Hothotレビュー
Zen 3コアとなり、リテール版も用意された「Ryzen 7 5700G」と「Ryzen 5 5600G」をテスト
2021年8月3日 22:00
AMDは8月5日、Zen 3ベースのCPUコアを備える新世代のデスクトップ向けAPU、「Ryzen 7 5700G」と「Ryzen 5 5600G」を8月6日19時に発売する。価格はそれぞれ5万1,800円と3万6,800円だ。
この発売に先立って、両APUをテストする機会が得られたので、ベンチマークテストでAMDの新世代デスクトップ向けAPUの実力を確認してみた。
CPUコアにZen 3アーキテクチャを採用した新世代APU「Ryzen 5000G」
今回テストするRyzen 7 5700GとRyzen 5 5600Gは、モバイル向けAPUの「Ryzen 5000シリーズ」でも採用された、開発コードネーム「Cezanne」で知られるAPUコアをベースにしており、Zen 3アーキテクチャを採用したCPUコアと、Vegaアーキテクチャを採用したGPUコアを備えている。
上位モデルであるRyzen 7 5700Gは、8コア16スレッドCPUと、8基のコンピュートユニット(CU)を備えたGPU「Radeon Graphics」を搭載。一方、Ryzen 5 5600Gは、6コア12スレッドCPUと、7基のコンピュートユニットのGPUを備えている。
CPUとGPUコア以外の仕様については上位と下位の間に差はなく、DDR4-3200のデュアルチャネルに対応したメモリコントローラや、PCI Express 3.0対応バスを内蔵している。TDPはいずれも65Wで、対応CPUソケットはSocket AM4。対応BIOSを導入したAMD 500または400シリーズチップセットを搭載したマザーボードで動作する。
【表1】Ryzen 5000Gシリーズの主な仕様 | ||
---|---|---|
モデルナンバー | Ryzen 7 5700G | Ryzen 5 5600G |
CPUアーキテクチャ | Zen 3 | Zen 3 |
製造プロセス | 7nm | 7nm |
コア数 | 8 | 6 |
スレッド数 | 16 | 12 |
L3キャッシュ | 16MB | 16MB |
ベースクロック | 3.8GHz | 3.9GHz |
最大ブーストクロック | 4.6GHz | 4.4GHz |
CPU内蔵GPU | Radeon Graphics | Radeon Graphics |
GPUアーキテクチャ | Vega | Vega |
Compute Unit | 8 | 7 |
GPUクロック | 2,000MHz | 1,900MHz |
対応メモリ | DDR4-3200 (2ch) | DDR4-3200 (2ch) |
PCI Express | PCIe 3.0 | PCIe 3.0 |
TDP | 65W | 65W |
対応ソケット | Socket AM4 | Socket AM4 |
販売価格(北米) | 359ドル | 259ドル |
前世代のデスクトップ向けAPUであるRenoirと比較すると、CPUアーキテクチャがZen 2からZen 3に刷新された一方で、GPUコアのアーキテクチャやPCI Expressの世代、製造プロセスなどは更新されていない。基本的には、前世代からCPUが強化されたAPUという認識で良いだろう。
Ryzen 7 5700GとRyzen 5 5600Gはリテール販売用のボックス版が発売予定で、製品版にはAMD純正CPUクーラーの「Wraith Stealth」が付属する。
テスト機材
今回、Ryzen 5000Gシリーズの比較対象には、前世代のデスクトップ向けAPUの1つで、8コア16スレッドCPUと8CUのGPUコアを備える「Ryzen 7 PRO 4750G」を用意した。
各APUを搭載するのは、MSIのB550チップセット搭載マザーボード「MAG B550M MORTAR」。グラフィックスドライバには「Adrenaline 21.7.2 Optional」を利用した。そのほかの機材については以下の通り。
【表2】テスト機材一覧 | |||
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CPU | Ryzen 7 5700G | Ryzen 5 5600G | Ryzen 7 PRO 4750G |
