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MUXスイッチの効果はいかに。15.6型ゲーミングノート「Alienware m15 R7」を検証
2022年6月15日 06:31
「Alienware m15 R7」は、デルが展開するプレミアムゲーミングブランド「Alienware」の15.6型ゲーミングノートで、第12世代Core搭載モデルとRyzen 6000シリーズ搭載モデルがラインナップされている。
今回は、第12世代Coreの14コアCPU「Core i7-12700H」を搭載したAlienware m15 R7をテストする機会が得られたので、Alienwareの新作15.6型ゲーミングノートの機能や性能をチェックする。
Core i7-12700HとGeForce RTX 3070 Ti Laptop GPUを搭載したハイスペック仕様
今回テストするAlienware m15 R7は、Intelの第12世代Coreを採用した「Alienware m15 R7 Intel フルカスタマイズ」をベースにパーツ構成をカスタマイズしたもので、CPUに14コア(6P+8E)/20スレッドCPUのCore i7-12700H、GPUにGeForce RTX 3070 Ti Laptop GPUを搭載している。
15.6型のディスプレイは、標準構成より高速で高精細な240Hz駆動のWQHD液晶パネル(2,560×1,440ドット)に強化されているほか、32GB(16GB×2)のDDR5-4800メモリや、1TBのNVMe SSDなど、足回りもアップグレードされている。
ベースモデルである「Alienware m15 R7 Intel フルカスタマイズ」の販売価格は30万8,130円となっているが、各種パーツがアップグレードされているテスト機と同等の構成の場合は42万2,090円となる。なお、記事執筆時点では20%オフクーポンが提供されているため、33万1,152円で購入が可能だ。
【表1】Alienware m15 R7(カスタムモデル)のスペック | |
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OS | Windows 11 Home |
CPU | Core i7-12700H(6P+8Eコア/20スレッド) |
dGPU | GeForce RTX 3070 Ti Laptop GPU(8GB) |
iGPU | Iris Xe Graphics |
メモリ | 32GB DDR5 4800(16GB×2) |
ストレージ | 1TB NVMe SSD(PCIe 4.0 x4) |
ディスプレイ | 15.6型WQHD液晶パネル(2,560×1,440ドット、240Hz) |
有線LAN | 2.5Gigabit Ethernet(Killer E3100) |
無線機能 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2(Intel Killer Wi-Fi 6E AX1675) |
USB/Thunderbolt | Thunderbolt 4、USB 3.0×3 |
そのほかのインターフェイス | ヘッドセットジャック、HDMI 2.1、720p Webカメラ |
バッテリ | 6セル/86Wh |
ACアダプタ | 240W |
本体サイズ | 356.2×272.5×23.95mm(幅×奥行き×高さ) |
本体重量 | 約2.42~2.69kg |
性能重視で設計された15.6型ゲーミングノート
15.6型ゲーミングノートであるAlienware m15 R7の本体サイズは356.2×272.5×23.95mm(同)で、重量は約2.42~2.69kg。ヒートパイプを採用する独自設計の冷却システムや86Whrの大容量バッテリを搭載しているため軽量とは言い難いが、15.6型としては薄型ではあるので携帯できなくもないサイズ感だ。
本体のインターフェイスとしては、右側面にUSB 3.0×2、左側面に2.5Gigabit Ethernetとヘッドセットジャックを備えるほか、背面にHDMI 2.1、USB 3.0、Thunderbolt 4を搭載。比較的シンプルな構成となっており、背面にはACアダプタ接続専用のDC入力も備えている。無線機能としてWi-Fi 6とBluetooth 5.2を搭載しており、これらはIntelのKiller Wi-Fi 6E AX1675によって提供されている。
キーボード面には、テンキーレスの「Alienware m-シリーズ AlienFX RGB キーボード」とボタン一体型のタッチパッドを搭載。キーボードの主要キーは19mmのキーピッチが確保されている。
キーボードのバックライトにはRGB LEDが採用されており、ユーティリティのAlienFXでLEDの色や発光パターンを制御できる。AlienFXでは、キーボードのほかに電源ボタンや背面のRGB LEDの制御が可能。
