Hothotレビュー

カメラと音楽機能を重視した高性能スマホ「HTC 10 HTV32」

HTC 10 HTV32

 「HTC 10 HTV32」は、auの2016年夏モデルとして発表されたHTC NIPPON製のAndroid 6.0搭載スマートフォン。2016年4月にグローバル市場向けとして発表されていた端末が、au向けに夏モデルとして投入された形だ。

 HTCの国内向けAndroid端末は、2014年11月に発売された「Nexus 9」があるが、HTCブランドのスマートフォンとしては、2013年発売の「HTC J One HTL22」以来3年ぶり。発売は6月中旬を予定し、想定端末価格は一括で78,840円、毎月割を含めた実質価格は37,800円となっている。

 CPUは最新のSnapdragon 820を採用し、メモリは4GB、内蔵ストレージは32GB。ディスプレイは約5.2インチ、WQHD(1,440×2,560ドット)のIPS液晶を搭載するなど、現在発表されているスマートフォンの中でも、トップクラスのハイスペック。外部メモリも最大200GBのmicroSDXCカードをサポートし、無線LANはIEEE 802.11ac、Bluetoothは4.2と、ほぼ最新の仕様に準じている。

 機能面では、ハイレゾをサポートするなど音楽関連の機能が強化されているほか、カメラも約0.6秒の高速起動やレーザーオートフォーカス、RAWフォーマットの静止画や4K動画撮影など充実の機能を搭載している。セキュリティ面では、昨今のスマートフォンで標準化されつつある指紋認証もサポートした。

 一方で、おサイフケータイやワンセグ/フルセグ、赤外線通信といった、国内向けの機能追加は行なわれておらず、IP5Xの防塵には対応するが、防水には非対応。国内向けのカスタマイズは、au向けの周波数対応や背面ロゴ、日本語対応といった最低限に留まり、基本的な性能やスペックはグローバル市場向けとほぼ共通だ。

 なお、カラーバリエーションに関しては、カーボングレイ、トパーズゴールドに加え、au向けの新たなカラーとして「カメリア レッド」が追加されている。

高いベンチマーク結果。指紋認証のレスポンスも良好

 本体サイズは約72×146×9.2mm(幅×奥行き×高さ)、重量は161g。厚みが9mm近く、重量も160gあるため、手にした時にはずっしりとした手応えを感じるが、横幅が72mmなので片手でも十分持ちやすい。本体の四隅はカーブ処理がなされているため、手のひらにも馴染む。

 本体右側面には音量ボタンと電源ボタン、Nano SIMカードスロット、本体左側面にはmicroSDカードスロット、本体前面下部にはホームボタンを兼ねる指紋認証センサーを搭載。充電およびデータ接続端子としては、USB Type-Cを採用し、対応ケーブルとアダプタが同梱する。

本体背面。四隅と背面は丸みを帯びて持ちやすい
右側面には音量ボタンと電源ボタン、Nano SIMカードスロット
左側面にmicroSDカードスロット
本体前面下部に指紋認証センサー。充電端子はUSB Type-C
Nano SIMカードスロットとmicroSDカードスロットはピンで取り出す方式
同梱のケーブルとアダプタ。ケーブルは脱着式

 ホーム画面は、auの基本インターフェイスである「auベーシックホーム」、シンプルデザインの「らくらくモード」のほか、HTC独自のホーム画面機能として「SENSE HOME」を搭載。無料のHTCアカウントを取得することで、ホーム画面のカスタマイズが可能だ。背景やアイコンの画像だけでなく、アイコンのサイズやレイアウト、フォントまでカスタマイズできる。

ホーム画面は3種類
SENSE HOME設定時はホーム画面をカスタマイズできる「HTCテーマ」が利用できる
HTCテーマ利用にはユーザー登録が必要
用意されている多数のテーマを無料で利用できる

