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Ryzen 7 6800Uの性能をしっかり引き出すポータブルゲーミングPC「AOKZOE A1」。良質なゲームパッドと筐体デザインで使用感も上々

AOKZOE A1

モバイルゲーミングPCで注目のRyzen 7 6800Uを搭載

 ここ最近、小型ディスプレイとゲームパッドを一体化させたポータブルゲーミングPCが各社から立て続けに発表・発売されている。この手の製品は以前から存在しているが、最近はAMDのRyzen 7 6800Uを搭載した製品が目につく。

 モバイル向けRyzen 6000シリーズでは、GPUがRDNA 2ベースに変更されたことで大幅に性能が上がった。以前からAMDは内蔵GPUが強いと言われてきたが、インテルが第11世代CoreからIris Xeグラフィックスを採用したことでGPUが大幅に強化され、立場が逆転していた。そこからAMDはモバイル向けRyzen 6000シリーズで再び巻き返した形だ。

 ただしモバイル向けRyzen 6000シリーズの中でも、Ryzen 5とRyzen 7/9ではGPUのコンピュートユニット(CU)数に2倍の差がある。よってCU数が多いRyzen 7の中で最も消費電力の少ないRyzen 7 6800Uが、モバイルゲーミングPCで重用されることになった。内蔵GPUのステップアップはそう頻繁になく、当面はAMDのモバイル向けGPUがこの分野での覇権を握りそうだ。

 といった事情を踏まえた上で、中国AOKZOE(エーオーケー・ゾーイ)が開発したポータブルゲーミングPC「AOKZOE A1」は、やはりRyzen 7 6800Uを搭載し、8型ディスプレイとゲームパッドを一体化したポータブルゲーミングPC。日本国内では株式会社ハイビームが代理店となって販売している。実機をお借りしたので、使用感を含めてレビューしていく。

並のノートPCを上回る豪華なスペック

 今回試用した「AOKZOE A1」のスペックは下記のとおり。

【表1】AOKZOE A1
CPURyzen 7 6800U(8コア/16スレッド、4.7GHz)
GPURadeon 680M(CPU内蔵)
メモリ16GB LPDDR5-6400
SSD1TB(NVMe PCIe 3.0×4)
光学ドライブなし
ディスプレイ8型光沢液晶(1,920×1,200ドット、10点マルチタッチ)
OSWindows 11 Home
汎用ポートUSB4×2、USB 3.0×1
カードスロットmicroSD
映像出力USB4×2
無線機能Wi-Fi 6、Blunetooth 5
有線LANなし
その他ゲームパッド、X軸リニアモーター、3軸ジャイロスコープ、ヘッドセット端子
本体サイズ約285×125×21mm(最薄部)
重量約729g
価格14万9,800円

 8コア/16スレッドのRyzen 7 6800Uに、メインメモリはLPDDR5-6400の32GBと、並のノートPCを上回るスペックになっている。SSDはNVMe PCIe 3.0×4対応のもの。ユーザーによる交換にも対応しており、NVMe PCIe 4.0×4の高速なSSDにも対応するという。

 ディスプレイは8型のWUXGA(1,920×1,200ドット)で、16:9ではない画面比を採用。10点マルチタッチにも対応する。

 ACアダプタはUSB PDの100W出力に対応したものが付属し、本機の上部と下部にあるUSB4端子のどちらでも充電できる。CPUの消費電力は最大28Wなので、全体でも100Wも消費することはないと思うが、充電を速くする意図で採用しているのだろう。USB PDなら使いまわしも効くので便利だ。

 ゲームパッドとX軸リニアモーター、3軸ジャイロスコープも搭載する。ゲームパッドは2本のアナログスティックや2つのアナログトリガーなどを搭載しており、ゲームパッドで遊べるゲームに関してはほぼ全て対応できる構成だ。

 本体重量は729g。ゲーミングPCとして見れば破格の軽さだ。ただ外見が似ているNintendo Switchの重量は400g前後なので、それに比べると重く感じられる。