コア数/スレッド数 | 8/16 | 6/12 | 8/16 |
CPUパワーリミット | PPT=88W、TDC=65A、EDC=95A | PPT=88W、TDC=65A、EDC=95A | PPT=88W、TDC=65A、EDC=95A |
CPUクーラー | サイズ APSALUS G6 (ファンスピード=100%) | ||
マザーボード | MSI MAG B550M MORTAR [UEFI=1.80] | ||
メモリ | DDR4-3200 16GB×2 (2ch、22-22-22-52、1.20V) | ||
メモリコントローラ | 1,600MHz | 1,600MHz | 1,600MHz |
CPU内蔵GPU (iGPU) | Radeon Graphics (8CU) | Radeon Graphics (7CU) | Radeon Graphics (8CU) |
システム用SSD | Samsung SSD 980 PRO 500GB (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4) | ||
アプリケーション用SSD | CORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4) | ||
電源 | Thermaltake Toughpower Grand RGB 1050W Platinum | ||
iGPUドライバ | Adrenalin 21.7.2 Optional (27.20.22021.1002) | ||
OS | Windows 10 Pro 64bit (Ver 21H1 / build 19043.1110) | ||
電源プラン | バランス | ||
室温 | 約26℃ |
ベンチマーク結果
それでは、ベンチマークテストの結果を見ていこう。
実施したベンチマークテストは、「Cinebench R23」、「Cinebench R20」、「Blender Benchmark」、「V-Ray Benchmark」、「やねうら王」、「HandBrake」、「TMPGEnc Video Mastering Works 7」、「PCMark 10」、「SiSoftware Sandra」、「3DMark」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator」「フォートナイト」、「レインボーシックス シージ」、「VALORANT」。
Cinebench
CPUの3DCGレンダリング性能を測定するCinebenchは、最新版のCinebench R23と、旧バージョンのCinebench R20を実行した。
Cinebench R23のマルチスレッドテスト(Multi Core)では、13,963ptsを記録したRyzen 7 5700Gがトップに立っており、2番手のRyzen 7 PRO 4750Gに約16%、Ryzen 5 5600Gに約28%の差をつけた。
シングルスレッドテスト(Single Core)でも、1,493ptsを記録したRyzen 5 5700Gがトップで、2番手のRyzen 5 5600Gに約5%、Ryzen 7 PRO 4750Gに約15%の差をつけた。下位モデルのRyzen 5 5600Gでも旧世代のRyzen 7 PRO 4750Gを上回っているのは、Zen 3アーキテクチャのシングルスレッド性能の高さを示すものだ。
旧バージョンであるCinebench R20でも、テスト毎の順位とスコア差はCinebench R23とほぼ同様の結果となっている。
3DMark「CPU Profile」
3Dベンチマークの3DMarkに追加されたCPUテスト「CPU Profile」は、CPUスレッド数毎のパフォーマンスを測定できるテストだ。
ここでは、最大のコア数と最新のアーキテクチャを備えたRyzen 7 5700Gが、順当に全てのスレッド数でトップのスコアを記録している。
一方、6コアCPUを備えるRyzen 5 5600Gは、物理コア数を超えるスレッド数において、旧世代ながら8コアCPUを備えるRyzen 7 PRO 4750Gの後塵を拝しているが、テストで使用するスレッド数が物理コア数を下回る4スレッド以下では逆転し、Ryzen 7 5700Gに次ぐ2番手のスコアを記録している。
V-Ray Benchmark
