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“横液晶”はやっぱり偉い。史上最強のゲーミングUMPC「GPD WIN4」

WIN4

 株式会社天空は、深センGPD Technology製の6型液晶搭載ゲーミングUMPC「GPD WIN4」の予約販売を実施している。“非公式PS Vita 2”と謳っているこのPCは、ソニーのポータブルゲーム機「PSP」や「PS Vita」を彷彿とさせるデザインを採用しながら、スライド式で現れるキーボードを搭載し、CPUにRyzen 7 6800U、OSにWindows 11 Homeを採用した高性能な超小型PCである。

 ポータブルゲーム機に近いフォルムでありながらPCらしい使い勝手を残したのが特徴の製品ではあるが、どの程度ポータブルゲーム機の使いやすさに近づけられるか、その一方でPCとしての使い勝手はどうなるか、気になるユーザーも少なくないことだろう。発売は5月とまだ先ではあるが、いち早くサンプルをお借りでき、短時間ではあるものの試用することができたので、レビューをお届けしたい。

 なお、今回お借りしたのはあくまでも発売前のサンプルであり、実際の外観や性能は製品とは異なる可能性がある点は注意されたい。あくまでも使い勝手の参考としていただければ幸いだ。

スライド式キーボード+6インチ液晶+Ryzen 7 6800UのポータブルゲーミングPC「GPD WIN4」はどこまで戦えるのか?ライブ配信でもチェック!
2月22日(水)21時より、GPD WIN4の解説ライブを配信します。同機の仕様、特徴、性能測定結果、操作感などをレポート。さらに実際にゲームを動作させてみます。解説は劉デスク、MCはPADプロデューサーの佐々木です。

GPD WIN3から変更されたキーボード

 “Max”が付かないオリジナルのWINシリーズの歴史を改めておさらいしよう。初代はCPUにAtom Z8750を搭載し、クラムシェルの形状で2016年に登場。当時ちょうどこうしたガジェット系のクラウドファンディングに人気があり、その中で成功した1台だ。2代目はCPUをCore m3-7Y30へと大幅に強化し、クラムシェル形状を引き継いだ。

 そして「WIN3」は2021年に登場。CPUはそれまで10W以下だった超低消費電力版から低消費電力版へと変更され、一気にメインストリームのノートPC並みの性能を得た。加えて内蔵GPUも第11世代Coreで大きく強化されたため、ゲームにおける実用性が一気に向上した。

 WIN3では、従来のクラムシェル形状からスライダー形状に変更されたこともトピックの1つ。かつて2006年にソニーがリリースした「VAIO type U」に酷似したフォルムで、これまた話題作となった。ただWIN3のキーボードが静電容量によるタッチ方式に変更されたのが弱点だった。もちろんこれによって薄型軽量化できたのだろうが、WIN 2までは物理ボタンであったため、ユーザービリティの面からすれば「退化」していた。

 もともとGPD WINシリーズのキーボードは長文入力ではなく、オンラインゲームなどにおけるパスワード入力を想定していたのだから、タッチ化されても致し方ない。IDやパスワード入力欄がスクリーンキーボードの後ろに隠れてしまい、入力したかどうか確認できないぐらいなら、タッチでもいいから“画面外”にキーボードを装備したほうがいいという思想は非常に正しい。

 しかし、やはり物理ボタンがいいという声があったのだろう。WIN4ではまた物理ボタンに逆戻りした。もちろん、物理ボタンの方が落ち着いてタイプできる。というのも、指を常時キーボードの上に置くことができるからだ。WIN3の場合、誤って押してしまわないよう指を常にキーボードから離し、細心の注意を払いながらタイピングする必要があるのだが、WIN4では表面を撫でながら目的のキーまで指を移動して押下すれば良い。特にパスワードは、入力した文字が即座に隠されるため、タイプした後の指の位置で確実に入力した文字が確認できるのが良い。

従来のWIN3のキーボード。タッチ式のためフラットで美しいが、長文入力は厳しい
WIN4のキーボード。物理ボタンに変更しつつ、バックライトは維持しているため暗所でも視認できる。ただ、数字の列はやや窮屈だ

 また、WIN4は画面が従来の5.5型から6型へと大型化している関係で、少し横幅の余裕が増えた。これによりキーレイアウトも横方向にゆったりとした配置となり、歪な配列はかなり抑えられた。ストロークこそ短いものの、押下圧はちょうどいい塩梅で、WIN3との比較のみならず、WIN 2や初代と比較しても入力しやすくなっている印象を受けた。

