平澤寿康の周辺機器レビュー

三菱電機 23型フルHD液晶「RDT231WM-S」
~超解像技術で低解像度動画を鮮明に表示



三菱電機「Diamondcrysta WIDE RDT231WM-S」

発売中

実売価格:39,800円前後



 最新のフルHD解像度の薄型TVでは、SD解像度のTV放送やDVDなどの低解像度の映像を、フルHD解像度に引き上げるとともに、映像の解像感を高めて高品位に表示する「超解像技術」を搭載する製品が増えている。そして、その超解像技術を搭載するPC用ディスプレイが登場した。それが、三菱電機の「Diamondcrysta WIDE RDT231WM/同-S」だ。今回、RDT231WM-Sの評価機を試用する機会を得たので、目玉機能である超解像技術を利用してどのような効果が得られるのか、という点を中心に見ていきたいと思う。なお、試用したのは量産前のデモ機であり、製品版とは異なる可能性がある。

●フルHD表示対応の23型ワイド液晶パネルを搭載

 まずはじめに、RDT231WM-Sの仕様面を確認しておこう。

1,920×1,080ドット表示対応の23型ワイド液晶を搭載。TN方式パネルを採用するが、通常使用上で視野角の狭さを感じることはなかった

 RDT231WM-Sは、1,920×1,080ドット(フルHD)表示対応の、23型ワイド液晶を搭載するディスプレイだ。搭載する液晶パネルはTN方式で、表示色数は約1,677万色(10億6,433万色中)、応答速度は5ms(中間色)、コントラスト比は1,000:1(最大5,000:1)、輝度は300cd/平方m、視野角は上下160度/左右170度。液晶表面は、非光沢処理モデル(RDT231WM)と光沢処理モデル(RDT231WM-S)の2種類が用意されている。

 比較的低価格の液晶ディスプレイで採用される例が多いTN方式の液晶パネルには、見る角度によって色合いが変化するという欠点がある。RDT231WM-Sでも、特に上下方向に見る角度を極端に変化させると、色合いの変化が確認できる。ただ、PC用の液晶ディスプレイは、デスク上に設置し、椅子に座ってほぼ一定の姿勢で利用することが多く、見る角度による色合いの変化も、通常利用の範囲内ではほぼ気にならないと考えていい。実際に、ほぼ正面から画面を見ている限りでは、色ムラは全く感じられず、非常に鮮やかな発色が実現されている。TN方式のパネルを採用しているとは言っても、プロ用途に近いシビアな発色性能を求めない限り、十分に満足できる表示品質が確保されていると考えていいだろう。

●全4系統と豊富な入力端子を備える

 入力端子は、DVI-Dが1系統とミニD-Sub15ピンのアナログRGB入力が1系統、HDMIが2系統の全4系統と、このクラスの液晶ディスプレイとしては豊富だ。もちろんDVI-DはHDCPに対応している。また、本体には3W+3Wのステレオスピーカーが内蔵されており、音声入力端子とヘッドフォン出力端子も用意されている。これら端子類は、本体背面に用意されており、ヘッドフォン端子のみ、本体底面に用意されている。

 OSDの操作や入力切替などの操作を行なう操作ボタンは、本体底面に用意されている。ボタンの位置や種類は、正面のベゼル部に書かれているものの、ボタン自体は手探りでの操作となってしまうこともあって、少々扱いづらいように感じる。設置スペースの問題から、本体底面に配置されているのかもしれないが、できればボタンは正面ベゼル部に配置してもらいたかったように思う。

 本体サイズは、546×230.3×451.6mm(幅×奥行き×高さ)。23型ワイド液晶ディスプレイとして一般的な大きさだ。液晶面は、手前に5度、奥に20度までチルト調節が可能。ただし、水平方向の角度を変えるスイベル機能は持たない。

 高さ調節は、スタンドと本体を、複数のブロックを積み重ねて接続することで調節するという、独特の仕様を採用している。このブロックは「ネックブロック」と呼ばれ、標準で3個付属する。つまり、4段階に高さが調節出来るわけだ。

