Hothotレビュー

15.6型でもモバイルできる1.399kgのクラムシェル「dynabook Z8」を試す

15.6型ワイドと、A4型ホームノートPCと同等の液晶パネルを搭載する「dynabook Z」

 Dynabookが9月20日に発売した「dynabook Z」シリーズは、15.6型ワイド液晶を搭載しながらも、1.399kgとかなり軽量なノートPCである。フレームには剛性の高いマグネシウム合金を採用するほか、堅牢性を高めるさまざまな仕組を取り入れており、モバイルでの利用も想定したノートPCだ。

 そこで今回は、このdynabook Zを実際に持ち歩いて利用したさいの使い勝手や、パワフルなCPUやストレージ構成による基本性能などを検証していこう。

高級感のある筐体、持ち運ぶさいは鞄のサイズに注意

 dynabook Zシリーズは、CPUやメモリの容量、ストレージ構成などが異なる2種類のモデルを用意している。今回使用したのは上位モデルの「dynabook Z8」で、CPUには4コア/8スレッド実行に対応する「Core i7-8565U(1.8GHz)」、メモリは16GB、ストレージは512GBのSSDに32GBのOptane Memoryを組み合わせた「Optane Memory H10」を搭載しており、実売価格は23万円前後。

【表】dynabook Zシリーズのスペック
dynabook Z8dynabook Z7
CPUCore i7-8565U(4コア/8スレッド、1.8~4.6GHz)Core i5-8265U(4コア/8スレッド、1.6~3.9GHz)
GPUUHD Graphics 620
メモリDDR4-2400 16GB(8GB×2)DDR4-2400 8GB(4GB×2)
ストレージPCIe SSD 512GB+OptaneメモリーH10 32GB(SSD対応)SATA SSD 256GB
光学ドライブ-
ディスプレイ15.6型フルHD非光沢IGZO液晶
解像度1,920×1,080ドット
OSWindows 10 Home
バッテリ駆動時間約19時間
汎用ポートThunderbolt 3(DisplayPort、USB PD対応)×2、USB 3.0×2
カードリーダmicroSDカードスロット
映像出力Thunderbolt 3、HDMI
無線機能IEEE 802.11ax、Bluetooth 5.0
有線LAN-
Webカメラ92万画素
その他顔認証センサー、指紋認証センサー、harman/kardonステレオスピーカー、デュアルマイク、音声入出力端子指紋認証センサー、harman/kardonステレオスピーカー、デュアルマイク、音声入出力端子
付属品ワイヤレスマウス
付属ソフトOffice Home & Business 2019
本体サイズ(幅×奥行き×高さ)約385×271×27.9mm
重量約1.399kg
本体色オニキスブルー、パールホワイト
発売日発売中(パールホワイトは11月下旬)

 筐体はマグネシウム合金製で、カラーは濃いグレーを採用。表面加工のおかげか指紋が付きにくく、汚れが目立たないのもうれしい。シルバーのdynabookロゴは比較的大きめではあるが、シンプルでうるささを感じない。全体的に高級感のあるデザインだ。厚さ17.6mmと薄型なこともあり、刀のような美しさを感じさせる。

中央にdynabookのロゴが入ったおなじみのデザイン

 15.6型ワイド液晶を搭載するノートPCと言えば、2~2.5kg台のホームノートPCが主流だが、本機は1.399kgとかなり軽い。試用モデルを実際に計測してみると1.341kgで、スペックの数値よりもさらに約50g軽かった。

 鞄に入れて持ち歩いてみたが、同じく15.6型ワイド液晶を搭載するレノボのビジネス向け低価格ノートPC「ThinkPad E560」(重さは2.48kg)と比べると、明らかに軽い。ビジネス向けのモバイルノートPCと同様、普通に持ち歩けるレベルだ。

スペックシートより2g重かったが、十分軽い

 ただ搭載する液晶サイズが大きいこともあり、幅や奥行きも大きい。狭額縁のデザインを採用するとは言え、幅は359mm、奥行きは250mmある。筆者がよく利用しているビジネスバッグでは、13~14型のビジネス向けモバイルノートPCならスッと入るが、本機はファスナーを最大限に広げないとスムーズに入らない。見やすさや使いやすさとのトレードオフではあるが、バッグとの相性も考えておく必要はありそうだ。

 キーボードはテンキーレスタイプで、本体の中央付近に装備している。同じサイズの液晶を搭載するホームノートPCでは、横幅いっぱいを使ってテンキーも装備することが多いのだが、そうなるとメインキーが左に寄ってしまう。画面の中央を向いて作業し難くなるため、あえてテンキーは省いたのだろう。

 タッチのフィーリングは軽めで、ストロークはノートPCでは一般的なあまり深くないタイプだ。キートップを軽くタンタンと軽快にタイプしていくユーザーなら好みのだと思う。キートップにはわずかなへこみがあり、指先で引っかかりを意識することで正しい位置でタイプしやすいのも便利だ。

