Hothotレビュー
15.6型でもモバイルできる1.399kgのクラムシェル「dynabook Z8」を試す
2019年10月18日 11:00
Dynabookが9月20日に発売した「dynabook Z」シリーズは、15.6型ワイド液晶を搭載しながらも、1.399kgとかなり軽量なノートPCである。フレームには剛性の高いマグネシウム合金を採用するほか、堅牢性を高めるさまざまな仕組を取り入れており、モバイルでの利用も想定したノートPCだ。
そこで今回は、このdynabook Zを実際に持ち歩いて利用したさいの使い勝手や、パワフルなCPUやストレージ構成による基本性能などを検証していこう。
高級感のある筐体、持ち運ぶさいは鞄のサイズに注意
dynabook Zシリーズは、CPUやメモリの容量、ストレージ構成などが異なる2種類のモデルを用意している。今回使用したのは上位モデルの「dynabook Z8」で、CPUには4コア/8スレッド実行に対応する「Core i7-8565U(1.8GHz)」、メモリは16GB、ストレージは512GBのSSDに32GBのOptane Memoryを組み合わせた「Optane Memory H10」を搭載しており、実売価格は23万円前後。
dynabook Z8 | dynabook Z7 | |
---|---|---|
CPU | Core i7-8565U(4コア/8スレッド、1.8~4.6GHz) | Core i5-8265U(4コア/8スレッド、1.6~3.9GHz) |
GPU | UHD Graphics 620 | |
メモリ | DDR4-2400 16GB(8GB×2) | DDR4-2400 8GB(4GB×2) |
ストレージ | PCIe SSD 512GB+OptaneメモリーH10 32GB(SSD対応) | SATA SSD 256GB |
光学ドライブ | - | |
ディスプレイ | 15.6型フルHD非光沢IGZO液晶 | |
解像度 | 1,920×1,080ドット | |
OS | Windows 10 Home | |
バッテリ駆動時間 | 約19時間 | |
汎用ポート | Thunderbolt 3(DisplayPort、USB PD対応)×2、USB 3.0×2 | |
カードリーダ | microSDカードスロット | |
映像出力 | Thunderbolt 3、HDMI | |
無線機能 | IEEE 802.11ax、Bluetooth 5.0 | |
有線LAN | - | |
Webカメラ | 92万画素 | |
その他 | 顔認証センサー、指紋認証センサー、harman/kardonステレオスピーカー、デュアルマイク、音声入出力端子 | 指紋認証センサー、harman/kardonステレオスピーカー、デュアルマイク、音声入出力端子 |
付属品 | ワイヤレスマウス | |
付属ソフト | Office Home & Business 2019 | |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 約385×271×27.9mm | |
重量 | 約1.399kg | |
本体色 | オニキスブルー、パールホワイト | |
発売日 | 発売中(パールホワイトは11月下旬) |
筐体はマグネシウム合金製で、カラーは濃いグレーを採用。表面加工のおかげか指紋が付きにくく、汚れが目立たないのもうれしい。シルバーのdynabookロゴは比較的大きめではあるが、シンプルでうるささを感じない。全体的に高級感のあるデザインだ。厚さ17.6mmと薄型なこともあり、刀のような美しさを感じさせる。
15.6型ワイド液晶を搭載するノートPCと言えば、2~2.5kg台のホームノートPCが主流だが、本機は1.399kgとかなり軽い。試用モデルを実際に計測してみると1.341kgで、スペックの数値よりもさらに約50g軽かった。
鞄に入れて持ち歩いてみたが、同じく15.6型ワイド液晶を搭載するレノボのビジネス向け低価格ノートPC「ThinkPad E560」(重さは2.48kg)と比べると、明らかに軽い。ビジネス向けのモバイルノートPCと同様、普通に持ち歩けるレベルだ。
ただ搭載する液晶サイズが大きいこともあり、幅や奥行きも大きい。狭額縁のデザインを採用するとは言え、幅は359mm、奥行きは250mmある。筆者がよく利用しているビジネスバッグでは、13~14型のビジネス向けモバイルノートPCならスッと入るが、本機はファスナーを最大限に広げないとスムーズに入らない。見やすさや使いやすさとのトレードオフではあるが、バッグとの相性も考えておく必要はありそうだ。
キーボードはテンキーレスタイプで、本体の中央付近に装備している。同じサイズの液晶を搭載するホームノートPCでは、横幅いっぱいを使ってテンキーも装備することが多いのだが、そうなるとメインキーが左に寄ってしまう。画面の中央を向いて作業し難くなるため、あえてテンキーは省いたのだろう。
