週末カジュアルPCゲーム部

アクションがハードな謎解きSF猫アクション「Stray」

 今回紹介するのは、猫を操作して近未来の荒廃した世界を彷徨うアクションアドベンチャー「Stray」だ。PC版は7月20日発売で、Steamでの販売価格は3,500円。開発はBlueTwelve Studioで、2年前にPlayStation 5のトレイラーで発表された時から話題になっていたが、このたび無事、PS4/PS5/PC版がほぼ同時発売となった。なお、発売直後にも関わらず、PS4/5では単体購入しなくても、有料の遊び放題サービス「PS Plusエクストラ/プレミアム」でもプレイできる。

 物語は4匹の野良猫たちが荒廃した何かの建造物の中で雨宿りしているところから始まる。雨が止んだので、どこか別の場所へと移動を開始する猫たち。ここでプレーヤーはそのうち1匹の猫を操作し、操作方法を学びながら他の猫たちとじゃれあったり、水を飲んだりしつつ、移動していく。

 屋外ではあるが、コンクリートで建てられた巨大な壁があり、錆びたパイプが張り巡らされた貯水池といった風貌の人口建造物の中を移動する猫たち。敵などは出現せず、猫たち以外の生物が何も出てこない平和ながらも不穏さが感じられる世界を進めていくと、プレーヤーの猫が渡っていた錆びたパイプが突如、へし折れてしまい、プレーヤーの猫のみが、穴の底へと滑落してしまう。暗がりの中で気が付いた猫は移動できる場所に歩みを進める。するとそこには、荒廃した地下都市があるのだった。

 本作はこの猫を操作して謎を解いたり、ハードなアクションに挑むアクションアドベンチャーだ。猫を愛でたり、生態を観察するといったほんわか癒し系の要素は控えめなので、そこを勘違いしてプレイしてしまうと、序盤のアクションでめげてしまうので要注意ポイントだ。

 一方で本作の魅力の1つは、この猫の描写のリアリティさでもある。細部では流石にゲームならではの不自然なアクションは見られるものの、猫の仕草や動きにはかなりリアリティがあり、開発者たちが猫をとても好きで、その愛おしさをゲーム内に組み込もうとした努力の跡が随所に感じられる。

 そんな本作のアクションがどのようなものか、勘違いして買ってしまった人がアクションを潜り抜けるポイントなども合わせてご紹介していこう。

かわいい猫のアイコンをあしらったシンプルながらもクールなタイトル画面
タイトル画面でしばらく放置していると、デザインかと思っていた左下の影の猫が動き出し、ピントがあったところでこちらを見る。こわい。
最初の数分は癒しの時間。とはいうものの、この雰囲気自体からもあまり癒し系の空気は感じられず、むしろ荒廃した世界の背景が気になるばかり。他の猫とじゃれ合うといった操作はほかの猫がいる序盤だけの楽しみだ

徹底したネコアクション

 ゲームパッドを使用した際の猫の操作は左アナログスティックで移動、右スティックで視点変更というオーソドックスなもの(キーボードだとW/A/S/Dとマウス移動)。ジャンプはAボタンだが(キーボードだとスペース)、どこでも自由にぴょんぴょんできるわけではなく、ジャンプして飛び乗れる場所でのみ有効になる。各種アクションはYボタン(キーボードだとQ)で、こちらもコマンドを受け付ける場所でのみ有効になる。人間の視点とは異なり、猫の低い視点ということもあってか、プレーヤーによっては3D酔いを感じる人もいるようなので、気分が悪くなるようなら早めの休憩を取るのがいいだろう。

猫のかわいさを満喫できるのは最初の数分のみなので、ここで存分に猫同士のじゃれあいなどを堪能しておこう
新たな操作が発生する際には画面上にテキストが表示され教えてくれる
うっかり地下に落ちてしまった猫。ここからいよいよ冒険が始まる……

