山田祥平のWindows 7カウントダウン

Vista環境でもWindows 7にアップグレードできるとは限らない



 2009年8月12日午前7時、Windows 7の日本語版RTMが、予定を前倒しにして公開された。英語版はすでに公開され、ランゲージパックの導入により、見かけの上では日本語版として利用できたが、やはり、最初から日本語版としてインストールできるのはうれしい。

●RTMでわかるRCのできのよさ

 手始めに、RTMをRCでの検証に使っていたものを含む5台のPCにインストールしてみた。といっても、壁紙が変わった以外、あまり変わった気がしない。そのくらいRCはRTMに近かったということなのだろうか。手元には、まだRC環境のPCが残っているが、これなら、何か問題が起きるまでは、そのまま使い続けてもいいくらいな印象だ。

 まず、パナソニック「Let'snote R8」。128GBのSSDを搭載したプレミアムエディションだが、工場出荷状態のデスクトップから、デスクトップのマカフィーのインストール用ショートカットを削除した上で、インストールしようとするとIntel Dynamic Power Performance Managementをアンインストールするように警告が表示された。これはRCではなかった警告だ。警告に従い、アンインストールをしてアップグレードインストールしたところ、無事に終了し、RCのときと同様に、アップグレード後、Intel Graphics Render Technologyが無効になったというメッセージが表示されたが、特に問題なく快適に使えている。ほんの少しだが、スリープからの復帰が早くなったように感じる。ただ、電源アダプタを外すなど、電源状態が変わった直後に、画面がブラックアウトするようになってしまった。この現象はRCのときにはなかった。

 次に、ソニー「VAIO type P」。こちらは、ワイヤレスWAN、GPS、SSDモデルで、いったん工場出荷状態に戻し、Vista Home Basic SP1をアップグレードしてみた。こちらも印象はRCのときとあまり変わらない。スリープからの復帰時に描画が不完全な点も同じだ。GPUとして装備されているGMA500のドライバは、インストール後にWindows Updateからダウンロードされて置き換わったのだが、次のバージョンアップに期待したいところだ。

 このほか、「HP Mini 1000 Vivienne Tam Edition」と「Dell XPS M1330」にもクリーンインストールしたが、特に問題なくインストールが完了した。Dell XPS M1330では、英語版のRTMをインストールしたときにGeForce 8400M GSを認識せず、標準ビデオドライバがインストールされるという点を指摘したが、日本語版でも同様の結果となった。

●まさかのブルースクリーン

 これら4台が、とりあえず、うまくいったので、気をよくして、日常作業に使っているVista SP2導入済みのデスクトップ機をアップグレードしてみることにした。2008年秋から使い続けている環境で、各種のアプリケーションのインストール、アンインストールを繰り返し、IE8やSP2のベータを導入したり、ベータを削除して、RTMをインストールするなど、クリーンインストール状態からはほど遠い状態になっている。デスクトップにも、必要なのだか、いらないのだかわからないようなデータやショートカットが山のようにある。

 ハードウェアの構成としては、Intelのマザーボード「DP35DP」にCore 2 Quad Q9450を入れ、4GBのメモリを実装したもので、ストレージはSATAの1TB HDDが4台、さらにDVDドライブとBDドライブ、そして、1.5TBのUSB外付けHDDがつながっている。GPUはATIのRadeon HD 4850だ。

 インストールしようとすると、Corel WinDVD9 *、iTunes(Please deauthorize computer prior to upgrade)、ATI CATALYST Install Manager*、ATI Catalyst Control Center*がリストアップされ、

「これらのプログラムは、アップグレード後に正しく動作しない可能性があります。アップグレードの前に、これらのプログラムをアンインストールすることをお勧めします。アップグレードを取り消して、コントロールパネルを開き、"プログラムのアンインストール"を検索してください(*マークのプログラムはアップグレード後に安全に再インストールできます)」

インストール直前に互換性レポートが表示されるが、インストールを続行することもできる

 つまり、iTunesはコンピュータの認証を解除しておけということであり、WinDVDとATI関連はアンインストールした上で、アップグレード後に再インストールすることを促されている。

 この警告を無視してアップグレードを試みたところ、プロセスは進み、約2時間30分が経過した最終の段階の「ファイル、設定、プログラムの転送中」のプロセスで再起動がかかったところでブルースクリーンが表示された。これでおしまいかと思ったのだが、自動的に再起動後、失敗が検出され、ロールバックを開始、約1時間かけて、元の環境が完全に復元された。

アップデートに失敗してブルースクリーンを出した後、ロールアップの作業が自動的に行なわれる

 やはり、警告は素直にきこうと、4つのプログラムを削除して再チャレンジしたが結果は同じだった。怪しそうなプログラムを削除したり、USB接続された地デジチューナを外すなど、問題を起こしそうな部分に手を入れながら、この日は、結果的に2時間30分のアップグレードと、1時間のロールバックを4回繰り返したのだが、すべて結果は同じだった。この環境特有のものであることを願いたいが、ソフトウェアが原因なのか、ハードウェアが原因なのかは、現時点で特定できていない。最後の最後、BIOSを最新のものにアップデート、INFファイルもIntelから提供されているWindows 7用のものに置き換えて試した5回目のアップデートも同じ状況で失敗した。

 だが、このロールバックの仕組みは、実にありがたい。OSが起動不可能な状態になってもおかしくないところ、何事もなかったかのように元の状態に復元されるのだ。なお、システムドライブのルートには、「$UPGRADE.~OS」という残骸フォルダが残っている。

●失敗の原因を調べるよりも最初からやり直した方が早い

 アップグレードやインストールは、

・Windowsファイルのコピー
・ファイル、設定、プログラムの収集
・Windowsファイルの展開
・機能と更新プログラムのインストール
・ファイル、設定、プログラムの転送

というプロセスで行なわれる。今回は、5台のマシンにインストールを試みて、1番うまくいってほしい環境でアップグレードができなかった。こうした挙動を見る限り、いくらVistaと同じカーネルがベースになっているといっても、なかなか一筋縄ではいかないことがわかる。

 メーカー製PCなどの複雑な環境では、アップグレードインストールを勧めるが、使い古した環境の場合は、アップグレード前のバックアップを確実に実施し、できれば、工場出荷状態に戻してのアップグレードをおすすめする。もちろん、メーカーから正式な対応アナウンスが出ている場合は、対応パッチなどが公開されてから、それを導入した上で、アップグレードに望みたい。

 Windows 7は、ある程度古い環境でも、それなりに快適に使えるという実感があるだけに、メーカーが非サポートとしていても、スペックを満たすのなら、本来ならOSのアップグレードなどとは無縁のユーザーにも勧めたいところだが、やはり、導入に細心の配慮が必要な点は、念には念を押しておきたい。

 今回は、ブルースクリーンを出しても、ロールバックの仕組みで、事なきを得た。こちらは評価することが仕事なので、アップグレードを繰り返して、原因らしきものを追求しているが、かけた時間を考えると、ゼロからやり直した方がずっと手っ取り早いということがよくわかる。

バックナンバー

(2009年 8月 19日)

[Text by 山田 祥平]