タッチのフィーリングは軽めで、ストロークはノートPCでは一般的なあまり深くないタイプだ。キートップを軽くタンタンと軽快にタイプしていくユーザーなら好みのだと思う。キートップにはわずかなへこみがあり、指先で引っかかりを意識することで正しい位置でタイプしやすいのも便利だ。
タッチパッドは、本体が大きいこともあってかなり広い。マルチタッチを使ってスクロールしたり、画像を拡大縮小したりするときも、ゆったりと作業できる。12~13型液晶を搭載し、タッチパッドが小さめなモバイルノートPCでは味わえない感覚だ。
タッチパッドの左上にあるのは、指紋認証用のセンサーだ。指先でさわるだけで、Windows 10へのサインインなどが行なえる。丸いセンサーではなく細長いセンサーなので、指先を擦りつける必要があるのかと思ったが、実際は軽くふれるだけでよい。認識速度は、ほかのノートPCが搭載する指紋センサーと変わらない。
このほか、Windows Helloに対応する顔認証機能が利用できるWebカメラを備えており、カメラの方向を見るだけで簡単にサインインできる。カメラがユーザーを認識すると、一瞬でサインイン作業を終えてデスクトップを表示するので、「休憩に入るために画面をロック」→「休憩から戻って作業開始」という流れがスムーズになる。
大型モデルなのでしっかり固定できる場所で使いたい
モバイルノートPCとして使う上では、さまざまな場所でどのような使い勝手になるかも気になるだろう。まずは、神保町のサンマルクカフェでモバイルしてみた。ここには直径が50cm前後の丸テーブルがあるが、このテーブルにdynabook Z8を載せてみると、テーブル1つをほぼ占有してしまう。
また同席者がいることを想定して半分くらいしか使わないようにすると、手前側に本体がはみだしてしまう。もちろんマウスなどもってのほかだ。こうして本体がはみだした状態だと、手を休めるときにパームレストに力が入り、ガタンと本体が揺らぐことある。底面がしっかりとホールドされる場所を選びたい。
次に東北新幹線の指定席に付随する簡易テーブルにも載せてみたところ、底面がテーブルいっぱいに広がる感じだ。マウスを使うほどのスペースはないが、サンマルクカフェの丸テーブルで使ったときのような不安定感はない。
12~13型クラスのモバイルノートPCと比べると、キーボードがやや遠く感じるのは事実だが、タイピングに支障を感じるほどではない。また画面サイズが大きいため、ちょっとくらい遠くても文字やアイコンの視認性は良好だ。
こうしたしっかりした作業スペースを確保できないときは、膝の上でノートPCを使う、という人もいる。ただ、筐体が大きなdynabook Z8を膝に乗せると、ヒンジ部分が膝先のほうまで到達してしまい、滑り落ちてしまいそうになることもあった。
後述するが液晶が非常に美しいため、見下ろした状態でも視認性や色再現性は非常に高い。しかしタイピングに夢中になって本体を支えるのを忘れると、スーッと下に落ちてしまいそうになる。小さなテーブルのときと同じで、無理にこうした場所で使うのはオススメできない。
また今回のモバイル環境でのテストでは、バッテリをフル充電状態にした状態で2時間スリープして持ち歩き、3時間ほどタイピングやWebブラウズ、フォトレタッチなどの軽作業を行なった。その後2時間ほどスリープして電車に乗り、事務所に戻っている。設定は「バッテリー節約機能」を有効にして、液晶の輝度は40にしている。
およそ半日程度の出張作業を想定した内容だが、事務所に戻ったときのバッテリの残り容量は72%といったところ。かなり余裕のある状態であり、1日仕事でも不安を感じることはなさそうだ。
基本性能が非常に高い上、液晶の表示品質に注目
搭載するCPUは、第8世代のCore iシリーズでも上位モデルにあたる「Core i7-8565U」。4コア/8スレッド対応でメモリやSSDの容量も大きく、ビジネス用途であれば問題なくこなせるレベルだ。いくつか主要なベンチマークテストを走らせてみた結果はこちら。
PCMark 10 Extended v2.0.2115 | |
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PCMark 10 Extended score | 2,830 |
Essentials | 8,534 |
App Start-up score | 11,708 |
Video Conferencing score | 6,969 |
Web Browsing score | 7,620 |
Productivity | 6,881 |
Spreadsheets score | 8,152 |
Writing score | 5,809 |
Digital Content Creation | 3,023 |
Photo Editing score | 3,875 |