MUXスイッチによりdGPUと直結可能な15.6型液晶パネルを搭載。G-SYNCにも対応
Alienware m15 R7のディスプレイは、今回のテスト機が搭載する240Hz駆動のWQHD液晶のほか、165Hz駆動のフルHD液晶や、360Hz駆動のフルHD液晶が選択できる。いずれも「MUXスイッチ(Advanced Optimus)」と、動的リフレッシュレート同期技術である「G-SYNC」に対応している。
Advanced Optimusは、MUXスイッチによってディスプレイと接続するGPUを選択できる機能で、今回のテスト機ではCPUの内蔵GPU(iGPU)であるIris Xe Graphicsと、dGPUであるGeForce RTX 3070 Ti Laptop GPUのいずれかでディスプレイと接続できる。
iGPU経由でdGPUを活用する従来の「Optimusモード」では、dGPUを使用しない場合は電力をカットして省電力化とバッテリ駆動時間の向上が図れる一方、dGPUで描画した映像をiGPU経由で出力するため性能が多少低下する。Advanced Optimusでは、MUXスイッチ機能によって普段はiGPU経由のメリットを生かしつつ、必要に応じてdGPUとディスプレイを直結することにより、iGPU経由で生じる性能の低下を回避できるというわけだ。
iGPU経由とdGPU直結で性能比較。MUXスイッチの効果をチェック
ここからは、ベンチマークテストを使ってAlienware m15 R7の性能をチェックする。実行したベンチマークテストは、「Cinebench R23」、「3DMark」、「PCMark 10」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」。
今回のテストでは、NVIDIAコントロールパネルでAdvanced Optimusの設定をdGPU直結の「NVIDIA GPUのみ」にした場合と、iGPU経由の「Optimus」にした場合の2パターンでスコアを取得。Alienware m15 R7が搭載したMUXスイッチの効果をチェックする。テスト時の室温は約25℃。
CPU性能を計測するCinebench R23では、MUXスイッチの設定がほぼ性能には影響しておらず、Multi Coreで15,582~15,623、Single Coreで1,772~1,777というスコアを記録している。ひと昔前のデスクトップ向けCPUを余裕で上回るほどのマルチコア性能と、第12世代Coreならではの優れたシングルスレッド性能を備えていることを示すスコアだ。
3DMarkのCPU ProfileでもMUXスイッチの効果は特に見られないが、PCMark 10では「Digital Content Creation」や「Gaming」でdGPU直結時の方が高いスコアを記録したことで、総合スコアでもiGPU経由より2%ほど高いスコアを記録している。
最高品質設定ので実行したファイナルファンタジーXIVベンチマークでは、dGPU直結時がiGPU経由より約4%高いスコアを記録しており、フルHDで22,514(160.5fps)、WQHDでは17,878(123.1fps)というスコアを記録している。
3DMarkでは、テストによってMUXスイッチの効果はまちまちで、Time SpyではdGPU直結がiGPU経由を約2%上回るものの、Fire StrikeやPort Royalではほぼ同等で、Wild LifeではdGPUが5~15%上回った。最も大きな差がついたWild Lifeは、特に軽量かつ高フレームレートで実行されるテストであり、どちらかと言うとフレームレートが高くなる条件で差がついているように見える。
実際のゲームでAlienware m15 R7の性能とMUXの効果をチェック
ここからは、実際のゲームを使ってAlienware m15 R7の性能とMUXスイッチの効果を確認していく。テストしたタイトルは「フォートナイト」、「レインボーシックス シージ」、「Apex Legends」、「Forza Horizon 5」、「エルデンリング」。
なお、これらのゲームを実行する際、iGPU経由で可変リフレッシュレートを有効化した状態だと、フレームレートが60fpsで頭打ちになるという現象が生じた。G-SYNCによって同期するdGPU直結では問題なく動作するため、iGPU経由時のみ可変リフレッシュレートを無効化してテストを行なった。
フォートナイト
フォートナイトでは、描画設定を「最高」にしてフルHDとWQHD解像度で平均フレームレートを計測した。いずれも3D解像度は100%で、グラフィックスAPIはDirectX 12。
フルHDの平均フレームレートは、dGPU直結が132.5fpsで、iGPU経由の128.9fpsを約3%上回った。WQHDでもdGPU直結は90.0fpsを記録して、iGPU経由の87.6fpsを約3%上回っている。
レインボーシックス シージ
