ゲーミングPC Lab.

ASUS「ROG TYTAN G50AB」

~独自のリアルタイムオーバークロック機能を搭載

ASUS「ROG TYTAN G50AB」
発売中

価格:オープンプライス

 ASUSは9月27日、ハイエンドゲーミングデスクトップ「R.O.G TYTAN」シリーズを発売した。今回、同シリーズの上位モデルである「ROG TYTAN G50AB」を試用する機会を得たので、同製品のレビューをお届けする。

オーバークロック済みHaswellとGeForce GTX 780を搭載

 ROG TYTAN G50ABは、CPUにHaswellことIntel第4世代Core プロセッサーを搭載するハイエンドゲーミングデスクトップPCだ。ASUSのゲーマー向けブランド「R.O.G(Republic of Gamers)」を冠する「ROG TYTAN」シリーズにおいて、日本向けに発売されている2モデルの上位モデルにあたる。主な仕様は以下の通り。

【表】ASUS「ROG TYTAN G50AB」の主な仕様
CPUCore i7-4770K(4.1GHz/4.3GHz/4.5GHz、独自機能によるクロック切り替え)
チップセットIntel Z87 Express
メモリDDR3-1600 8GB×2
ストレージシステム用:256GB RAID0(128GB SSD×2)
データ用:2TB HDD
光学ドライブBDドライブ
グラフィックスGeForce GTX 780 3GB
ネットワークGigabit Ethernet
OSWindows 8 64bit
サイズ270×600×500mm(幅×奥行き×高さ)
重量約20kg
価格329,800円

 CPUには、第4世代CoreプロセッサのCore i7-4770Kを搭載。Core i7-4770Kは、3.5GHz(Turbo Boost時最大3.9GHz)で動作する4コア/8スレッドのCPUで、ラストレベルキャッシュは8MB、TDP 84Wというスペックの製品なのだが、ROG TYTAN G50ABでは4.1GHz/4.3GHz/4.5GHzの3段階にオーバークロックして搭載している。

 ゲーミングPCの要となるビデオカードには、NVIDIAのGeForce GTX 780を搭載。KeplerアーキテクチャベースのハイエンドGPUで、3GBのグラフィックスメモリを備える。映像出力ポートはDisplayPort、DVI-I、DVI-D、HDMIが各1系統ずつ。

 そのほかのパーツ構成として、マザーボードにはR.O.GブランドのIntel Z87 Expressチップセット搭載ATXマザーボード「MAXIMUS VI HERO」を搭載。メインメモリは、DDR3-1600(PC3-12800)動作の8GBモジュールを2枚、合計16GB搭載している。ストレージは、システム用に128GB SSD 2台をRAID 0構成で搭載。データ用として2TB HDDを備える。OSはWindows 8 64bit。

 これらのパーツを収めた筐体は、スチール製の堅牢なシャーシを樹脂製の外装で覆うことで、ゲーミングPCらしさ漂う個性的な外観を実現している。ケースの寸法は270×600×500mm(幅×奥行き×高さ)。

筐体前面
筐体前面上部のインターフェイス。USB 3.0×2、USB 2.0×2、音声入出力を備える。写真右側に見えるのが電源スイッチ
筐体前面のカバーを開いた状態。カバーの内側には、BDドライブ、3.5インチスワップベイ、16-in-1カードリーダを備える
筐体背面
マザーボードの背面ポート。USB 3.0×4、USB 2.0×4、光デジタル出力、音声入出力端子、Gigabit Ethernet、HDMI×1。画面出力用のHDMIポートは、ビデオカードを挿している状態では機能しない
ビデオカードの画面出力ポート。DisplayPort、DVI-I、DVI-D、HDMI
筐体左側面
ケース内部。ROG YTAN G50ABの筐体は裏配線に対応しており、ケーブルは綺麗にまとめられている
CPU周辺部。CPUの冷却には120mmラジエーターを備えた水冷ユニットを採用している
マザーボードにはR.O.GブランドのMAXIMUS VI HEROを採用
MAXIMUS VI HEROにはカスタムBIOSが導入されており、自作市場向けの同名製品のような細かいチューニングは出来ない
GeForce GTX 780搭載のビデオカード。ASUS独自仕様のモデルではなく、リファレンスモデルが搭載されている
ストレージ。システム用の128GBのSSD×2と、データ用の2TB HDDを搭載する
付属品のマウスとキーボード。マウスはROGブランドのゲーミングマウス「GX900」

ボタン1つでCPUクロックの切り替えが可能

 筐体左上に設けられた「SPEED」ボタンは、ROG TYTAN G50ABが備える機能の中でもユニークな機能だ。前述の通り、ROG TYTAN G50ABに搭載は、メーカー出荷時点で4.1GHz、4.3GHz、4.5GHzという3つのオーバークロック設定が記録されている。筐体左上に設けられたボタンは、押すことで3つのオーバークロック設定を順番に切り替えられる。

「SPEED」ボタン。押すごとに4.1GHz→4.3GHz→4.5GHz→4.1GHz…という順番でオーバークロック設定が切り替わる
CPU-Zの実行画面。左から4.1GHz、4.3GHz、4.5GHz

 「SPEED」ボタンによるオーバークロック設定の切り替えは、Windows起動中であればいつでも有効だ。例えば、ゲームをプレイしている最中にボタンを押すことで、CPUの動作クロックを切り替えることもできる。

