Hothotレビュー
iPhone 12と12 Proの使用感をチェック。Huawei/Galaxyとカメラ性能も比較してみた
2020年10月29日 06:55
AppleはiPhone 12シリーズ4機種を10月13日に発表した。6.1型の「iPhone 12」と「iPhone 12 Pro」は10月23日に販売開始。5.4型の「iPhone 12 mini」と6.7型の「iPhone 12 Pro Max」は11月6日に予約を開始し、11月13日に販売を開始する予定だ。
今回は「iPhone 12」と「iPhone 12 Pro」の製品版を借用した。記事執筆時点(10月28日)では「iPhone 12 mini」、「iPhone 12 Pro Max」を借用できていないが、本稿では全4シリーズの違い、「iPhone 12 Pro」を中心にした実機レビューする。
そして性能チェックではAndroid最速スマートフォン「ROG Phone 3」との比較、カメラテストではカメラ性能に定評のある「Huawei P40 Pro 5G」や「Galaxy Note 20 Ultra 5G」との比較を実施していこう。
iPhone 12シリーズで最注目スペックはカメラ
iPhone 12シリーズ最大の特徴として挙げられるのが、業界ではじめて5nmプロセスで製造されたSoC「A14 Bionic」。「A13 Bionic」がCPUは6コア(高性能×2、高効率×4)、GPUは4コア、Neural Engineは8コア、トランジスタ数は85億個だったところ、A14 BionicがCPUは6コア(高性能×2、高効率×4)、GPUは4コア、Neural Engineは16コア、トランジスタ数は118億個となっており、Neural Engineのコア数が2倍に、トランジスタ数が40%増えている。
製品公式サイトによれば、CPUとGPUはほかのスマートフォンよりも最大50%速い、Neural Engineが最大80%高速化、マシンラーニングアクセラレータが最大70%高速化され、電力効率も向上しているという。「ほかのスマートフォンよりも最大50%速い」というのはずいぶんざっくりした表現だが、ベンチマークの章で検証してみたい。
メモリ(RAM)の搭載量はいつもどおり公表されていないが、「Geekbench 5」のデバイス情報で確認したところ、iPhone 12は4GB、iPhone 12 Proは6GBを搭載していた。iPhone 12 miniは4GBの可能性が高いが、iPhone 12 Pro Maxにどのぐらいの容量のメモリが搭載されているのか気になるところだ。
ディスプレイは全モデルにOLEDが搭載されているが、iPhone 12 miniとiPhone 12は最大輝度625cd/平方m(標準)のところ、iPhone 12 ProとiPhone 12 Pro Maxは最大輝度800cd/平方m(標準)となっている。とは言っても625cd/平方mでも十分明るいので、この点は気にする必要はないと思う。
ディスプレイのガラスには「Ceramic Shield」という新素材が採用されている。これは「ナノスケールセラミッククリスタル」をガラスに組み込んで作ったもので、カバーと筐体のエッジを同じ高さにしたことも相まって、耐落下性能が4倍にアップしているとのことだ。
カメラは、iPhone 12 miniとiPhone 12が超広角、広角、iPhone 12 ProとiPhone 12 Pro Maxが超広角、広角、望遠という構成だ。不可視光線で深度を計測する「LiDARスキャナ」はiPhone 12 ProとiPhone 12 Pro Maxにのみ搭載される。
さらにiPhone 12 Pro Maxは、広角に47%大きいイメージセンサー(ピクセルサイズ1.7μm)、センサーシフトOIS(手ぶれ補正)を採用し、望遠カメラがiPhone 12 Proの52mmに対して65mmと倍率が大きくなっている。そのうえApple独自のRAWフォーマット「Apple ProRAW」が今後提供されるのもiPhone 12 ProとiPhone 12 Pro Maxだけだ。
iPhone 12シリーズでもっとも異なるスペックがカメラであり、購入にあたっての最重要ポイントと言えよう。
通信機能は、5G(Sub-6)、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)、Bluetooth 5.0、NFC、FeliCaをサポート。米国モデルのみ5Gの「ミリ波」に対応する。ミリ波どころかSub-6の5Gを利用するエリアすらかぎられていることを考えると、ミリ波非対応で実用上困ることはないが、長期間利用するユーザーのことを考えると対応してほしかった。
おもに充電に利用するアクセサリの規格として「MagSafe」が採用されたのもトピック。iPhone 12の全シリーズ、そして「MagSafe充電器」(4,500円)などの対応アクセサリには磁石が内蔵されており、磁力によって正確に位置合わせできる。
また、従来のiPhoneのQiワイヤレス充電は7.5Wが上限だが、MagSafe充電では15Wに引き上げられている。一般的なワイヤレス充電器のように、ずれて置いてしまって充電されていなかったというミスから解放されるわけだ。
