の大きなファイルや細かいファイルを多数保存するには少々辛い。
ただ、HDD Block 1TB for Revo Build M1では背面USB 3.0端子を装備する。別売りのUSB 3.0対応ケーブルを使ってRevo Buildと接続すれば、USB 3.0対応の外付けHDDとして利用できるので、大容量ファイルを保存したい時だけはUSB 3.0で接続する、というような運用もあるだろう。
これら2つのユニットを接続した状態の消費電力は、アイドル時が8.1W、3DMarkを実行中の最大消費電力は14.2Wだった(Watts up? Pro使用)。2つのユニットを外してRevo Build単体にすると、アイドル時は5.7W、3DMark時で11.5Wに下がった。ユニットの存在は多少消費電力に影響するが、いずれの状態でも十分に省電力だ。
Windowsの実行中に、これらのユニットを外すこともできた。HDD Block 1TB for Revo Build M1は、タスクトレイのアイコンからデバイスをシステムから切断すると外せるようになる。Audio Block for Revo Build M1は、普通に外すだけで良い。警告は表示されなかった。
なおRevo Build本体にも、サウンドチップは組み込まれている。スピーカー端子に外部スピーカーを接続しておけば、サウンド出力は自動で本体内蔵サウンドチップ経由のスピーカーに切り替わる。
性能はスタンダードな小型PCに準じる
Revo Build本体は、低価格PCではスタンダードな仕様であり、特に変わった点は見当たらない。Windows 10を起動したり、アプリのウィンドウの表示や切り替え、移動などはスムーズに行なえる。Windows Updateの作業時間はちょっと遅いが、放置しておけば済むことだ。
作業的には書類作成やWebブラウズなど軽作業が向く。3DMarkの数値を見ても分かる通り、本格的な3Dグラフィックスを駆使したPCゲームには向かない。ブラウザゲームでも、「艦隊これくしょん -艦これ-」など動きの少ないタイプなら遊べるが、キャラクターの動きが激しく、カットインを多用するなど画面切り替えの多いタイプは苦手だ。
OSはこの手の小型PCとしては珍しくWindows 10の「64bit版」だ。標準搭載するメモリ容量は2GBであり、なぜこのような仕様なのかと思ったところ、底面のカバーを外すとメモリスロットにアクセスできるようになっていた。4GBのSO-DIMMを挿して起動すると、Windows 10の操作はさらに快適になった。
付属するキーボードとマウスはUSB接続の有線タイプであり、大画面TVの周辺で使う場合はケーブルの取り回しが面倒だ。ただしBluetoothで接続したタブレットやスマートフォンの画面を、キーボードやタッチパッドの代わりとして利用できる「Acer Revo Suite」というアプリがインストールされている。
これと内蔵する無線LANを活用することで、Revo Buildに接続するのは電源ケーブルのみ、というスマートな使い方ができる。これはなかなか便利だ。
拡張ユニットのラインナップの拡充に期待
唯一の難点は、やはり32GBというシステムドライブの容量だ。Windows Updateをかけただけの状態でも、残り容量は12.5GBしかない。HDD Block 1TB for Revo Build M1を追加しない場合は、64GBクラスの大容量SDメモリーカードを追加する必要があるだろう。
専用インターフェイスの転送速度がUSB 2.0まで、というのは少々残念ではあるが、拡張ユニットの増設や換装、メンテナンスは非常に簡単であり、かなり面白い仕組みだと感じた。
このほかの拡張ユニットとしては、消費電力が許すなら光学ドライブ、充電式の折りたたみ式キーボードやタッチパッド、名刺スキャンアプリをバンドルしたポータブルスキャナなどがあると楽しそうだ。今後の展開に期待したい。