 主人公は猫であるため、猫の視点でものを見て、猫の力でできる以上の事は行なえない。例えば扉を開けるといったアクションは行なえない。そのため、足場を使って高い場所に移動し、空いている窓から入ったり、ドアに対して爪とぎを行なうことで中から開けてくれるのを待つなど、徹底した猫目線でのアクションとなっている。

猫にできることと言えば爪とぎ。やりやすそうな場所でYボタンを押すことで爪とぎモードとなり、RT/LTを交互(マウスだと左/右クリック)に押すことで爪がとげる。爪が鋭くなることで速くなったり、といった恩恵はなさそうだ
移動中にBボタンでいつでも、ニャーと鳴ける。ゲーム的にはこれで敵をおびき寄せたりできる
小さなものなら口にくわえて持ち運べる。また小さなものなら手や口で押して下に落とすこともできる

 あまり細部までネタバレする気はないが、未クリア、5時間弱プレイした段階では本作の中でヒトの姿は確認できていない。いるのはAIとヒトのような行動をするロボットのみで、猫の主な交流相手はこれらのロボットたちとなる。また、最初に猫に助けを求めてくるのはコンピュータに保存されていたAIで、道中のロボットとの会話やアイテムの使用など、猫が行なえないアクションの多くはこのAIがロードされたドローン型ロボット「B-12」が行なってくれる。

真っ暗な廃墟に落ちた猫に謎の「HELP」の文字。この後、謎のAIは猫の行く先をこうしたネオンを使って案内してくれる
後述のZURKとのアクションを経てようやくAIの指示した場所にたどり着くと、AIの情報がロードされたドローン型ロボット「B-12」が登場。
B-12は、ロボットたちの会話を通訳したり、ライトを照らしたり、アイテムをデータ化して収納したり、アイテムを使用したり、画面上の文字を翻訳してくれたり、猫ができないことのほとんど全てを担ってくれる頼りになる相棒だ

ZURKには気をつけろ!

 そして彼らと猫の共通の敵として登場するのが謎の生物「ZURK」と呼ばれる1つ目の虫のような生物なのだが、これが非常に気持ち悪い。

 先ず、単体で登場することはなく、多くのZURKが群れを成して襲ってくるのが気持ち悪い。そして猫に取りつくとあっという間に猫は殺されてしまう。この時のビジュアルがなかなか凄惨なため、猫目的でプレイした多くのプレーヤーがここで阿鼻叫喚の悲鳴を上げているようだ。

 ZURKを回避するには、先ずは猫ダッシュを利用する。RTを押しながら移動する事でダッシュできるので、これを駆使しつつ、さらにZURKの動きを見ながら左右にフェイントをかけるなどして、相手の突進を意識的にかわすように心掛けるのがいいだろう。取りつかれた直後であればBボタン(キーボードだとAltキー)を押すことで振り払うことは可能なので、早めにBボタンで振り払い、すぐにダッシュを再開、位置を変えるなどの工夫をすることで、回避できる場面も多い。また、死んでしまった場合も、近い場所からのリトライが可能なので、何度もリトライして逃げるラインを頭に叩きこ込むのが重要だ。

 幸いなことに、ZURKは体当たりしてこちらを捕食する以外の攻撃手段は持ち合わせていない。また、一定以上の高さには上がってこられないので、さっさと奴らの届かないところに逃げてしまうのがベストだ。

 猫、というだけで無条件にプレイを開始して後悔してしまったライトユーザーも多くいるだろう。そんな人は前述のような心構えと回避のテクニックを駆使して是非物語を進めてみてほしい。

スラムには人間のような行動を取るロボットたちが暮らしている。彼らは会話もできるし、個性も自我もあり、人間とあまり変わらないように見える。このスラムで猫は地上に戻るための情報やそのために必要な物を彼らと協力して獲得していく
ロボットと猫の共通の敵が「ZURK」だ。一つ目の不気味な生物で、動きもかなり早く、集団でこちらを襲ってくる。攻撃手段はダイレクトにこちらに貼りついてきて食おうとしてくる
貼りつかれた場合はBボタンで振り切れる。振り切ったらすぐにダッシュを再開することで離脱できるので、とにかく諦めずに逃げまくれ