テンキーがないせいか、両脇のスペースやパームレストはかなり広く取られている

 タッチパッドは、本体が大きいこともあってかなり広い。マルチタッチを使ってスクロールしたり、画像を拡大縮小したりするときも、ゆったりと作業できる。12~13型液晶を搭載し、タッチパッドが小さめなモバイルノートPCでは味わえない感覚だ。

 タッチパッドの左上にあるのは、指紋認証用のセンサーだ。指先でさわるだけで、Windows 10へのサインインなどが行なえる。丸いセンサーではなく細長いセンサーなので、指先を擦りつける必要があるのかと思ったが、実際は軽くふれるだけでよい。認識速度は、ほかのノートPCが搭載する指紋センサーと変わらない。

指紋センサーは、タッチするだけでよいタイプだ
設定アプリの[アカウント]にある[サインインオプション]から、指紋認証のウィザードを実行して指紋を登録

 このほか、Windows Helloに対応する顔認証機能が利用できるWebカメラを備えており、カメラの方向を見るだけで簡単にサインインできる。カメラがユーザーを認識すると、一瞬でサインイン作業を終えてデスクトップを表示するので、「休憩に入るために画面をロック」→「休憩から戻って作業開始」という流れがスムーズになる。

Webカメラは赤外線センサーを搭載しており、顔認証機能が利用できる
Webカメラを利用しないときは、シャッターで物理的に覆ってしまうことが可能
顔認証機能も[アカウント]の[サインインオプション」から設定する

大型モデルなのでしっかり固定できる場所で使いたい

 モバイルノートPCとして使う上では、さまざまな場所でどのような使い勝手になるかも気になるだろう。まずは、神保町のサンマルクカフェでモバイルしてみた。ここには直径が50cm前後の丸テーブルがあるが、このテーブルにdynabook Z8を載せてみると、テーブル1つをほぼ占有してしまう。

 また同席者がいることを想定して半分くらいしか使わないようにすると、手前側に本体がはみだしてしまう。もちろんマウスなどもってのほかだ。こうして本体がはみだした状態だと、手を休めるときにパームレストに力が入り、ガタンと本体が揺らぐことある。底面がしっかりとホールドされる場所を選びたい。

小さな丸テーブルだと、PCの底面がテーブルからはみだしてしまった

 次に東北新幹線の指定席に付随する簡易テーブルにも載せてみたところ、底面がテーブルいっぱいに広がる感じだ。マウスを使うほどのスペースはないが、サンマルクカフェの丸テーブルで使ったときのような不安定感はない。

 12~13型クラスのモバイルノートPCと比べると、キーボードがやや遠く感じるのは事実だが、タイピングに支障を感じるほどではない。また画面サイズが大きいため、ちょっとくらい遠くても文字やアイコンの視認性は良好だ。

新幹線のテーブルならピッタリサイズ、ただしマウスを利用するスペースはない

 こうしたしっかりした作業スペースを確保できないときは、膝の上でノートPCを使う、という人もいる。ただ、筐体が大きなdynabook Z8を膝に乗せると、ヒンジ部分が膝先のほうまで到達してしまい、滑り落ちてしまいそうになることもあった。

 後述するが液晶が非常に美しいため、見下ろした状態でも視認性や色再現性は非常に高い。しかしタイピングに夢中になって本体を支えるのを忘れると、スーッと下に落ちてしまいそうになる。小さなテーブルのときと同じで、無理にこうした場所で使うのはオススメできない。

膝の上に載せて使ってみるとこのとおり。ヒンジ側がやや重いせいか、ジーンズの上でジワジワと後ろにずれていってしまう

 また今回のモバイル環境でのテストでは、バッテリをフル充電状態にした状態で2時間スリープして持ち歩き、3時間ほどタイピングやWebブラウズ、フォトレタッチなどの軽作業を行なった。その後2時間ほどスリープして電車に乗り、事務所に戻っている。設定は「バッテリー節約機能」を有効にして、液晶の輝度は40にしている。

 およそ半日程度の出張作業を想定した内容だが、事務所に戻ったときのバッテリの残り容量は72%といったところ。かなり余裕のある状態であり、1日仕事でも不安を感じることはなさそうだ。

基本性能が非常に高い上、液晶の表示品質に注目

 搭載するCPUは、第8世代のCore iシリーズでも上位モデルにあたる「Core i7-8565U」。4コア/8スレッド対応でメモリやSSDの容量も大きく、ビジネス用途であれば問題なくこなせるレベルだ。いくつか主要なベンチマークテストを走らせてみた結果はこちら。

