Hothotレビュー

ドンキの安価な2万円モバイルモニターはどこまで使える?バッテリ内蔵でカバーやケーブルも同梱

2万円強で買える大型&バッテリ内蔵モバイルモニター

TSM-156-BK

 株式会社ドン・キホーテのオリジナルブランド情熱価格から、15.6型モバイルモニター「TSM-156-BK」が3月に発売された。本機の特徴は、15.6型と比較的大きなサイズで、最大5時間駆動する内蔵バッテリを搭載しながら、重量は約750gと軽量なところ。それでいて価格も2万1,780円と安価で、ドン・キホーテらしいコストパフォーマンスの高い製品となっている。

 しかしながら、そんな製品には何か落とし穴があるのでは? と疑う気持ちを抱きつつ、実際の製品を試す機会が得られたので、すみずみまで見ていきたい。

パネル性能は不明ながらIPS採用。入力も2系統でケーブル同梱

 まずは本機のスペックを確認しておこう。

【表】TSM-156-BK
パネルサイズ15.6型
パネル解像度1,920×1,080ドット
パネル種類IPS
映像入力Mini HDMI、USB Type-C
その他端子USB Type-C(給電専用)、Micro USB
スピーカー1.5W×2
消費電力15W
本体サイズ(幅×高さ×奥行き)約356×225×10.5mm
重量約750g
価格2万1,780円

 最大表示色や視野角、輝度といったパネルの性能に関わる情報は軒並み未公表。実際にWindows PCに接続したところ、リフレッシュレートは60/59.94/50Hzが選択可能、ビット深度は8bitとなっているのを確認した。1080/60pで24bitカラーは使えるので、とりあえず普通のモニターである。そんな中でもパネルの種類はIPSと明言されているので、ある程度の安心感はある。

 映像入力端子はMini HDMIとUSB Type-Cが各1ポート。HDMI to Mini HDMIケーブルとUSB Type-C to Cケーブルが付属し、HDMIかUSB Type-CのAlternate Modeに対応した機器ならすぐに接続できる。ステレオスピーカーも内蔵し、ゲーム機などの利用も可能だ。

 Micro USBポートは、USB Type-C接続での利用の際、USBハブとして機能し、マウスやキーボード、USBメモリなどを接続できる。ただしMicro USBからUSB Type-Aなどへの変換アダプタは付属しない。

 そのほかの付属品は、ACアダプタ(USB Type-A)、USB Type-C to Aケーブル(充電用)、専用カバー。本体重量は実測で752g。専用カバーは固定用のネジを含めて392gで、カバー装着時には1,144gとなる。

HDRにも対応? バッテリ性能も良好

売り文句がぎっちりと並ぶパッケージ。色味はさわやか

 では実機を見ていく。パッケージは大きな「ド」の文字とアピールの文言が並ぶにぎやかなデザイン。2万円超えの製品らしい高級感はまったくないが、本機にそれを求める人は誰もいないだろう。色味はさわやかで、変な日本語フォントにもならず、ひたすら安くて怪しさ満点という雰囲気ではないだけで十分だ。

 本体はダークグレーの色に、背面はヘアライン加工された金属製プレートを採用。ノートPCにありそうな配色もあってか、手にした時は見た目のわりにかなり軽く感じる。ただ背面を押すと前面のモニターににじみが出るくらいにへこみ、ねじる動きでもたわみが出る。液晶部分がむき出しでもあるので、カバーを装着して使うものと考えた方がいい。

表面。左下に設定用ボタンが3つあり、右下の穴はペンなどを挿してスタンド代わりにできる
背面はヘアライン加工された金属製で、良好な質感

 カバーを着けて持ってみると、スリムなノートPCを持っているくらいの重量感はある。カバーがもう少し軽量ならよかったのだろうが、この低価格ならカバーが付属するだけでも上等と思うべきだろう。ただカバーがずれたり持ちづらかったりということはなく、ぱっと見てモバイルモニターとは思えない外見も悪くない。

 専用カバーはグレーの布張りで、意外と見栄えがいい。ただ本体との固定には金属製のネジを使う。本体裏の左右2カ所にあるネジ穴に入れてマイナスドライバーで締めるという仕掛けで、表裏ともマグネットで本体にくっつくような機構はない。

