Hothotレビュー
パナソニック「Let'snote MX3 CF-MX3TEABR」
~光学式ドライブ内蔵で世界最軽量の2-in-1 Ultrabook
(2014/2/17 06:00)
パナソニックは、人気ビジネスモバイル「Let'snote」シリーズの新モデルとなる、12.5型液晶搭載のUltrabook「Let'snote MX3」シリーズを発表した。360度開閉する液晶ヒンジ構造を採用することで、クラムシェル型ノートとしてもピュアタブレットとしても使える“2-in-1”Ultrabookだが、標準で光学式ドライブを内蔵する点がこれまでにない大きな特徴となっている。
今回は、Let'snote MX3シリーズの中で、店頭販売モデルの最上位機種となる、CF-MX3TEABRを取り上げる。価格はオープンプライス、実売価格は270,000円前後。なお、試用したのは試作機のため、製品版とは一部異なる可能性がある。
AXシリーズ同等のコンバーチブルスタイルを採用
2014年春モデルとして登場した「Let'snote MX3 CF-MX3TEABR」(以下、MX3)は、Let'snoteシリーズの完全な新シリーズとなる。12.5型と、Let'snote SXシリーズを上回るサイズの液晶を搭載しつつ、液晶部が360度開閉するヒンジ構造を採用することで、クラムシェル型ノートとしてもピュアタブレットとしても利用できる、2-in-1スタイルのモバイルノートとなっている点が大きな特徴だ。
同様の液晶回転構造は、Let'snoteシリーズとして初のUltrabookとして登場した、Let'snote AXシリーズとほぼ同等。液晶部と本体部それぞれに回転機構を備える板状のヒンジを2つ備え、180度までは液晶部の回転軸、180度以降は本体側の回転軸が回転することによって、液晶部が本体底面側まで360度開閉する構造を実現している。AXシリーズのヒンジと比べると、わずかに形状が変わっているが、基本的な開閉構造はほぼ同じとなっている。
どの角度に開いた状態でも液晶部のぐらつきは皆無で、クラムシェル型ノートとして利用する場合でも、安定して利用できるのは嬉しい。それでいて液晶部の開閉は非常にスムーズで、強い力を必要とせず液晶部の開閉が可能。このあたりは、AXシリーズで培われた技術がしっかり受け継がれているものと考えられる。
本体デザインは、ひと目でLet'snoteシリーズだとわかるオーソドックスなものとなっている。カラーは天板から底面までシルバーで統一されており、天板部分にはLet'snoteシリーズ伝統のボンネット構造を採用。天板素材に、発泡素材をカーボンで挟み込む世界初の構造を備えるカーボン素材を採用し、ボンネット部の凹凸構造をプレス加工によって最適化することにより、従来同様の優れた堅牢性を維持しつつ軽さを追求。さらに、キーボード面のトップケースには、カーボンを混ぜたマグネシウム合金を採用することで、同様に堅牢性の維持と軽量化を両立。このような新規に採用した技術などにより、大幅な軽量化を実現しつつ、76cm(底面方向、動作時)および30cm(6面、12辺、8角の合計26方向、非動作時)の落下試験や、100kgf加圧振動試験をパスする堅牢性を確保している。
本体サイズは、301.4×210×21mm(幅×奥行き×高さ)。液晶サイズが12.5型のため、11.6型液晶搭載のAXシリーズよりひと回り大きく、フットプリントは12.1型液晶搭載のLet'snote SXシリーズよりもわずかに大きい。
光学式ドライブを標準搭載し、1.2kgを切る軽さを実現
MX3のもう1つの特徴となるのが、標準でDVDスーパーマルチドライブを内蔵しつつ、1.2kgを切る軽さを実現しているところだ。
光学式ドライブを搭載することは、本体の厚さや重量の増加につながるため、Ultrabookやピュアモバイルノートでは光学式ドライブを内蔵する製品は圧倒的に少ない。重量1.2kg未満のピュアモバイルでは、右パームレストが開閉する特殊な構造の光学式ドライブ「シェルドライブ」を搭載するLet'snote SXシリーズが唯一の選択肢となっている。
そういった中でMX3は、Ultrabook準拠の薄さを確保し、さらに2-in-1スタイルのコンバーチブル構造を実現しつつ、光学式ドライブを標準で搭載している。それも、SXシリーズ同様のシェルドライブではなく、一般的なトレイ式のドライブを採用。トレイ式の光学式ドライブは重量的に不利となるが、フレーム部に多数の穴を開けるなどの工夫により、約81gと圧倒的な軽量化を実現。これにより、MX3では光学式ドライブを搭載しつつ、公称で約1,198gと、1.2kgを切る軽さを実現した。この重量は、DVDスーパーマルチドライブを搭載するコンバーチブルスタイルのモバイルノートとして世界最軽量となる。また、実測では1,187gと、公称値よりもさらに10g以上軽かった。