 本体のベンチマークは「AnTuTu Benchmark 6.1.4」、「Quadrant Professional 2.1.1」の2アプリで計測したところ、2アプリとも非常に高いスコアを記録。実際の動作も非常にキビキビとしていて、もたつきは一切感じないと言って良いレベルだ。パフォーマンス面で不満に思うことはないだろう。

arrows NX F-02Hとのベンチマーク比較
HTC 10arrows NX F-02H
Quadrant Professional 2.1.1
総合4561025187
AnTuTu Benchmark 6.1.4
総合11578057645
3D5319118615
UX3028919570
CPU2208015223
RAM102204237

 バッテリ容量は3,000mAhで、駆動時間はauサイト上に連続通話時間で約1,590分と記載されているが、画面の輝度を最低にして、Wi-Fi経由でインターネットに接続したままフルHD動画を連続再生したところ、9時間20分でバッテリが空になった。動画の連続再生はバッテリの消費も激しいため、実利用であればもっと持つだろう。省電力機能などを組み合わせることで、Web閲覧など通常の利用であればバッテリに不満を感じることはなさそうだ。

標準搭載の省電力機能

 充電速度も特徴で、同梱のアダプタとケーブルを利用することで、バッテリが空の状態から90分で満充電になるという。実際に試したところ、ほぼ公称通りの90分で充電が完了した。

 指紋認証は、iPhoneのようにホームボタンに指を乗せるとロックを解除できる仕組みで、最大5つまで指紋を登録できる。認証は精度、スピードとも非常に良く、指を乗せた瞬間にロックが解除されるので、待たされる感がない。ロックが正常に解除された場合は本体が震えることでフィードバックもあり、ロックが解除できたことが体感でも分かりやすくなっている。

指紋認証はホームボタンに指を乗せる方式
最大5個の指紋を登録できる

 インストールされているアプリは、auのプリインストールアプリに加え、Facebook、Twitter、Instagramなどのソーシャルアプリ、ニュースアプリ「News Republic」、HTC 10対応ケース「Ice View」向けのアプリがプリインストールされている程度。HTC 10の発表会で「プリインストールの見直しにより、GoogleとHTCで重複するようなアプリはどちらかに絞っている」という説明があった通り、プリインストールアプリも非常にシンプルにまとめられている。

プリインストールアプリ

高速起動で使いやすいカメラ。4KやRAW画質、ハイレゾ音声など機能も多彩

 HTC 10特徴の1つであるカメラは、約1,200万画素の背面カメラと約500万画素の前面カメラ、背面にレーザーオートフォーカスを搭載。レーザーによるオートフォーカスに加えて、F値1.8という明るいレンズを搭載したことで、暗所でも自然な色合いの写真が撮りやすいという。

背面にレーザーオートフォーカスを搭載
カメラのインターフェイス

 カメラアプリのインターフェイスはオーソドックスな作りで、右側にシャッターボタンと静止画/動画の切り替えボタンが配され、各種設定やカメラモードの切り替えは、画面左側の2本線を右側にスライドすることで表示できる。

カメラモードの切り替え

 シンプルな画面ながらもカメラモードは多彩で、パノラマやスローモーション動画、動画を倍速表示するハイパーラプス、3秒のHD動画と静止画を一緒に保存できる「Zoeカメラ」といった個性的な機能も搭載されている。品質面でも、静止画はRAW画質での記録が可能なほか、動画は4K画質およびハイレゾ品質の音声記録が可能だ。

Zoeカメラ
ハイパーラプス

 高速0.6秒起動を謳う起動速度はもちろんのこと、シャッタースピードも速く、撮影中に待たされる感がほとんどない。写真もオート設定で撮影するだけで良い写真が撮れる。なお、背面のレーザーオートフォーカス部分に指がかかるとアラートが表示されるが、指をどけるだけですぐにアラートは解除されるので、しばらく使うとレーザー部分を覆わないように慣れるだろう。

