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NEC PC、画面が鳴るなどディスプレイ一体デザインで洗練化されたリビング向けPC「LAVIE Home All-in-one」
2020年2月13日 11:00
NECパーソナルコンピュータ(NEC PC)は1月21日、ノートPCや一体型PCなど、多数の2020年春モデルを発表した。本稿ではそのなかから、一体型PCの新モデルとなる「LAVIE Home All-in-one」シリーズの最上位モデルとなる「HA970/RA」を取り上げる。
同シリーズは従来モデルからコンセプトを一新して、デザインを含めフルモデルチェンジをはたすとともに、CPUに第10世代Coreプロセッサー(Comet Lake)を採用するなど、性能面でも進化を遂げている。発売は2月13日を予定しており、HA970/RAの店頭予想価格は244,800円前後の見込みだ。
前方からはほぼディスプレイしか見えない斬新なデザイン
従来モデルとなるLAVIE Desk All-in-oneシリーズは、個人が趣味から仕事まで活用できる、パーソナルな一体型(オールインワン)PCとして進化を遂げてきた。
ただ、実際に家庭で一体型PCを利用しているNEC PCのユーザーアンケートでは、一体型PCをリビングルームに置き、家族で共用している人が想像以上に多かったという。
そういったユーザーの利用状況を考慮しつつ、リビングルームに設置して家族で共有しながら利用するメインPCというコンセプトのもとフルモデルチェンジをはたしたのが、ここでレビューする「LAVIE Home All-in-one H970/RA」(以下、H970/RA)だ。
外観で目を引くのが、正面から見るとほぼディスプレイしか見えない斬新な本体デザインだ。H970/RAは27型液晶を搭載する一体型PCだが、ディスプレイは超狭額縁仕様で、PC本体部は背面キックスタンドに内蔵。これにより、正面から見るとディスプレイしか存在しないような雰囲気を実現している。
「フローティング・カフェボードデザイン」と呼ばれるそのデザインは、リビングルームに違和感なく設置できることを想定したもの。近年は、大型液晶TVも超狭額縁仕様で正面からはほぼ画面しか見えないようなデザインを採用する製品が多数を占めているが、H970/RAもPCらしさが直接感じられず、リビングルームに設置してもまったく周りに溶け込みやすいだろう。
本体サイズは、ディスプレイをもっとも立てた状態で615.4×186.3×361.1mm(幅×奥行き×高さ)、ディスプレイをもっとも寝かせた状態で615.4×286.1×343.4mm(同)となる。ディスプレイ上部には、従来モデル同様に収納型のカメラユニットがあり、そのカメラユニットを出した状態では高さが25.6mmほど増える。重量は約10.7kg。
ディスプレイ面の角度は、ほぼ垂直から28度ほどの間で自由に調節可能。ディスプレイ側の底面には滑りにくいゴム足が、キックスタンドの底面には滑りやすい樹脂製の足があり、ディスプレイ上部を奥に押し込むとキックスタンドが後方に開いて倒れていく。逆にディスプレイ上部を手前に引くとキックスタンドが閉じ、ディスプレイが立つことになる。
角度調節に強い力は不要。比較的軽い力押すだけでディスプレイが倒れるし、手前に引くとディスプレイが立つ。どの角度でも安定して自立するので、勝手に角度が変わる心配もない。
ただし、こういった仕様のため、設置場所後方にキックスタンドが開く移動できるだけの十分なスペースが必要となる。実測では垂直に立てた状態からもっとも寝かせるまでに、キックスタンドが135mmほど後方に移動することを確認したので、後方の壁いっぱいに設置するのは少々難しい。
また、キックスタンドをスムーズに開閉するには、設置面がなるべく固くなめらかな場所である必要がある。布を敷いた場所などではうまく開閉できないので注意が必要だ。
液晶画面がスピーカーとして機能する「Crystal Sound Display」採用
H970/RAは、フルHD(1,920×1,080ドット)表示対応の27型液晶を採用している。タッチパネルは非搭載。ディスプレイの種類はIPSで、十分な広視野角を確保。具体的な仕様は公表していないが、高色純度表示にも対応しているとのこと。実際に発色はこのクラスの一体型PCとして申し分ないレベルで、映像コンテンツの視聴はもちろん、デジカメ写真のレタッチ作業などもまったく問題がないと感じる。なお、ディスプレイ表面は光沢仕様で、外光の映り込みはやや激しい。