 ただ、たとえば最上段のESC~数字~Delの列は画面下部とかなり近くなっており、親指が当たりやすい点は少し気になった。もちろん、画面下部はなるべく邪魔にならないように傾斜をつけるという工夫がなされているのだが、それでもほかの列と比べて押しにくい。

 また、Fnキーは左側には用意されているのだが、右側に用意されていない点も気になる。本機のキーボードはもちろん両手の親指で操作することが前提なのだが、この配置だと「F10」を実行するのに「Fn」+「0」は押すことが容易でも、「F2」を実行するのに「Fn」+「2」を押すのが大変だからだ。カーソルの横のアプリケーションキーをFnにしたほうが実用的だったとは思う。

 と、難癖をつけてしまった感じだが、使い勝手はやはりWIN3からは進化しており、ID/パスワード/単語入力用途ぐらいしか使いたくなかったWIN3のキーボードと比べると、ある程度の長さの文章に耐えられるようにはなった。外出先でのメールの返信や簡単な文書作成/編集程度なら十分対応できるだろう。

 とは言え、本製品の本来の用途はテキスト入力ではなくゲームプレイだ。先述の通りWINシリーズのキーボードはあくまでも“パスワード入力用”であるから、この指摘はそもそもナンセンスかもしれない。「WIN4になってパスワード入力が少し楽になったぜ!」、「これなら新しいゲームのアカウントの登録もWIN4で済ませられそうだ」とポジティブに捉えるべきだろう。

液晶がフルHDに進化し、ネイティブランドスケープ対応でゲーム互換性向上

 キーボードの改善のみならず、WIN4では液晶も大きく進化した。まず解像度だが、従来の1,280×720ドット(720p)から、1,920×1,080ドット(フルHD)へと解像度が向上した。

 これまでWINシリーズで720p解像度を採用してきたのは、CPU内蔵GPUの性能の兼ね合いが大きかった。つまり、CPU内蔵GPUでゲームをプレイするなら、フルHDよりも720pのほうが性能的にマッチしているという判断からだった。

 しかしRyzen 7 6800Uでは、メインメモリがDDR5となったことで帯域幅が向上。RDNA 2アーキテクチャを採用したGPU自身の演算能力も高まっており、多くのタイトルで画質さえ落とせばフルHD解像度でもそこそこ動くようになってきた。これに合わせる形で液晶解像度も向上したとみていいだろう。

 また720pでは、画面の狭さに悩まされることも少なくなかった。例えば一部ゲームのランチャーではボタンが見切れたりするし、ゲームによってはデフォルトのUI配置が最低1,366×768ドットを想定していて、一部要素が表示されなくなったりした(例えばファイナルファンタジーXIVなどでは経験値バーが表示されない)。この不便さがフルHDになったことで解消したと言っていい。

1,920×1,080ドット対応になった液晶
WIN3は1,280×800ドットだったため、黒い砂漠のようなンチャーではフルモードで表示しきれず、コンパクトモードで起動していた

 もっとも、筆者としてはそれ以上にネイティブでランドスケープ(横長)に対応したことを大いに評価したい。競合製品や前世代のWINシリーズまでは、ネイティブがポートレート(縦長)の液晶であり、ドライバ上で90度回転して横に表示する仕組みを採用していた。このため、排他的フルスクリーン表示しかできない古い3Dゲームや、DirectDraw対応の2Dタイトルでは、起動時にエラーが発生したり、画面が見切れたりする不具合があったのだ。

 さらに、ゲーム内の解像度を下げ、GPU側で超解像を行なうことで負荷を下げフレームレートを向上させる「Radeon Super Resolution」(RSR)が利用できるのも、Ryzen 7 6800U内蔵GPUの特徴の1つなのだが、これもポートレート液晶だとうまく動作しないことがある。例えばStrayは、解像度を下げると排他的フルスクリーンが強制されるのだが、縦長の画面をレンダリングして横長で出力しまい見切れてしまう。そのためRSRを組み合わせてもうまく動作しない。

 WIN4ではネイティブでランドスケープ表示になったので、これらのエラーや不具合とは無縁になったわけだ。ランドスケープ液晶の採用は「WIN Max 2」に続くものとなったわけだが、これによりWIN4はWIN Max 2と並んでゲームとの互換性が最も高いUMPCになったと言っていいだろう。