レーザーオートフォーカス部分を覆うとアラートが表示される
作例 ※リンク先は高解像度画像

 高速起動に加えて、カメラの起動方法も工夫されており、画面がオフの状態で下方向に2回画面をスワイプすると、本体ロックを解除せずにカメラ機能を呼び出せる。指紋認証のスピードも非常に速いので、通常通り起動してもさほど手間ではないが、カメラアプリだけをすぐに使いたいという時には便利だ。

画面を2回スワイプでカメラを呼び出せる

ハイレゾ対応イヤフォンを同梱。本体スピーカーの音質も高品質

 音楽機能もHTC 10の特徴の1つ。24bit/192Hzのハイレゾ音源に対応するほか、ハイレゾ対応のイヤフォンも標準で同梱。ハイレゾに対応するスマートフォンはXperiaやarrows、AQUOS、GALAXYなどのモデルでも存在するが、対応イヤフォンを同梱しているのは珍しく、auは「国内初のハイレゾ対応イヤフォン同梱」を謳っている。また、前述の通りカメラの動画撮影時にもハイレゾで音声を記録できるなど、ハイレゾにこだわった機能が搭載されている。

ハイレゾ対応イヤフォンを同梱

 ハイレゾのサンプル音源をダウンロードして実際に聴取してみたが、同じ音源であれば圧縮音源とは明らかに異なる音の臨場感を感じる。とはいえイヤフォンの性能自体が高いためか、意識しなければ圧縮音源でも十分に良い音で違和感は感じない。

 ソフトウェア面でも高音質化を図っており、聴く人に合わせて音質を最適化する「パーソナルオーディオプロファイル」機能を搭載。設定は簡易作成と詳細作成の2種類が用意されており、簡易作成は世代や好みの音楽などを選ぶだけ。詳細設定は左右の耳で低周波、中周波、高周波それぞれ微かに音が聞こえるまで調整を行なうことで、最適な音質に設定できる。

オーディオプロファイル設定
設定方法は簡易作成と詳細作成の2種類
簡易作成は質問に答えるだけで簡単にプロファイルを作成できる
詳細作成は実際に自分で聴きながらプロファイルを調整
作成したプロファイルの適用前後を比較できる

 本体内蔵のスピーカーは、端末上部に高音再生用のツイーター、本体下部に低音再生用のウーファー(端末下部)という2Way構成になっており、本体再生時の音質向上が図られている。実際に本体から音声を再生してみたが、大音量時でもシャリシャリした音にならず臨場感ある音質が感じられる。高音と低音の位置が異なるためか、よく聴くと音の聞こえる方向に偏りを感じるが、意識しなければわからないレベルだろう。

 ネットワーク経由での再生にも対応しており、DLNAに加えてアップルのAirPlayもサポート。サードパーティーのアプリでAirPlayをサポートするものはあるが、スマートフォンが標準でAirPlayをサポートするのは非常に珍しい。

DLNAやChromecastに加えてAirPlayもサポート

充実のカメラと音楽機能。ハイスペック端末を求めるユーザー向けの1台

 おサイフケータイやワンセグ/フルセグ、防水などの機能は搭載せず、高い性能を追求するという割り切ったスマートフォンだが、使い勝手は非常に良好。アプリやWeb閲覧時も動作がもたつくことはなく、カメラも高速で起動するため撮りたい時にすぐ使える。高解像度のディスプレイながらバッテリも長時間駆動するのも嬉しい。

 日常的に利用頻度が高いであろうカメラと、音楽関連の機能が充実しているのも魅力。RAW画質での撮影やハイレゾ音質での動画撮影など個性的な機能も搭載しており、カメラや音楽機能での不満はほぼないだろう。

 一方で、前述の通りおサイフケータイといった、日本向けカスタマイズが行なわれていないのがデメリット。おサイフケータイも防水も必要ないというユーザーであれば、高性能かつ多機能で使いやすいスマートフォンとして、オススメの1台だ。