ところで、H970/RAのディスプレイは、液晶画面自体を振動させて音を出す「Crystal Sound Display」というスピーカーが使われている。特別新しいものではなく、同社は過去に「SoundVu(サウンドビュー)」という画面を振動させて音を鳴らすデスクトップPCやノートPCを発売していた。H970/RAに搭載するCrystal Sound Displayも、SoundVuとほぼ同じ仕様となっている。
具体的には、液晶パネル背面に振動素子を取りつけることで液晶パネル自体を振動させ、スピーカーとして機能させている。振動素子は、1.5Wのフルレンジ×2と1.2Wのツイーター×2の4ユニット構成となっている。
これまでNEC PCの一体型PCでは、高音質スピーカーで音質を追求した製品が多かった。たとえば従来モデルのLAVIE Desk All-in-one 27型モデルでは、ヤマハと共同開発したハイレゾ対応スピーカーを搭載しており、優れた音響性能を売りとしていた。
対するH970/RAのCrystal Sound Displayは、ハイレゾ対応とはなっていない。とは言っても、中音から高音の伸びはかなり優れており、ボリュームを上げても音がこもったり濁ったりしていない。やや低音が足りないという印象もあるが、一体型PCのなかでもトップクラスの音質と感じる。
また、画面自体がスピーカーとして機能するため、映像と音の一体感はすばらしい。映画などでは登場人物のセリフが画面内の登場人物から直接聞こえてくるような感覚となるため、映像コンテンツへの没入感はかなり優れている。ステレオ感も申し分なく、音の広がりも一般的なステレオスピーカーと何ら変わらない。
おそらく、絶対的な音質はハイレゾ再生に対応する従来モデルのスピーカーに劣るはずだ。それでも、シンプルなフローティング・カフェボードデザインを実現するために、Crystal Sound Displayの採用に踏み切ったのだろう。とはいえ、多くのユーザーが申し分ないと感じるであろう実際の音質や、映像とサウンドの優れた一体感などを考えると、Crystal Sound Displayの採用は十分に成功していると言えそうだ。
ボイスコントロール機能は、声でのシャットダウンも可能に
従来モデルでもボイスコントロール機能が搭載されていたが、H970/RAではさらなる進化を実現。従来モデルでも搭載していた、「LAVIE起きて」と呼びかけるだけでPCを起動できる「Voice起動」機能はそのままに、H970/RAでは声でPCのスリープ移行やシャットダウンも行なえるようになった。
また、NEC PCオリジナルのボイスエンジン「LAVIE AIエージェント」の搭載で、一部アプリの音声コントロールも可能となった。対応アプリは、LAVIEシリーズに搭載されるインフォメーションアプリ「インフォボード」や、内蔵TVチューナーの視聴アプリ「SmartVision」、音楽再生アプリ「HGrand Music Player」で、声だけで最新情報を表示したり、TVの視聴、音楽の再生などが行なえる。
このほか、カメラで撮影した顔情報をもとに、PC起動時にPCの前にいる人を認識して、あらかじめ設定したホームページを表示したり、特定のアプリを起動するといった機能も搭載している。これは、1台のPCを複数のユーザーで使い分けることを想定したものだが、PCで利用するアプリがほぼ決まっているという場合には便利に活用できそうだ。
ところで、これらボイスコントロール機能やカメラを利用したユーザー特定機能を利用するには、ディスプレイ上部のカメラユニットを出しておく必要がある。なぜなら、このカメラユニットには720p対応のWebカメラに加えて、広範囲の音声を効率良く集音できる4つのマイクを搭載しているからだ。逆に言うと、カメラユニットをしまった状態ではマイクがうまく機能せず、ボイスコントロール機能もきちんと活用できなくなる。
それら機能を利用したいなら、つねにカメラユニットを出さなければならず、そうなるとせっかくのシンプルな本体のデザイン性がやや失われてしまう。ディスプレイが超狭額縁仕様なので難しい部分もあるとは思うが、超小型カメラをディスプレイ上部のベゼル部分に配置したり、マイクもディスプレイ上部側面に配置するなどして、カメラユニットを出し入れせずともボイスコントロール機能や顔認識機能を利用できればさらに洗練されていたはずだ。