Blender Benchmarkでは、トータルのレンダリング時間が2,456秒だったRyzen 7 5700Gが最速を記録。2番手のRyzen 7 PRO 4750Gより約18%、3番手のRyzen 5 5600Gより約31%高速だった。
V-Ray Benchmark
レンダリング時間が1分に固定されているV-Ray Benchmarkでは、10,122を記録したRyzen 7 5700Gがトップにたっており、2番手のRyzen 7 PRO 4750Gに約20%、3番手のRyzen 5 5600Gに約33%の差をつけた。
将棋ソフト「やねうら王」
将棋ソフトの「やねうら王」では、KPPT型とNNUE型の評価関数でベンチマークコマンドを実行した。今回はAVX2版に加え、Zen 2アーキテクチャ最適化版でのテストも実施した。
KPPT型のAVX2版では、シングルスレッドとマルチスレッドの両方でRyzen 7 5700Gがトップに立っており、2番手はどちらもRyzen 5 5600Gとなっている。ここではZen 3アーキテクチャが強さを見せており、Ryzen 7 5700GがRyzen 7 4750Gにシングルスレッドで約69%、マルチスレッドで約75%の大差をつけ、Ryzen 5 5600Gはコア数の不利を覆してマルチスレッドでRyzen 7 PRO 4750Gを上回っている。
KPPT型のZen 2最適化版では、Ryzen 5000Gがややスコアを落とす一方で、Zen 2ベースのCPUを備えるRyzen 7 PRO 4750Gがスコアを伸ばしているが、AVX2版の大差を覆すことはできず、各CPUの順位に変動はない。
NNUE型のAVX2版でも、Ryzen 7 5700Gがマルチスレッドとシングルスレッドの両方でトップを獲得しており、2番手はRyzen 5 5600Gと変わらないが、Ryzen 7 PRO 4750GがKPPT型より良好な結果を記録しており、マルチスレッドではRyzen 5 5600Gと2%差に肉薄している。
NNUE型のZen 2最適化版になると、Ryzen 7 5700Gは変わらずトップを維持しているが、Ryzen 5 5600GはマルチスレッドテストでRyzen 7 PRO 4750Gに逆転されている。
動画エンコードソフト「HandBrake」
オープンソースの動画エンコードソフト「HandBrake」では、フルHD(1080p)と4K(2160p)の動画ソースをYouTube向けプリセットでエンコードするのにかかった時間を測定した。
Ryzen 7 5700Gは、フルHDからフルHDへの変換と、4Kから4Kへの変換で最速を記録しているものの、4KからフルHDへの変換ではなぜかRyzen 7 PRO 4750Gに4秒差をつけられている。特に負ける理由は見当たらないので不思議な結果だが、複数回試しても結果は変わらなかった。テストでは、製品発売前のBIOSやファームウェアを使用しているので、そのあたりに理由があるのかもしれない。
動画エンコードソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 7」
動画エンコードソフトのTMPGEnc Video Mastering Works 7では、フルHD(1080p)と4K(2160p)のソース動画をH.264形式とH.265形式に変換するのに掛かった時間を測定した。
H.264形式への変換では、HandBrakeと同じように4KからフルHDへの変換でRyzen 7 5700GがRyzen 7 PRO 4750Gに僅差で遅れをとるという結果が見られた。x264とZen 3アーキテクチャの相性のようにも見えるが、過去のZen 3製品のレビューで同じような傾向は見られていない。
H.265形式への変換では、順当にRyzen 7 5700Gが最速を記録。エンコード速度的には、Ryzen 5 5600Gより10~16%、Ryzen 7 PRO 4750Gより9~16%高速だった。
PCMark 10
PCMark 10では、最も詳細なテストである「PCMark 10 Extended」のスコアを比較した。
総合スコアでトップに立ったのはRyzen 7 5700Gで、2番手のRyzen 5 5600Gに約5%、Ryzen 7 PRO 4750Gには約8%の差をつけている。
SiSoftware Sandra 「CPUベンチマーク」
SiSoftware SandraのCPUテストから、「Arithmetic」、「Multi-Media」、「Image Processing」の実行結果を紹介する。
