Hothotレビュー
RTX 2070搭載でも置き場所に困らない超小型ゲーミングPC「ZOTAC MEK MINI」
~ミニチュアサイズと本格的なLEDライティングで抜群の存在感
2019年5月3日 11:00
株式会社ゾタック日本(ZOTAC)が新たに投入した「MEK MINI」は、デスクトップPCとしては非常にコンパクトなゲーミングPCだ。容積は9.18L。2Lのペットボトルを4本並べるよりちょっと大きいくらいのサイズになる。
同社はゲーミングPCとして「MEK」シリーズを展開しているが、同時にコンパクトPC「ZBOX」シリーズも展開している。「ZBOX」にはGPU搭載モデルもあり、数々の高性能コンパクトPCを手掛けてきている。
「MEK MINI」はデスクトップゲーミングPCの「MEK」シリーズでありながらも、「ZBOX」のようにコンパクトさも追及している。実際に製品に同梱されたマニュアル類に「ZBOX」の文字も見られることから、ZOTACとしても「MEK」と「ZBOX」を掛け合わせたような製品になっているのだろう。
コンパクトなゲーミングPCは国内での人気が高いことや、CPUやGPUなどの排熱処理が高性能化してきたことで、各社が新製品を展開してしのぎを削るホットな分野だ。そのなかで本機がどんなマシンに仕上がっているのか、試用して見ていきたい。
デスクトップ用コンポーネントでも超小型化を実現
「MEK MINI」のスペックは下記のとおり。
【表1】MEK MINIのスペック | |
---|---|
CPU | Core i7-8700(6コア/12スレッド、3.2~4.6GHz |
GPU | GeForce RTX 2070(GDDR6 8GB) |
チップセット | Intel B360 |
メモリ | DDR4-2666 16GB(8GB×2) |
ストレージ | NVMe M.2 SSD 240GB、HDD 2TB |
電源 | 230W ACアダプタ×2 |
OS | Windows 10 Home |
USB | USB 3.1×4、USB 3.0×2(1基はType-C) |
カードリーダ | SDXCカードスロット |
映像出力 | DisplayPort 1.4×2、USB Type-C(DisplayPort Alternative Mode)、HDMI 2.0b、DVI-D |
無線通信 | IEEE 802.11ac & Bluetooth 5.0(Killer AC 1550) |
有線LAN | Gigabit Ethernet×2 |
その他 | 音声入出力など |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 136×260.8×258.8mm |
重量 | 4.05kg |
税別価格 | 248,000円 |
「ZBOX」では、ノートPC用のコンポーネントを用いることで小型化をはたした製品があった。本機はどうかと言うと、CPUやGPUはデスクトップPC用のものを使っており、チップセットを調べてみるとIntel B360が使われている。あくまでデスクトップPC用のコンポーネントを使って小型化が図られている。
CPUはCore i7-8700、GPUはGeForce RTX 2070、メインメモリは16GBと、ハイエンドとは言わないまでも最新ゲームにも対応できるスペックになっている。ストレージもNVMeのSSDと大容量HDDの2ドライブ構成。超小型デスクトップPCにこれだけ詰め込めば十分であろう。
電源は230WのACアダプタを2個使用する。ケースに内蔵する電源を使わない分だけ容積を稼げているのも事実で、ACアダプタの置き場所を考慮できるかどうかなど、設置環境によっても評価が分かれるところだ。
本体サイズは、136×260.8×258.8mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約4.05kg。一般的なゲーミングデスクトップPCの重量は10kgを超えるものが多いので、およそ半分程度。本体が小さいこともあって、持ち運びはとても楽だ。
小型でも性能に問題なし。SSD+HDDで快適利用
それでは各種ベンチマークソフトのスコアを見ていこう。利用したのは、「3DMark v2.8.6546」、「VRMark v1.3.2020」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」、「World of Tanks enCore」、「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」、「CINEBENCH R20」、「CrystalDiskMark 6.0.2」。
フルHDでのベンチマークテストはまったく問題ない性能を発揮している。さらに4Kでも「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」で「普通」、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」では「とても快適」の評価で、4Kゲーミングも現実的な結果となっている。
超小型PCだけに排熱による性能低下が気になるところだが、各種ベンチマークテストの結果からは、そういった場面は見当たらなかった。CPU温度は最高で90℃近くまで上がっているが、とくにクロックを落としたりする動きはない。GPUは最高でも70℃程度となっており、CPUと比べてかなり余裕があるように見える。
【表2】MEK MINIのベンチマークスコア | |
---|---|
「3DMark v2.8.6546 - Time Spy」 | |
Score | 8,213 |
Graphics score | 8,414 |
CPU test | 7,236 |
「3DMark v2.8.6546 - Port Royal」 | |
Score | 4,622 |
「3DMark v2.8.6546 - Fire Strike」 | |
Score | 18,060 |
Graphics score | 20,438 |
Physics score | 18,344 |
Combined score | 9,528 |
「3DMark v2.8.6546 - Night Raid」 | |
Score | 43,448 |
Graphics score | 91,776 |
CPU score | 10,906 |
「3DMark v2.8.6546 - Sky Diver」 | |
Score | 42,047 |
Graphics score | 69,166 |
Physics score | 15,745 |
Combined score | 29,307 |
「3DMark v2.8.6546 - Cloud Gate」 | |
Score | 40,440 |
Graphics score | 120,473 |
Physics score | 12,162 |
