Hothotレビュー
同時待受可能なデュアルSIM対応スマホ「Moto G4 Plus」
~カメラにもこだわった高性能な1台
2016年8月18日 06:00
モトローラ・モビリティ・ジャパン株式会社の「Moto G4 Plus」は、7月22日に発売されたSIMロックフリーのAndroidスマートフォン。最大の特徴はSIMスロットを2つ搭載し、さらに2回線の同時待受が可能な「DSDS(Dual SIM - Dual Standby)」に対応している点だ。
これまでもSIMスロットを2つ搭載したスマートフォンは存在したが、同時に通信できるのは片方のSIMだけだったり、片方は4G/3G、もう片方はGSMというように通信方式が異なる端末が主流だった。
これに対してMoto G4 Plusは両方のSIMスロットが4G/3Gに対応し、どちらのSIMでも同時に音声通話やSMSを待ち受けできる点が特徴だ。海外ではZenfone 3などDSDS対応スマートフォンが販売されているが、国内向けのDSDS対応端末はMoto G4 Plusが初となる。
フルHDディスプレイや1,600万画素カメラなどスペックも充実。Android 7.0も対応予定
スペック面ではフルHD(1,920×1,080ドット)解像度の5.5型ディスプレイを搭載し、SocにSnapdragon 617(オクタコア、1.5GHz)、GPUはAdreno 405(550MHz)を採用。さらに1,600万画素の背面カメラ、500万画素の前面カメラに加えて指紋認証センサーも搭載するなど、スペック面も非常に充実している。
メモリとストレージはモデルによって異なり、メモリが2GB、ストレージが16GBのモデルが32,800円、メモリが3GB、ストレージが32GBの上位モデルが35,800円。今回のレビューではメモリ2GBのモデルを試用している。
メモリとストレージ以外のスペックは共通で、IEEE 802.11a/b/g/n準拠の無線LAN、Bluetooth 4.0LE+EDR、GPS、最大128GB対応のmicroSDカードスロットを搭載。なお、GPSは搭載するが電子コンパスには対応していない。
Androidのバージョンは現状で最新の6.0(6.0.1)を搭載。また、今後リリース予定のAndroid 7.0への対応も予定されている。「ピュアAndroid」として、プリインストールアプリが最小限に留められているのも特徴だ。
バッテリ容量は3,000mAhで、高速充電のTurboPowerに対応。約15分の充電時間で最長6時間の駆動を公称する。
本体サイズはやや大きめ。指紋認証はホームボタンを兼ねない独立型
本体サイズは76.5×152.9×7.87mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は157g。5.5型と大型のディスプレイを搭載していることもあり、横幅は75mm以上とかなり大きい。成人男性の手でも、片手で持ちながら画面の反対側を親指でタッチしようとすると持ち手が不安定になる。
同じ5.5型ディスプレイ搭載のスマートフォンと比較すると、Galaxy S7 edgeの横幅が約73mm、iPhone 6s plusが77.9mmで、iPhone 6s Plusに比べるとやや小さいものの、Galaxy S7 edgeと比べると大きめの横幅となる。
一方で重量は本体サイズの割に157gと軽いことに加えて、重量のバランスもよく、親指を使わず残り4本の指だけで支えていても不安定さは感じない。画面の反対側をタッチするような操作はホールドする指の形を変えるなどの工夫が必要ではあるものの、成人男性の手なら慣れれば片手で十分に操作できる。
本体右側面には電源ボタンと音量ボタン、本体下部にMicro USBポート、本体上部にイヤフォンジャック、本体前面は上部に前面カメラ、下部に指紋認証センサーとマイクを搭載。通知用のLEDは搭載しておらず、充電やメール通知などは全てディスプレイで確認することになる。
指紋認証センサーはホームボタン機能などは兼用しておらず、ホームボタンは指紋認証センサー上のディスプレイ内に表示される。そのため、ホームに戻る時などは指紋認証センサーをタッチしても何も起こらない。
