Hothotレビュー
360度回転ヒンジを採用した高性能2in1「ThinkPad X1 Yoga」
(2016/3/18 06:00)
レノボ・ジャパンから登場した「ThinkPad X1 Yoga」は、通称Yogaスタイルとも呼ばれる、360度回転ヒンジを備えた2in1 PCである。ThinkPad X1ファミリーは、ビジネス向けプレミアムノートPCであり、性能と携帯性を重視していることが特徴だ。従来からYogaスタイルのThinkPadはリリースされていたが、ThinkPad X1ブランドとしては初となる。ThinkPad X1 Yogaを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。
360度回転ヒンジにより4つのスタイルで利用できる
ThinkPad X1 Yogaは、一見、普通の14型液晶搭載クラムシェル型ノートPCに見えるが、液晶のヒンジが360度回転するようになっており、反対側にたたむことで、タブレットとしても使える、1台2役の2in1 PCである。ThinkPadシリーズのアイデンティティともいえる黒い筐体は、ビジネスの現場にふさわしいデザインだ。本体のサイズは、333×229×15.3~16.8mm(幅×奥行き×高さ)とスリム、重量は1.36kgで、携帯性は悪くない。
通常のノートPCとして利用する「ラップトップモード」と、液晶を360度回転させて使う「タブレットモード」以外に、液晶を反対側まで回転させて、山形の状態でヒンジを上にして置く「テントモード」や液晶を反対側まで回転させてキーボード面を下にして置く「スタンドモード」での利用も可能だ。
ThinkPad X1 Yogaは、店頭モデルと直販モデルがあり、それぞれCPUやメモリ容量、SSD容量などが異なるいくつかのモデルが用意されており、直販モデルについては仕様のカスタマイズも可能だ。今回の試用機は、CPUとしてCore i7-6500U(2.5GHz)を搭載し、メモリは8GB、ストレージとしてNVMe対応の512GB SSDを搭載していた。
2,560×1,440ドットの14型IPS液晶を採用
液晶は14型で、解像度は2,560×1,440ドットのWQHD表示である。視野角の広いIPS液晶を採用しているため、タブレットモードでの視認性も良好だ。10点マルチタッチ操作に対応しており、額縁部分も含めてフラットになっているため、デザイン的にもすっきりしている。表面の反射率は、ノングレア液晶と光沢液晶の中間くらいで、外光の映り込みもそれほど気にならないレベルだ。発色やコントラストも優秀であり、表示品位は満足できる。液晶上部には、720pのWebカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。なお、直販モデルでは1,920×1,080ドットのフルHD解像度も選択可能だ。
さらに、2016年6月には、有機ELモデルの追加も予定されている。有機ELは自発光デバイスであり、応答速度が液晶よりも遙かに高速で、表示色域も広い。有機EL採用モデルは、バックライトが不要になるため、重量も1.27kgに軽減される。
タブレットモード時にはキートップが沈んでロックされる「Lift'n' Lock」機構
キーボードは、6列配列のアイソレーションキーボードであり、最近のThinkPadではお馴染みのタイプだ。キー配列は標準的で、キーピッチは19mm、キーストロークは1.8mmと余裕があるので、快適なタイピングが可能だ。
このキーボードには、「Lift'n' Lock」と呼ばれる独自の機構が搭載されており、液晶を360度回転させてタブレットモードにすると、キートップが沈んで周りと同じ高さになり、ロックされて押せなくなる。Yogaスタイルの2in1 PCでは、タブレットモード時に底面にキーボードが剥き出しになるので、持ったときに気になるという人も多いが、Lift'n' Lockを搭載したThinkPad X1 Yogaならそうした心配はない。
ポインティングデバイスとしては、ThinkPadクリックパッドが搭載されている。パッドタイプのデバイスと、キーボード中央のスティックタイプのデバイス(TrackPoint)の両方から構成されており、自分が使いやすいデバイスを使えることが利点だ。キーボード、ポインティングデバイスともに完成度は高く、使いやすい。
また、パームレスト右側にタッチ式の指紋センサーを搭載。以前はスライド式センサーが採用されていたため、指紋認証時に指をスライドさせる必要があったが、ThinkPad X1 Yogaの指紋センサーは指先を軽くあてるだけで、指紋認証が可能であり、誤認識も少ない。
