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360度回転ヒンジを採用した高性能2in1「ThinkPad X1 Yoga」

「ThinkPad X1 Yoga」

 レノボ・ジャパンから登場した「ThinkPad X1 Yoga」は、通称Yogaスタイルとも呼ばれる、360度回転ヒンジを備えた2in1 PCである。ThinkPad X1ファミリーは、ビジネス向けプレミアムノートPCであり、性能と携帯性を重視していることが特徴だ。従来からYogaスタイルのThinkPadはリリースされていたが、ThinkPad X1ブランドとしては初となる。ThinkPad X1 Yogaを試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。

360度回転ヒンジにより4つのスタイルで利用できる

 ThinkPad X1 Yogaは、一見、普通の14型液晶搭載クラムシェル型ノートPCに見えるが、液晶のヒンジが360度回転するようになっており、反対側にたたむことで、タブレットとしても使える、1台2役の2in1 PCである。ThinkPadシリーズのアイデンティティともいえる黒い筐体は、ビジネスの現場にふさわしいデザインだ。本体のサイズは、333×229×15.3~16.8mm(幅×奥行き×高さ)とスリム、重量は1.36kgで、携帯性は悪くない。

 通常のノートPCとして利用する「ラップトップモード」と、液晶を360度回転させて使う「タブレットモード」以外に、液晶を反対側まで回転させて、山形の状態でヒンジを上にして置く「テントモード」や液晶を反対側まで回転させてキーボード面を下にして置く「スタンドモード」での利用も可能だ。

 ThinkPad X1 Yogaは、店頭モデルと直販モデルがあり、それぞれCPUやメモリ容量、SSD容量などが異なるいくつかのモデルが用意されており、直販モデルについては仕様のカスタマイズも可能だ。今回の試用機は、CPUとしてCore i7-6500U(2.5GHz)を搭載し、メモリは8GB、ストレージとしてNVMe対応の512GB SSDを搭載していた。

ThinkPad X1 Yogaの上面
ThinkPad X1 Yogaの底面
ThinkPadロゴのiの点はLEDになっており、動作中は点灯する
ThinkPad X1 Yogaのヒンジは2軸になっており、それぞれのヒンジが180度回転することで、360度の回転が可能だ
液晶を360度回転させてタブレットモードにしたところ
試用機の本体重量は実測で1,352gであった
試用機のデバイスマネージャーを開いたところ
液晶を360度回転させると、Windows 10もタブレットモードに自動的に切り替わる

2,560×1,440ドットの14型IPS液晶を採用

 液晶は14型で、解像度は2,560×1,440ドットのWQHD表示である。視野角の広いIPS液晶を採用しているため、タブレットモードでの視認性も良好だ。10点マルチタッチ操作に対応しており、額縁部分も含めてフラットになっているため、デザイン的にもすっきりしている。表面の反射率は、ノングレア液晶と光沢液晶の中間くらいで、外光の映り込みもそれほど気にならないレベルだ。発色やコントラストも優秀であり、表示品位は満足できる。液晶上部には、720pのWebカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる。なお、直販モデルでは1,920×1,080ドットのフルHD解像度も選択可能だ。

 さらに、2016年6月には、有機ELモデルの追加も予定されている。有機ELは自発光デバイスであり、応答速度が液晶よりも遙かに高速で、表示色域も広い。有機EL採用モデルは、バックライトが不要になるため、重量も1.27kgに軽減される。

液晶は14型で、解像度は2,560×1,440ドットのWQHD表示である。タッチ操作対応であり、額縁部分も含めて、表面はフラットになっている
液晶上部には720pのWebカメラが搭載されており、ビデオチャットなどに利用できる

タブレットモード時にはキートップが沈んでロックされる「Lift'n' Lock」機構

 キーボードは、6列配列のアイソレーションキーボードであり、最近のThinkPadではお馴染みのタイプだ。キー配列は標準的で、キーピッチは19mm、キーストロークは1.8mmと余裕があるので、快適なタイピングが可能だ。

 このキーボードには、「Lift'n' Lock」と呼ばれる独自の機構が搭載されており、液晶を360度回転させてタブレットモードにすると、キートップが沈んで周りと同じ高さになり、ロックされて押せなくなる。Yogaスタイルの2in1 PCでは、タブレットモード時に底面にキーボードが剥き出しになるので、持ったときに気になるという人も多いが、Lift'n' Lockを搭載したThinkPad X1 Yogaならそうした心配はない。