本体内に2つのSIMスロット。Nano SIMをMicro SIM化するアダプタを標準で同梱
本端末の特徴であるデュアルSIMスロットは、背面カバーを外した本体内部にmicroSDカードスロットとともに搭載。SIMスロットのサイズはMicro SIMだが、標準で純正のSIMカードアダプタが2つ内蔵されており、Nano SIMとMicro SIMの両方が使えるように配慮されている。
キャリアを通じて提供されている端末と異なり、SIMロックフリー端末では対応バンドや利用できるキャリアも非常に重要なポイントだ。Moto G4 Plusの対応バンドは4G LTE(FDD-LTE)がバンド1/3/5/7/8/19/20/28、TD-LTEがバンド40、3Gがバンド1/2/5/8/19となっている。なお、国内で展開されているTD-LTE方式のWiMAX 2+やSoftBank 4G(AXGP)はバンド41のため、国内で利用する際はあまり考えなくていいだろう。
SIMロックフリー端末の場合、利用する回線はMVNOがメインとなるが、国内で一般向けにMVNOサービスを提供しているのは主にNTTドコモ回線、au回線の2サービス。Moto G4 Plusの対応バンドのうち、NTTドコモはメインであるバンド1、東名阪中心のバンド3、山間部など中心のバンド19に加えて、一部エリアのみで本格展開が始まっていないものの700MHzのプラチナバンドであるバンド28をサポート。東名阪以外の都市圏を中心に展開するバンド21のみ非対応だが、NTTドコモの回線を使うMVNOであれば利用に不満はないだろう。
一方のauはメインであるプラチナバンドのバンド18に対応しておらず、準メインと言えるバンド1と、NTTドコモ同様一部エリアのみのバンド28のみに対応。auのバンド1は、2013年にエリアの虚偽広告が話題になったバンドではあるが、auではその後もバンド1のエリアをこまめに拡大している(リンク)。エリア検索では住所単位でしか表示できないため実感としてはつかみにくく、エリアによっては受信最大37.5Mbpsのエリアもあるが、通信速度にこだわらなければau回線でも十分に利用できそうだ。
実際にauのMVNOであるUQ mobileの「データ高速プラン」を契約したSIMを装着して使用してみたところ、最初のうちは電波をつかまなかったものの、モバイルネットワークから優先ネットワークタイプを「LTE(推奨)」にする、通信事業者を「自動選択」にするなどの設定を繰り返したところ4Gでしっかり接続。その後地下鉄やJRなどの乗車中や徒歩での移動なども、ほとんど回線が切れることなく繋がっていた。
ただし、無線LANをオフにしたり、SIMを差し替えたりすると回線がまったく繋がらなくなったりすることもあり、利用できる期間が限られていたこともあって確実に安心して使えるとまでは言いがたい。また、au回線を使う場合、3Gの方式が異なるため音声通話やSMSは利用できないというデメリットもある。一方、NTTドコモ系のMVNOはこうした不安定さは一切発生しておらず、音声通話やSMSも問題なく利用できるため、基本的にはNTTドコモ系のMVNOを使うことをお勧めする。
2つの回線を同時待受。発信時も好きな回線を選択可能
対応バンドに続き、Moto G4 Plusのもっとも注目と言えるDSDSを見ていこう。SIMカードを2枚装着した状態で本体を起動するとデュアルSIMセットアップの通知が画面に表示され、SIMを2枚装着した際の動作を設定できるようになる。
ただし、初期設定では装着したSIMがキャリア名で表示されるため、2枚ともNTTドコモ系のSIMを装着している場合、どちらも「NTT DOCOMO」と表示されてしまい操作が分かりにくい。実際には「プルダウンで上に表示される方がSIM 1」ではあるのだが、同設定はあとからでも行なえるため、まずは通知を気にせず設定アプリの「SIMカード」から設定を進めることをお勧めする。
「SIMカード」の設定では、装着したSIMにそれぞれ名前を付けることができる。NTTドコモとauなど異なるキャリアを利用している場合はいいが、同じキャリアの場合は設定が分かりやすくなるよう、ここから名前を変更しておくといい。この設定では名前のほかに目印の色を6種類から選択することもできる。
