山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
独自SoCを搭載した6.7型のハイエンドスマホ「Google Pixel 6 Pro」
2021年11月16日 06:45
Googleの「Pixel 6 Pro」は、Android 12を搭載した6.7型のスマートフォンだ。同時発売のPixel 6(6.4型)よりも一回り大きい画面を備え、カメラの望遠機能などを強化した、フラグシップモデルにあたる製品だ。
新しく登場したPixel 6シリーズは、従来のPixelのように、標準モデルと大型モデルという構成ではなく、どちらも6型超えの大画面で、機能面で差別化するという、これまでなかったラインナップになっている。今回紹介するPixel 6 Proは、カメラ性能に比重を置いた設計が特徴だが、より大きな画面を備えており、電子書籍ユースに向いている。
今回は筆者が購入した実機(128GBモデル、Cloudy White)をもとに、今年夏に発売されたPixel 5a(5G)、および画面サイズが近いiPhone 13 Pro Maxと比較しつつ、電子書籍ユースを中心とした使い勝手をチェックする。
大画面にしては軽量な筐体。背面カメラの意匠が特徴的
まずは画面サイズが同じiPhone 13 Pro MaxおよびPixel 5a(5G)との比較から。なお本稿ではPixel 5a(5G)は以後「Pixel 5a」と表記する。
Pixel 6 Pro | iPhone 13 Pro Max | Pixel 5a(5G) | |
---|---|---|---|
発売年月 | 2021年10月 | 2021年9月 | |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 75.9×163.9×8.9mm | 78.1×160.8×7.65mm | 73.2×156.2×8.8mm |
重量 | 210 g | 238g | 183 g |
CPU | Google Tensor · Titan M2 セキュリティ コプロセッサ | A15 Bionicチップ 2つの高性能コアと4つの高効率コアを搭載した新しい6コアCPU 新しい5コアGPU 新しい16コアNeural Engine | Qualcomm Snapdragon 765G 2.4 GHz + 2.2 GHz + 1.8 GHz、64 ビット オクタコア Adreno 620 |
RAM | 12GB | 6GB | 6 GB |
ストレージ | 128/256GB | 128/256/512GB/1TB | 128GB |
画面サイズ/解像度 | 6.7型/3,120×1,440ドット(512ppi) | 6.7型/2,778×1,284ドット(458ppi) | 6.34型/2,400×1,080ドット(415ppi) |
Wi-Fi | 802.11ax | 802.11ax | 802.11ac |
コネクタ | USB Type-C | Lightning | USB Type-C |
防水防塵 | IP68 | IP68 | IP67 |
生体認証 | 指紋認証(画面内) | 顔認証 | 指紋認証 |
駆動時間/バッテリ容量 | 最小 4,905mAh 標準 5,003mAh | ビデオ再生:最大28時間 ビデオ再生(ストリーミング):最大20時間 オーディオ再生:最大95時間 | 最小 4,620mAh 標準 4,680mAh |
6. 7型という画面サイズは、これまでのPixelシリーズでもっとも大型で、iPhone 13 Pro Maxとほぼ同等だ。アスペクト比は多少異なるものの、かつてのPixelの大画面モデル、Pixel 3 XLやPixel 4 XL(6.3型)からの買い替えには十分すぎるサイズだ。ちなみに本製品の兄弟モデルであるPixel 6も、6.4型という大画面なので、こちらでも差し支えないだろう。
重量は210g。Pixelシリーズと言えば、Pixel 3のように150gを切る軽量端末もあるほか、6.3型のPixel 5a(5G)が183gと軽いために相対的にヘビーに見えるが、同じ6.7型であるiPhone 13 Pro Maxは238gの重量があるので、むしろ軽い部類に入る。ただし筐体はかなりゴツく、体感的にはそれほど違いは感じない(後述)。
