山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

Googleの6.34型スマホ「Pixel 5a(5G)」で電子書籍を試す。Pixel XLシリーズ並の大画面

「Pixel 5a(5G)」。Googleストアの直販価格は5万1,700円。ほかにもソフトバンク経由でも販売される

 Googleから、ミドルクラスのスマホ「Pixel 5a(5G)」が登場した。従来の「Pixel 5」の廉価版にあたるモデルだが、従来の大画面モデル「Pixel 4 XL」と同等となる6.34型の有機ELディスプレイを搭載しており、大画面で電子書籍や動画を楽しみたいニーズに適している。

 折しも現在、Pixelシリーズのうち2018年に発売された「Pixel 3」「Pixel 3 XL」は、最低3年間のOSおよびセキュリティアップデートの期限を迎えようとしており、買い替えを考えている人も多いはず。本製品は、そうしたニーズにおいても注目の1台だ。

 今回は筆者が購入した私物を用い、電子書籍ユースでどの程度使えるかを中心にチェックしていく。

Pixel XLシリーズ並の大画面6.34型

 まずは本製品の特徴をざっと見ていこう。

 画面サイズは6.34型。Pixel 5が6型、さらに従来モデルに相当するPixel 4a(5G)が6.2型だったので、これら直近のモデルの中でも画面サイズは最大ということになる。かつての大画面モデル「Pixel 4 XL」が6.3型だったので、追いついてしまった格好だ。

 ボディサイズは、Pixel 4 XLは、高さが160.4mm、幅が75.1mmだったところ、本製品は高さが154.9mm、幅が73.7mmと、同等の画面サイズでありながら、全体的に小型化されている。両製品はアスペクト比が異なるので(Pixel 4 XLは19:9、本製品は20:9)、画面は縦方向に伸びているものの、ボディは逆に短くなっている。

 画面サイズの大型化と引き換えに、重量は183gと、廉価モデルのPixel aシリーズとしてはもっとも重くなっている。Pixel 4 XLは193gなので、画面サイズからすると順当なのだが、Pixel 5(151g)、Pixel 3(148g)などとの差はいかんともしがたい。軽さを重視するユーザーにとってはネックになるだろう。8.8mmという厚みもやや気になるところだ。

有機ELディスプレイを採用。フロントカメラはパンチホール仕様で、ほぼ全画面スクリーンと言って差し支えない外観だ
背面。指紋認証センサーを中央に備える。ちなみに顔認証には非対応
日本での初代モデルに当たるPixel 3(右)との比較。約3年のうちに画面占有率がずいぶんと高くなったことが分かる
背面の比較。指紋認証センサーなど共通の意匠はあるものの、カメラの大幅な進化が目につく
iPhone 12 Pro Max(右)との比較。画面の大型化もあり、隣に並べても遜色ない
背面の比較。カメラ部はiPhone 12 Maxと同じく3眼に見えるが、実際には2眼だ

 CPUはSnapdragon 765Gということで、Pixel 5とは同一、Snapdragon 855を採用したPixel 4 XLには劣るという位置付けだ。メモリはPixel 5の8GBから若干減り6GBとなっているが、Pixel 4 XLは6GBだったことを考えると、決して少ないわけではない。

 またバッテリは、Pixel aシリーズ中もっとも多い4,680mAhを搭載するほか、Pixel aシリーズとしては初となる防水防塵性能も搭載している。IP67準拠ゆえ本家のIP68よりはワンランク下がるが、廉価モデルでありながら、機能・性能ともにかなり健闘している。

 その一方、無接点充電機能が省かれていたり、Wi-Fi 6に非対応だったりと、削れるところは削られている。リフレッシュレートもPixel 5およびPixel 4 XLのような90Hzではなく60Hz止まりだ。一方で本家にはないイヤフォンジャックを搭載するなど、Pixel aシリーズではお馴染みの仕様は健在で、見る人によって評価はかなり変わるだろう。

底面にはUSB Type-Cポートを搭載。パッケージには18WのUSB PD充電器が付属する
Pixel aシリーズではおなじみのイヤフォンジャックを上面に搭載する

カメラ機能も充実。性能的にはPixel 3 XLに近い?

