山田祥平のRe:config.sys

【特別編】Wearを着けて垣間見たGoogleのウェアラブル構想

~Android Wear端末LG「G Watch」を使ってみる

LG Electronics「G Watch」

ハードウェアとしてのLG G Watch

 Android Wearの発表に伴い、3種類の腕時計型ハードウェアがお披露目された。角形のLG Electronics製「G Watch」とSamsung Electronics製「Gear Live」、そして丸形のMotorola製「MOTO 360」だ。Playストアにおいて、LG機はすでに受注が開始されていて、7月4日までに出荷とされている。また、Samsung機は7月7日までに出荷されるとなっている。Google I/Oの参加者は、このどちらか好きな方を受け取ることができ、さらに、この夏発売予定のMOTO 360も、準備でき次第送付されてくるという。

 ここでは、LG G WatchでAndroid Wearの使い勝手を見ていくことにしよう。当たり前の話だが、発売間近なだけに日本の技適の認証もソフトウェア的に確認できる。

 G Watchは、OSとしてAndroid Wearを搭載し、1.65型IPS液晶ディスプレイを持つ63gの角形腕時計型端末だ。重量は63g、プロセッサは1.2GHzでメモリは512MB、ストレージとして4GBを搭載している。

 通信機能はBluetooth4.0(LE)のみ。センサーとして9軸の加速度計、コンパス、ジャイロスコープを内蔵する。パッケージには充電用のクレードルが付属し、それに接続したMicro USBケーブル経由で充電ができるようになっている。クレードルはマグネットが装備されていて、本体をカチッと密着することができる仕組みになっている。

 本体には、電源スイッチがない。電源が切れている場合は、クレードルに装着して電源を供給することで自動的に電源がオンになる。

Google I/Oのタイミングではベータテスト

 この端末は、Android端末の一種ではあるが、コンパニオンとなるスマートフォンなしでは、ほぼ何もできないに等しい。タイマーやストップウォッチ、歩数計などが使えるくらいだ。Android 4.3以降を搭載したスマートフォンに、PlayストアからAndroid Wearアプリをダウンロードしてインストールする必要がある。

 ちなみに、この原稿を書いている時点では一般発売が開始されていないため、Playストアで検索してもアプリは見つからない。ただ、Google I/Oの参加者は、Wearのプレビューでのホワイトリストに登録され、テスターとしてアプリをインストールすることができるようになっていた。配布カウンターのそばにはWearアプリのURLがQRコードで掲示され、参加者はそれをスキャンしてイントールする必要があった。

 しかも、日本のアカウントでは、その時点では非対応と表示され、インストールを進めることができなかったため、ヘルプデスクに頼んで特別にPCに接続してのサイドローディングを頼まなければならなかった。さらに、「Google Play Servces」、「Google Search」のバージョンアップが必要で、これらもまた、テスターとしての登録がなければインストールができない。もちろんこれらのプロセスは暫定処置であって、製品正式出荷時には、普通にアプリをインストールすることができるようになっているはずだ。

 また、Wear対応のために、すでに「Google Keep」、「Googleマップ」などがアップデートされている。これらのアプリについては、既存端末でも、ここ数日でアップデートが適用されているはずだ。

 クレードルに端末をセットして電源が入ると、端末は待ち受け状態になる。この状態でインストールしたアプリを起動すると、周辺の端末がリストアップされるので、その中から自分の端末を選ぶとペアリングが行なわれる。接続はBluetooth 4.0だ。普通は自宅などでセットするので、ペアリング対象は1つしか見つからないから迷いようがないが、配布カウンター周辺でのペアリングはたくさんの端末がズラズラとリストアップされて大変んだった。

G Watchにできること

 スマートフォンとペアリングした状態で、端末はまず時計として機能し始める。通常は画面表示がオフの状態だが、画面をタップしたり、装着した腕を手前に傾けるとジャイロセンサーが反応し、時計が表示されて操作を受け付けるようになる。ここで「OK Google」と喋るか画面をタップすると、画面には「お話しください」と表示される。ここでやりたいことを音声で伝えるわけだ。

 ここで指示できるのは、

1. メモの入力
2. 通知の設定
3. 歩数計の表示
4. SMSを送信
5. メールを送信
6. ナビを開始
7. タイマー設定
8. ストップウォッチ
9. アラーム設定
10. アラーム表示
11. タクシーを呼ぶ
12. 設定
13. 開始

という13種類の作業だ。

 例えば「5分後にアラーム」と喋れば、アラームがセットされ、5分後に腕時計がバイブで知らせてくれる。本体にはスピーカーは装備されていないので、端末からのフィードバックは画面表示とバイブレーションだけだ。

 また「メモを入力」と喋ると、さらに音声を受け付ける状態になり、メモしておきたい内容を喋るとそれがテキストとして保存される。最初の状態では、Gmailで自分宛のメールが送信されたが、Google Keepのアップデート後は、そちらに保存されるようになった。音声認識は、スマートフォンを通じてGoogleのサーバーで送られ、その認識結果が戻ってくるようだ。従って、インターネットに接続されていない場合は音声認識ができない。

 なお、これらの13項目も、全てが正常に機能しているわけではない。13の「開始」では対応アプリを端末内で個々に起動することができるのだが、そのインストールはスマートフォンのWearアプリで行なうようだが、これも現時点ではうまく機能していない。

 音声入力を受け付ける画面になったところで、その画面をフリックすることで、これらの作業一覧画面となり、そこからタップで作業を選択することもできる。必ず喋らなければ操作ができないというわけではないのだが、キー入力に相当することができないので、無言でメモを入力したいというような場合にはスマートフォンをポケットから取り出すしかない。