CPUの演算性能を測定するArithmeticではRyzen 5000Gが奮わず、整数演算(Dhrystone)ではRyzen 7 PRO 4750GがRyzen 7 5700Gに10~13%の差をつけてトップに立っている。浮動小数点でもRyzen 7 5700GのスコアはRyzen 7 PRO 4750Gと同程度にとどまった。
マルチメディア性能を測定するMulti-Mediaでは、Ryzen 7 5700Gが全ての項目でトップに立っており、Ryzen 7 PRO 4750Gに11~41%、Ryzen 5 5600Gに26~37%の差をつけた。
画像処理性能を測定するImage Processingでも、Ryzen 7 5700Gが全ての項目でトップのスコアを獲得。Ryzen 7 PRO 4750Gに10~42%、Ryzen 5 5600Gに19~37%の差をつけた。
SiSoftware Sandra「メモリベンチマーク」
メモリ帯域幅を測定するMemory Bandwidthでは、全ての製品が35.0~35.6GB/s程度の帯域幅を記録しており、特別な差はついていない。同じDDR4-3200メモリを使っていることを考えれば、順当な結果であると言えよう。
「Cache & Memory Latency」で測定したメモリレイテンシは、51.3nsのRyzen 7 PRO 4750Gが最速で、約81nsを記録したRyzen 5000Gより6割近く高速だ。これはほかのZen 3アーキテクチャ採用CPUにも見られる傾向であり、CPU部分の内部構造を変更した影響によるものと考えられる。
SiSoftware Sandra「キャッシュベンチマーク」
CPUが備えるキャッシュのパフォーマンスを測定できる「Cache & Memory Latency」と「Cache Bandwidth」の結果をグラフ化した。
全てのCPUコアが16MBのL3キャッシュを共有するRyzen 5000Gでは、16MBまで低いレイテンシと広帯域を保っている一方、「(4コア+4MB L3)×2」という内部構造のRyzen 7 PRO 4750Gでは、4MB以降はレイテンシが大きく増加し、帯域幅も8MB以降は大きく低下していることが確認できる。
3DMark
3DMarkでは、「Time Spy」、「Fire Strike」、「Wild Life」を実行した。
DirectX 12テストのTime Spyでは、Ryzen 7 5700GとRyzen 7 PRO 4750Gがほぼ同等のスコアを記録する一方で、Ryzen 5 5600Gは両APUから1割ほど低いスコアとなっている。
残るFire StrikeとWild Lifeについても、結果はTime Spyとぼぼ同様のものとなっている。これは、GPUのスペック差が素直に出た結果であり、GPU性能的には前世代のRenoirからほとんど変化していないことを示すものだ。
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークでは、画面解像度をフルHDに固定して、3種類の描画設定でテストを実行した。
最もGPU負荷の低い「標準品質(デスクトップPC)」では、Ryzen 5 5600GがRyzen 7 5700Gに次ぐ2番手のスコアを記録してGPUコアのスペック差を覆しているが、「高品質(デスクトップPC)以上になると3DMark同様にGPUのスペックを素直に反映した結果となっている。
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークでは、画面解像度をフルHDに固定して、3種類の描画設定でテストを実行した。
最も低GPU負荷な「軽量品質」でも内蔵GPUには荷が重いこのテストでは、GPUのスペックが近いRyzen 7 5700GとRyzen 7 PRO 4750Gがほぼ同等のスコアを記録し、Ryzen 5 5600Gが上位から5~7%差のスコアとなっている。
PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator
PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creatorでは、画面解像度をフルHDに固定して、3種類の描画設定でテストを実行した。