その他のスペックについては、GoogleオリジナルのSoCであるGoogle Tensorを採用するほか、メモリは12GB、IP68準拠の防塵防水対応、ワイヤレス充電にバッテリーシェア機能、さらに6GHz帯をカバーするWi-Fi 6Eにも対応するなど、紛れもないハイエンド機だ。5年間のアップデートが保証されるのもプラス要因だろう。ベンチマークについてはのちほど触れる。
外見上の最大の特徴は、背面のカメラだ。最近のスマホの多くはレンズを背面左に集約することで、左側だけが厚みのあるデザインになっている。本製品は複数のレンズを横一列に並べているため、左右の厚みが均等で、デスク上に置いても安定している。スマホを置いたまま操作する機会が多い人には便利だろう。
高級感はあるが滑りやすい筐体。指紋認証がややネック
では実際に使ってみよう。本製品にまず触れて感じるのは、サイズの大きさや重量以前に、ツルツルとした質感ゆえ滑って落としそうで怖いということだ。本製品はディスプレイが側面まで回り込んでおり、ラウンド加工されていることから、しっかりと握るのが難しい。側面が垂直にカットされているiPhone 13などと比べると、その違いは顕著だ。
さらにスクリーンも滑りやすく、画面を下にしてデスクの上に置くと、少しの傾斜で滑っていってしまうほど摩擦がない。また背面も光沢感が非常に強く、うっかり傷を付けないか気を使う。ふだんスマホは裸の状態で持ち歩いている人でも、本製品については何らかの保護ケースないしはカバーをつけるのは不可避だろう。
外観については、同じ6.7型のiPhone 13 Pro Maxと比べると、かなり細長い印象を受ける。実際の横幅の違いはほんの2mm程度で、全長も本製品のほうが3mm程度長いだけなのだが、想像以上に細長く見えるのが面白い。
重量はiPhone 13 Pro Maxよりも30gほど軽いはずだが、実際に手に取るとそれほど違いを感じない。本製品がカメラの配置の関係でやや頭でっかちな重量バランスになっており、それゆえ重く感じやすいのかもしれないが、それはiPhoneにしても同じはずで、少し不思議な感覚だ。
もっとも端末自体は高級感もあり、またカメラが横一列に配置されたデザインも秀逸で、所有欲を満たしてくれる。個人の主観がかなり入ってくるが、デザインに関しては、近年のスマホの中ではトップクラスではないかと思う。滑りにくい加工を施すなど、もう少し実用性重視に振ってくれていれば、なおよかったかもしれない。
なお本製品で要注意なのが、生体認証だ。本製品は過去のPixelシリーズで多く採用されていた背面の指紋認証センサーではなく、画面内の指紋センサーを搭載するが、しばらく指を押し付けるようにしなければ認証されないほか、失敗率もそれなりに高い。セキュリティを重視しすぎたのか、実用性がいま一歩な印象だ。
電子書籍ユースの場合、例えば電車の中で本を読んでいて、目的の駅に到着した時にロックし、乗り換えてからまたロックを解除して読み続けることがあるが、こうした頻繁なロック解除では従来モデルに比べてかなり不利だ。特に指を押し当てる位置を毎回目視で確認する必要があるのは、Pixel 5や5a、3などから機種変更したユーザーには苦痛だろう。
現在の新型コロナウイルスの影響下では、顔認証よりも指紋認証のほうが使い勝手がよいのは明らかで、指紋認証を廃止しなかったことは評価できるが、センサーの感度と認証のスピードをこれ以上上げられないなら、顔認証も搭載して相互にカバーできたほうがよかっただろう。今後のアップデートで何らかの進化があるのかにも注目したい。
ベンチマークについては、今回の比較対象であるPixel 5aとの比較では、3倍以上のスコア差があり、実際に操作していても遅さは感じない。ハイエンド同士の比較ではないので差し引く必要はあるが、電子書籍のようにCPUパワーを使わない用途はもちろん、ゲームなどの用途でも、困ることはないはずだ。
またディスプレイのリフレッシュレートも最大120Hzということで、スクロールもなめらかだ。開発者オプションでレートを可視化させた状態で操作すると、何らかの操作を行った時にレートが60Hzから120Hzへと切り替わる様子を確認できる。120Hzで固定することもできるので、用途によっては役に立つこともあるはずだ。
もっとも一方で、Twitterなど一部のアプリでスクロール時に若干の引っ掛かりを感じるなど、使っていると違和感を感じることはある。今後最適化されていくだろうが、現時点では多少気になるポイントではある。