「3DMark v2.8.6546 - Ice Storm Extreme」 | |
Score | 175,201 |
Graphics score | 352,850 |
Physics score | 63,430 |
「VRMark v1.3.2020 - Orange Room」 | |
Score | 10,337 |
Average frame rate | 226.21fps |
「VRMark v1.3.2020 - Cyan Room」 | |
Score | 7,176 |
Average frame rate | 156.43fps |
「VRMark v1.3.2020 - Blue Room」 | |
Score | 2,601 |
Average frame rate | 56.71fps |
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(高品質) | |
3,840×2,160ドット | 3,522 |
1,920×1,080ドット | 8,273 |
「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(最高品質) | |
3,840×2,160ドット | 6,389 |
1,920×1,080ドット | 16,465 |
「World of Tanks enCore」(超高) | |
1,920×1,080ドット | 28,429 |
「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」(簡易設定6) | |
1,920×1,080ドット | 89,367 |
「CINEBENCH R20」 | |
CPU | 2,987cb |
CPU(Single Core) | 466cb |
ストレージは「CrystalDiskMark 6.0.2」で計測した。SSDはスペックシート上ではメーカーや製品の指定がなく、BIOSからも「PCIe SSD」としかわからない。実物を確認しても製品名らしきものは確認できず、Phison製チップを搭載した256GB(スペックシートでは240GBとなっている)の台湾製品だというところまでしかわからなかった。ただ性能的にはシーケンシャルリードで3GB/s超え、ランダムアクセスも高速で、OSやソフトの起動などの実際の使用感もきわめて快適だ。
HDDはSeagate製「ST2000LM015」が採用されていた。スペックシートでは2TB HDDとしか書かれていないので、今後変更される可能性はあるが、少なくとも2.5インチのHDDとなるのは間違いなさそうだ。
小さくて派手、性能も妥協しないという独自路線
続いては使用感をお伝えしていく。まず本製品を箱から取り出して見たとき、「普通に小さなゲーミングPC」だったことに驚いた。
コンパクトなPCは小型化を最優先にするため、平面が多いシンプルな形状になりがち。一般的なタワー型のゲーミングPCは、おうとつのあるケースのデザインやLEDによるライティングなど、見た目にもこだわる製品が多い。しかし小型のゲーミングPCはどうしても地味な方向に寄ってしまう。
その点、本機はタワー型で派手めのゲーミングPCを、そのまま半分くらいにスケールダウンしたような外見だ。多数のゲーミングPCを見てきた筆者からすると、「ミニチュアかな?」と思ってしまうほど、“普通の”タワー型ゲーミングPCで見慣れたデザインになっている。サイズと見た目のギャップはかなり大きく、独特の存在感を発している。
さらに電源を入れると、ケース前面のLEDが点灯する。LEDは中央部のロゴと、その左右に縦に走るライン部分にあ。とくにライン部分は複数のLEDが仕込まれており、光が流れるように動いたり、次々に色が変わっていく演出も可能となっている。LEDライティングの挙動は、内蔵ソフトの「Spectra」を使ってカスタマイズできる。光り方もさまざまなパターンがあるほか、色も自由に変更できる。
見た目に続いては排熱周りも見ていきたい。超小型ケースにゲーミングPCのパーツを使えば、エアフローには相当困るに違いない。
本機は右サイドパネルは開けられるものの、左サイドパネルの開け方が不明。内部へのアクセス方法はマニュアルに書かれていなかったので解説しておくと、まず背面にあるロックスイッチを下げてロックを解除し、右サイドパネルを後方にスライドして開ける。これでストレージやメモリ、無線LANカードにアクセスできる。
左サイドパネルが開かないので、内部のほとんどはスリットから覗き見ることになる。その様子からすると、GPUは左サイドパネルの間近に設置されており、カード本体のファンによる側面吸気の背面排気。、CPUはケースファンを使って底面吸気の天面排気となっている。CPUとGPUのエアフローを分離しつつ、なるべくケース内部を広く空けて、下から上へと自然の流れに逆らわないCPUのエアフローを確保している。
実際の使用時には、アイドル時は動作がわかる程度のファンの音はする。高負荷になると、CPUファンは騒音がかなり大きくなる。低音・高音の混じった感じで、ゲーミングノートPCで聞こえるものに近い。ケースファンは大型だが、CPUファンが薄型で騒音が出やすいと思われる。GPUは高負荷になってもさほど騒音が大きくならないので、あまりCPUを使わないゲームであれば快適度は高い。
拡張性については、さすがにPCI Expressなどの拡張スロットは1つも空きがない。とはいえ端子類は充実しており、ケース前面にUSB 3.0×2(うち1つはType-C)、ヘッドフォン端子、マイク端子、SDカードスロット。背面にはUSB 3.1×4、Gigabit Ethernet×2。映像出力もDisplayPort 1.4×2、HDMI 2.0b、DVI-Dと充実している。
とくにNICはこだわっており、2つ並んだGigabit Ethernetのうち下側はKiller E2500を採用(上側はRealtek)。さらに無線LANはIEEE 802.11ac対応のKiller AC1550を搭載しており、2×2 160MHz帯域により最高1.73Gbpsの通信が可能。Bluetooth 5.0にも対応している。VRを含むゲーミング用途であれば、拡張性で困ることはほとんどないはずだ。
本機は本格的なLEDライティングで飾られた超小型ゲーミングPCという、とてもめずらしい製品だ。とにかく人目を引くPCがほしいという人は検討する価値がある。また本体が小さいだけでなく、タワー型PCのように縦置きなので、置き場のスペースを取らないのも魅力的。ただし2つの巨大なACアダプタの存在も忘れないようにしたい。
性能もスペック相応に発揮できている。弱点と言えるのはCPU負荷が高いときの騒音くらいだが、小さいだけに机の上に置いたりして使うことを考えると少々悩ましい。とはいえCPUをつねにフルに使うゲームはそう多くないだろうし、ヘッドフォンをしてしまえば気にならない。このあたりは用途や使用環境もよく考慮して選んでいただきたい。