なお、サポートサイトに「クレジットカード、セキュリティバッジ、パスポート、キーフォブをiPhoneとMagSafe充電器の間に挟まないようにしてください」、「iPhoneをレザーケースに入れたままMagSafe充電器で充電した場合、ケースに丸い接触跡が残ることがあります」などの関連情報が記載されている。利用にあたっては注意が必要だ。
【表1】iPhone 12シリーズのスペック一覧 | ||||
---|---|---|---|---|
iPhone 12 mini | iPhone 12 | iPhone 12 Pro | iPhone 12 Pro Max | |
OS | iOS 14 | |||
SoC | A14 Bionicチップ | |||
RAM | 不明 | 4GB | 6GB | 不明 |
ROM | 64GB/128GB/256GB | 128GB/256GB/512GB | ||
ディスプレイ | 5.4型OLED(2,340×1,080ドット、476ppi、コントラスト比200万:1、色域P3、最大輝度625cd/平方m(標準)、最大輝度1,200cd/平方m(HDR) | 6.1型OLED(2,352×1,170ドット、460ppi、コントラスト比200万:1、色域P3、最大輝度625cd/平方m(標準)、最大輝度1,200cd/平方m(HDR) | 6.1型OLED(2,352×1,170ドット、460ppi、コントラスト比200万:1、色域P3、最大輝度800cd/平方m(標準)、最大輝度1,200cd/平方m(HDR) | 6.7型OLED(2,778×1,284ドット、458ppi、コントラスト比200万:1、色域P3、最大輝度800cd/平方m(標準)、最大輝度1,200cd/平方m(HDR) |
リアカメラ | 超広角(1,200万画素、F2.4、14mm) 広角(1,200万画素、F1.6、52mm、OIS) | 超広角(1,200万画素、F2.4、14mm) 広角(1,200万画素、F1.6、26mm、OIS) 望遠(1,200万画素、F2.0、52mm、OIS) | 超広角(1,200万画素、F2.4、14mm) 広角(1,200万画素、F1.6、26mm、ピクセルサイズ1.7μm、センサーシフトOIS) 望遠(1,200万画素、F2.2、65mm、OIS) | |
フロントカメラ | 1,200万画素、F2.2、23mm | |||
ビデオ撮影機能 | 4Kビデオ(24/30/60fps) 1080p HDビデオ(30/60fps) 1080pスローモーションビデオ(120/240fps) Dolby Vision対応HDRビデオ(最大30fps) | 4Kビデオ(24/30/60fps) 1080p HDビデオ(30/60fps) 1080pスローモーションビデオ(120/240fps) Dolby Vision対応HDRビデオ(最大60fps) | ||
生体認証 | Face ID | |||
通信機能 | 5G(Sub-6)、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)、Bluetooth 5.0、NFC、FeliCa | |||
センサー | 3軸ジャイロ、加速度センサー、近接センサー、環境光センサー、気圧計 | LiDARスキャナ、3軸ジャイロ、加速度センサー、近接センサー、環境光センサー、気圧計 | ||
端子 | Lightning | |||
バッテリ駆動時間 | 最大15時間のビデオ再生 | 最大17時間のビデオ再生 | 最大20時間のビデオ再生 | |
充電機能 | MagSafe充電、Qiワイヤレス充電 | |||
SIMカード | デュアルSIM(nanoSIM、eSIM) | |||
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 131.5×64.2×7.4mm | 146.7×71.5×7.4mm | 160.8×78.1×7.4mm | |
重量 | 133g | 162g | 187g | 226g |
本体材質 | アルミニウム、Ceramic Shield | ステンレススチール、Ceramic Shield | ||
防水・防塵性能 | IP68(最大水深6mで最大30分間) | |||
カラー | ブルー、グリーン、(PRODUCT)RED、ホワイト、ブラック | パシフィックブルー、ゴールド、グラファイト、シルバー | ||
税別価格 | 64GB:7万4,800円 128GB:7万9,800円 256GB:9万800円 | 64GB:8万5,800円 128GB:9万800円 256GB:10万1,800円 | 128GB:10万6,800円 256GB:11万7,800円 512GB:13万9,800円 | 128GB:11万7,800円 256GB:12万8,800円 512GB:15万800円 |
iPhone 12とiPhone 12 Proのサイズはまったく同じ
iPhone 12シリーズのサイズ、重量、画面サイズは下記のとおり。
