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Ryzen 7 6800Uの高性能を7型にギュッと凝縮した「ONEXPLAYER mini Pro Ryzen版」

ONEXPLAYER mini Pro Ryzen版

 株式会社テックワンは、Ryzen 7 6800Uを搭載したOne-Netbook製の7型ポータブルゲーミングUMPC「ONEXPLAYER mini Pro Ryzen版」を正式発表した。価格は16万2,800円~19万8,000円だ。今回製品をお借りする機会が得られたので、早速試用レポートをお届けしたい。

第12世代Core搭載モデルにRGBライティングがついた

 ONEXPLAYER miniシリーズは、1,920×1,200ドット(WUXGA)表示対応の7型液晶を備えたポータブルゲーミングUMPCだ。2021年末に投入された初代は、第11世代CoreまたはRyzen 5000番台を搭載していたが、2022年11月からは「Pro」とサフィックスが付き、それぞれ第12世代CoreとRyzen 6000番台にリフレッシュされている。

 この中でONEXPLAYER mini Pro Ryzen版は、先立って投入された第12世代Core搭載の「ONEXPLAYER mini Pro」のプロセッサを単純にRyzenに置き換えた……とも言うべき製品なのだが、本体左右のグリップ部にRGBライティングストライプを新設するなど、若干ブラッシュアップや違いも存在するのがポイントだ。

 RGBライティング機能については、プリインストールのユーティリティ「GAME CENTER」上からエフェクトや発色などをカスタマイズできる。なお、設定できるエフェクトは控えめで、自由にエフェクトと色の組み合わせを設定できるわけではない。あくまでも雰囲気づくりといった印象だ。

本体側面にLEDライティングを搭載。さまざまなエフェクトや発色が楽しめる

 ちなみにゲームプレイ中では手のひらでこのバーのほとんどを覆ってしまうわけで、そこから漏れ出た光だけが見えるような感じだ。また、机に置いた際はアクセントになるだけでなく、動作しているどうか遠くからでもすぐ分かるので、電源の消し忘れ防止にもなりそうだ。

 ONEXPLAYER miniシリーズの7型というコンパクト性や軽量性は踏襲しており、使い勝手は初代から大きく変わらない。丸みを帯びたグリップ部で手のフィット感も非常に高く、座った状態なら長時間のゲームプレイでも苦にならない。また、据え置き型ゲーム機に引けを取らない操作感を実現したコントローラ、特に大きなサイズと深いストロークを確保したトリガーは、ゲーム内における快適な操作をもたらしてくれる。

 ジョイスティックは固くもなく柔らかくもなくちょうどいい抵抗で、角度も相当傾けられるため快適に操作できる。ボタンの配置としてはあるべきところにあり、戸惑うことはない。唯一、Xboxホームボタンがないのだが、Windowsにおいてはゲームバーを呼び出すものとなるので、あまりゲームプレイには直結しない。

 バイブレータも内蔵しており、ゲーム内の状況に応じて振動する。ただ、バイブレータ自体は小型のもので周波数が高く、振幅は大きくはない。

 ゲームコントローラ以外のボタンとしては、スクリーンキーボード呼び出しボタン、GAME CENTER呼び出しボタン、デスクトップ表示ボタンがある。従来モデルではGAME CENTER呼び出しボタンがTurboボタンだったので、機能が根本的に差し替わったわけだが、ソフト上からCPUのTDPを含むさまざまな設定が細かく行なえるようになり、つまり単一機能ではなくなったので歓迎すべき変更だろう(詳細は後述する)。

コントローラ右側。ゲームパッドのほかに、スクリーンキーボード呼び出しボタンとユーティリティ呼び出しボタンを装備
本体左側のコントローラ部。下のオレンジのボタンはすべてのウィンドウを最小化するもので、ゲーム中とっさに抜けたい場合などに重宝する
製品パッケージ。内容物は本体のほかに説明書と充電器、USBケーブルのみでシンプルだ
付属するUSB ACアダプタは最大65W出力タイプ。かなり小型で持ち運び性に優れる