 セットアップの手順は、従来のPixelシリーズと同様で、特に気をてらったところはない。プリインストールのアプリも、Google製アプリを中心としたベーシックなものばかりで、非常にシンプルだ。電子書籍アプリは用意されていない。

ホーム画面。Android 11標準のシンプルな仕様だ。標準ではホームボタンのないジェスチャーナビゲーションが有効になっている(後述)
プリインストールアプリ。Google製アプリが中心で数も少なめ。電子書籍アプリはない

 フロントカメラはパンチホール型で、ノッチのあるタイプと異なり、画面の上部がスッキリ見えるのが特徴だ。ホーム画面とあいまって、全体的に洗練された印象を受ける。ただし顔認証については対応しない。

 Pixelシリーズでは定評のあるカメラについても、機能が削られることなく、従来の機能をそのまま搭載している。本稿では詳しく取り上げないが、フォーカスが合うまで時間が余計にかかるなどの差はあるものの(特に超広角側はその傾向が強いようだ)、機能や画素数などで本家に遅れをとっていないのは大きなプラスだ。

フロントカメラはパンチホール型を採用。画面の左上に配置される
リアカメラは広角および超広角の2眼。この構成はPixel 5と同じだ
電源ボタンと音量ボタンは従来モデルと同様、右側面に配置されている。ちなみに左側面にはSIMカードスロットがある

 ベンチマークについては、Sling Shot Extremeによる測定値は「3,139」。同じPixel aシリーズのモデルと比較すると、Pixel 3a XLが「1,629」、Pixel 4aが「2,479」なので、かなり健闘している部類だ。ただしPixel 4 XLは「5,741」あるので、さすがに性能の差は明らかだ。ここはやはりPixel aシリーズの限界を感じる。

 ちなみに筆者は今回、私物のPixel 3からの移行を前提に購入したのだが、Pixel 3のスコアは「3,577」なので、スコアではやや遅れを取る。2眼化されたカメラなど、機能面のアドバンテージも含めて、ようやくイーブンと言ったところだろうか。画面サイズを考慮すると、Pixel 3より、大画面版のPixel 3 XLに近い製品と言えるかもしれない。

Sling Shot Extremeによる測定値は「3139」。Pixel aシリーズとしてはかなり高い。右はPixel 3で、CPUが本製品よりも上位(Snapdragon 845)、一方でメモリは少なめ(4GB)ということで、差し引きされてスコアはわずかに下となる

表示性能は文句なし、ローエンドとは一線を画すパフォーマンス

 電子書籍端末としての使い勝手を見ていこう。表示サンプルは、テキストは太宰治著「グッド・バイ」、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」を使用している。アプリはいずれもKindleを用いている。

 本製品は、6.34型という画面サイズを備え、テキストはもちろんコミックに関しても、単ページであれば十分に実用的なサイズで表示できる。解像度も413ppiと高く、不満に感じることはないだろう。iPhoneの大画面版であるiPhone 12 Pro Maxよりは一回り小さくなるものの、コミックの吹き出しも十分に読めるサイズだ。

テキストコンテンツを表示したところ。電子書籍ストアによっては、上部パンチホールカメラの行が真っ黒に塗りつぶされる場合もある
コミックを表示したところ。こうして単ページを表示すると上下に余白ができるが、ライブラリなどの表示では有効に活用できるので、そうデメリットというわけではない
6.7型のiPhone 12 Pro Max(右)との比較。本製品の方がページサイズは一回り小さくなるが、吹き出し内の文字も十分に読めるサイズ。解像度も高い

 本製品は画面のアスペクト比が20:9と、かつてのPixel 4 XL(19:9)や、Pixel 5、Pixel 4a(19.5:9)に比べると縦方向に画面が長いのが特徴で、上下にできる余白のサイズはそれだけ大きくなる。ちなみにiPhone 12 Pro Maxもアスペクト比は19.5:9なので、本製品の縦方向の長さは際立つ。

 とは言え、最近はどの電子書籍ストアアプリも天地の長さを活用したメニューやライブラリ表示が増え、コミックなどを単ページ表示した場合の余白さえ気にしなければ、むしろ一画面あたりの情報量が多く表示できるので、むしろメリットになりうる。横幅も66mmと十分に確保されており、縦の長さに比べて横が窮屈に感じることもない。

本製品の横幅は66mm。コミックの単ページ表示としては十分な幅がある
iPhone 12 Pro Maxは71mm。もともと6.7型と大きいため、本製品より約5mm大きく、そのぶんページは大きく表示できる
アスペクト比18:9のPixel 3(右)と、Kindleストアを表示した時の情報量を比較したところ。縦にコンテンツが配置されるストアのページでは、本製品の方が1行ぶん多く表示される

 また性能面も及第点だ。一般的に、6型クラスの大画面スマホは価格と性能にかなりの幅があり、ローエンドの製品ともなると2万円台で手に入るが、電子書籍のページめくりに支障はなくとも、ダウンロードの速度が遅かったり、アプリの切り替えにもたついたりと、使っていてストレスが溜まりがちだ。