【表2】ベンチマーク結果
PCMark 10 Extended v2.0.2115
PCMark 10 Extended score2,830
Essentials8,534
App Start-up score11,708
Video Conferencing score6,969
Web Browsing score7,620
Productivity6,881
Spreadsheets score8,152
Writing score5,809
Digital Content Creation3,023
Photo Editing score3,875
Rendering and Visualization score1,861
Video Editting score3,833
Gaming978
Graphics score1,289
Physics score9,248
Combined score394
PCMark 10 Battery Test v2.0.2115
※バッテリー節約機能有効、輝度40
MODERN OFFICE9時間10分
3DMark v2.10.6797
Time Spy446
Fire Strike1,196
Sky Diver4,612
CINEBENCH R15.0
CPU491cb
CPU(Single Core)166cb
システムSSDをCrystalDiskMark 6.0.2で計測
Q32T1 シーケンシャルリード2384.8 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト1142.7 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード597.7 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト312.4 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード312.5 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト339.8 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード139 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト132 MB/s
TMPGEnc Video Mastering Works 7
※解像度1,920×1,080ドットでビットレート15~16Mbps、約3分の動画をH264/AVCとH.265/HEVC形式で圧縮、パラメータは標準のまま変更なし
H.264/AVC8分2秒
H.264/AVC(Quick Sync Video有効)1分
H.265/HEVC14分1秒
H265/HEVC(Quick Sync Video有効)1分40秒

 CPU内蔵GPUなので、外づけのGPUを搭載しているモデルに比べると3D描画性能は低くなる。とはいえ、最新のPCゲームをガンガンプレイしたいという人向けのPCではないので、弱点というわけではない。

 ストレージは、512GBのNVMe対応SSDに32GBのOptane Memoryを組み合わせ、1個のM.2対応SSDとしたOptane Memory H10だ。高速なOptane Memoryをキャッシュとして利用し、Dynabookによれば、PCゲームの起動は最大約3.7倍高速化、動画など大容量のファイル編集も最大約78%高速化するという。

 気になるリード/ライト性能は、CrystalDiskMark 6.0.2によるとシーケンシャルリードは2.4GB/s以上、シーケンシャルライトは1.2GB/s。デスクトップPC向けの高速なPCI Express接続のM.2対応SSDに比べればやや遅いとはいえ、一般的な2.5インチSSDと比べれば段違いに早い。

 とくにOSやアプリの起動速度、1つ1つの操作に対する反応速度はすばやく、ストレスを感じない。また今回行なったモバイル環境テストでは、スリープやそこからの復帰作業を行なう機会も多いため、こういう際にも高速なストレージの強さが生きてくる。

 液晶ディスプレイは、シャープの誇る「IGZO液晶」を採用しており、前後左右どこから見ても色の変化はほとんどない。また赤や緑、黒の表現力はかなり高く、立体感のある映像が楽しめた。

 筆者が試用したここ数年のノートPCのなかでも、有機EL搭載モデルを除けば突出した表現力であり、撮影した画像の確認用として持ち歩くのもよい。おなじみharman/kardonのスピーカーと合わせて利用すれば、ネット配信の映画もグッと楽しく鑑賞できるだろう。

写真では伝わりにくいのだが、映像の表示能力は非常に高い

 インターフェイスは左右の側面に振り分けられており、左側面には2基のUSB 3.0ポート、右側面には2基のType-CとHDMI、microSDカードスロットを備える。

 USB Type-CはThunderbolt対応で、充電やDisplayPort Alternative Modeによるディスプレイ出力にも対応する。付属するACアダプタのコネクタもType-C形状だが、一般的なUSB PD対応の充電器経由での充電も可能だ。

左側面には2基のUSB 3.0ポートとサウンドポートなどを装備
右側面には2基のUSB Type-CとHDMIなどを装備
コンパクトなACアダプタを同梱しており、コネクタはType-C

 有線LANポートは搭載しない。しかし今回は環境がないため試せなかったが、最新の「Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)」に対応する。同規格が使える無線LANブロードバンドルーターがセットアップされた環境であれば、有線LANほどではないにせよ、かなり高速にデータ通信が行なえるはずだ。

3ボタンタイプのワイヤレスマウスを同梱する
裏蓋を外すと、電池ボックスとUSB接続のドングルを収納するスペースがある

モバイルできる15.6型ノートPCとしての完成度は抜群

 dynabook Z8の最大の利点は、15.6型ワイド液晶という大型液晶を搭載しながらも、十分モバイルできる重さを実現したこと。実際に外出先に持ち歩出して利用しても、その使い勝手や液晶の品質はいささかも失われず、使い勝手のよいノートPCであることは間違いない。

ACアダプタの重さは207gだった。dynabook Z8をいっしょに持ち歩いても1.6kg前後

 弱点らしい弱点と言えば、最近の1kg前後のモバイルノートPCのなかではちょっと高いこと。しかし、オフィスで利用するPCと、外出先で利用するPCを購入し、その2台のPC上で利用環境を構築することを考えれば、あながち高いとも言えないだろう。