 ディスプレイは1,920×1,200ドットのWUXGA。解像度は十分に高く、通常のWindows操作も不自由がないし、精細感も色味も抜群だ。ただ、タブレット向けの液晶を転用しており、ネイティブはポートレート(縦方向、つまり1,200×1,920ドット)となる。このため解像度を固定するような古いゲームや、フルスクリーン表示では正しく表示されないことがあるので注意したい。場合によっては、サードパーティ製のウィンドウ化ツールや、ボーダレス表示を行なう設定が必要になる。

 スピーカーは低音が弱いものの、このクラスとしては十分な音量を確保しており、ゲーム内のBGMや効果音、YouTubeで適当な動画を観るには差し支えないが、ゲーム内で敵の足音で方位を確認したい、ゆっくり音楽鑑賞をしたいのであればヘッドフォンをすべきだろう。本機には上部に3.5mmミニジャックを備えているため利用したい。

本機(写真下)は1,920×1,200ドット表示対応の7型液晶を搭載し。ONEXPLAYER(写真上)の8.4型と比較するとサイズも解像度も低くなっているが、内蔵GPUの性能とのバランスは取れている

インターフェイスは必要最小限だが、上からも下からも充電できるのは◎

 インターフェイスはUSB4が上に1基、下に1基備わっている。このうち下の方は専用ドックを装着する際のポートにもなる。このほか上部にUSB 3.0と3.5mmミニジャック、電源ボタン、音量調節ボタンを備えている。

 ONEXPLAYERは本体下部はキーボード用のポゴピンしかなかったが、本機はUSB4であり、ここからでも充電可能なため、常時電源を繋いでおいてプレイする場合など電源ケーブルが視界に入ることが減り(と思う)、ケーブルに余計なテンションもかかりにくくなったのは良いと感じた。なお、最大給電は65Wまでとなっている。

 ちなみに8.4型のONEXPLAYERシリーズでは電源ボタンが指紋センサーを兼ねているが、本製品は生体認証をサポートしておらず、Windowsでパスワードロックしている場合、パスワードかPINを使う必要がある。

 また、ONEXPLAYERではグリップ部に音量調節ボタンがあり、ゲームプレイ中でも人差し指でとっさに音量調整が可能なのだが、本機は上部に移動していて、なおかつ電源ボタンの横にあるため、慣れるまでは目視して操作する必要がある。このあたりは本体の小型化とトレードオフといったところだ。

本体底面にUSB4を装備している。なお、この底面のポートはケーブル先端のコネクタによっては抜けやすいため注意が必要
本体上部。USB4、USB 3.0、ステレオミニジャックを装備。また、電源ボタンと音量調節ボタンもある
本体背面。ONEXPLAYERにあった指紋センサーやキックスタンドは省かれている
ONEXPLAYERとの上部の比較、ONEXPLAYERはデュアルファンのため排出口が2つあるほか、microSDカードスロットも備えている
インターフェイスに不足を感じたり、卓上に置いて使いたいならオプションのドックの利用も考えたい
ドックではUSB 3.0×3、HDMI出力、Gigabit Ethernetが利用可能になる

 ONEXPLAYERではデュアルファン構造であったが、ONEXPLAYER mini Pro Ryzen版は小型化のためにシングルファンに変わったことで、騒音や放熱性はどうなのか気になるユーザーもいるだろう。ところが、逆に初代のONEXPLAYERよりもだいぶ静かになっている。本機の騒音は大半が「サー」という風切り音であり、初代ONEXPLAYERの甲高い音の要素は確実に減った。スピーカーで音楽やキャラクターの声が流れていて、そちらに集中できるなら気にならない程度に抑えられている。これはかなりの進化だ。

 一方で筐体、特にグリップ部については、小型化されたからといって熱を持つ……ということはまったくなかった。少し寒くなってきたこの時期、むしろかじかむ手を温めてくれるよう熱くしてほしいぐらいである(笑)。このあたりは放熱設計の優秀さはもとより、筐体素材のメリットが活かされている。また、ONEXPLAYERからグリップ部も厚みが増しているので、ホールド感は向上している(これは初代ONEXPLAYER Miniでも共通)。

デュアルファンからシングルファンになったが、騒音は逆に目立たない印象だ。また、グリップ部は厚みが増してホールド感も向上している
ONEXPLAYERとONEXPLAYER Mini Pro Ryzen版の最大の違いは横幅よりも高さにあるように思う