- 【iPhone 12 mini】131.5×64.2×7.4mm、133g、5.4型
- 【iPhone 12】146.7×71.5×7.4mm、162g、6.1型
- 【iPhone 12 Pro】146.7×71.5×7.4mm、187g、6.1型
- 【iPhone 12 Pro Max】160.8×78.1×7.4mm、226g、6.7型
ちなみにiPhone 11 Proは144×71.4×8.1mm、188g、5.8型。iPhone 12 Proは前面投影面積がわずかに広くなったものの、画面サイズは5.8型から6.1型へ大きくなったことになる。なお、iPhone 12とiPhone 12 Proのサイズはまったく同じだ。
前述のとおり、全モデルのディスプレイガラスにはCeramic Shieldが採用されているが、フレームはiPhone 12 miniとiPhone 12にアルミニウム、iPhone 12 ProとiPhone 12 Pro Maxにステンレススチールが採用されている。iPhone 12とiPhone 12 Proに25gの重量差があるのは、おもにフレームの材質によるものだろう。
Ceramic Shieldの採用などにより耐落下性能が4倍に向上しているのは前述のとおり。「IEC規格60529にもとづくIP68等級」というスペックは同じだが、耐水性能が「水深4mで最大30分間」から「水深6mで最大30分間」に向上している。
端子はLightningのみ。個人的には、音楽は「AirPods Pro」で聴いており、撮影した写真や動画はオンラインストレージにアップロードし、充電もワイヤレスなので端子を使うことはほとんどない。
しかし、Android用に購入した周辺機器のいくつかはiPhoneで使えなかったり、使えたとしてもアダプタが必要だ。このような不便を解消するために、LightningではなくUSB Type-Cを搭載してほしいと思っている。
同梱品から、「EarPods with Lightning Connector」、「18W USB-C電源アダプタ」が削られたのも大きな変化だ。個人的にはスマートフォン本体に同梱されているイヤフォン、ACアダプタはいっさい使っていないので、少しでも安くなるのなら大歓迎だ。
A14 Bionicのおもな進化点はNeural Engineとマシンラーニングアクセラレータ
性能チェックは、総合ベンチマーク「AnTuTu Benchmark」、CPU/GPUベンチマーク「Geekbench 5」、3Dグラフィックスベンチマーク「3DMark」の3本で実施した。計測はそれぞれ3回行ない、そのなかでもっとも高いスコアを採用している。計測した端末はiPhone 12 ProとiPhone 12、前モデルのiPhone 11 Pro Max、そしてAndroidスマートフォン最速端末「ROG Phone 3」だ。
なお、ROG Phone 3で計測するさいには、同梱の冷却ユニット「AeroActive Cooler 3」を装着したうえで、Xモードを有効にして、管理ユーティリティ「Game Genie」で温度制御、CPU、GPUを「高」に設定している。下記がその結果だ。
iPhone 12 Pro | iPhone 12 | iPhone 11 Pro Max | ROG Phone 3 | |
---|---|---|---|---|
SoC | A14 Bionic | A13 Bionic | Snapdragon 865 Plus | |
RAM | 6GB | 4GB | 12GB | |
AnTuTu Benchmark | ||||
総合スコア | 586,190 | 591,522 | 558,476 | 657,912 |
CPU | 132,863 | 144,911 | 140,223 | 187,698 |
GPU | 242,083 | 243,312 | 245,335 | 248,057 |
MEM | 118,306 | 111,457 | 88,896 | 114,570 |
UX | 92,938 | 91,842 | 84,020 | 107,587 |
Geekbench 5 | ||||
Single-Core Score | 1,603 | 1,549 | 1,341 | 986 |
Multi-Core Score | 4,131 | 4,140 | 3,539 | 3,421 |
Compute | 9,354 | 9,433 | 7,469 | 3,613 |
3DMark | ||||
Sling Shot Extreme | 5,717 | 5,674 | 5,027 | 7,821 |
まず、iPhone 12 ProとiPhone 12については大きな性能差はないようだ。メモリ(RAM)容量が異なっていても、ベンチマークアプリ単独で影響は少ない。iPhoneで大容量メモリが効いてくるのは、大容量データを処理するときと、複数のアプリを切り替えつつ利用するときだ。