SIMを2枚装着した場合の挙動だが、音声通話の着信およびSMSの受信は設定にかかわらず可能で、1つ目のSIMと2つ目のSIM、どちらに着信があっても電話を受けられる。また、音声通話の場合、片方が通話中もう片方に着信があった場合は話し中の状態となる。
なお、音声通話は設定を「その都度確認」にしておくことで、発信する際に回線を選択することが可能。SMSもアイコンから簡単に回線を切り替えられる。
SIMの通信は「データ」、「SMS」、「通話」の3種類をSIMごとに割り当てられる。このほか、電話帳データと連携して「この連絡先はこのSIMで発信する」という連携が可能。プライベートの電話番号と仕事の電話番号を自動的に使い分けることが可能だ。
インターネットなどのモバイルデータについては同時に設定することはできないが、「SIMカード」設定から切り替えが可能。切り替えには1分程度の時間がかかるものの、データ通信量の多いゲームやテザリングなどを行なう時だけ、料金定額プランやゲーム専用プランを契約したSIMに切り替える、という運用も可能だ。
1,600万画素の高性能カメラを搭載。起動やフォーカスも高速
カメラは背面に1,600万画素、前面に500万画素のセンサーを搭載。さらに背面にはレーザーとPDAF(象面位相差オートフォーカス)による2つのオートフォーカス方式により、昼夜を問わず美しい写真が撮影可能としている。
「ピュアAndroid」ながらもカメラアプリは独自のインターフェイスを採用。画面を左から右へスワイプすると設定、右から左へスワイプするとギャラリーを表示できる。画面中央に表示されるマークはフォーカスを合わせる位置を示し、ドラッグで移動が可能。また、このマークをタッチしながらスライドすることで明るさを調整することもできる。
カメラのインターフェイスはシンプルながら機能は充実しており、画面左にはHDRやタイマー機能、設定からは画面サイズやタッチシャッターの有無、位置情報の有無を設定可能。また、「Quick Capture」をオンにすると、端末を持ったまま手首を横に2回ひねるだけでどこからでもカメラアプリを起動できる。なお、設定には「シャッター音」という項目が用意されているが、こちらは操作でオフにすることはできなかった。
また、タッチシャッターは操作に若干の癖がある。一般的なタッチシャッターは、タッチしたところにピントを合わせて撮影するまでをワンタッチで行なうが、Moto G4 Plusの場合、画面に現われるマークの位置にピントを合わせる仕組みのため、マークのないところをタッチしてもピントが合わない。ピントを合わせるためにはマークをドラッグ操作で移動した上で、マーク以外の場所をタッチするという2アクションが必要になるため、タッチシャッターは「マーク以外のエリアがカメラボタンになる」という認識の方が使いやすい。
カメラ機能はカメラアイコンをタッチすることで、プロフェッショナルモードやスローモーション、パノラマ、ビデオに切り替えが可能。プロフェッショナルモードはピントやホワイトバランス、ISO、露出補正などを細かく設定できる。とは言え、オート設定が優秀なためほとんどマニュアル設定は使うことがないだろう。
カメラは起動もシャッターも動作が速く、撮りたい時に写真が撮れる。写真もオート設定でも十分にいい絵が撮れ、プロフェッショナルモードで細かく設定を追求することも可能だ。手首を2回ひねるだけでカメラが起動できるQuick Caputureも地味ながら使いやすく、画面を一切見ることなくカメラを立ち上げられるのが便利だ。
以下、Moto G4 Plusで撮影した写真を、リサイズせずに掲載している。
認識精度の高い指紋認証。バッテリ駆動時間やベンチマークも高い性能
本体下部の指紋認証センサーは前述の通り指紋を認証するのみの機能となり、ホームボタンの役割は兼ねていない。指紋の最大登録数はメニューには表示されていないが、5つ登録すると指紋が追加できなくなったため、最大登録数は5つまでとなる。
認証速度は非常に速く快適。端末の持ち方が悪くセンサーをうまくタッチできなかった時以外、認証がエラーになったことはない。iPhoneタイプのセンサーとホームボタンが共通化されたスマートフォンを利用した経験があると、センサーとホームボタンの使い分けに若干戸惑うものの、使っているうちに慣れるレベルだ。