ユーティリティでより柔軟にCPUの設定可能に

 先述の通り、本機では新たに「GAME CENTER」というユーティリティがプリインストールされている。GAME CENTERは起動時に常駐され、画面右横下のボタンですぐさま呼び出せる。表示はオーバーレイで行なわれるため、デスクトップ表示時はもちろんのこと、ゲーム中でもとっさに呼び出せる。ちなみにこのソフトはコントローラでも操作できるのがいい。

GAME CENTER。CPUのTDPの設定がすぐに行なえるほか、バッテリ残量を表示してくれるのが便利
選べる色やエフェクトは限定されており自由度は高くないが雰囲気づくりはバッチリだろう
解像度もさっと変更できる

 GAME CENTERにおける最大の役割はCPU TDPの調整だ。デフォルトで18Wが設定されていたが、最大28Wまで引き上げたり、逆に4Wまで削減したりできる。引き上げた場合は当然その分性能が向上し、削減した場合は性能が低下するもののバッテリ駆動時間を延長させられる。たとえばACアダプタを繋いだ状態で最新の3Dゲームをプレイする場合は28Wに設定し、外出先で古い2Dゲームを長時間プレイしたいなら5W程度に抑える……といったことが可能になった。

 従来のONEXPLAYERでは、Turboか否かという2段階しかなかった。より具体的に言えば、初代(第11世代Core i7-1165G7搭載モデル)では、長時間持続するクロックのPL1は標準で20W、Turbo時で28Wだった。これが最新のGAME CENTER上からなら、1Wずつ細かに調節できるようになった、というわけだ。特により低いTDPに設定できるようになったのは、少しでもゲームプレイ時間を伸ばしたい時に便利だろう。

 GAME CENTERではこのほか、GPUクロックの設定、RGBライティングの設定、解像度、ファンの回転数、バイブレータの強弱、画面輝度と音量調節が可能。特に、本機はポータブルであるゆえ、部屋や場所を移動しながらゲームプレイすることも想定され、その環境に合わせてとっさに画面輝度や音量(これはボタンでもできるが、まとめてできるという意味で便利)を調整したいというニーズもあると思うが、これにしっかり応えてくれるのはよいと感じた。

 また、GAME CENTERでは右上のバッテリ残量を常時表示するのだが、これもゲームプレイ中にこまめにチェックしたい際には有用なものだ(筆者手持ちのPCゲームでバッテリ残量を表示してくれるのは「GRID 2」ぐらいしかない)。ポータブルであることを謳うのであれば、できればOSD(オンスクリーンディスプレイ)で常時表示してほしかったところだが、これは今後のアップデートに期待したい。

最大2倍の性能向上を確認

 最後にゲームをプレイする上で重要なパフォーマンスとバッテリの持ちをテストしたい。今回は「PCMark 10」、「3DMark」、「Cinebench R23」、「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「Rainbow Six Siege」を用いてテストを行なう。TDPによる性能の違いをみるため、TDP 18Wと28Wの両方でテストした。また、比較用にONEXPLAYER初代(Turbo駆動時)のスコアを入れてある。

 結果を見れば分かる通り、ほぼすべての項目でONEXPLAYER Mini Pro Ryzen版が大きく性能を上回った。ファイナルファンタジーXIVのようなベンチマークでは、Intel Xe Graphicsを内蔵したONEXPLAYERもそこそこ健闘はしているが、Ryzen 7 6800U内蔵のRadeon 680Mはより強力なRDNA 2アーキテクチャを採用していることもあり、3DMark Time Spyではのほうが60%高速、Rainbow Six Siegeではほぼダブルスコアだ。

PCMark 10のスコア
3DMark Speed Wayのスコア
3DMark Time Spyのスコア
3DMark Fire Strikeのスコア
3DMark Night Raidのスコア
3DMark Wild Lifeのスコア
Cinebench R23のスコア
ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク
Rainbow Six SiegeのFPS数

