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日本HP「HP Spectre 13-v006TU」

~世界最薄の13.3型モバイルノート

日本HP「HP Spectre 13-v006TU」

 日本HPは、13.3型液晶搭載で高さ11.2mmと世界最薄を実現したモバイルノート「HP Spectre 13」シリーズを発売した。しかも、この薄さながらCPUに第6世代Coreプロセッサを採用するなど、性能面でも妥協していない点が大きな特徴となっている。本稿では、CPUにCore i5-6200Uを搭載する「HP Spectre 13-v006TU」を取り上げる。発売中で、直販価格は139,800円から。

極限までの薄さに驚きを感じる

 「HP Spectre 13-v006TU」(以下、Spectre 13)の最大の特徴は、なんと言っても世界最薄筐体だろう。そこでまず、本体外観を細かくチェックしていこう。

 Spectre 13の本体サイズは、325×229×10.4~11.2mm(幅×奥行き×高さ)となっている。目に付くのはやはり薄さで、前方の最薄部が10.4mm、後方の最厚部でも11.2mmしかなく、これまでのモバイルノートの常識を覆すような薄さと言える。もちろん、液晶部と本体部それぞれの薄さも際立っており、よくぞこの薄さを実現できたものだと感心するほどだ。

 かといって、本体の剛性が失われているわけではなく、液晶部や本体部をひねってみても、ほとんど歪まない。これは、天板およびキーボード面に削り出しのアルミニウム素材を採用するとともに、底面には軽さと強度を兼ね備えるカーボンファイバー素材を採用することで、薄いながらも優れた強度を実現しているという。実際に、300kgfの天面加圧試験をクリアするという、非常に優れた堅牢性が実現されている。極限の薄さを実現しつつ、トップクラスの堅牢性も兼ね備えるという点は、モバイルノートとして大きな魅力となるだろう。

 それに対し、フットプリントは13.3型液晶搭載モバイルノートとしてやや大きい印象で、14型液晶搭載モバイルノートに近い大きさと言える。実際に同じ13.3型液晶搭載のモバイルノートと比較してみると、確かにフットプリントはやや大きいことが分かる。薄さを極めるには、内蔵部品を水平方向にずらして搭載するのがもっとも効果的で、そういった設計になっている面も少なからずあると思われる。それでも、極端に大きいということはなく、圧倒的な薄さを考えると、このフットプリントが携帯性を損なわせているということはないだろう。

 本体重量は、公称約1.11kg、実測では1,103gだった。13.3型液晶搭載のモバイルノートでは重量が1kgを切る軽さの製品も登場しており、それらに比べるとやや見劣りする。実際に手に持ってみても、薄さが極められているからか、数字以上にずっしりと感じてしまう。とは言え、モバイルノートとして必要十分な軽さを実現しているのは間違いない。その上で、この薄さと優れた堅牢性を兼ね備えているのだから、モバイル性は非常に高いと言っていいだろう。

 本体デザインは、後方や側面は垂直に切り落としつつ、天板および底面の左右側面付近はなだらかな曲線を採用するなど、直線と曲線を合わせ持つシンプルながら上質なデザインとなっている。カラーは、天板やキーボード面、底面は光沢感を抑えたダークグレーを基調としつつ、後方に光沢感の強いブロンズゴールドを採用。しかもこのブロンズゴールドカラーはメッキ加工ではなく、筐体素材のアルミニウム表面に着色アルマイト加工を施して磨き上げたもので、細部までのこだわりが感じられる。

 また、天板中央には、日本HP製品の中で最上位ブランドにのみ付けられるHPの“プレミアムマーク”ロゴをあしらわれているが、これもなかなかいいアクセントになっている。シックで高級感も合わせ持つ印象だ。

本体正面
左側面。高さは前方の最薄部が10.4mm、後方最厚部が11.2mmと驚異的な薄さを実現
後部側面
右側面
側面のボールペンを置いてみたが、高さはほぼ同じぐらいと感じるほど
本体部分だけなら10mmを大きく下回る薄さとなる
液晶部も非常に薄いが、多少力を入れてひねっても歪まないほど強度に優れる
天板。アルミニウム素材を採用し、薄型ながら優れた剛性を確保。300kgf天面加圧試験をパスする優れた堅牢性も兼ね備える
フットプリントは、325×229mm(幅×奥行き)と、13.3型液晶搭載モバイルノートとしてはやや大きい
天板には、最上位モデルにのみ付けられる“プレミアムロゴ”が
後方ヒンジ付近は着色アルマイト加工が施され、光沢感の強いブロンズゴールドとなっている
底面。こちらにはカーボンファイバー素材を採用し、軽さと強度を両立
重量は実測で1,103g。1kgを切る軽さの11.3型モバイルノートも存在するが、この重量なら携帯性は申し分ないだろう