一方、前モデルのiPhone 11 Pro Maxに対しては、iPhone 12 Pro/iPhone 12はAnTuTu Benchmarkの総合スコアで約1.05~1.06倍、Geekbench 5のMulti-Core Scoreで約1.17倍、Computeで約1.25~1.26倍、3DMarkのSling Shot Extremeで約1.13~1.14倍となっている。A14 Bionicが威力を発揮するのは、最大80%高速化されたNeural Engine、最大70%高速化されたマシンラーニングアクセラレータが受け持つ処理というわけだ。
ROG Phone 3に対しては、iPhone 12 Pro/iPhone 12はAnTuTu Benchmarkの総合スコアで約89~90%、Geekbench 5のMulti-CoreScoreで約1.21倍、Computeで約2.59~2.61倍、3DMarkのSling Shot Extremeで約73%となった。Geekbench 5のComputeで大差をつけた点は注目に値するが、ベンチマークソフトによっては逆転する結果となっている。
OSが異なり、アプリの最適化度合いが異なる時点で、両者を比較することにあまり意味はない。ただ、両者がそれぞれのプラットフォームで「最速のスマートフォン」であることは間違いない。
今回は5Gの通信速度も計測してみた。使用した端末はauの5G契約SIMを挿したiPhone 12 Proだ。さいたま新都心の「さいたまスーパーアリーナ」前で5Gの電波をつかみ、下り745.67Mbps、上り74.36Mbpsという通信速度を記録した。
設定で4Gに切り替えると下り148.15Mbps、上り21.31Mbpsだったので、5Gは下りで約5.03倍、上りで約3.49倍の通信速度を記録したことになる。自宅の光回線より速いので満足感は高い。
しかし、筆者の住むさいたま市では5Gのエリアを探すことが困難だった。「auサービスエリアマップ」を参照して、さいたま新都心の5Gエリアで最初に計測を実施したが、なぜかその場所では5Gの電波をつかめなかった。
さいたまスーパーアリーナ前で5Gの電波をつかめたが、記事執筆時点(10月28日)でauサービスエリアマップに掲載されていない。5G対応のiPhone 12シリーズが発売されたことで、5Gへの期待は高まっている。あまり先までスケジュールを公表するのは難しいのかもしれないが、せめてどの駅でいつから使えるのかぐらいは全国的に案内してほしい。
Androidスマホを含めてテスト撮影をしてみた
今回カメラテストは、iPhone 12 Pro、iPhone 12、iPhone 11 Pro Maxに加えて、Galaxy Note 20 Ultra 5G、Huawei P40 Pro 5Gの5台で実施した。カメラの設定はすべてデフォルトで、基本的にオートモードで撮影している。フォーカスもカメラアプリまかせだ。ただし夜景のみ、自動で切り替わらない場合は、手動でナイトモードに切り替えている。
まず1枚目から。生花を撮影してみたが、実際に近い色で撮影できたのはHuawei P40 Pro 5Gだ。逆に色を誇張しすぎているのがGalaxy Note 20 Ultra 5G。iPhoneはその中間ぐらいの発色だ。
2枚目は紅葉の写真。この写真でもGalaxy Note 20 Ultra 5Gは色が強すぎた。逆にHuawei P40 Pro 5Gはちょっとあっさりしているので、iPhoneの色が一番好ましく思えた。
3枚目の料理の写真も1、2枚目と同じ傾向だが、Galaxy Note 20 Ultra 5Gがもっとも美味しそうに見える。ここまで各iPhoneの写真を見比べたかぎりでは、十分な光量があれば発色に大きな違いはないように思う。オートで撮影したさいの絵作りに変更はないようだ。
新旧iPhoneで明らかな差が現れたのが夜景の撮影。iPhone 12 ProとiPhone 12はiPhone 11 Pro Maxよりも暗所のディテールがしっかりと記録されている。F1.8からF1.6へとレンズが明るくなったことが功を奏しているのだろう。
ただし、iPhoneのナイトモードの欠点として、白飛びが激しいことが挙げられる。Galaxy Note 20 Ultra 5GやHuawei P40 Pro 5Gのように、外灯や、看板の白飛びをしっかりと抑え込めるように改善してほしい。
最後は広角端から望遠端まで撮影してみたが、ペリスコープの光学5倍望遠カメラを搭載したGalaxy Note 20 Ultra 5GとHuawei P40 Pro 5Gがやはり強い。どちらも最大の50倍デジタルズームはさすがに塗り絵っぽいが、10倍デジタルズームであれば27型ディスプレイで全画面表示しても鑑賞に堪えると思う。
価格的なエントリーを購入してもハイエンドと変わらない満足感を得られる
今回、iPhone 12 ProとiPhone 12を試用してみて感じたのは、それぞれの機種を使っていて基本的な体験、品質に違いがないこと。ケースを装着していたら、もうどっちの機種を使っているのかわからないし、広角カメラで撮影すればどちらの写真か判別できないのだ。
もちろん利用できる機能に違いはあるが、それ以外の使い勝手はまったくと言っていいほど変わらない。iPhone 12というシリーズのなかで通常モデルを購入しても、ハイエンドと変わらない満足感を得られる稀有な製品だと思う。