 実際に、解像度を1,920×1,200ドットに揃えていくつかのゲームもプレイしてみたのだが、やはりMini Pro Ryzen版の方が高速で、快適にプレイ可能であった。そもそもONEXPLAYERのネイティブ解像度は2,560×1,600ドットであり、この解像度ではIntel Xe Graphicsにとって荷が重く、解像度を落とすと今度はやや精細さを欠く描画になってしまうのだが、ONEXPLAYER Mini Pro Ryzen版は解像度がそもそも低いためこうした問題は起きない。ハードウェア構成としてもバランスが取れている。

ほとんどのAAAタイトルで、画質さえ欲張らなければまったく問題なく快適にプレイできる

 また本機では新たにRadeon Super Resolution(RSR)が使えるのもトピックだ。つまりゲーム内のレンダリング解像度を落として負荷を軽減させつつ超解像技術によって、ある程度描画の精細さを維持させるものである。

 ただし本機では制限がある。それは「排他的フルスクリーンモード」でしか低解像度が選べないゲームでは、RSRが正常に動作しない点だ。なぜかといえば本機の液晶はポートレートであり、ドライバソフトにより90度回転させて描画しているためである。排他的フルスクリーンでは1,080×1,920ドットで描画されてしまい、画面が切れてしまったりするのだ(具体的には“猫ゲー”のStrayなどが該当する)。

 その一方で「仮想フルスクリーン」または「ボーダレスフルスクリーン」が使えるゲームでなら、この問題が発生しない。これらのモードを備えていてゲームをもう少しなめらかに動かしたいというのであれば、ゲーム内の解像度を落としてRSRを有効にするのもアリだろう。

 また、最近のゲームは「FidelityFX Super Resolution」を実装するゲームが増えてきているので、そちらを合わせて利用したい。

 ちなみにバッテリ駆動時間だが、輝度50%の状態で計測したところ、18Wモード下ではModern Officeが5時間15分、Gamingが1時間24分。28Wモード下ではModern Officeが5時間20分(なぜか長いがほぼ計測誤差と思われる)、Gamingが1時間だった。さすがに28Wモードでゲームをプレイするのはやや酷な印象で、18Wもしくはそれ以下に抑えたほうが無難だろう。あるいは思いっきり10W程度に設定して、2Dゲーム、または古め/軽めの3Dゲームをプレイするのが中心になるだろうか。

PCゲームをポータブルで、という新ジャンルがどこまで定着するか

 ということでONEXPLAYER Mini Pro Ryzen版を見てきたが、One-Netbookがこれまで蓄積されたゲーム機に関するノウハウが惜しみなく投入されており、プロセッサの刷新も相まって、高い完成度を達成していると感じた。

 ポータブルゲーム機としてみた場合、バッテリ駆動時間はあと2倍はほしいし、軽量化も低価格化もしてほしい、というのはある。しかしこのところPCゲームへの移行がブームとなってきており、「最新のゲームを手持ちで、リラックスした姿勢でプレイしたい」というニーズは、本機で十分満たせる仕上がりになっていると思う。

 あとはゲーム側(もしくはSteam側)がこのようなポータブルWindowsゲーム機をもう少し考慮したUIの作りにしてほしい、という点だろうか。たとえば独自のID/パスワード入力を求めるゲーム辺りだろうか(物理キーボードがないため操作しにくい)。さらに、AndroidやiOSではアプリの切り替えを行なうだけで、事実上ゲームの起動の存在を意識しなくてもいいのだが、Windowsの場合は終了を意識する必要があり、そのためのAlt+F4をとっさに押せない問題などもある。

 もっとも、いずれもソフトウェアの改善で対処可能な問題だ。今後、ONEXPLAYERシリーズを含め、GPDの「WIN」シリーズやValveの「SteamDeck」のようなPCベースのゲーム機が普及していけば、OSやソフトウェア開発者の間で認識が高まり、徐々に改善されていくことだろう。

 CPUもGPUも革新的なRyzen 6000シリーズの登場で、GPDやAYA NEO、AOKZOEといった競合も続々とスレート型のポータブルWindowsゲーム機を投入している昨今。SteamDeckの国内投入も合わせて、年末はこのジャンルから目が離せない。その中でもONEXPLAYER Mini Pro Ryzen版は画面サイズと性能、製品投入時期の早さという“バランス”で、人気を集めそうだ。