2,048段階の筆圧検知に対応したペンを搭載
ThinkPad X1 Yogaは、「ThinkPad Pen Pro-3」と呼ばれるペンを搭載していることも特徴だ。このペンは、本体右側面に収納できるようになっているので、紛失する心配はない。また、バッテリを内蔵しており、本体に挿入すると自動的に充電が行なわれる。15秒間で80%の充電が可能で、5分以内にフル充電が完了。フル充電で19時間の利用が可能だ。2,048段階の筆圧検知に対応するほか、2つのボタンを備えており、消しゴム機能などのさまざまな機能を割り当てられる。ペンの精度や応答も優秀であり、快適に手書きメモなどが行なえる。
独自ポートの「One Link+」を搭載
インターフェイスとしては、USB 3.0×3、Mini DisplayPort、HDMI出力、ヘッドフォン端子のほか、独自ポートのOne Link+も用意されている。有線LANポートは本体には搭載されていないが、One Link+コネクタに接続する有線LAN変換アダプタが付属する。One Link+に、オプションの「ThinkPad One Linkドック」を接続することで、インターフェイスの拡張が可能だ。
カードスロットとしてはmicroSDカードスロットを搭載。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11ac/a/b/g/n準拠の無線LANとBluetooth 4.1を搭載する。さらに、ジャイロセンサー、デジタルコンパス、光センサー、加速度センサー、近接センサーも搭載する。カードスロットが標準サイズのSDカードスロットでないことが残念だが、それ以外に関しては満足できる仕様だ。
無線LAN常時オンの実測で10時間を超えるバッテリ駆動時間を実現
公称バッテリ駆動時間は約9.2時間または9.8時間(構成によって異なる)とされているが、実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)、10時間22分という結果になった。無線LANを常時有効にして、公称を上回る駆動時間を記録したことは高く評価できる。これだけ持てば、1日中、電源がとれない場所で持ち歩いて使う場合も安心だ。ACアダプタも薄型で軽く、携帯性は優れている。
NVMe対応SSDにより高い性能を実現
参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark 8」、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K」、「ファイナルファンタジー IXV 蒼天のイシュガルドベンチマーク」、「CrystalDiskMark 3.0.3b」、「CrystalDiskMark 5.1.2」である。比較用として、日本マイクロソフト「Surface Book」、VAIO「VAIO Z(クラムシェルモデル)」、VAIO「VAIO S11」、パナソニック「レッツノートSZ5」の値も掲載した。
結果は下の表に示した通りで、PCMark 8のスコアは、同じCPUを搭載したVAIO S11よりやや低いが、上位のCore i7-6600Uを搭載したSurface Bookよりは高いという結果になっている。Surface Bookは、SSDの性能がThinkPad X1 Yoga(NVMe対応SSD搭載モデル)に比べて低いため、こうした結果になったと思われる。
CrystalDiskMark 5.1.2の結果は、シーケンシャルリードQ32T1が2,519MB/sを記録するなど、非常に好成績だ。PCI ExpressとNVMeに対応した超高速SSDの威力がはっきりとわかる。14型2in1の中でもトップクラスの性能といえるだろう。
ThinkPad X1 Yoga | ThinkPad X1 Yoga | Surface Book(キーボード装着時) | VAIO S11 |
---|---|---|---|
CPU | Core i7-6500U(2.5GHz) | Core i7-6600U(2.6GHz) | Core i7-6500U(2.5GHz) |
GPU | Intel HD Graphics 520 | GeForce | Intel HD Graphics 520 |
PCMark 8 | |||
Home conventional | 2590 | 2481 | 2779 |
Home accelerated | 3167 | 2908 | 3284 |
Creative conventional | 2694 | 2666 | 2725 |