SXシリーズより大型の12.5型液晶を搭載し、コンバーチブルスタイルを実現しながら、光学式ドライブを内蔵してこの軽さを実現し、その上でLet'snoteシリーズの堅牢性も維持しているのは、まさに驚愕の一言だ。
光学式ドライブを搭載することで気になるのが、光学式ドライブ部分の本体の強度だろう。実際に、光学式ドライブのトレイを引き出した状態では、パームレスト部がペコペコと柔らかく、やや不安を感じる。しかし、トレイを閉じた状態では、光学式ドライブを搭載しない右パームレスト側と比べてもほとんど変わらない強度となる。片手で左パームレスト部分を掴んで本体を持っても、強度に不安を感じることはなかった。
なお、この光学式ドライブは、ディスクへの書き込みはドライブが水平の状態でのみの対応となるのに対し、ディスクの再生はどういった角度でも可能となっている。実際に、本体をテントスタイルに置いた状態でも、問題なくディスクにアクセス可能だった。ピュアタブレットスタイルで手に持った状態でのDVDビデオの視聴も問題ないだろう。
12.5型フルHD液晶を採用
MX3に搭載される液晶は12.5型と、Let'snoteシリーズとしては14型のLXシリーズに次ぐ大きさとなっている。表示解像度は1,920×1,080ドットのフルHD表示に対応している。SXシリーズの12.1型に比べてわずかに大きいだけだが、SXシリーズの1,600×900ドットよりも高解像度表示に対応しているという点は、SXシリーズに対する優位点と言える。
パネルの種類は、AXシリーズ同様IPSパネルを採用。広視野角で、視点が移動しても色合いや明るさの変化が少なく、タブレットモードでも快適な視認性が確保される。液晶表面には非光沢の保護フィルムが貼られており、発色の鮮やかさは光沢パネルの液晶にやや劣る印象だ。それでも、IPSパネルではないLet'snoteシリーズの液晶に比べると表示品質は優れており、満足できるレベルと言える。逆に、外光の映り込みは光沢パネルの液晶よりも抑えられているため、文字入力を中心とした作業も快適に行なえる。
液晶表面には、10点マルチタッチに対応する静電容量方式タッチパネルが取り付けられている。タッチパネルの感度は十分に優れており、複数の指を利用した操作も含め、軽快なタッチ操作が行なえる。また、MX3には標準でタッチペンが付属し、ペン入力も可能となっている。このタッチペンはデジタイザ方式ではないが、ペン先が2mmと細く、細かな文字や操作も軽快だ。本体側面にタッチペンの収納スペースが確保され、容易に持ち運びが可能な点も嬉しい。
キーボードは縦の狭さが気になる
キーボードは、他のLet'snoteシリーズと同じ、キートップの左上と右下が丸みを帯びた、リーフ型キーボードとなっている。また、キーとキーの間隔が開いた、アイソレーションタイプとなっているのは、AXシリーズと同じだ。
主要キーのキーピッチは、横が19mと十分に余裕があるのに対し、縦は15.2mmとかなり狭くなっている。それに対し、ストロークは2mmと、Ultrabook準拠のノートPCのキーボードとしてはかなり深くなっている。これまでのLet'snoteシリーズのキーボード同様、タッチは比較的軽めだが、ストロークが深いため、しっかりタイピングできるという印象だ。正方ピッチではないため、最初は違和感を感じることもあるが、慣れればタッチタイプも可能。Let'snoteシリーズのユーザーなら、違和感なく利用できるはずだ。
ただ、気になった部分もいくつかある。まず、Enter付近やスペースキーの右付近のキーピッチが狭くなっている。また、カーソルキーの右にFnキーがあり、カーソルキーでの操作時にFnキーを押してしまうことが何度もあった。これも慣れかもしれないが、できれば従来同様に、右Fnキーはカーソルキーの左側に配置してもらいたかった。
タッチパッドは、AXシリーズ同様、長方形型のタッチパッドとなっている。Let'snoteシリーズと言えば円形のホイールパッドが代名詞だったが、Windows 8では長方形のタッチパッドの方が扱いやすいこともあり、MX3のタッチパッドも操作性に不満を感じることはなかった。また、独立した左右のクリックボタンが用意されている点も、操作性を高めている部分だ。
ちなみに、キーボードとタッチパッドは、液晶が180度以上開くと自動でロックがかかり、誤動作を防止する仕組みが盛り込まれている。また、タッチパッドの左右クリックボタンの中央に用意されたHOLDボタンを押すことでも、キーボードとタッチパッドの動作をロックできる。クラムシェルスタイルとタブレットスタイルで使い分ける場合に問題となる、キーボードやタッチパッドの誤動作も、こういった仕様で防ぐことが可能だ。
外部ポートは全て標準サイズ
基本スペックは、Ultrabook準拠ということで、Ultrabookとして標準的なものとなっている。CPUは、Core i7-4500Uを採用し、メインメモリは標準で8GB搭載(増設は不可)。ストレージは256GBのSSDが標準搭載される。