本体バッテリの容量は3,000mAhで、駆動時間は公称されていない。液晶輝度を最低にし、無線LANとBluetoothをオンにした状態でフルHDの動画を連続再生し、アプリ「batterymix」で計測したところ、フル充電から11時間20分ほどでバッテリが空になった。バッテリの持ちは優秀で、ヘビーユーザーでも1日は十分利用できそうだ。
ベンチマーク測定には「AnTuTu Benchmark 6.2.0」、「Quadrant Professional 2.1.1」、「MOBILE GPUMARK」を利用し、NTTドコモの「arrows NX F-02H」と比較。Quadrantでは大きな差が付いたものの、AnTuTuではほぼ同結果、MOBILE GPUMARKではarrowsを上回る結果となった。
moto G4 Plus | arrows NX F-02H | |
---|---|---|
Quadrant Professional 2.1.1 | ||
総合 | 17072 | 27237 |
AnTuTu Benchmark 6.2.0 | ||
総合 | 44131 | 44576 |
3D | 8058 | 13113 |
UX | 16466 | 15261 |
CPU | 14385 | 11796 |
RAM | 5222 | 4407 |
MOBILE GPUMARK | ||
総合 | 168964 | 143365 |
実際の使い勝手も良好。ゲームなどを長時間プレイすると本体が熱くはなるものの、動作に支障を感じるほどではなく、ブラウジングやアプリ操作などもスムーズ。3万円台のスマートフォンとしては十分すぎる操作感だ。
また、スマートフォンの新たなベンチマーク的存在ともなりつつある「Pokémon GO」の利用感も上々。時折「GPSの信号をさがしています」が表示されるものの、感度自体は良好でプレイに支障はなく、2時間近く連続でプレイしても問題はなかった。
ただし、前述の通り電子コンパスには対応していないため、Googleマップで自分の向きに合わせて地図を自動で回転させる機能は利用できない。また、初期設定ではなぜかGPSが「電池節約」モードになっており、この状態では位置情報の精度が非常に低い。試用した端末のみの現象という可能性もあるが、位置情報の精度が低いと感じたら一度この設定を確認することをお勧めする。
プリインストールアプリは非常に少なく、Googleの標準的なアプリを除けば、Moto G4 Plusのショートカット機能を紹介する「Moto」程度で、アプリ一覧に表示されるアプリ数は23と絞り込まれている。余計なアプリがインストールされていることを好まないユーザーにもお勧めだ。
デュアルSIM以外のスペックも充実。コスト性能の非常に高い1台
デュアルSIMが特徴的な本機だが、普通のスマートフォンとして見ても性能は高い。CPUこそハイエンドモデルとスペックだけで比較するならば見劣りするものの、使用していて支障を感じることはなく、サクサクと快適に利用できる。カメラも起動が速く、オート設定で簡単に撮影できる。今回はメモリ2GBモデルを利用したが動作にほとんど不満はなく、3万円台のSIMロックフリースマートフォンとしては非常にコスト性能の高い1台だ。
敢えて難点を挙げるならば、防水やおサイフケータイに非対応という点。海外メーカーのSIMロックフリー端末では搭載されていることが少ない一方で、Xperiaやarrows、AQUOSシリーズではこれらに対応しているSIMロックフリースマートフォンも展開されており、防水やおサイフケータイに魅力を感じるユーザーには悩みどころだ。また、前述の通りGPSは対応しているが電子コンパスには非対応な点も、地図アプリなどを活用するユーザーには困る点かもしれない。
肝心のデュアルSIMについてはかなりマニア向けの機能ではあるものの、設定は分かりやすく、SIMごとの動作も細かく設定できるため非常に使いやすい。プライベートとは別に仕事の電話番号を持ちたい、キャリアの音声通話定額プランとMVNOの低価格プランを組み合わせたいなど、幅広い使い方に対応できる。複数枚のSIMカードを活用するヘビーユーザーはもちろん、SIM1枚のみで使う場合にも性能の高い1台だ。