 一方のハイエンドの製品ともなると、こうした不満はまったくないものの、価格が10万円を超えることから、気軽に買うのは難しい。少なくとも、メインで使うスマホとは別に、電子書籍を主に読むための2台目に……というニーズには向かない。

 その点本製品は、実売価格が5万円強と中間の価格帯で、ローエンドとは一線を画すパフォーマンスを誇っている。決して「爆速」ではないが、ゲーム用途ならまだしも、電子書籍ユースではその差はまず感じない。予算を重視つつも、ローエンドのモデルでは性能面で物足りないというニーズにはぴったりだ。

 ちなみに具体的なパフォーマンスの差だが、今年頭に紹介した、2万円で入手できるモトローラ「Moto e7」と比べたところ、Kindleストアのコミック5冊をダウンロードするのに要する時間は、「Moto e7」が1分33秒のところ、本製品は15秒で完了した。

 これはMoto e7が5GHz帯非対応であることに起因するもので、性能の違いとして見るには無理があるが、ローエンドモデルでは毎回意識させられる、アプリの切り替えに要する時間や、画面の切り替わりが完了するまでの待ち時間なども、本製品ではまったく意識することはない。Pixelシリーズの中では廉価モデルとは言え、さすがにこのクラスの製品とは明らかな差がある。

モトローラの6.5型スマホ「Moto e7」(右)とはほぼ同サイズ。ただしレスポンスはもちろん、ダウンロード速度についても、本製品の圧勝だ

 そのほかの使い勝手もざっとチェックしておこう。かつてのPixelシリーズでは、タッチ画面がかなり敏感で、ベゼルまわりに触れた時に不用意にページがめくられてしまうことがあったが、今回試用した限りでは、そうした問題は見受けられなかった。

 どちらかというと、Android 10から搭載されたジェスチャーナビゲーションを有効にしていた場合に、ページをめくったつもりで左右スワイプするとアプリごと前に戻ってしまいがちなのが、気になると言えば気になる。どうしても慣れないようならば、「システムナビゲーション」で、3ボタンナビゲーションへと切り替えるとよいだろう。

 また音量ボタンによるページめくりについても、Pixelシリーズは電源ボタンの下に音量ボタンがあるレイアウトなので、ページをめくろうとして電源ボタンを押してしまうミスが起こりにくい。ただしキーが若干固めで、連続して押すと指が疲れてしまうのは、マイナス要素と言えるだろう。

ジェスチャーナビゲーションは電子書籍のページめくりのスワイプの動きと競合するので、気になるようなら「システム」→「ジェスチャー」→「システムナビゲーション」で、「3ボタンナビゲーション」に切り替えるとよい
「3ボタンナビゲーション」に切り替えると(右)、画面下部に旧来のAndroidでは標準だったホームボタンなどが表示されるようになる
音量ボタンは本体右側面、電源ボタンよりも下に配置される。操作性は悪くないのだが、かなり固く、カチカチという音が響きがちなのが玉に瑕

今秋登場の「Pixel 6」と比べた時に本製品を選ぶ利点とは

 Pixelシリーズは、今年の秋に、最新機種である「Pixel 6」および「Pixel 6 Pro」の発売が予定されており、すでにティザーサイトも公開されている。

 こうした中で、本製品はミドルエンドのモデルとして、時期的にもかなり微妙なタイミングで登場したわけだが、従来のPixel 5の仕様を踏襲しつつ画面を一回り大きくし、かつ価格を抑えた、電子書籍ユースには非常に導入しやすいモデルとなっている。

「Pixel 6」。独自SoCを採用する製品で、大画面版の「Pixel 6 Pro」ともども、本製品から見て上位モデルという位置付けになると見られる

 価格が5万円の大台を超えているのはやや残念だが、従来の税別表記のままなら「税別だが5万円を切っている」と称されていたはずで、実際そう開きはない(ちなみに消費税5%以下なら5万円を切っていた計算になる)。もちろん安いに越したことはないが、購入する側が納得いくかどうかだけの問題だろう。

 その一方、予算のあるユーザーは、やはりPixel 6およびPixel 6 Proに目が行くのは必然だが、こちらはあくまでもメインのスマホの買い替え先となるモデルであり、2台目として導入する製品ではない。また現時点では公表されていないが、独自SoCを備えたハイエンドモデルゆえ、実売価格もかなり高額になる可能性がある。

 そうした意味で本製品は、電子書籍や動画の鑑賞に適した大画面を備えた2台目というニーズにフィットするのはもちろん、ゲームなどパワーを要する用途に使わないのであれば、メインのスマートフォンとしても通用する実力を備えている。一定期間のアップデートも保証されていることから、現実的な選択肢として、幅広いユーザーにお勧めできる製品と言えそうだ。