無線機能は、IEEE 802.11ac/a/b/g/n準拠の無線LANと、Bluetooth 4.0を標準搭載。さらに、モバイルWiMAX機能も標準で搭載する。WiMAXの搭載は、外出先でのネットワーク接続を容易に確保できるという意味でも、魅力が大きい。タブレットモードも利用できるため、各種センサーも搭載。照度センサー、電子コンパス、ジャイロセンサー、加速度センサーを標準搭載している。また、液晶上部には約200万画素のカメラも搭載する。
本体側面のポートは、右側面に集約されている。用意されているポートは、ヘッドフォンジャック、マイクジャック、USB 3.0×2ポート、HDMI出力、Gigabit Ethernet、アナログRGB出力(ミニD-Sub15ピン)、電源コネクタを用意。各ポートは全て標準サイズで、変換アダプタなどを利用せず直接周辺機器を接続可能だ。また、右側面には内蔵無線機能のオン/オフスイッチ、本体前面にはSDXCカードスロット(UHS-II対応)とボリュームボタン、画面回転のオン/オフボタン、電源スイッチが配置されている。なお、左側面には付属のタッチペンの収納スペースが用意されている。
性能はUltrabookとして標準的
では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 8 v2.0.204」、「PCMark 7 v1.4.0」、「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark Professional Edition v1.1.0」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」、カプコンの「モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】」の6種類。比較用として、ASUSの「ZENBOOK UX301LA-SIS」と、日本HPの「HP ENVY 14 TouchSmart 14-k023TX Sleekbook」の結果も加えてある。
Let'snote MX3 CF-MX3TEABR | ZENBOOK UX301LA-SIS | HP ENVY 14 TouchSmart 14-k023TX Sleekbook | |
---|---|---|---|
CPU | Core i7-4500U (1.80/3.00GHz) | Core i7-4500U (1.80/3.00GHz) | Core i5-4200U (1.60/2.60GHz) |
ビデオチップ | Intel HD Graphics 4400 | Intel HD Graphics 4400 | Intel HD Graphics 4400 GeForce GT 740M |
メモリ | PC3L-12800 DDR3L SDRAM 8GB | PC3L-12800 DDR3L SDRAM 8GB | PC3L-12800 DDR3L SDRAM 8GB |
ストレージ | 256GB SSD | 512GB SSD (256GB×2 RAID 0) | 1TB HDD + 24GB SSD Hybrid |
OS | Windows 8.1 Pro | Windows 8 | Windows 8 |
PCMark 8 v2.0.204 | |||
Home Accelarated 3.0 | 2547 | - | - |
Creative accelarated 3.0 | 2750 | - | - |
Work 2.0 | 3226 | - | - |
Storage | 4936 | - | - |
PCMark 7 v1.4.0 | |||
PCMark score | 5114 | 5272 | 4096 |
Lightweight score | 3478 | 3478 | 2723 |
Productivity score | 2650 | 2593 | 2151 |
Entertainment score | 3726 | 3746 | 2969 |
Creativity score | 9456 | 10280 | 7428 |
Computation score | 16406 | 17316 | 12642 |
System storage score | 5323 | 5491 | 4377 |
Raw system storage score | 5699 | 6200 | 2193 |
PCMark05 Build 1.2.0 | |||
PCMark Score | N/A | N/A | N/A |
CPU Score | 9429 | 9448 | 8103 |
Memory Score | 8315 | 9139 | 6098 |
Graphics Score | 3509 | 3143 | 3058 |