13.3型フルHD液晶を搭載

 Spectre 13には、1,920×1,080ドット表示対応の13.3型液晶が搭載されている。近年、13.3型のモバイルノートでもフルHD超の表示解像度を備えるものが増えていることを考えると、やや残念な気もする。とは言え、実際に利用する上で、13.3型クラスであればフルHD解像度があれば必要十分であり、大きな問題はない。パネルの種類はIPS方式で、視野角が広く、大きく視点を移動させても色合いや発色の変化はほとんど感じられない。

 液晶表面は光沢仕様となっており、鮮やかな発色を実現。デジタルカメラで撮影した写真も、十分鮮やかに表示される。反面、外光の映り込みはやや激しく、少々気になる。液晶面はフレーム一体型となっているが、タッチパネルは非搭載。なお、液晶表面のガラスには、Corning製の強化ガラス「ゴリラガラス4」を採用している。液晶面が極端な薄型ながら優れた強度を保っているのは、天板の削り出しアルミニウム素材と液晶表面にゴリラガラス4を採用しているおかげだろう。

 ところで、液晶部のヒンジには、「シリンダーヒンジ」と呼ばれる特殊なものを採用している。高級家具からヒントを得たというこの特殊なヒンジは、円筒を切り出したような独特の形状が大きな特徴。背面からはヒンジがまったく見えず、液晶部が本体から浮いているように見える点も、一般的なノートPCにはないデザイン的な特徴となっている。液晶の開閉は非常にスムーズで、ぐらつきもほとんど感じられない点も嬉しい。液晶面は最大で125度ほどまでしか開かない点は少々残念ではあるが、シリンダーヒンジがデザイン的な印象を高めているのは間違いないだろう。

液晶は1,920×1,080ドット表示対応の13.3型パネルを採用
表面ガラスに強化ガラス「ゴリラガラス4」を採用し、天板と合わせて優れた強度を実現。タッチパネルは非搭載
表面は光沢処理となっており発色は十分鮮やかだが、映り込みはやや激しい
液晶ヒンジは、独特な「シリンダーヒンジ」を採用
これまでにない、円筒を切り出したような形状のヒンジは、高級家具からヒントを得たという
背面側から見るとヒンジがほとんど見えず、液晶部が浮いているかのように見える
液晶が125度ほどの角度までしか開かない点は少々残念

超薄型ながらバックライト内蔵キーボードを搭載

 キーボードは、キーの間隔が開いた、アイソレーションタイプのキーボードを搭載している。超薄型筐体ながらキーストロークは約1.3mmとまずまずの深さが確保されている。また、タッチは適度な堅さがあり、クリック感もしっかりしているので、打鍵感はかなり優れる。キーピッチは約19mmフルサイズで、Enterキー付近までほぼ一定のピッチが保たれている点も嬉しい。

 最上段のFnキー列はやや上下の幅が狭く、右下のカーソルキーもかなり小さくなっている点は少々気になるが、無理な配列もなく、タッチタイプも容易だ。加えて、キーボードバックライトも内蔵しており、暗い場所でのタイピングも快適に行なえる。打鍵時にややカチャカチャといった音がする点は少々気になったが、全体的にはかなり扱いやすいキーボードという印象だ。

 ポインティングデバイスには、クリックボタン一体型のタッチパッドを採用。縦の幅がやや狭い、比較的横長の形状となっているが、最大3本の指を利用したジェスチャー操作にも対応しており、操作性は申し分ない。

 キーボード左右には、Bang & Olufsenブランドのステレオスピーカーを搭載。サウンドの品質は、このクラスのモバイルノートとしてはなかなかのもので、ボリュームを大きくしても音割れすることなく、バランスの良い心地いい音が鳴ってくれる。個人的には、もう少し低音がしっかり鳴ってくれるといいように感じたが、全体的には好印象だ。