 一方、これらの項目以外の言葉、つまり、端末が理解できない言葉を喋った場合は、それを検索キーワードとしてGoogleで検索し、その結果が3件分、3枚のカードとして表示される。カードはフリックでめくることができ、タップすると、その結果がスマートフォンに送られて表示される。ただし、オフになっているスマートフォンの画面が自動的にオンになるわけではない。自分で画面をオンにし、ロック画面になっている場合は、そのロックを解くと検索結果が表示されているのを確認できる。また、3枚の結果中に望みの検索結果が含まれていない場合は、スマートフォン側でさらなる検索結果を得ることもできる。

 さらにスマートフォンで音楽を再生すると、時計の画面にはそのアートワークと曲のタイトル、アーティスト名のカードが表示され、一時停止、次へ、前へなどを操作できるようになる。

 とにかくベータということで、こうなるはずという動作がまだまだ不明確で、実際の製品ではどのようになるのかがまだよく分からない。これらについては、正式な出荷後に、別の機会を作って紹介することにしよう。

スマートフォンの通知が腕に飛んでくる

 時計表示の状態で持ち歩いていると、ことあるたびにブルッと震え、メッセージが届いたことを知らせる。画面にも、その内容が表示される。新着メールの到着であったり、Twitterのダイレクトメッセージ(DM)や、Facebookメッセンジャーのメッセージであったりするわけだ。また、通知設定がオンになっていれば、Google Nowのカードが更新されたときにもそれを知らせる。

 つまり、スマートフォンの通知バーを引き下ろしたときに表示される項目が発生すると、その内容が時計に飛んでくるイメージだ。

 人は毎日150回近く、スマートフォンの画面を見るそうで、そのたびに、ポケットからスマートフォンを取り出し、画面をオンにし、ロックを解いて、通知バーを引き下ろし、そこから各種のアプリを起動したりする。でも、Wearを腕に着けていれば、ざっくり言って、その回数は3分の1近くになってしまう。つまり、スマートフォンをポケットに入れたまま、時刻を確認するようなことまで含め、腕時計だけで事足りる用事がかなり多いのだ。

 結果として、スマートフォンはバッテリを余分に消費せず、これまで以上に長時間稼働する。それでいて人間がスマートフォンから得られる情報はこれまでと変わりがない。ちなみに1日に約200通くらいのメールが通知されるような使い方では20時間くらいバッテリがもつようだ。時計を常時表示にしたいので、そう設定しているのだが、その結果バッテリ駆動時間が多少短くなっていると思われる。丸1日の使用は不安がないが、充電を忘れると翌日のフル活用は難しそうだ。

タッチ対応セカンドディスプレイとしてのWear、Auto、Glass

 ここで分かるのは、Android Wearは、時計をAndroidスマートフォンにしようという試みではなく、通知表示専用のセカンドディスプレイとして機能させようとしているということだ。

 スマートフォン側からの通知は、それをタップすることで、その通知内容詳細を得ることができる。長いメールなどは表示が中途半端になるが、全文を読みたい場合は、それをスマートフォンで開くように指示することもできる。

 仕組みとしては、スマートフォンの通知、そして、アクティビティやアプリ間のインテント、すなわち共有が、そのベースとして機能しているように見える。スマートフォン側のAndroidに大きな変更を加えずに、セカンドディスプレイとしてウェアラブル端末を機能させるには、うまい方法だ。

 スマートフォンにおける通知表示の制御はAndroid OSが司っている。アプリは通知内容をOSに伝えるだけだ。それがWearに伝わっているかどうかをアプリは知らなくてもいい。そのことで、アプリ側には何も変更を加えることなく、これまで通りに通知をするだけで、その内容がWearに伝わる。Wear側でのアクションは、インテントとしてスマートフォン側に伝わり、結果が別の通知として戻ってきたり、スマートフォン側でのアクティビティに受け継がれるわけだ。通知のメカニズムに大きな変更が加えられたAndroid 4.3(Jelly Bean)以降の対応ということでもそれが分かる。

 Wearは自動車向けのAutoとAPIが共通であり、端末に高い処理性能を求めない点で似ている。おそらく、両者の仕組みのルーツは、Glassにあるのではないだろうか。腕時計としてのWear、車載ディスプレイとしてのAuto、メガネとしてのGlassは、名前が異なるだけで、実は同じものだと仮定すると、Googleのウェアラブルに対する考え方が見えてくる。スマートフォンを操作するためのセカンドディスプレイなのだ。

 Wear機は小さなスマートデバイスではあるが、それ自体が何かを高度に処理できるものを目指しているわけではない。あくまでもスマートフォンのコンパニオンだ。そこに高い処理性能を持たせたり、まるでスマートフォンのように機能させたり、インターネットとの通信機能を持たせたりしようとはしていないことが分かる。あくまでも、スマートフォンに仕事をさせるための方便なのだ。

 現状、腕時計型の端末は、生体情報の収集用というコンテキストで語られ、入力デバイスとしてとらえられることが多いが、Googleはウェアラブル端末にタッチ対応セカンドディスプレイという汎用的な役割を与えることから始めようとしているように見える。別の言い方をすれば、新たなコンセプトのダム端末であり、シンクライアントだともいえる。はるかなる未来を先取りする前に、まずは、半歩先に進んでみようというのが、Googleが選んだ現実的な解なのではないだろうか。

(山田 祥平)