 ただし、高さの調節を行ないたい場合には、本体とスタンドを毎回分離しなければならず、少々面倒だ。また、3個のネックブロック全てを取り付けた場合には、ややぐらつきが大きくなってしまう。加えて、ネックブロックを1個も取り付けずに本体とスタンドを接続した場合には、スタンドと本体とのすき間が狭くなって、本体下部の操作ボタンが扱いづらくなってしまう。そのため、基本的にはネックブロックを1個または2個で利用するのがいいだろう。

正面から見た本体サイズは、546mm×451.6mm(幅×高さ)。ベゼルも十分狭く、標準的なサイズとなっている奥行きは230.3mmと、こちらも一般的だチルト角度は、手前に5度、奥に20度まで調節可能
スタンドにはスイベル機能は用意されていないスタンドの高さ調節は、付属のネックブロックを組み合わせることで行なうネックブロックを3個利用して本体とスタンドを接続した様子。この状態ではややぐらつきが気になる
入力端子は、DVI-D(HDCP対応)とアナログRGB(ミニD-Sub15ピン)、HDMIが2系統と豊富。HDMI端子の横には音声入力端子も備える操作ボタンは、本体手前底面に用意されている。手探りでの操作となるため、やや扱いづらい操作ボタンの左には、ヘッドフォン端子がある
3W×3Wのステレオスピーカーも、本体底面に取り付けられているOSDの構成は、同社製の他の液晶ディスプレイとほぼ同じだ

●独自技術で低解像度動画の解像感をアップ

 それでは、RDT231WM-Sの最大の特徴である、超解像技術の効果についてチェックしていこう。

超解像の設定は、OSDの「画像モード」メニューで行なう。補正の度合いは、小・中・大の3段階に変更可能。また、DV MODEの各モードごとに異なる設定を登録できる

 RDT231WM-Sの超解像技術は、独自の映像処理LSI「ギガクリア・エンジン」によって実現されている。この超解像の仕組みは次のようなものだ。

 まず、低解像度の映像を、高解像度に単純拡大する。次に、オリジナルの映像と拡大映像から高周波成分を検出することによって、拡大映像のぼやけた部分を特定し、そのぼやけた部分に推定で補正を加える。そして、拡大画像にその補正結果を反映したうえで、画面に表示させている。詳しいアルゴリズムについては、「独自の画像処理アルゴリズム」とされており詳細までは不明だが、基本的には、前後のフレーム間の変化については考慮せず、映像1フレームの情報に補正を加えて解像感を高める技術と考えていいだろう。

 さらに、ギガクリア・エンジンには、画面の全体や局所に対するコントラスト補正や階調の補正、ノイズリダクション、色調補正なども盛り込まれており、これら各機能をフル活用することによって、低解像度の映像を、解像感を高めて表示するようになっている。

 では、実際にこの超解像技術を利用することで、どのように映像が補正されるのか見ていこう。

 今回は、コンパクトデジタルカメラの動画撮影機能を利用して撮影した動画を再生させつつ、超解像技術による補正を加えてみた。利用したコンパクトデジタルカメラは、パナソニックの「LUMIX DMC-TZ5」で、VGA解像度で撮影した動画データを全画面で再生させつつ、超解像技術の有無でどれだけ映像の解像感が変わるかチェックした。ちなみに、RDT231WM-Sの超解像技術は、補正の度合いを小・中・大の3段階に変更できるが、差を際立たせるために、補正を行なわない場合と、最も補正の度合いの高い「大」に設定した場合との比較を掲載する。ちなみに、掲載した画像は、動画ファイルを特定の場面で一時停止させ、直接画面を撮影したものだ。

 まず、木を映した画像を見てみると、超解像技術を利用していない状態では、葉や枝がかなりぼやけているのがわかるが、超解像技術の補正を加えた状態では、単純拡大でぼやけていた葉や枝が、かなりくっきり表示されて、解像感が高まっていることが確認できる。この違いは、ぱっと見ただけでも十分にわかるほどで、かなり優れた効果が得られると言っていいだろう。