Creative accelerated | 4036 | 3753 | 3655 |
Work conventional | 2794 | 2719 | 3046 |
Work accelerated | 3995 | 3793 | 4270 |
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K | |||
1,280×720ドット 最高品質 | 7048 | 11424 | 7083 |
1,280×720ドット 標準品質 | 8339 | 12913 | 8000 |
1,280×720ドット 低品質 | 9644 | 15010 | 9309 |
1,920×1,080ドット 最高品質 | 3822 | 6409 | 3967 |
1,920×1,080ドット 標準品質 | 4950 | 7777 | 5094 |
1,920×1,080ドット 低品質 | 5979 | 9053 | 6129 |
ファイナルファンタジーIXV 蒼天のイシュガルドベンチマーク | |||
1,280×720ドット 最高品質 | 1812 | 3746 | 未計測 |
1,280×720ドット 最高品質(Direct X9相当) | 2326 | 4727 | 未計測 |
1,280×720ドット 高品質(デスクトップPC) | 1976 | 4229 | 未計測 |
1,280×720ドット 高品質(ノートPC) | 2416 | 5407 | 未計測 |
1,280×720ドット 標準品質(デスクトップPC) | 3449 | 7785 | 未計測 |
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC) | 3462 | 7779 | 未計測 |
CrystalDiskMark 3.0.3b | |||
シーケンシャルリード | 1848MB/s | 954.8MB/s | 1515MB/s |
シーケンシャルライト | 1535MB/s | 598.8MB/s | 1237MB/s |
512Kランダムリード | 1350MB/s | 535.5MB/s | 1107MB/s |
512Kランダムライト | 1517MB/s | 598.5MB/s | 1206MB/s |
4Kランダムリード | 50.39MB/s | 42.93MB/s | 43.57MB/s |
4Kランダムライト | 133.1MB/s | 115.8MB/s | 108.6MB/s |
4K QD32ランダムリード | 490.6MB/s | 612.7MB/s | 320.0MB/s |
4K QD32ランダムライト | 400.6MB/s | 511.8MB/s | 301.2MB/s |
CrystalDiskMark 5.1.2 | |||
シーケンシャルリードQ32T1 | 2519MB/s | 1632MB/s | 未計測 |
シーケンシャルライトQ32T1 | 1542MB/s | 602.7MB/s | 未計測 |
4KランダムリードQ32T1 | 500.3MB/s | 605.2MB/s | 未計測 |
4KランダムライトQ32T1 | 248.1MB/s | 516.7MB/s | 未計測 |
シーケンシャルリード | 1598MB/s | 931.7MB/s | 未計測 |
シーケンシャルライト | 1546MB/s | 602.3MB/s | 未計測 |
4Kランダムリード | 52,80MB/s | 44.85MB/s | 未計測 |
4Kランダムライト | 144.6MB/s | 166.0MB/s | 未計測 |
携帯性も性能もペンも重視という、欲張りな方に最適
ThinkPad X1 Yogaは、360度回転ヒンジを備えた2in1であり、14型ノートPCとしては軽さ、薄さもトップクラスだ。今回は試用できなかったが、後日追加される有機ELモデルなら、さらに重量が軽減される(その分価格は上がることになるが)。
PCとしての性能も、第6世代Coreファミリーや高速SSDの搭載により、Atomベースの低価格2in1とは大きな差がある。液晶解像度も2,560×1,440ドットと高いため、モバイルPCとしてだけでなく、メインマシンとしても快適に使える。また、筆圧検知対応のペンが付属していることも魅力だ。タブレットモードで縦画面にしてペンを使えば、レポート用紙などにメモを書いてる感覚で使える。バッテリ駆動時間も長く、外回りが多い営業職などにも最適だ。
プレミアムモデルとして位置付けられていることもあり、価格が高めなことが唯一の弱点であるが、それだけの価値はある製品といえる。