レインボーシックス シージでは、描画設定を「最高」をベースにスケーリングを「100」にして、フルHDとWQHD解像度でベンチマークモードを実行した。テスト時のグラフィックスAPIはVulkan。
フルHDでは、355fpsを記録したdGPU直結が、298fpsのiGPU経由を19%も上回った。WQHDでもdGPUは233fpsを記録して、iGPU経由の197fpsを約18%上回っており、レインボーシックス シージではMUXスイッチの効果が顕著に現れた。
Apex Legends
Apex Legendsでは、描画設定を可能な限り高く設定した状態のフルHDとWQHD解像度で、平均フレームレートの計測を行なった。テスト時はフレームレート上限を300fpsまで開放している。
ここでは、dGPU直結がiGPU経由を約1%とわずかに上回るという結果となっており、平均フレームレートはフルHDで196.6~198.4fps、WQHDで148.3~150.3fpsだった。
Forza Horizon 5
Forza Horizon 5では、描画設定をもっとも高い「エクストリーム」に設定して、フルHDとWQHD解像度でベンチマークモードを実行した。
フルHD時のフレームレートは、90fpsを記録したdGPU直結が、87fpsだったiGPU経由を約3%上回った。WQHDでも、dGPU直結が77fpsを記録して、iGPU経由の74fpsを約4%上回っている。
ベンチマークテスト実行中の温度やクロックをチェック
モニタリングソフトのHWiNFO64 Proを使って、Cinebench R23(Multi Core)とファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク(フルHD/最高品質)を実行した際のモニタリングデータを取得。そのデータをもとにCPUとGPUの温度やクロックをグラフ化した。なお、この計測はMUXスイッチをGPU直結にして行なっている。
Cinebench R23実行中は、CPUは最大温度である100℃に達しているが、平均温度は82.5℃となっている。CPU消費電力は115W程度で1分程度動作したあと、テスト終了まで約75Wで推移している。結果として、CPUクロックは平均でPコア=3,345MHz、Eコア=2,624MHzで動作している。
Core i7-12700Hの電力指標は「PBP=45W、MTP=115W」なので、MTP的にはスペック通りであるものの、終始75Wで動作しているところを見ると、標準よりも電力リミットを緩めて動作させていることが分かる。
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク実行中でも、CPU温度は最大で100℃に達しており、平均でも86.7℃だった。最大114.9W、平均51.8Wの電力を消費しながら、Pコア=3,573MHz、Eコア=2,837MHzで動作していた。テスト終盤ではGPU負荷の上昇にともなってCPUのクロックや消費電力が低下しており、トータル消費電力が制限されている中でGPUに電力を融通しているように見える。
一方、GPUの動作温度は最大76.9℃、平均73.9℃を記録しており、これはGPU-Zで確認できる温度リミットの87℃を下回っている。つまり、温度的には余裕がある中でブースト動作を続けているということになる。GPU消費電力は最大154.8W、平均123.9Wで、GPU負荷の高いテスト終盤には140W近い電力を消費しながら1,500MHz前後で動作していた。
性能重視で設計されているだけあって、Alienware m15 R7に搭載されたCore i7-12700HとGeForce RTX 3070 Ti Laptop GPUは、ベンチマークテスト中でもパワフルなブースト動作を維持している。これが多くのベンチマークやゲームで高い性能を発揮できた理由だろう。
コンパクトでもパワフルな15.6型ゲーミングノート。iGPUに足を引っ張られないMUXスイッチも魅力
Core i7-12700HとGeForce RTX 3070 Ti Laptop GPUを搭載したAlienware m15 R7の性能は、今回テストした5本のゲームを快適にプレイできるものであり、G-SYNCに対応した240Hz駆動のWQHD液晶は高精細で高速かつ滑らかという優れた表示品質でゲーム体験を高めていた。
MUXスイッチの効果はゲームタイトルや描画設定などによって変化するものの、高フレームレートで動作する一部のゲームでは相当に大きな差がつく場合があり、240Hzや360Hz駆動のディスプレイを選択できるAlienware m15 R7にとって、iGPUに足を引っ張られることなくdGPUの性能を発揮できるMUXスイッチは有効な機能であることは間違いない。
15.6型というコンパクトな筐体でありながら、ゲーミングPCとして本格的な性能と表示能力を備えたAlienware m15 R7は、ゲーミングPCを持ち歩きたいと望むゲーマーにとってはもちろん、強力な性能を備えたノートPCを求めるユーザーにとっても有力な選択肢となるだろう。