第10世代Core i7を採用し、HDMIからの映像入力も可能
H970/RAの基本的なスペックを確認しよう。CPUは、第10世代Coreプロセッサー(Comet Lake)、Core i7-10510Uを採用。Comet Lakeでも、6コア12スレッド処理対応のCore i7-10710Uではない点は少々残念だが、それでも従来モデルの第8世代Core i7から正統進化を遂げ、処理能力が向上している。
メモリは標準でDDR4-2666を8GB(4GB×2)搭載。できれば標準で16GBのメモリ搭載してもらいたかったが、メモリースロットには背面から容易にアクセスでき、初期搭載メモリモジュールを外す必要はあるが、最大32GBまで増設可能となっているため、必要に応じて強化できる点はありがたい。
内蔵ストレージは、容量256GBのPCIe SSDと容量3TBのHDDを同時搭載。H970/RAでは地上/BS/110度CSデジタルダブルチューナーを搭載し、TV番組の録画も行なえるため、3TBのHDDならTV録画も安心して行なえる。
OSやアプリはSSD側にインストールされるため動作は軽快で、H970/RAがターゲットとするリビングルームで家族が共有して利用するPCということを考えると、SSDの容量も必要十分と言える。このほか、ディスプレイ部右側面にBDXL対応のBDドライブも標準搭載しているため、録画番組の書き出しなども容易だ。
キーボードおよびマウスは、いずれもワイヤレス接続のものが付属。キーボードは小型で、立てて収納できる設計となっているため、収納性に優れる。マウスは一般的なホイールつきマウスとなる。加えて、TVアプリの起動やチャンネル切り替えなどが行なえる専用の無線リモコンも付属する。
外部ポートは、キックスタンド部右側面にSDカードスロット、USB 3.1×2、オーディオジャックがあり、キックスタンド背面側にHDMI入力、USB 3.0×3、内蔵チューナー用mini B-CASカードスロット、Gigabit Ethernet、アンテナ入力をそれぞれ用意。
HDMI入力端子には、外部映像機器や家庭用ゲーム機などを接続し、H970/RAのディスプレイに映像を表示できるもので、左側面の入力切り替えボタンや無線リモコンの入力切り替えボタンを押すことで表示を切り替えられる。
電源はACアダプタを利用する。ややサイズは大きいものの、基本的にノートPCのように持ち運んで利用することがないため、とくに問題とはならないだろう。
不満のない十分な性能を発揮
では、簡単にベンチマークテストの結果を紹介しよう。
今回利用したベンチマークソフトは、UL LLCの「PCMark 10 v2.0.2144」、「PCMark 8 v2.8.704」、「3DMark Professional Edition v2.11.6866」、Maxonの「CINEBENCH R20.060」の4種類だ。
【表1】LAVIE Home All-in-one HA970/RAのスペック | |
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CPU | Core i7-10510U(4コア/8スレッド、1.8~4.9GHz) |
ビデオチップ | Intel Iris Plus Graphics |
メモリ | DDR4-2666 SDRAM 8GB |
ストレージ | 256GB SSD(PCIe)+3TB HDD |
OS | Windows 10 Home 64bit |
【表2】LAVIE Home All-in-one HA970/RAのベンチマーク結果 | |
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PCMark 10 | v2.0.2144 |
PCMark 10 Score | 4,443 |
Essentials | 9,837 |
App Start-up Score | 15,341 |
Video Conferencing Score | 7,723 |
Web Browsing Score | 8,036 |