Rendering and Visualization score | 1,861 |
Video Editting score | 3,833 |
Gaming | 978 |
Graphics score | 1,289 |
Physics score | 9,248 |
Combined score | 394 |
PCMark 10 Battery Test v2.0.2115 ※バッテリー節約機能有効、輝度40 | |
MODERN OFFICE | 9時間10分 |
3DMark v2.10.6797 | |
Time Spy | 446 |
Fire Strike | 1,196 |
Sky Diver | 4,612 |
CINEBENCH R15.0 | |
CPU | 491cb |
CPU(Single Core) | 166cb |
システムSSDをCrystalDiskMark 6.0.2で計測 | |
Q32T1 シーケンシャルリード | 2384.8 MB/s |
Q32T1 シーケンシャルライト | 1142.7 MB/s |
4K Q8T8 ランダムリード | 597.7 MB/s |
4K Q8T8 ランダムライト | 312.4 MB/s |
4K Q32T1 ランダムリード | 312.5 MB/s |
4K Q32T1 ランダムライト | 339.8 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリード | 139 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 132 MB/s |
TMPGEnc Video Mastering Works 7 ※解像度1,920×1,080ドットでビットレート15~16Mbps、約3分の動画をH264/AVCとH.265/HEVC形式で圧縮、パラメータは標準のまま変更なし | |
H.264/AVC | 8分2秒 |
H.264/AVC(Quick Sync Video有効) | 1分 |
H.265/HEVC | 14分1秒 |
H265/HEVC(Quick Sync Video有効) | 1分40秒 |
CPU内蔵GPUなので、外づけのGPUを搭載しているモデルに比べると3D描画性能は低くなる。とはいえ、最新のPCゲームをガンガンプレイしたいという人向けのPCではないので、弱点というわけではない。
ストレージは、512GBのNVMe対応SSDに32GBのOptane Memoryを組み合わせ、1個のM.2対応SSDとしたOptane Memory H10だ。高速なOptane Memoryをキャッシュとして利用し、Dynabookによれば、PCゲームの起動は最大約3.7倍高速化、動画など大容量のファイル編集も最大約78%高速化するという。
気になるリード/ライト性能は、CrystalDiskMark 6.0.2によるとシーケンシャルリードは2.4GB/s以上、シーケンシャルライトは1.2GB/s。デスクトップPC向けの高速なPCI Express接続のM.2対応SSDに比べればやや遅いとはいえ、一般的な2.5インチSSDと比べれば段違いに早い。
とくにOSやアプリの起動速度、1つ1つの操作に対する反応速度はすばやく、ストレスを感じない。また今回行なったモバイル環境テストでは、スリープやそこからの復帰作業を行なう機会も多いため、こういう際にも高速なストレージの強さが生きてくる。
液晶ディスプレイは、シャープの誇る「IGZO液晶」を採用しており、前後左右どこから見ても色の変化はほとんどない。また赤や緑、黒の表現力はかなり高く、立体感のある映像が楽しめた。
筆者が試用したここ数年のノートPCのなかでも、有機EL搭載モデルを除けば突出した表現力であり、撮影した画像の確認用として持ち歩くのもよい。おなじみharman/kardonのスピーカーと合わせて利用すれば、ネット配信の映画もグッと楽しく鑑賞できるだろう。
インターフェイスは左右の側面に振り分けられており、左側面には2基のUSB 3.0ポート、右側面には2基のType-CとHDMI、microSDカードスロットを備える。
USB Type-CはThunderbolt対応で、充電やDisplayPort Alternative Modeによるディスプレイ出力にも対応する。付属するACアダプタのコネクタもType-C形状だが、一般的なUSB PD対応の充電器経由での充電も可能だ。
有線LANポートは搭載しない。しかし今回は環境がないため試せなかったが、最新の「Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)」に対応する。同規格が使える無線LANブロードバンドルーターがセットアップされた環境であれば、有線LANほどではないにせよ、かなり高速にデータ通信が行なえるはずだ。