 なお本機にはメインメモリとSSDの量が異なる3つのモデルが用意されている。バッテリ容量はいずれも65Wh(17,100mAh)。

  • メインメモリ16GB/SSD 512GB : 13万9,800円
  • メインメモリ16GB/SSD 1TB : 14万9,800円(今回試用したもの)
  • メインメモリ32GB/SSD 2TB : 17万4,800円

 さらにバッテリ容量を48Wh(12,600mAh)に減らして本体重量を約668gに軽減した「AOKZOE A1 LITE版」も用意されている。こちらはメインメモリ16GB、SSD 512GBの1モデルのみで、価格は13万6,800円。

最大消費電力では十二分に力を発揮

 次に実機のパフォーマンスをチェックする。ベンチマークテストに利用したのは、「PCMark 10 v2.1.2574」、「3DMark v2.25.8056」、「VRMark v1.3.2020」、「PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「CINEBENCH R23」、「CrystalDiskMark 8.0.4」。

 本機はCPUの消費電力を4Wから28Wまで1W刻みで調整する機能がある。今回は「PCMark 10 v2.1.2574」と「3DMark v2.25.8056」で、標準設定の15Wと、最小の4W、最大の28Wに切り替えてテストを実施した(Idle Battery Lifeのみ標準の15W)。その他のテストは本機の限界性能を見るべく、最もパフォーマンスが高くなる28Wで実施した。

本体右側にあるTURBOボタンを押すと、CPU消費電力などを調整するウインドウが開く
画面右側のウインドウで設定変更が可能。TURBOボタンをもう一度押すとウインドウが閉じる

 まず最大消費電力の28Wのデータを見てみると、CPUはマルチスレッドで特に優秀。「3DMark」の「CPU Profile」では、最大スレッドでも4GHz、瞬間的に落ちても3.6GHzと高いクロックで動作している。「CINEBENCH R23」でもMP Ratioが7.09と、実コア数に近いところまで来ている。モバイルノートPCと比較しても優秀で、うまく冷却できているのがわかる。

PCMarkのスコア
3DMarkのスコア
3DMark CPU Profileのスコア

 注目のグラフィックス性能も素晴らしい。「3DMark」はスコアもさることながら、リアルタイムレイトレーシングを必要とするテストも問題なくパスしている。「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」ではフルHD・最高画質設定で「普通」の評価で、内蔵GPUでも十分遊べるレベルに到達している。

 さらに「VRMark」では、動作が軽い「Orange Room」なら約76fpsと実用的な値になった。内蔵GPUでもPC向けVRゲームを楽しめる時代がそう遠くないと感じさせてくれる。

【表】そのほかのベンチマーク(スコアはすべて28W時)
「VRMark v1.3.2020 - Orange Room」
Score3,499
Average frame rate76.27FPS
「VRMark v1.3.2020 - Cyan Room」
Score2,562
Average frame rate55.86FPS
「VRMark v1.3.2020 - Blue Room」
Score641
Average frame rate13.96FPS
「PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator」(簡易設定6)
1,920×1,080ドット1,323
「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(最高品質)
1,920×1,080ドット5,467
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(高品質)
1,920×1,080ドット2,443
「CINEBENCH R23」
CPU(Multi Core)10,852pts
CPU(Single Core)1,530pts

 消費電力を下げた設定では、標準の15Wでも3~4割のパフォーマンス低下が見られる。2Dのゲームやオフィスユース的な低負荷作業ならば対応できるだろうが、3Dゲームをプレイするなら最大消費電力を選ぶようにしたい。

 さらに最小消費電力の4Wにすると、28Wとの比較で1~2割程度のパフォーマンスしか出ない。実際の動作もかなり遅く、3D処理のみならずプログラムの起動時間も大幅に伸びて、使用感を著しく損なっている。また「3DMark」の「Speed Way」を実行すると、勝手にリブートしてしまい、スコアを計測できなかった。低い消費電力で高負荷をかけると動作が不安定になる場合もありそうだ。