最もGPU負荷の低い「1:最低」で、Ryzen 7 5700GがRyzen 7 PRO 4750Gに約4%の差をつけている。ただし、GPU負荷が高まるにつれてスコア差は縮まり、「6:ウルトラ」では逆に3%の差をつけられている。
GPU負荷が低い条件ではCPU性能に優れるRyzen 7 5700Gが優位になるが、GPU負荷が高くなるとGPUコアのスペック差が反映されることになるという傾向が確認できる結果だ。最も、このテストでのスコア差は「フレームレート差の2乗」と同等なので、実際のパフォーマンス差はスコア差より小さなものである。
フォートナイト
フォートナイトでは、画面解像度をフルHDに固定して、4種類の描画設定でフレームレートを計測した。テスト時のグラフィックスAPIはDirectX 12で、3D解像度は100%。
ここではRyzen 7 5700Gが全ての条件で最高のフレームレートを記録しており、Ryzen 7 PRO 4750Gに1~4%、Ryzen 5 5600Gに7~9%の差をつけている。
レインボーシックス シージ
レインボーシックス シージでは、画面解像度をフルHDに固定して、3種類の描画設定でベンチマークモードを実行した。グラフィックスAPIは「Vulkan」で、レンダリングのスケールは100%。
最も高い平均フレームレートを記録したのはRyzen 7 5700Gで、Ryzen 7 PRO 4750Gとの差は2~5%、Ryzen 5 5600Gとの差は5~6%。
VALORANT
VALORANTでは、画面解像度をフルHDに固定して、3種類の描画設定でフレームレートを計測した。
VALORANTでは、これまでの3Dベンチマークやゲームとは異なる結果が得られており、Ryzen 5 5600Gが全体ベストの結果を記録している。Ryzen 7 5700Gはトップと1~3%差で誤差の範囲と言えるレベルで肉薄しているが、Ryzen 7 PRO 4750Gは「低」で約37%、「中」で約13%、「高」でも約9%の差をRyzen 5 5600Gにつけられている。
これは、APUの内蔵GPUでも高フレームレートを出せる「VALORANT」では、CPUのボトルネックが生じるため、新旧APUのCPU性能差がフレームレートに反映されたものだ。
Blender Benchmark(GPUレンダリング)
Blender Benchmarkで、APUのGPUコアを使ってレンダリングを行なった場合のパフォーマンスを測定してみた。参考データとして、Ryzen 7 5700GのCPUでベンチマークを実行した際のデータを加えている。
結果としては、トータルで8,615秒を記録したRyzen 7 PRO 4750GがGPUレンダリングでは最速で、2番手のRyzen 7 5700Gより約1%、3番手のRyzen 5 5600Gより約17%高速だった。
とは言え、内蔵GPUでのレンダリング速度は、Ryzen 7 5700GのCPUレンダリングより遥かに遅いものであり、最速を記録したRyzen 7 PRO 4750Gであっても3.5倍以上もの時間がかかってしまっている。Blenderを始め、従来CPUが担っていた処理をGPUで実行するアプリケーションは増えてきたが、必ずしもGPUの方が高速とは限らない点に注意したい。
システムの消費電力
システム全体の消費電力をワットチェッカーで測定した結果が以下のグラフだ。測定したのはベンチマーク中のピーク消費電力とアイドル時消費電力で、CPUベンチマークとGPUベンチマークの結果を分割してグラフ化している。
アイドル時の消費電力は、35Wを記録したRyzen 7 PRO 4750Gが最も低く、最も高かったのは37WのRyzen 7 5700Gだった。この程度の差であれば大きな差はないと考えてよいだろう。
CPUベンチマーク中のピーク消費電力については、Cinebench R23 Single Coreを除くマルチスレッド系のテストでは、Ryzen 7 5700Gが112~130W、Ryzen 5 5600Gは118~124W、Ryzen 7 PRO 4750Gが130~135Wを記録していた。電力リミットの設定が同じTDP 65Wモデル同士ということもあり、消費電力自体には大きな差がつかなかったようだ。
GPUベンチマーク中のピーク消費電力では、Ryzen 7 5700Gがやや高めではあるものの、全製品とも70~80W程度の消費電力となっており、こちらも大きな差はついていない。
CPU温度とモニタリングデータ