アイソレーションタイプのキーボードを搭載。配列は自然でタッチタイプも余裕
キーボードバックライトを内蔵し、暗い場所でのタイピングも快適だ
キーピッチは約19mmフルサイズ。Enterキー付近までほぼ一定のピッチを確保している点も嬉しい
ストロークは約1.3mmと、超薄型筐体としてはまずまずの深さ。しっかりとしたクリック感もあり打鍵感に優れる
キーボード左右には、Bang & Olufsenブランドのステレオスピーカーを搭載。音質はこのクラスのモバイルノートとしては十分に優れるが、もう少し低音が強いと良かった
タッチパッドはクリックボタン一体型。縦がやや狭いものの、ジェスチャー操作にも対応し利便性に優れる

CPUにCore i5-6200Uを搭載

 基本スペックは、超薄型モバイルノートとしてはかなり充実している。CPUにはCore i5-6200Uを採用しており、メインメモリはLPDDR3-1866を8GBオンボードで搭載する。超薄型筐体ということで、高負荷時の発熱の影響がかなり気になるが、Spectre 13では冷却用のファンを2基内蔵。また、吸気口を底面に、排気口を背面にそれぞれ配置するとともに、吸気口と排気口が底面後方を両端まで伸びるゴム足によって隔てられており、温かい排気が吸気口に逆流することがないように配慮されている。これによって、CPUの発熱を効率良く放熱できるという。

 内蔵ストレージは、PCIe接続のNVMe M.2 SSDを採用。容量は256GBと必要十分で、SATA SSDと比べて圧倒的な高速アクセスを実現。なお、CPUにCore i7-6500Uを採用する上位モデルでは、容量512GBのPCIe接続NVMe M.2 SSDが搭載される。

 無線機能は、IEEE 802.11ac準拠の無線LANとBluetooth 4.2を標準搭載。無線LANは2×2対応で通信速度は最大866.7Mbps。このほか、液晶上部には約92万画素のWebカメラを搭載している。

 ところで、超薄型筐体を実現する上で、もっとも犠牲になっていると感じるのが外部ポートだ。Spectre 13に用意されている外部ポートは、後部側面にオーディオジャックとUSB 3.1 Gen2/Thunderbolt 3対応のUSB Type-Cポートが2ポート、そして電源ポートを兼ねるUSB 3.1 Gen2対応USB Type-Cポートが1ポートのみとなっている。USB Type-AポートやHDMI出力、SDカードスロットなど、比較的頻繁に利用するポートは一切用意されない。製品には、USB Type-C→Type-A変換ケーブルが付属してはいるが、外部ディスプレイの接続や各種USB機器の利用、SDカードなどのメモリカードの利用時には、オプションで用意されている「USB Type-C 変換トラベルドック」などが不可欠。USB Type-C対応周辺機器の普及が進めば、利便性も解消されることになると思うが、現時点の普及率を考えると、周辺機器の利用には妥協が必要だろう。

 付属品は、USB Type-C→Type-A変換ケーブルとACアダプタ、革製の専用ケースなど。ACアダプタは若干大きく、重量も実測で374gと重く、持ち運びはやや不便。本体の薄型軽量を極めるなら、ACアダプタもコンパクトさを追求してもらいたかったように思う。

内部に2基の空冷ファンを備え、底面吸気口から給気し、後方排気口からCPUの熱を排気する
吸気口と排気口の間には側面まで達する一直線のゴム足があり、排気された熱が吸気口に逆流しないように配慮されている
背面にUSB Type-Cポートを3ポート備える。写真左側はUSB 3.1対応で電源コネクタも兼ねる。本体中央側の2つはUSB 3.1/Thunderbolt 3対応
背面にはオーディオジャックも備えるが、これら以外のポートは一切ない
USB Type-C→Type-A変換ケーブルが付属
USB周辺機器を利用する場合には、付属のUSB変換ケーブルを利用することになる
液晶上部には約92万画素のWebカメラを搭載
付属のACアダプタ。電源ケーブルが太く、サイズもやや大きい
ACアダプタの重量は実測で374gと重く、携帯性はいまいち
革製の専用ケースも付属する
専用なので本体をぴったり収納し携帯できる