 ポインティングデバイスとしては、ThinkPadクリックパッドが搭載されている。パッドタイプのデバイスと、キーボード中央のスティックタイプのデバイス(TrackPoint)の両方から構成されており、自分が使いやすいデバイスを使えることが利点だ。キーボード、ポインティングデバイスともに完成度は高く、使いやすい。

 また、パームレスト右側にタッチ式の指紋センサーを搭載。以前はスライド式センサーが採用されていたため、指紋認証時に指をスライドさせる必要があったが、ThinkPad X1 Yogaの指紋センサーは指先を軽くあてるだけで、指紋認証が可能であり、誤認識も少ない。

6列配列のアイソレーションキーボードを採用。キーピッチは19mm、キーストロークは1.8mmと余裕があり、キー配列も標準的で使いやすい
ノートPCとして利用している場合は、このようにキートップが盛り上がり、キーボードからの入力が可能
液晶を360度回転させてタブレットとして使う場合は、キートップが沈み、ロックされるので、手で持ったときも気にならない
ポインティングデバイスとして、ThinkPadクリックパッドが採用されている。スティックとパッドの両方を利用できることが利点だ
パームレスト右側に指紋センサーを搭載。以前のThinkPadに搭載されていたスライド式ではなく、タッチ式のセンサーである

2,048段階の筆圧検知に対応したペンを搭載

 ThinkPad X1 Yogaは、「ThinkPad Pen Pro-3」と呼ばれるペンを搭載していることも特徴だ。このペンは、本体右側面に収納できるようになっているので、紛失する心配はない。また、バッテリを内蔵しており、本体に挿入すると自動的に充電が行なわれる。15秒間で80%の充電が可能で、5分以内にフル充電が完了。フル充電で19時間の利用が可能だ。2,048段階の筆圧検知に対応するほか、2つのボタンを備えており、消しゴム機能などのさまざまな機能を割り当てられる。ペンの精度や応答も優秀であり、快適に手書きメモなどが行なえる。

新型ペン「ThinkPad Pen Pro-3」は本体の右側面に収納できるようになっている
ThinkPad Pen Pro-3は、2,048段階の筆圧検知に対応する
ThinkPad Pen Pro-3は、2つのボタンを備えているほか、バッテリを内蔵しており、本体に挿入すると充電される。フル充電で19時間の利用が可能だ
15秒間で80%の充電が可能で、5分以内にフル充電が完了する
ThinkPad Pen Pro-3を利用しているところ。ボタンを押しながらペンで触れると、書いた線を順番に消すことができる

独自ポートの「One Link+」を搭載

 インターフェイスとしては、USB 3.0×3、Mini DisplayPort、HDMI出力、ヘッドフォン端子のほか、独自ポートのOne Link+も用意されている。有線LANポートは本体には搭載されていないが、One Link+コネクタに接続する有線LAN変換アダプタが付属する。One Link+に、オプションの「ThinkPad One Linkドック」を接続することで、インターフェイスの拡張が可能だ。

 カードスロットとしてはmicroSDカードスロットを搭載。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11ac/a/b/g/n準拠の無線LANとBluetooth 4.1を搭載する。さらに、ジャイロセンサー、デジタルコンパス、光センサー、加速度センサー、近接センサーも搭載する。カードスロットが標準サイズのSDカードスロットでないことが残念だが、それ以外に関しては満足できる仕様だ。

左側面には、電源コネクタ、One Link+、Mini DisplayPort、USB 3.0が用意されている
左側面のポート部分のアップ
右側面には、ThinkPad Pen Pro-3の収納部、電源ボタン、音量ボタン、ヘッドセット端子、USB 3.0×2、HDMI出力が用意されている
右側面のポート部分のアップ
One Link+を有線LANに変換するアダプタが付属している
One Link+-有線LAN変換アダプタの有線LANコネクタ部分

無線LAN常時オンの実測で10時間を超えるバッテリ駆動時間を実現

 公称バッテリ駆動時間は約9.2時間または9.8時間(構成によって異なる)とされているが、実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定でバッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「中」)、10時間22分という結果になった。無線LANを常時有効にして、公称を上回る駆動時間を記録したことは高く評価できる。これだけ持てば、1日中、電源がとれない場所で持ち歩いて使う場合も安心だ。ACアダプタも薄型で軽く、携帯性は優れている。