ここからは、Ryzen 7 5700GとRyzen 5 5600GのCPUコアに高負荷をかけ、CPU温度やCPUクロックの変化を確認する。
テストでは、モニタリングソフトの「HWiNFO64 Pro v7.0.6」を使って、Cinebench R23 Multi Coreを実行中のステータス情報を取得し、それに基づいてCPU温度とモニタリングデータの推移をグラフ化する。
今回は、ここまでのテストで使用していた、240mmラジエーター搭載オールインワン水冷クーラー「サイズ APSALUS G6」と、Ryzen 7 5700Gに付属していた「Wraith Stealth」で、それぞれ計測を実施した。
Ryzen 7 5700GのCPU温度
Ryzen 7 5700GのCPU温度を確認してみると、純正クーラーのWraith Stealthを搭載した場合の最高温度が93.4℃で、平均温度は90.4℃だった。一方、オールインワン水冷搭載時は最高66.6℃、平均65.6℃を記録している。
純正クーラー搭載時の温度はかなり高いものとなっているが、モニタリングデータを見てみると、90℃台で動作している時でもベースクロックの3.8GHzを大きく超える4.2GHz前後で動作しており、ブースト動作の範囲内で調整が行なわれている。つまり、純正クーラーでも定格性能以上を発揮できる程度には冷やせているというわけだ。
一方、オールインワン水冷搭載時は、終始4.3GHz以上のクロックで動作しており、強力なCPUクーラーを用いることでブースト動作を強化できることが確認できる。純正クーラーはそれなりに静粛性も高く必要十分な冷却性能を備えてはいるが、Ryzen 7 5700Gの性能をより引き出したいのであれば、高性能なCPUクーラーの導入も検討したい。
Ryzen 5 5600GのCPU温度
Ryzen 5 5600GのCPU温度は、純正クーラー搭載時で最高82.6℃、平均温度は80.6℃。オールインワン水冷搭載時は最高64.4℃、平均63.5℃だった。
純正クーラー搭載時でもRyzen 7 5700Gより低いCPU温度を保っているが、モニタリングデータを見てみると、CPU温度の上昇に伴ってCPUクロックが4.2GHz前後まで低下していることが分かる。
一方、オールインワン水冷搭載時のCPUクロックは4.4GHz弱で推移している。Ryzen 5 5600Gでも、純正クーラーより高性能なCPUクーラーを使用することでパフォーマンス面でのメリットが得られる。
Zen 3の採用で強化されたCPUが強みの新世代APU
新世代のAPUコア「Cezanne」を採用したRyzen 5000Gシリーズは、Zen 3アーキテクチャの採用によってさらに強力になったCPU性能が魅力のAPUだ。強力なGPUを必要としないPCの使い方をしているユーザーにとっては、Zen 3採用CPUの優れた性能を手軽かつコンパクトに入手できる選択肢として、価値ある製品となるだろう。
一方で、GPUの性能向上が停滞していることや、PCI Express 4.0に対応していないなど、GPU性能を必要とするユーザーにとってはAPUを選ぶ必要性を検討すべき製品でもある。Zen 3採用CPUである「Ryzen 5000」シリーズとビデオカードを組み合わせた構成と比較して、APUを選択するメリットを考えてみると良いだろう。
ともあれ、リテール販売が行なわれなかった前世代とは異なり、ボックス品が発売されるRyzen 5000Gは入手しやすいAPUとなるはずだ。APUの特性を活かしたPCの自作を検討しているコアなユーザーはもちろん、Windows 11に備えてPCの新調を検討しているユーザーにとっても、Zen 3ベースのCPUとGPUを統合したRyzen 5000Gは、注目すべき製品となるだろう。
Ryzen 5000G発売を記念して、8月6日(金)の18時よりYouTubeでライブ配信を行ないます。新CPUの性能、特長、対応マザーボードなどの情報を、実動デモを交えていち早くお伝えする特番です。
“改造バカ”高橋敏也氏&“KTU”加藤勝明氏がお届けする“本ナマ改造バカ”にAMD公式配信“AMD HEROES WORLD”の佐藤美明氏と鈴木咲さんがジョイン。さらにASRock、ASUSTeK、BIOSTAR、GIGA-BYTE、MSIのスタッフが“Ryzen 5000Gにベストマッチのマザーボードはこれだ”というテーマでプレゼンバトルを繰り広げます! 熱すぎる夏の一夜をお楽しみください。