 またネジが少し出っ張る形になるため、カバンなどに入れた際にほかのものを傷つける可能性があるので注意。一応、カバーがスタンド代わりになる機能は有している。

専用カバーは裏面にネジ止めする。ネジが少し出っ張る点に注意
カバーの裏に縫い付けた布が3つ。ここで本体が滑らないように止めてスタンド代わりにできる

 それでは電源を入れて……と本体を見回すと、電源ボタンらしきものはどこにもない。左下にあるMENUボタンを約4秒間長押しすると、電源のオン/オフができる。

 パネルは非光沢処理されており、色味の派手さはないが、映像自体はシャープで何ら不満はない。視野角は極めて広く、どの角度から見ても色相変化はない。残像感はゲーミングモニターと比べれば劣るものの、動きの速いゲームをプレイしても特に気にならない。一般的なノートPCに使われる液晶パネルと同等程度の品質は備えていると感じられる。

非光沢液晶で色味がややおとなしい程度で、特に違和感はない
IPSパネルだけあって視野角も十分

 電源オン時にMENUボタンを短く押すと設定画面が出る。操作は残り2つの+ボタンと-ボタンで選択、MENUボタンで決定。戻る操作はMENUボタンを1秒弱長押しする。ボタンが少なく癖のある操作系だが、+ボタンは音量設定、-ボタンは輝度設定のショートカットになっており、頻繁に使う機能は操作しやすいよう配慮されている。

 設定メニューは輝度やコントラスト、音量、色温度などが調整できるのだが、その中に「Ultra HDR」という項目がある。項目の中にはOFF、AUTO、HDR2084という設定がある。本機でHDRが使えるとはどこにも書いていないのだが……。

「Ultra HDR」という設定項目を発見

 そこで本機にPlayStation 5を接続して映像出力情報を確認してみたところ、HDR対応となっており、実際にHDR出力で画面が表示された。「Ultra HDR」の設定が初期値のOFFだと画面全体が白みがかった色になるが、設定をAUTOにしたところ、正常と思われる色味で表示ができた。

 どうやら本機はHDRに対応しているようだ。HDR接続する可能性があるなら、「Ultra HDR」の設定をAUTOにしておくといいだろう。ただメーカーがHDR対応を明言していない以上、ロットによってはHDR非対応のものがないとも限らないので、“今回の試用機に関してはHDR対応が確認できた”ということにさせていただく。

PS5の接続でHDR対応となり、実際に映像も出た

 ケーブル類はいずれも長さが約1m。据え置きゲーム機やPCの小型モニターとして使う場合には長さが足りなくなる可能性はあるので、あらかじめ利用環境を確認した上、必要に応じてケーブルを買い足すなども考慮しておくといい。

 接続自体はとても簡単で、HDMIにせよUCB Type-Cにせよ、対応機器につなぐだけでいい。どちらの機器をつないだかは自動で認識する。もし両方を同時に接続した場合も設定で切り替えはできるが、使わない方のケーブルを抜いた方が手っ取り早い。映像だけでなく音声も出るので、バッテリが充電されているなら給電も要らず、取り回しは非常に良好だ。

 また本機に給電している状態で、USB Type-Cケーブルを使ってスマホに接続した場合、Alternate Modeで映像や音声を出力しながら、スマホへの給電もできる。

本機左側面の端子。上からMini HDMI、USB Type-C、USB Type-C(給電専用)、Micro USB
HDMI to Mini HDMIケーブルとUSB Type-C to Cケーブルが付属し、購入してすぐ使える

 充電・給電に関しては、USB PD対応の充電器であれば5V/3A以上、USB Type-C to Aのケーブルは5A以上のものとされている。Type-A経由で5A以上の出力を持つ充電器というのは規格的に危険なものが多そうなので、USB PD対応充電器を使うのが良さそうだ。

 付属の充電機はUSB Type-C to Aのケーブルで5V/3A出力となっている。「それはUSB PDではないのでは?」と思うが、実際どこにもUSB PDという記述がない代わりに「TSM-156-BK用ACアダプタ」とある。本機専用の充電器として許容し、ほかの機器に使いまわさないよう注意しよう。

付属の充電器は本機専用と考えた方がよさそうだ

 ちなみに筆者所有のUSB PDではない5V/2A出力のモバイルバッテリを接続してみたところ、充電アイコンが表示され、充電量が増えるのも確認できた。動作保証外の使い方なのであくまで参考として書き留めておく。

 バッテリの充電量は、本体の電源をオンにすると表示される、画面右上の電池残量表示で確認できる。充電中は残量表示の横に電気のマークが表示される。これらはオンスクリーン表示となっており、不要なら設定から表示を消せる。