 さてその液晶の画質だが、文句はない。視野角は極めて広く、色味も正しく鮮やかだ。光沢のため屋外では反射が気になるが、室内ならまったく問題はないだろう。精細感も高く、ゲームとの相性は抜群だ。

コンパイルのDiscStation Vol.19に収録されている対戦アクション「魔導RUN」。WIN3(左)では起動後暗転し、そのままプログラムが終了してしまうが、WIN4(右)では何ら問題なく動作する
「GRID 2」のようにちょっと古いゲームは、ウィンドウモードかフルスクリーンモードしかない場合がある。これもWIN3ではデフォルトでは動作しなかった

PSP/PS Vitaっぽくなってホールド感向上。ただし熱が少し気になる

 さて、キーボードと液晶以外のところを評価していこうと思う。まずは筐体のフォルムだが、正面だけ見たら確かにPSPとかPS Vitaを彷彿とさせるデザインだ。しかし厚みはおよそそれらゲーム機の2倍。この中に28Wで動作するプロセッサや、スライドで現れる物理キーボードが入っていると思えば確かに驚異的だが、PSPのようなスタイリッシュな印象はあまりないのも確かではある。

 先代のWIN3と比較して左右が丸みを帯びたフォルムになった。これによって手のひらのフィット感は大幅に増した。加えて、アナログスティックの位置もWIN3の左右対称ではなく、左のスティックがA/B/X/Yのボタンと同列という、一般的なコントローラと同じ配置となった。これにより、ゲームプレイ時のホールド感が、ますますWIN3と比較して増し、長時間プレイでも疲れにくくなった。

PSP(-1000、下)との比較。ぱっと見た感じではPSPをそのまま大きくした印象だ
厚みはやはりPSPと比べるとある
WIN3(下)との比較でも、やや大型化しているのが分かる
本体背面の比較。グリップ部が丸みを帯びるようになり、手のひらへのフィット感が向上した
キーボードを引き出したところ
試作機の重量は606g。WIN3は551gだったので、50gほど重量が増加した

 WIN3でも1週間ぐらい使い続ければ特に違和感を感じなくなるが、しばらくWIN3離れてまた戻ってくると「やっぱりこの姿勢でゲームをプレイするのは不自然だよな……」と思うことがあった。その一方でWIN4は、いつ手にしても極めて自然なフォルムでプレイできる。この進化は大きく、正直これだけでも買い替えの価値はあるとは思う。

 先述の通り厚みがある筐体ではあるのだが、これは先代のWIN3とほぼ同じレベルに収まっており、ホールド感向上の一役にもかっているので、気になることはないだろう。それよりも稼働中は本体右側面がやや熱くなるのが気になった。不快というレベルではないのだが、WIN3が手のひらに当たらなかった部分なので、それと比較すると気になる程度ではある。

 アナログティックやボタンの操作感はWIN3に非常によく似た感じ。アナログスティックについてはホール式を採用していることもあって、試用中にドリフト現象が発生したり、精度不足だと感じたりすることは一切なかった。各ボタンのストロークが浅くクイックな反応を示す。このあたりはストローク距離を重視したONEXPLAYERシリーズとはかなり異なる。ボタンも携帯ゲーム機らしい大きさで、据え置きゲーム機に近い操作感を追求したわけではなく、あくまでもGPDとしての答えだ(筆者は好みである)。

 ことL1/R1ボタンに関しては、PSPのL/Rボタンにそっくりなクリアパーツでできており、PSPのようにポコポコ鳴るタイプかと思いきや、大半のゲーミングマウスの左クリックや右クリックに似たマイクロスイッチのようなクリック感であった。タイトでぐらつきも少なく、俊敏な応答である。

コントローラ左側。このところ注力されているアナログスティックだけあって、精度は抜群でドリフト現象も発生しない。十字パッドの下に指紋センサーを装備。さらにその下にあるボタンはSelectだ
コントローラ右側。ボタン類はストロークが浅く、クイックに反応する印象。アナログスティックの下にあるのは光学式ポインティングデバイス。控えめながら、電源と充電LEDもある。一番下にあるボタンはStart。さらにその下に書かれた「MENU」は、Xboxボタンに相当する
L1/R1ボタンにはRGBライティングも搭載。ただ、トリガーがある関係でPSPのように向こう側が見えるわけではない
本体背面にもプログラマブルボタンを装備する