HDD Score | 38139 | 48126 | 27405 |
3DMark Professional Edition v1.2.250 | 3DMark Professional Edition v1.1.0 | ||
Ice Storm | 44198 | 36632 | 14035 |
Graphics Score | 49434 | 37743 | 13244 |
Physics Score | 32245 | 33211 | 17749 |
Cloud Gate | 4590 | 4834 | 4573 |
Graphics Score | 5684 | 6207 | 6190 |
Physics Score | 2744 | 2725 | 2389 |
Fire Strike | 606 | 693 | 986 |
Graphics Score | 654 | 759 | 1080 |
Physics Score | 3931 | 3935 | 3285 |
3DMark06 Build 1.2.0 1901 | |||
3DMark Score | 5472 | 6851 | 8991 |
SM2.0 Score | 1893 | 2364 | 3872 |
HDR/SM3.0 Score | 2221 | 2900 | 3548 |
CPU Score | 3436 | 3573 | 3065 |
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【大討伐】 | |||
1,280×720ドット | 2813 | 3189 | 3992 |
結果を見ると、項目によってやや違いも見られるが、スペックの近いZENBOOK UX301LA-SISとほぼ同等のスコアとなっている。スペックが近いため当然ではあるが、MX3はUltrabookとして標準的な性能がしっかり発揮されると考えていい。
ベンチマークテスト実行中の高負荷時のファンの動作音は、シャーという風切り音が耳に届き、ややうるさく感じる。ただ、図書館など静かな場所で気になるほど大きな音ではなく、オフィスなどで使う場合には、動作音が気になる場面はほぼないはずだ。また、タブレットモードでは、ファンの排気口が上部に位置するため、手に持って使う場合でも熱が気になることはなかった。ちなみに、排気口付近の底面とキーボード面はやや温かくなるが、その付近を手に持つこともないので、本体の発熱が気になることもない。
次にバッテリ駆動時間だ。MX3の公称のバッテリ駆動時間は、約14.5時間とされている。それに対し、Windowsの省電力設定を「省電力」に設定し、バックライト輝度を40%、無線機能は無線LANのみを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約7時間42分の駆動時間を計測した。長時間駆動が特徴のLet'snoteシリーズとしては、試作機のためかやや物足りない数字ではあるが、これだけの駆動時間であれば、1日の外出時であれば、バッテリ残量を気にする必要は少ないだろう。
ところで、MX3では、AXシリーズ同様、本体内蔵のバッテリに加えて、着脱式バッテリを搭載する、2バッテリ構造を採用している。本体内蔵バッテリに残量が残っている限り、着脱式バッテリを外した状態でもマシンが停止することはなく、Windows動作中でもバッテリを交換できるという点が大きな特徴となっている。予備のバッテリを用意すれば、さらなる長時間駆動も容易に実現できるので、この点は他のUltrabookに対する大きな優位点と言える。なお、着脱式バッテリを外し、内蔵バッテリのみでの駆動時間は、先ほどと同じ条件で計測して約2時間6分だった。
携帯性と利便性を両立した2-in-1モバイルとしておすすめ
MX3は、2-in-1 UltrabookのAXシリーズと、クラムシェル型ピュアモバイルのSXシリーズ双方の良いところを併せ持つ、非常に完成度の高い2-in-1モバイルに仕上がっている。また、ぶれることなくビジネスモバイルとして必要な機能を詰め込んでいる点も、Let'snoteシリーズらしい魅力と言える。非光沢液晶の採用や光学式ドライブの搭載は、ビジネスシーンの利用で重要なポイントとなる。また、圧倒的な軽さと優れた堅牢性を兼ね備え、毎日の持ち歩きに全く不安がない点も、他のモバイルノートに対する大きな優位点だ。
価格こそ、実売で270,000円前後と競合製品に比べて高価で、個人ユーザーが購入するとなると、やや厳しいという印象もある。とはいえ、細部まで妥協なくしっかり作り込まれた、ビジネスモバイルとしての完成度の高さを考えると、この価格も納得の範囲だ。クラムシェルノートとしてもタブレットとしても快適に利用でき、苦にならず毎日安心して持ち歩ける軽さと堅牢性を兼ね備えるビジネスモバイルとして、広くおすすめしたい。