Productivity | 7,210 |
Spreadsheets Score | 8,060 |
Writing Score | 6,451 |
Digital Content Creation | 3,358 |
Photo Editing Score | 4,193 |
Rendering and Visualization Score | 2,134 |
Video Editting Score | 4,235 |
PCMark 8 | v2.8.704 |
Home Accelarated 3.0 | 3,739 |
Creative accelarated 3.0 | 3,799 |
Work accelarated 2.0 | 5,165 |
Storage | 5,076 |
CINEBENCH R20.060 | |
CPU | 1,512 |
CPU (Single Core) | 440 |
3DMark Professional Edition | v2.11.6866 |
Night Raid | 5,796 |
Graphics Score | 5,764 |
CPU Score | 5,988 |
Sky Diver | 4,871 |
Graphics Score | 4,504 |
Physics Score | 8,585 |
Combined score | 4,695 |
各ベンチマークテストの結果は、第10世代Core i7 Uプロセッサー搭載のノートPCとほぼ同等レベルとなっている。ゲーミングPCなどハイエンドデスクトップPCと比べると全体的に見劣りするかもしれないが、H970/RAがターゲットとする用途を考えると、申し分ない性能が発揮されている。
強いて厳しい場面があるとすれば、最新の3Dゲームをプレイする場面などが考えられるが、H970/RAのような家庭で家族が共有して利用する一体型PCで3Dゲームをバリバリプレイするといったことはもともと想定されておらず、これがが欠点となることはない。そのため、性能面で不満を感じる場面はほぼないと考えていいだろう。
デザイン性重視の一体型PCとして魅力的な存在
H970/RAは、従来モデルにはない新しいデザインであるフローティング・カフェボードデザインを採用する点が、なんと言っても最大の特徴となっている。過去にも、このような背面のキックスタンドを利用する一体型PCも存在していたが、27型と比較的大型のディスプレイを搭載する一体型PCとしては非常に希で、斬新な印象が強い。
また、ディスプレイがスピーカーとして動作するCrystal Sound Displayも、想像以上に音質が優れるだけでなく、映像と音との一体感が大きく高められ優れた没入感につながるため、大きな魅力となっている。
構造的に、後方の可動域が大きくなり設置面にも制約が発生するため、利便性という部分ではディスプレイ部分のみでチルト角度調節が行なえた従来モデルからやや後退しているという印象もある。
ただ、デザイン的にはH970/RAのフローティング・カフェボードデザインのほうがリビングルームにはしっくりくると感じる。デザインと利便性のどちらを取るかによるが、リビングルームに設置するならやはりデザインを重視したいと考えるユーザーが多数のはずで、利便性の問題点を考慮してもH970/RAは満足度が高いだろう。
音声コントロールに関しては、どちらかというとおまけと捉えたほうがいいと思うが、リビングルームに設置したPCでは、使いたくても手をふれられないといったシチュエーションが発生する可能性が高く、便利に活用できる場面もありそうだ。
とはいえ、家族で共有して利用することを考えると、できればWindows Hello対応の顔認証カメラを搭載してもらいたかった。H970/RAにもWebカメラを使った顔認識機能は用意されているが、個々のプライバシーを簡単に高められるという意味でも、今後搭載の方向で考慮してもらいたい。
性能面も含めて完成度は申し分なく、広くおすすめできる一体型PCと言える。H970/RAがメインターゲットとしている家族で共有しリビングルームに設置して利用するメインPCという用途はもちろん、TV機能の搭載やHDMI入力に外部映像機器やゲーム機などを接続して利用できるという特徴を考えると、パーソナルPCとしてもおおいに活躍してくれるはずだ。