 ゲームプレイ中の騒音は抑えられている部類。WIN3と比較すると、若干音質が軸音成分多めから風切り音成分多めになった印象だが、音量は抑えめで、このサイズとしては健闘している。3m程度距離が離れれば気にならないため、これなら深夜にゲームをプレイしていても家族に迷惑をかけるといったことはないだろう。また、アイドル時/低負荷時の静音性は改善され、ファン速度の上昇が抑えられて静かになった。Windows UpdateやWebブラウザの起動程度でやかましくならないのは、好感が持てる。

上からでも下からでも充電可能になり、指紋センサーやポインティングデバイスも便利

 インターフェイスは、上部にUSB 3.1、USB4、3.5mm音声入出力、底面にUSB 3.1 Type-Cを装備。USB Type-Cが2基となったことで、上部からでも下部からでも充電できるようになり、利便性が向上した。

 コントローラを除く機能的なボタンやインターフェイス類から見ていくと、本体上部には左から電源ボタン、音量+ボタン、音量-ボタンがある。Windowsの音量バーの方向を考えたら、+と-を逆にしてほしかったところ。正面右のコントローラの下には指紋センサーがあり、Windowsにすぐにログインできるのは便利である。

 試用中気になったのはスピーカーの位置で、現時点では左右手前にあるものの、筆者の手ではコントローラを握った際に手のひらで覆ってしまう形となり、スティックの操作ごとに音量が変わる状況になってしまった。ここはPSPのように底面(手前側面)に装備してほしかったところだ。

本体上部のインターフェイス。USB4、USB 3.1、3.5mmステレオミニジャックなどを備える。また、音量ボタンも搭載
本体底面にもUSB 3.1 Type-Cを搭載している
本体左側面にはmicroSDカードスロットと、WINシリーズおなじみのコントローラでマウス操作するモード切り替えスイッチも搭載する
ゲームプレイ中のホールド感は高いが、手のひらでスピーカーの穴を塞いでしまうことがあった

 右のコントローラの下には光学式のポインティングデバイスを装備。フルHD解像度でこのサイズだと、画面タッチだけではWindowsで何かと細かいポインティング操作をする際に不便だが、このポインティングデバイスで少しでも便利になるのがいい。ちなみにこのセンサー自体の押し込みによって、左クリック操作もできるのがまた良い点である(長押しで右クリックもできる)。

 背面には2基のプログラマブルボタンを備えている。配置的には両手の薬指で操作することを想定しているようだ。試作機では設定するためのユーティリティがインストールされていなかったため今回は試していない。

 ちなみに液晶のスライド機構は従来通りバネなどは用いていないため、スライド途中で止められる。正直ここはちょっとスライドするだけでカシャとキーボード全体が現れるギミックの方が気持ちがいいと思うが、耐久性とコスト、実装スペースの兼ね合いでこうなったのだろう。

ゲームが十分快適にプレイできる性能を実現

 最後に一通りベンチマークとバッテリ駆動時間のテストを行ないたい。今回は「PCMark 10」、「3DMark」、「Cinebench R23」、「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「Forza Horizon 5」および「アサシンクリードヴァルハラ」を用いてテストを行なう。比較用に、先日レビューした「ONEXPLAYER Mini Pro Ryzen版」の結果を並べてある。今回は試用時間が短かったため、TDPは標準の23Wで試用した。

 結果を見れば分かる通り、ほぼONEXPLAYER Mini Pro Ryzen版と同じ性能を発揮した。WIN4は一回り小さく標準のTDPが23Wに設定されているということもあり、ONEXPLAYER Mini Pro Ryzen版とまったく同じ性能にはならないようだが、実際のゲームではわずかに解像度が低いこともあり、画面いっぱいに表示させるなら、わずかに高いフレームレートを達成できる。

【表】WIN4試作機と比較機の仕様
WIN4ONEXPLAYER Mini Pro Ryzen版
CPURyzen 7 6800U
メモリ16GB
ストレージ1TB SSD
液晶1,920×1,080ドット1,920×1,200ドット
OSWindows 11 Home
TDP設定23W28W
PCMark 10の結果
3DMark Time Spyの結果
3DMark Fire Strikeの結果
3DMark Wild Lifeの結果
3DMark Night Raidの結果
Cinebench R23の結果
ファイナルファンタジーXIV 暁月のフィナーレ ベンチマーク
アサシンクリード ヴァルハラベンチマークの結果
Forza Horizon 5の結果