性能はスペック相応も高負荷時のファンの動作音が気になる

 では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 8 v2.7.613」、「PCMark 7 v1.4.0」、「3DMark Professional Edition v4.46.595.0」、Maxonの「CINEBENCH R15」、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」の5種類。比較用として、NECの「LAVIE Hybrid Zero HZ750/DAB」の結果も加えてあるが、一部ベンチマークテストのバージョンが異なっているため、参考値として見てもらいたい。

HP Spectre 13-v006TULAVIE Hybrid Zero HZ750/DAB
CPUCore i5-6200U(2.30/2.80GHz)Core i7-6500U(2.50/3.10GHz)
チップセット--
ビデオチップIntel HD Graphics 520Intel HD Graphics 520
メモリLPDDR3 SDRAM 8GBLPDDR3 SDRAM 8GB
ストレージ256GB SSD256GB SSD
OSWindows 10 Home 64bitWindows 10 Home 64bit
PCMark 8v2.7.613v2.5.419
Home Accelarated 3.030143347
Creative accelarated 3.039774132
Work accelarated 2.039454262
Storage49244866
PCMark 7 v1.4.0
PCMark score48855299
Lightweight score42993272
Productivity score38102519
Entertainment score34913906
Creativity score88429244
Computation score1427015462
System storage score44525136
Raw system storage score17184493
CINEBENCH R15.0
OpenGL (fps)41.7443.11
CPU261322
CPU (Single Core)115129
3DMark Professional Editionv4.46.595.0v1.5.915
Cloud Gate54496068
Graphics Score72547692
Physics Score29133490
Sky Diver32333623
Graphics Score31893451
Physics Score37094910
Combined score29743555
Fire Strike776825
Graphics Score842882
Physics Score42584976
Combined score276302
ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド ベンチマーク
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC) DirextX 941215047
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC) DirectX 923712804
1,280×720ドット 標準品質(ノートPC) DirextX 1132383393
1,920×1,080ドット 標準品質(ノートPC) DirectX 1118451875

 結果を見ると、スペック相応のスコアが得られていることが分かる。比較機のLAVIE Hybrid Zero HZ750/DABは、CPUとしてCore i7-6500Uを搭載しているため、スコアが劣るのは当然だが、結果を見る限り、CPU性能がほぼ問題なく引き出されていると考えて良さそうだ。超薄型筐体のため、高負荷時には発熱に対処できない場面が出てくる可能性もあるが、Spectre 13は2基搭載している空冷ファンによりCPUの発熱がしっかり放熱され、十分な性能が引き出されていると考えて良さそうだ。この点は、かなり大きな魅力と言えるだろう。

 ただし、高負荷時のファンの動作音がやや耳に付く点は気になった。うるさくて図書館などの静かな場所での使用がためらわれるというほどではないかもしれないが、金属音的な動作音が耳に届き、少々不快。かといって、ファンの回転数を下げて動作音を減らすと冷却能力が下がり、CPUの性能を最大限引き出せなくなってしまう。悩ましいところではあるが、超薄型筐体にCore i5を搭載する以上、この点は妥協する必要がありそうだ。

 なお、本体の熱に関しては、本体後方やキーボード後部、裏面後部などはやや温かくなるが、キーボードやパームレストなど、普段手に触れる部分で熱を感じる部分はほとんどなく、快適に利用できた。

 次にバッテリ駆動時間で、Spectre 13の公称バッテリ駆動時間は約9時間(MobileMark 2014利用)となっている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、バックライト輝度を40%に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約9時間16分だった。公称の駆動時間とほぼ同等で、実際の利用でも十分満足できる駆動時間が確保されていると言っていいだろう。

携帯性重視のモバイルノートを探している人にお勧め

 Spectre 13は、極められた薄さが最大の特徴ではあるが、細かな部分までこだわった品質の高さや優れた性能など、プレミアムノートとして必要となる要素もしっかり押さえられており、完成度の高いハイエンドモバイルノートに仕上がっていると感じる。加えて、目をひく優れたデザイン性は、持つ喜びも与えてくれる。天面加圧300kgfに耐える優れた堅牢性もあり、モバイルノートとしてかなり魅力的な存在と言える。

 空冷ファンの動作音や外部ポートの少なさ、ややかさばるACアダプタなど、気になる点もいくつかあるが、全体的な完成度は非常に高く、携帯性重視のモバイルノートを探しているなら、十分にお勧めできる製品だ。