 ただ動作音はかなり抑えられ、ファンの回転数も上がりにくい。高い消費電力で高負荷をかけると冷却ファンから甲高い騒音が出るので、静かな場所で使いたい時にはある程度消費電力を下げるのも有効だ。

 バッテリ持続時間は、ゲーム用途で28W設定では1時間強で、それほど持たない。ポータブル機とはいえ、3Dゲームのプレイ時は電源を取りながらの方がいいだろう。消費電力を下げれば持続時間は相応に伸びるが、パフォーマンスは先のデータのように低下する。

 SSDの詳細はBIOSで確認しても、名前が「AOKZOE A1」となっており詳細は不明。パフォーマンスはシーケンシャルリードで3.5GB/sを超えるなど、PCIe 3.0×4接続としてはかなり高性能だ。ちなみにストレージのみのテストに関しては、消費電力28Wと15Wでは有意な差は見られなかった。

CrystalDiskMark 8.0.4

 また実際のゲームプレイのテストとして、「Fortnite」のバトルロイヤル1戦と、「Apex Legends」のチュートリアル1周のフレームレートを、NVIDIA FrameViewで計測した。消費電力は最大の28Wに設定。画質は最高設定にするとかなり重い状態だったため、適切に画質を落としている。

【表3】ゲームのフレームレート
「Fortnite」(1,920×1,200ドット、クオリティプリセット:中)
平均60.366
下位90%47.719
下位95%42.743
下位99%24.303
「Apex Legends」(1,920×1,080ドット、最低画質)
平均106.543
下位90%77.207
下位95%69.201
下位99%56.291

 「Fortnite」ではクオリティプリセットを中とした。平均フレームレートは約60fps、下位90%でも約47fpsとで、撃ち合いなどのシーンでもフレームレートが下がる感覚はなかった。普通に遊べると言っていい。

 「Apex Legends」では画質を最低に設定したところ、平均フレームレートは100fpsを超えた。下位99%でも約56fpsなので、申し分ない性能だ。フレームレート重視ならこのままでもいいが、少し画質を上げても対応できるだろう。

「Apex Legends」のスクリーンショット。この画質なら平均100fpsを超える

良質なゲームパッドでプレイ感は上々

ブラックを基調とした筐体

 続いて実機を見ていく。筐体はブラックをベースに、ボタン類の一部にイエローを配色。電子回路のようなデザインが灰色で描かれており、デジタルガジェット的な遊び心を感じさせるが、全体としてはそれほど派手さがなく落ち着いている。

 ディスプレイは10点マルチタッチ対応。パネル種別は非公開だが、視野角は十分に広く、どの角度から見ても色相変化は感じられない。タッチパネルなので表面は光沢があるが、低反射コーティングはなされており、照明の照り返しなどは低減されている。色味はやや鮮やかさには欠けるが、実用上で気になることはない。

ディスプレイはタッチパネルなので光沢あり
視野角は十分で色相変化も見られない

 端子類は、上部と下部にUSB4があり、どちらでも充電可能。上部にはほかにUSB 3.0とヘッドセット端子、電源ボタンと音量上下ボタンがある。ヘッドセットは下部にある方が使いやすいと思うが、ケーブルを本体下から回せば邪魔にはならないので許容範囲。下部にはmicroSDカードスロットがある。

 背面には吸気口と思しきスリットがあるほか、簡易スタンドも備えている。スタンドの使用中は下部のUSB4がふさがってしまうが、上部でも充電できるので問題ない。

上部はUSB 3.0、USB4、ヘッドセット端子、音量ボタン、電源ボタン。インジケータLEDもある
下部はUSB4、microSDカードスロット
背面には簡易スタンドがあり、引き出して使う
スタンドで設置したところ