 ただし、やはり推定による補正なので、得意・不得意はある。例えば、看板の文字を撮影した画像を見ると、それがよくわかる。超解像技術の補正を加えると、看板の文字がかなりはっきり見えるようになってはいるものの、どちらかというとコントラストを高めただけといった雰囲気で、潰れた部分が修復された、くっきりとした文字とはなっておらず、解像感の高まりはあまり感じられない。

○デジカメ撮影動画を全画面で再生
超解像をオフに設定した場合。木の葉や枝がぼやけているのがわかる超解像を「大」に設定した場合。木の葉や枝がくっきりと映し出され、解像感が向上している
超解像をオフに設定した場合。全体的に文字がぼやけている超解像を「大」に設定した場合。文字ははっきり見えるようになっているが、潰れた文字がはっきり認識できるほどではなく、解像感の向上はあまり感じられない

 次に、YouTubeの「ImpressWatchChannel」に掲載されている動画ファイルを再生させてチェックしてみたが、こちらでもほぼ似たような印象だった。例えば、映像内の人物を見比べると、衣服や髪の解像感が高まっている印象を受けるものの、文字が表示されている場面では思ったほど解像感の高まりが感じられなかった。

○YouTubeの動画を全画面表示させた場合
超解像をオフに設定した場合。衣服や髪、背景がぼやけたように見える超解像を「大」に設定した場合。ぼやけがかなり少なくなり、解像感が向上してくっきりとした映像に見える
超解像をオフに設定した場合。デジカメ動画と同じく、文字がぼやけて見える超解像を「大」に設定した場合。こちらも、文字はくっきりしたように感じるが、文字の潰れ具合に変化はなく、解像感の向上はあまり感じられない

 このように得意・不得意は見られるものの、全体的には解像感の高まりを感じる場面の方が多かった。そういった意味では、DVDを全画面表示させたり、YouTubeなどの動画配信サイトで配信されている動画を視聴する場合など、低解像度の動画を全画面表示で再生させる場合に有効に活用できる機能と言っていいだろう。

 ちなみに、RDT231WM-Sの超解像技術は、ディスプレイに入力された映像信号に対して施されるため、表示画像の映像や画像部分にのみ超解像の補正が加えられるのではなく、入力信号全体に対して補正が加えられることになる。そのため、動画再生時などは有効に活用できるものの、デスクトップのアイコンや文字はにじんだり色合いが変化してしまい、逆効果となる。ゲーム画像についても同様で、解像感が高まると言うよりは、エッジ部分が変に強調されたり、逆にぼやけたような印象となる。そういった意味では、この超解像技術は、基本的にはDVDやネット配信動画などの低解像度映像にのみ利用するのが良さそうだ。

○デスクトップの文字の様子
超解像をオフに設定した場合。当然文字やアイコンはドットバイドットでくっきり表示されている超解像を「大」に設定した場合。文字がぼやけたようになり、色合いも変化してしまっている

●動画をよく見る人におすすめ

 RDT231WM-Sは、非光沢モデルのRDT231WMが実売37,800円前後、光沢モデルのRDT231WM-Sが実売39,800円前後と、同社の液晶ディスプレイとしては比較的安価なモデルだ。そのため、スイベル機能が省かれていたり、高さ調節がブロックを組み合わせて行なうようになっているなど、コストダウンの影響が随所に見られる。

 今回は、超解像技術を中心にチェックしたが、全4系統と豊富な映像入力が用意されていたり、表示映像の明暗に応じて自動的に画面の明るさを調節して消費電力をおさえるECO設定機能や、静止画4パターン、動画3パターンで表示品質を切り替える「DV MODE」の搭載、なにより目玉機能である超解像技術が盛り込まれているなど、2万円台で販売されているような、安価な液晶ディスプレイにはない魅力も多い。表示品質も、TNパネルを採用する製品として十分満足できるレベルをクリアしており、特に不満は感じない。

 価格重視で製品を選択するなら、より安価な製品のほうに魅力を感じるかもしれないが、入力端子の豊富さや超解像技術を考えると、その価格差も納得できる。特に、YouTubeなどのネット配信動画やDVDをPCで見る機会が多いという人におすすめしたい製品だ。

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(2009年 5月 26日)

[Text by 平澤 寿康]