SFチックなストーリー展開

 本作の中心にあるのはやはりストーリーだ。荒廃した近未来都市にロボットたちだけが生活する空間があり、そこに飛び込んできた猫を中心に展開する物語、という非常に良質なSFの世界が待っている。SFと言えば猫なのである。ロバート・A・ハインラインのSF小説「夏への扉」ではないが、やはりSFと猫は切っても切れない関係なのだ。

 物語を進めていくと、作中で過去の人間が行なった行為が「B-12」のメモリーや、直接のストーリーとは別に用意された、ちょっとした街の風景、室内の遺物などから色々と見えてくる。こうした世界の成り立ちなどを勝手に想像したり、あれこれ考えて楽しめるのが、この手の近未来物の醍醐味だ。

 本作ではこうした想像力を促進するために、ストーリーとは別の収集物なども用意されている。例えば“楽譜”というアイテムは、入手したらミュージシャンのロボットに渡すことで、その場で演奏をしてくれる。そばには猫がちょうどリラックスできそうな座布団やクッションのような物が置いてあり、そこで演奏を聴きながらのんびりと寝ることも可能なのだ。

 なお、街の中で戦闘は一切発生せず、地上に戻るための手がかりを探すアドベンチャーパートが展開する。謎解きの作りはあまり難しくはないので、じっくりセリフを読みながら物語を進めていると、「あ、これはアイツに頼めばいいんだな」など、先読みができるくらいには簡単なので、あまり迷うことなくプレイできるだろう。アドベンチャーが苦手な人であっても、移動可能なところはとにかく片っ端から移動し、特殊操作が可能なところではYボタンによる特殊アクションだけでも、謎が少しずつ解けていくのでめげずにトライしてほしい。

 ただし、操作可能なポイントには、猫特有の罠があちこちに仕掛けられている。例えばアイテムを探して室内を探索している時に、何か見つけたかと思ってボタンを押したらそこで寝始めたり、爪を研ぎ始めたりしてしまう。猫だからしょうがないのだが、本棚の小さな隙間で寝だした時は「そこで寝るんかい!」とツッコミを入れたくなってしまった。

 前述の通り、筆者のプレイ時間は5時間弱で、まだクリアには至っていない。物語はかなり佳境に来ている印象なので、あと数時間プレイすればクリアできると思われるが、本作のボリュームは長くても8時間くらいでクリア可能とされている。週末などにライトな感覚でこの猫の行く末を見てあげてほしい。

壁に描かれた文字などをB-12に翻訳してもらうことで、昔の世界の情報が得られる
移動中の風景からB-12のメモリーが少しずつ修復されていく。こちらはB-12のメニューからメモリーの修復率が確認できることからストーリーに影響がありそうなので、今のところ全てのメモリーを集めながら進めている
ミュージシャンのロボットにスラムで拾った楽譜を与えるとそれぞれの楽曲をギターで演奏してくれる

現代的なゲーミングPCなら問題なくプレイできる

 本作におけるGPU設定は「V-SYNC」のオン、オフと「最大フレームレート」を30、60、上限なしにするかの選択、解像度は接続したディスプレイの上限が表示されるため、今回は4K解像度になっていた。解像度スケールはデフォルトで100%。こちらは表示解像度ではなく描画解像度を50%~200%まで設定可能。その他にも「モーションブラー」、「シャープネス」、「エフェクト品質」、「シャドウクオリティ」、「テクスチャークオリティ」、「メッシュクオリティ」をそれぞれ調整できる。