バッテリの残量は画面右上にオンスクリーン表示される
充電中には電気のマークが出る

 これ以外にバッテリに関する表示はない。電源オフ時に充電器を接続しても、LEDが点灯するでもなく、電源オフの状態だと何の反応も示さない。バッテリへの充電はされているが、確認するためには電源をオンにする必要がある。

 なお側面にあるLEDは、電源オン時に赤く点滅した後に青く点灯し、オフにすると消えるのみ。せいぜいカバーを閉じた状態で電源が入っているかどうかを確認できる程度の価値しかない。

 バッテリ持続時間は、標準設定の輝度6、音量5(いずれも10段階)で、実測で約4時間半だった。設定や表示内容によって若干の差は出ると思われるが、概ねスペックシート通りの性能と考えていいだろう。

 内蔵スピーカーは背面の左右にある。ノートPCにありがちな軽めの音になっており、中高音はしっかり聞こえるが、低音はかなり弱い。音楽鑑賞に適するとは言わないが、聞き疲れするような音でもない。音量もしっかり出せるので、モバイルモニターでとりあえず音を出すためと考えれば十分と言える。ただしヘッドフォン端子などの音声出力端子はなく、本機が受けた音声を別の機器に飛ばす方法はない。

実用性には問題なし。ビジネスにも十分対応

 本機の素性を一通り見終えたところで、実際の活用方法を考えてみたい。まず考えられるのは、外への持ち出し。バッテリ内蔵なので充電器は不要だし、カバー込みで1kg強の重さなので、それほど荷物が増えるということもない。

 本体サイズは昨今の15.6型ノートPCで狭額縁のものと面積はほぼ同等。厚さはカバー込みで15mm程度なので、ノートPCよりはコンパクトで軽いと思っていい。ビジネスバッグはB4が入るものなら大丈夫だが、A4想定だと物によっては厳しいかもしれない。

狭額縁の15.6型ノートPCと大体同じサイズ感

 商談などのプレゼンの際には、本機とノートPCを組み合わせて相手に画面を見せるのが楽になる。あるいはスマホにプレゼン資料を入れておき、USB Type-Cで接続すれば、ノートPCすら要らなくなる。荷物も少なくて済むし、相手にもスマートな印象を与えられそうだ。カバーを付けた状態でデザイン的に安っぽさを感じさせることもなく、ビジネス用途なら問題はないだろう。

 電源要らずでスマホと接続できるのは、いろんな場所で重宝する。例えば長時間のドライブ中、スマホの動画を再生しながら本機の大画面で表示させることも可能。安定した設置場所を考える必要はあるが、大型のタブレットPCやノートPCを持ち込むより手軽だ。

 もし充電が必要となれば、USB PDで充電できるので、スマホの充電器と共用できるのも利点。スマホを充電しながら利用できるので、相性がいい。

車に設置してスマホの映像を流すのもよさそう

 屋外での視認性は、直射日光が当たると輝度を最高にしてもさすがに見えづらくなる。日陰であれば気にならないので、先述のような車内であれば問題ない。

 あとはゲーム機との接続も便利。遊ぶ時だけ持ち出して、終わったら片付けるようにすれば場所を取らない。また「充電は1週間に1回」などと決めておけば、子供のプレイ時間の制約としても使えるかもしれない。

 接続方法を問わず、表示遅延は特に感じられない。ゲームプレイも特に違和感を覚えることはなかった。より厳密に見れば、ゲーミングモニターとの差はあるかもしれないが、それを求める製品でもないだろう。

Nintendo Switchと接続。元の画面に比べれば、画面サイズは格段に大きくなる

 本機について総評すると、安かろう悪かろうの部分がないわけではないが、使用上の大問題となるところも特になく、価格のわりにはよくできている。バッテリ内蔵で利用シーンは広いし、地味なデザインも用途を選ばない。所有欲を満たす高級感のようなものはまったくないので、実用性だけを求める人に手に取ってほしい。

 使っていて不満があるのは、電源のオン/オフのために約4秒間の長押しが要るところ。使うたびに必要な操作なので、ここだけはどうにも手間だが、それ以外は許せる範囲だ。

 あとはサポートがどこまで期待できるか。保証期間は1年間とされており、落とすなどして破損した場合や天災等によるものを除き、販売店に持ち込んでの無料修理対応もすると書かれている。ネット通販でもっと安価なものはあるかもしれないが、実店舗という確実な対応窓口がある分、本機の方が安心できる。

 お買い得な製品を、安心して買える。ドン・キホーテのイメージ通りの製品である。