付属のACアダプタ。薄型で持ち運びに便利だ
ACアダプタは20V/3.25Aの65W仕様だ
ACアダプタの重量は実測で265gであった

NVMe対応SSDにより高い性能を実現

 参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark 8」、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K」、「ファイナルファンタジー IXV 蒼天のイシュガルドベンチマーク」、「CrystalDiskMark 3.0.3b」、「CrystalDiskMark 5.1.2」である。比較用として、日本マイクロソフト「Surface Book」、VAIO「VAIO Z(クラムシェルモデル)」、VAIO「VAIO S11」、パナソニック「レッツノートSZ5」の値も掲載した。

 結果は下の表に示した通りで、PCMark 8のスコアは、同じCPUを搭載したVAIO S11よりやや低いが、上位のCore i7-6600Uを搭載したSurface Bookよりは高いという結果になっている。Surface Bookは、SSDの性能がThinkPad X1 Yoga(NVMe対応SSD搭載モデル)に比べて低いため、こうした結果になったと思われる。

 CrystalDiskMark 5.1.2の結果は、シーケンシャルリードQ32T1が2,519MB/sを記録するなど、非常に好成績だ。PCI ExpressとNVMeに対応した超高速SSDの威力がはっきりとわかる。14型2in1の中でもトップクラスの性能といえるだろう。

ThinkPad X1 YogaThinkPad X1 YogaSurface Book(キーボード装着時)VAIO S11
CPUCore i7-6500U(2.5GHz)Core i7-6600U(2.6GHz)Core i7-6500U(2.5GHz)
GPUIntel HD Graphics 520GeForceIntel HD Graphics 520
PCMark 8
Home conventional259024812779
Home accelerated316729083284
Creative conventional269426662725
Creative accelerated403637533655
Work conventional279427193046
Work accelerated399537934270
ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K
1,280×720ドット 最高品質7048114247083
1,280×720ドット 標準品質8339129138000
1,280×720ドット 低品質9644150109309
1,920×1,080ドット 最高品質382264093967
1,920×1,080ドット 標準品質495077775094
1,920×1,080ドット 低品質597990536129
ファイナルファンタジーIXV 蒼天のイシュガルドベンチマーク
1,280×720ドット 最高品質18123746未計測
1,280×720ドット 最高品質(Direct X9相当)23264727未計測
1,280×720ドット 高品質(デスクトップPC)19764229未計測
1,280×720ドット 高品質(ノートPC)24165407未計測
1,280×720ドット 標準品質(デスクトップPC)34497785未計測
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC)34627779未計測
CrystalDiskMark 3.0.3b
シーケンシャルリード1848MB/s954.8MB/s1515MB/s
シーケンシャルライト1535MB/s598.8MB/s1237MB/s
512Kランダムリード1350MB/s535.5MB/s1107MB/s
512Kランダムライト1517MB/s598.5MB/s1206MB/s
4Kランダムリード50.39MB/s42.93MB/s43.57MB/s
4Kランダムライト133.1MB/s115.8MB/s108.6MB/s
4K QD32ランダムリード490.6MB/s612.7MB/s320.0MB/s
4K QD32ランダムライト400.6MB/s511.8MB/s301.2MB/s
CrystalDiskMark 5.1.2
シーケンシャルリードQ32T12519MB/s1632MB/s未計測
シーケンシャルライトQ32T11542MB/s602.7MB/s未計測
4KランダムリードQ32T1500.3MB/s605.2MB/s未計測
4KランダムライトQ32T1248.1MB/s516.7MB/s未計測
シーケンシャルリード1598MB/s931.7MB/s未計測
シーケンシャルライト1546MB/s602.3MB/s未計測
4Kランダムリード52,80MB/s44.85MB/s未計測
4Kランダムライト144.6MB/s166.0MB/s未計測

携帯性も性能もペンも重視という、欲張りな方に最適

 ThinkPad X1 Yogaは、360度回転ヒンジを備えた2in1であり、14型ノートPCとしては軽さ、薄さもトップクラスだ。今回は試用できなかったが、後日追加される有機ELモデルなら、さらに重量が軽減される(その分価格は上がることになるが)。

 PCとしての性能も、第6世代Coreファミリーや高速SSDの搭載により、Atomベースの低価格2in1とは大きな差がある。液晶解像度も2,560×1,440ドットと高いため、モバイルPCとしてだけでなく、メインマシンとしても快適に使える。また、筆圧検知対応のペンが付属していることも魅力だ。タブレットモードで縦画面にしてペンを使えば、レポート用紙などにメモを書いてる感覚で使える。バッテリ駆動時間も長く、外回りが多い営業職などにも最適だ。

 プレミアムモデルとして位置付けられていることもあり、価格が高めなことが唯一の弱点であるが、それだけの価値はある製品といえる。

(石井 英男)