 また先述の通り、WIN4ではネイティブでランドスケープ表示の液晶を採用しているため、RSR機能をオンにしても描画の不具合に見舞われることはない。よって、実際にゲーム内では1つ下の解像度に設定して描画負荷を軽減しつつ、RSRで高解像度化することができ、より快適にゲームをプレイすることができるのもメリット。古いDirectDrawベースのゲームも問題なくプレイできる点も加味すると、幅広くゲームをプレイできるWIN4の方に軍配があがると言って良さそうだ。

 バッテリ駆動時間だが、PCMark 10のバッテリテストにおいて、CPUがTDP 23Wおよび液晶輝度50%の設定下で、Modern Officeが7時間42分、Gamingが1時間27分だった(いずれも残容量6%まで)。約1時間半強のゲームプレイは正直没頭するのに十分だとは言えないが、このサイズを考えれば大いに健闘している。往復1時間程度の電車通勤中にプレイする程度なら十分だと言えるだろう。また、持ち運び時は軽負荷のゲームを遊ぶ、CPUのTDPを下げるといった使い方も考えられる。

【13時8分訂正】記事初出時、TDP設定を28Wに揃えたとしておりましたが、WIN4はソフト上の設定が反映されておらず標準の23Wで計測しておりました。お詫びして訂正します。

もはやスキがないゲーミングUMPCの完成形

 WIN4を試用して思ったのが、ゲーミングUMPCとしてほぼスキのない仕上がりになっている点だ。WIN3まで普段遣いではちょっと窮屈だった液晶解像度が実用的な解像度となり、ネイティブランドスケープとなったことで旧ゲームやRSRとの互換性が向上。WIN3ではタッチ式でやや心許なかったキーボードが物理ボタンとなったことで、オンラインゲームプレイの際に必要なID/パスワード入力の時の使い勝手も改善した。

 また、光学式ポインティングデバイスを備えたことで、画面上の細かいパーツもクリックしやすくなり、そしてRyzen 7 6800Uを搭載したことで、最新の3Dゲームタイトルでもほぼ問題なく動作……と、旧世代にあった不満点が解消され、現状もっとも完成度の高いUMPCに仕上がった。

 このクラスであえて弱点を挙げるとすれば、やや厚みのある筐体とバッテリの駆動時間ぐらいだろう。PSPやPS Vitaのフォルムやバッテリ駆動時間を想像しながら本機に触るとやはり大きな格差を感じる。もちろん、そこは28Wのx86 CPUを内蔵しているから、汎用性と性能とのトレードオフ。GPDのWade社長が言う通り、理想のポータブルゲーミングデバイスに近づいていくためには、さらに低消費電力で高性能なプロセッサがなければ実現できない。それがもどかしく思うぐらい、WIN4は理想のポータブルゲーム機に近づいている。

 ここまで読んで「買おう」と決めたのなら1つアドバイス。それは「最新ゲームをたくさんプレイするなら32GB/2TB構成一択」という点だ。ストレージに関しては言うまでもないと思うが、最近のゲームは容量100GB超えが当たり前になってきているので、容量1TB程度では6~7本入れただけで満杯になってしまう。もちろん外出先でプレイするゲームを厳選して入れるなら1TBでもいいだろうし、microSDで容量拡張をするという手もあるが、やりくりするぐらいなら2TB版を買ったほうがいい。

 そして意外と盲点になりそうなのがメモリ容量。今回の試用中Forza Horizon 5をプレイしてみたのだが、このゲームだけでメモリ使用量が13GBを超えた。Ryzen 7 6800UはGPUを内蔵しているのだが、ビデオメモリをメインメモリから確保している仕組み上、ディスクリートGPU利用時に比べるとどうしてもメインメモリの消費量が増える。そして最新のゲームは、テクスチャがリッチでビデオメモリもそこそこ消費するのでメインメモリを圧迫するのだ。これが32GBを選んだほうがいい理由である。

 もちろん、WIN4のネイティブランドスケープ液晶の特徴を活かし、古いゲームをプレイするのが中心なら、下位のモデルも選択肢に入るであろうから、個人の用途に合わせてスペックを見極めてチョイスしてほしい。ただ、Ryzen 7 6800Uの性能を活かせる最新ゲームのプレイを考えているのなら、最上位の方がおすすめだ。