 スピーカーは前面下部の左右に内蔵されている。筐体サイズが小さい分、音質はどうしても甲高く、高音がやや耳触りに感じる。ただ音量はかなり大きく、ゲーム用の音を聞く分には不自由しない。

 エアフローは背面吸気、上部排気。コンパクトながら風量は結構あり、高負荷時には温かい風が出てくる。ファンノイズは低めのホワイトノイズという感じで、音量もそれほど大きくはならず、ゲームプレイ中に気になるほどではない。アイドル時にはほぼ無音だ。

 ACアダプタはUSB PDの100W出力。大出力なのでACアダプタはやや大きめだ。またケーブルが1.5mほどしかないので、長さが足りないのであれば100W出力に対応するUSB Type-Cケーブルの長いものを探すといい。

ACアダプタはやや大きめだが、USB PDなので使いまわせるのが利点

 ゲームパッド部分は「XBOX 360 Controller For Windows」として認識されている。いわゆるXinputで、Windowsでは標準的なコントローラーとなるので、多くのゲームに対応できる。

 実際のゲームプレイは、「Fortnite」と「Apex Legends」で試した。いずれもゲームパッド対応で、特に設定を触ることもなく、最初から本機のゲームパッドでプレイできる。

 触ってみて感じたのはアナログスティックの出来の良さ。Nintendo SwitchのJoy-Conのものに似た小さなスティックだが、当たりが柔らかく動きも滑らか。押し込みも含めて静かだ。ボタン類もL/Rのアナログトリガーは柔らかく滑らかで、その他のボタンも押し込みが浅めで適度なクリック感がある。

 両手で持ってのプレイも手の形にしっかり沿っていて、ホールド感が素晴らしい。筆者は成人男性としてはやや手が小さめだが、全てのボタンが難なく扱える配置になっている。おそらく女性でも問題なく扱えるだろう。ホールド感の良さもあって、重さもあまり気にならず、数十分程度なら充電ケーブルを着けたままでも快適に遊べた。

アナログスティックは当たりが柔らかく扱いやすい。他のボタンも十分な品質だ

ポータブルゲーミングPCとして性能と使い勝手に申し分なし

 実際に触って感じた本機のいいところは2つある。1つは性能だ。Ryzen 7 6800Uが高性能なことはスペックを眺めれば分かるが、最大消費電力の設定でも冷却に無理がなく、きちんとパフォーマンスを引き出せている。小型のPCでは冷却が間に合わなけずパフォーマンスが劇的に落ちてしまうものもあるだけに、使ってみて安心できる性能だった。

 最近は内蔵GPUでゲームも遊べるとする超小型PCも人気のようだが、本機もディスプレイに接続すれば(USB Type-Cでの接続になるので、ディスプレイとの接続可否は要確認)それと同じように使えるし、ディスプレイなしでも単体で使えるので利用シーンに幅を持たせられる。

 もう1つは筐体のつくり。両手で持った時のホールド感や、ゲームパッド部分がよくできており、使用感がとても良好だ。騒音もそれほど大きくなく、スピーカーの音量も十分出せるので、ヘッドフォンなしでもゲームを快適にプレイできる。

 本機のように高性能になってくると、思わず3Dゲームをやりたくなってしまうが、本機はもっとカジュアルなゲームを遊ぶのにも便利だ。高性能な分だけ低負荷なら静かだし、バッテリも長く持つ。負荷が小さいゲームを遊ぶのに、いちいち大きなPCを立ち上げる必要がないのは大変ありがたい。

 あとは価格とのご相談。最も安価なLITE版で13万6,800円だが、SSDは1TBくらい欲しいと思うと、今回試用したモデルになって14万9,800円。同クラスのモバイルノートPCを買えてしまう(同等以上の部材を使っているのだから当然だが)。狙っている用途が違うので、ゲームパッドを使うゲームを多く遊ぶなら本機、PCとしての活用を主とするならノートPC、と考えるのがいいだろう。