 今回はGeForce RTX 2080 8GBとRyzen 5 3400G搭載のゲーミングPC上にて、解像度を4K、解像度スケールを100%、「V-SYNC」をオフにして、「最大フレームレート」を上限なし、そのほかの設定は全て最高品質に設定してみたが、この状態でビデオメモリの使用量は0.4GBとなっており、あまり使用していない。フレームレートは常時60fps前後を維持。場面によっては50~70fps台にブレることもあったが、ゲームプレイ上は全く問題ないレベルだった。

 GPUについては1世代前のハイエンドであるRTX 2080だったが、フレームレートが思ったほど上がらない。そこで試しに解像度スケールを50%にしてみたところ、フレームレートは一気に100以上に跳ね上がった。逆にこれを200%にするとフレームレートが一気に1桁台にまで低下してしまったので、GPUパワーはかなり使用しているようだ。

 最近のミドルクラスのGPUでプレイする場合は、解像度スケールを調整したり、エフェクトやシャドウなどのGPU設定を調整することで、比較的快適に動作すると思われる。

スペック要件(最低)
OSWindows 10(64bit)
CPUCore i5-2300 / AMD FX 6350
RAM8GB
GPUNVIDIA GeForce GTX 650 Ti 2GB/AMD Radeon R7 360 2GB
ストレージ10GB
CPURyzen 5 3400G
RAMDDR4 16GB
GPUGeForce RTX 2080(8GB)
ストレージTS256GMTE220S
GPU設定。使用するビデオメモリ使用量も確認できる
GPU負荷は常時100%に近くかなりの高負荷となっていた。フレームレートは上限なし設定にしていたが、60fps前後でゲームプレイ上問題ない、ギリギリのラインといえる

アクションはキツめかもしれないがぜひクリアしたい

 以上、「Stray」について紹介してみたが、数時間プレイしてみた感触としては、アクションパートの難易度がややハードに感じられたことだ。アクションとしては非常にシンプルで、敵のZURKをかわしながら前に進み、ZURKが届かない場所までジャンプして上がるだけなのだが、このアクションがかなり厳しい。ZURKの動きは加速がつくと非常にスピーディーになるし、ZURKが集団で襲って来る恐怖は本作の売りの1つだと思われるが、一方で猫目的でプレイしたライトユーザーの心を折ってしまいそうな厳しさも感じられた。

 リトライは無限に使えるが、フィールドのどこに移動するかといった情報も画面上には提示されないため、何も考えずにZURKのいるエリアに突入すると、ZURKを回避しきれずに、やられてしまう場面が多々あり、本作のようにストーリーを見せたいタイトルなら、アクションパートについては難易度が軽減できる仕組みがあればさらによかったと感じた。

 例えばリトライした後は、ルートを分かりやすく提示するようにしたり、時間を停止してZURKの動きを少しだけ抑えたりなど、難易度の緩和の仕組みがあれば、安心してプレイできる人も増えると思うので、今後は改善してほしいポイントだ。

 何より本作は猫の仕草とストーリーの展開がとても魅力的な1本だ。アクションパートが多少厳しくても、リトライで猫の未来の物語を繋いであげてほしい。

この場面、ZURKのいる中をダッシュでかわして、右奥に見えるランタンの置かれた足場まで移動するのが目的だが、何も考えずに飛び込むとどこに行けばいいか分からなくなってZURKに囲まれてしまう。移動開始前に安全地帯から次の行き先が確認できる場合は、じっくりと状況を観察してから挑むのがベストだ
ZURKに取りつかれると、画面が赤く染まっていき、ゲーム内独自の言語でこちらの死亡を伝えてくれる。この時のビジュアル自体にはさほどグロテスクさはないのだが、画面が停止せず、もぞもぞとZURKが動く中でのこの赤色の画面という演出が精神にダメージを与える
また、冒頭数分の頃のような平和な状態に戻れるのだろうか。猫好きのStrayプレーヤーがプレイしながら願うビジョンである