 各オーバークロック設定では、使用しているコア数によって最高動作クロックが異なるIntel Turbo Boost Technologyとは異なり、CINEBENC R11.5のように4コア/8スレッド全てに100%の負荷が掛かるようなテストを実行した場合でも、オーバークロック設定の上限値まで動作クロックが上昇する。

筐体表面のLEDライトは、4.1GHz時は青色、4.3GHz/4.5GHz時は赤色と、動作状況に応じて色が変わる
ボタンを押してOC設定を切り替えると、画面右上に設定されたCPUのクロックが表示される

ベンチマークテストで見るROG TYTAN G50ABのパフォーマンス

 ROG TYTAN G50ABのパフォーマンスが如何ほどのものなのか。そして、オーバークロック設定の違いにより、どの程度パフォーマンスが変化するのか。ベンチマークテストで探ってみた。

 利用したベンチマークソフトは、「3DMark - Fire Strike」(グラフ1、2)、「3DMark - Cloud Gate」(グラフ3)、「3DMark - Ice Storm」(グラフ4)、「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク ワールド編」(グラフ5)、「PSO2ベンチマーク(1,920×1,080ドット/フルスクリーン)」(グラフ6)、「CINEBENCH R11.5」(グラフ7)。

【グラフ1】3DMark - Fire Strike [Default/1,920×1,080ドット]
【グラフ2】3DMark - Fire Strike [Extreme/2,560×1,440ドット]
【グラフ3】3DMark - Cloud Gate [Default/1,280×720ドット]
【グラフ4】3DMark - Ice Storm [Default/1,280×720ドット]
【グラフ5】ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク ワールド編
【グラフ6】PSO2ベンチマーク(1,920×1,080ドット/フルスクリーン)
【グラフ7】CINEBENCH R11.5

 ハイエンドGPUであるGeForce GTX 780を備えているだけあって、ROG TYTAN G50ABの3D描画性能はかなり優秀だ。ファイナルファンタジーXIVベンチマークでは、2,560×1,440ドットという高解像度かつ、最高品質のグラフィックを設定しても、「非常に快適」とされる9,000前後のスコアを記録している。フルHD解像度を超える環境でのゲーミングにも十分耐えうる性能を持っていると言えるだろう。

 オーバークロック設定毎のパフォーマンスについては、CPUベンチマークであるCINEBENCH R11.5や、3DMarkのPhysicsスコアでは、概ね動作クロックの差に応じたスコア差が確認できる。一方、3DMarkの総合スコアなど、スコアに対するGPU性能のウェイトが大きい項目では、オーバークロック設定の違いによる優劣がはっきりしない。

 今回は、ハイエンドゲーミングデスクトップPCのテストということで、比較的GPU負荷が高めのテストを選択していることも影響しているのだろうが、オーバークロック設定の切り替えは、パフォーマンスを劇的に向上させるという程のものではないようだ。

 3D描画性能への影響力はそれほど大きくない印象のオーバークロック設定の変更だが、動作中のCPU温度や消費電力には一定の影響を与えることになる。CPUベンチマークテストであるCINEBENCH R11.5実行中のCPU温度と、消費電力の測定結果をまとめたものが下記のグラフだ。

 なお、CPU温度については、ROG TYTAN G50ABにプリインストールされているユーティリティソフト「AI Suite II」で取得し、消費電力についてはサンワサプライのワットチェッカー(TAP-TST5)で測定している。

【グラフ8】CINEBENCH R11.5(All Core)実行中のCPU最高温度
【グラフ9】システム全体の消費電力

 CINEBENCH R11.5のAll Coreテスト中のデータを見てみると、4.1GHz設定を基準とした場合、4.3GHz設定では消費電力が26W増加し、CPU温度は9℃上昇。4.5GHzでは消費電力は50W増加して、CPU温度は19℃上昇した。なお、動作クロックの高い設定ではCPU温度だけでなく、CPUクーラー搭載ファンの回転数が引き上げられるため、動作ノイズも大きく増加している。

 ベンチマークスコアから確認できる性能の上昇率と比較すると、オーバークロック設定は消費電力や動作ノイズなどのデメリットが大きい。常時オーバークロック状態で動作させるより、CPUパワーが必要になった時にオーバークロック設定を引き上げるという使い方がベターなようだ。

使いどころ次第で面白いOC機能と、高い描画性能が魅力

 優れた3D描画能力を持つGeForce GTX 780を搭載したROG TYTAN G50ABは、かなりリッチな設定でゲーミングを楽しめる強力なPCだ。

 今回実施したベンチマークテストでは、CPUクロックの向上がゲーム系ベンチマークのスコアを大幅に引き上げるという結果は見られなかったが、3段階の設定が用意されたオーバークロック設定は、PCの再起動や複雑な操作を必要とせず、ボタン1つでスムーズに設定を変更できるのが大きな利点だ。ゲームプレイ中にCPU負荷が増すシーンや、動画などのエンコード処理など、CPUパワーが必要な状況に直面した際、簡単にCPUを加速させられるというのは実に面白い。

 直販価格329,800円という価格は決して安くはないが、より良い環境でのゲームプレイを望むユーザーなら一考の価値はあるだろう。

(三門 修太)