6.7型の大画面、512ppiの高解像度で電子書籍に適する
では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を用いている。
本製品の解像度は512ppiと、電子書籍を表示可能なデバイスとしてはトップクラスの域に達している。画面サイズはスマホにしては大きいというだけで、雑誌など大判サイズの表示には向かないが、この高解像度ゆえ、文字そのものは潰れることもなく十分に読めてしまうので驚く。
ほかのスマホとの比較では、6.34型のPixel 5aよりはひとまわり大きく、6.7型のiPhone 13 Pro Maxとはほぼ同等。アスペクト比の関係で、コミックなどは画面上下に余白ができるが、スマホという選択肢に限れば、なるべく大きくページを表示したいニーズには最適だ。
スマホ以外のデバイスとの比較ではどうだろうか。本製品の6.7型という画面サイズは、先日発売されたKindle Paperwhite(6.8型)に近いが、こちらはアスペクト比が異なるため、並べても画面サイズはまるで異なる。Kindle Paperwhiteを見開き表示にして、ようやく本製品とイーブンといったところだ。8.3型のiPad miniでも、似たような状態になる。
ところで本製品で懸念されるのは、ディスプレイが側面に回り込んでいることによる、ページめくり時の誤反応だが、試した限りではおかしな影響は感じられなかった。そもそも側面に回り込んでいるといっても、Galaxyシリーズの湾曲ディスプレイのように、真横から表示内容が見えるほどではないので、使い勝手自体はそう違いはない。
ただしナビゲーションをAndroid 12デフォルトの「ジェスチャーナビゲーション」にしていると、電子書籍で次のページに移動しようと左から右にスワイプしたところ、前のアプリに「戻る」ジェスチャだと解釈されて、電子書籍アプリ自体が閉じてしまうといったことが起こる。
これは本製品に限らず、どのAndroidスマホでも起こる症状だが、本製品の場合、画面が側面にまで及んでいることで、そうした操作の取り違えが起こりやすくなっている。慣れれば指先の微妙なコントロールでこの両者を使い分けられるようになり、むしろ便利なのだが、うまくできず利用に支障をきたすようならば、ジェスチャナビゲーションをオフにするとよいだろう。
ちなみに本製品と同時発売のPixel 6は、ディスプレイが側面まで回り込んでおらず、こうした取り違えが起こりにくい。本製品よりもコンパクトとはいえ、画面サイズは6.4型と、今回比較対象に用いているPixel 5a(6.34型)よりも大きいので、こちらをチョイスするという手もあるだろう。
最高峰の製品だが重く滑りやすい筐体を許容できるか
以上のように本製品は、スマホの中では最大クラスの画面サイズを備えつつ、また機能・性能ともに最高峰にあたる製品だ。またAndroidということで、音量ボタンを使ったページめくりも行えるほか、アプリ上でのコンテンツ購入も可能であるなど、電子書籍ユースには極めて向いた製品と言える。
そんな本製品の最大のネックは、筐体の重さから来る持ち方の制約だろう。本製品は筐体の滑りやすさもあって保護ケースの装着は必須だが、そうなるとますます重量が増し、長時間保持するのが難しくなる。特に仰向けになった状態での読書ともなると、ほかの端末よりも明らかに難易度が高い。
筆者の場合、保護ケースにシリコン製のバンドを取り付け、しっかり握らなくとも保持できるようにしているが、それでもやはり、絶対的な重さに関してはかなり堪える。筆者は本製品を使い始める直前まで、本製品よりも約30g軽いPixel 5aを使ってきただけに、なおさらそのギャップを感じる。
筆者が思うに、Pixelユーザーが本当に欲していたのは、このPixel 6 Proの性能を備えつつPixel 3のような小型軽量な筐体を持つスマホだったのでは? という気がしなくもないが、それは今後に期待するとして、本製品を使いこなすにあたっては、この重く滑りやすい筐体をどのように保持するかが、かなりのウェイトを占めることになる。
本製品は10万円を超える価格からして、電子書籍のためだけに購入する1台というわけではないが、電子書籍にせよ動画鑑賞にせよ、寝転がったり仰向けになって使うことが多いようならば、スマホリングやスマホベルトなどの補助具の必要性が高くなることは、あらかじめ把握しておいたほうがよいだろう。