山田祥平のRe:config.sys

その後の最強のモバイルルーターとAppleのおもてなし

 ラスベガスで無事にゲットできたiPad miniだが、日本に持ち帰ってからの状況をお知らせしておくことにしたい。ルーターとして、最強であることには変わりはない。300gちょっとで丸1日、余裕でバッテリが保ち、米国でも日本でもLTEが使えて、しかも、TwitterやらFacebookやら、メールにカレンダーとアプリまで使える。ここまで重宝するルーターをほかに知らない。

Verizonで使うiPad mini

 日本で注文し、予定よりちょっと遅れて米国のホテルに配達されたVerizon版iPad miniだが、米国滞在中は結局、最初に設定した5GB/50ドルをアッという間に使い果たし、仕方がないので余裕を見て10GB/80ドルを設定し、6GBほどを使って帰国した。こんなことなら、最初から10GBを設定して、足りない分は3Gのスマートフォンでテザリングして補えばよかったと反省しきりだ。

 Verizonのプランは、自動継続なので、申し込んだら必ずキャンセルしておき、次回設定は手動にするようにしておくといい。そうすることで、帰国後も自動更新されてしまうリスクを回避することができる。

 ちなみに、iPad mini に装着されたSIMは、もちろんVerizonのものだが、このSIMは最後の利用から5カ月間有効で、それを過ぎると使えなくなる。そうならないようにするには、5カ月未満で渡米して利用するか、それができない場合には1GB/20ドルのプランを、使わなくても期限内に設定するといった工夫が必要になる。米Amazonなどでは、SIMだけの入手も可能なようだが、渡米時、飛行機を降りたらすぐに使えるというというのは実に便利なので、とりあえずは、この方法で、ずっとSIMを有効に維持するようにしようと思っている。

ドコモLTEで使うiPad mini

 さて、日本に持ち帰ったiPodだが、IIJのドコモLTE網対応データ通信サービス「mio高速モバイル/D」で発行されるnano SIMを装着して試してみたところ、そのままではドコモのLTEをつかむことはなかった。iOSは、最新版の6.1だったので、設定のモバイルデータ通信の項目には「LTEをオンにする」も表示されるし、APN設定の項目にはLTE専用のAPN設定も存在するがだめなのだ。

 そこで、同サービスのブログで説明されているように最新版のファームのipswファイルを入手し、そのファイルを使って同バージョンによる更新を実行したところ、正常にLTEで通信できるようになった。

 ただ、通信はできるようになったが、今度はテザリングができない。正確には、設定はできて、外部からも見えるのだが、DHCPによるIPアドレスが取得できないようなのだ。これについては、同サービスから配布されているAPN構成プロファイルをインストールしたところ正常に稼働するようになった。

 テザリング、すなわちインターネット共有は、Wi-Fi、Bluetooth、USBの3つの方法で可能だ。Wi-Fiを使う場合は他機を接続する時に設定画面を開いている間だけWi-Fiアクセスポイントとして可視状態になるので、それで接続してパスワードを入力する。以降も、パスワード設定は保持していたとしても、接続時には必ず、この設定画面を開いて接続する必要がある。

 これに対してBluetoothは、一度Bluetoothの設定画面を開き、他機から接続してペアリングを試み、パスコードの一致を確認しておけば、以降、どんな状態でもインターネット共有がオンなら、他機から接続を要求するだけで、瞬時に接続してインターネットに接続できるようになる。iPadをカバンの中に入れっぱなしの状態で、一切手を触れることなく、いつでも他デバイスから接続することができるので、Bluetooth接続がもっとも便利なんじゃないかと思う。接続プロファイルは、PANとなるが、Windowsはもちろん、ほとんどのAndroidスマートフォンがこのプロファイルをサポートしているはずだ。

 USB接続は有線なので、もっと簡単だ。これは、iTunesがインストールされていて正常にiPad miniをデバイスとして認識できる状態のPCなら、つなぐだけでインターネットに出て行けるようになる。特にインストールされたiTunesで管理できる状態になっていなくても、デバイスとして認識されていればOKだ。

 ぼく自身は、iPad miniをルーターとして使う外出時には、iPad miniのWi-Fiはオフにしてしまい、同様にWi-FiをオフにしたAndroidスマートフォンをBluetooth接続して使っている。これでiPad miniは丸1日余裕でバッテリは保つし、スマートフォン側も使う電力は最低限になり、通常の2倍、とりあえず、1時間あたり5%未満のバッテリ消費量で維持することができるようになった。モバイルバッテリを一緒に持ち歩いて、バッテリ低下時に接続するといった煩雑なことをするよりもずっとスマートだ。

 300gちょっとのカラー画面付きで、アプリも動き、冬場ならコートのポケットに入らなくもない最強のルーターとして愛用を続けている。こんなルーター、ほかにはない。iPad 2相当で処理性能も低いし、画面はRetinaでもない。でも処理性能が上がって、解像度が向上してバッテリ消費量が増えて、その代わりにバッテリが大きくなって重量が増えるくらいならこのままでいい。画面の小ささは、iPod用アプリを使ったり、アクセシビリティ設定でズーム機能をオンにして、3本指のダブルタップ、タップアンドホールド状態での上下フリックでズーム倍率を変更するといった方法で対処している。

まさかのイヤフォントラブルをOS復元で解決

 こうして毎日便利に使っているiPad miniルーターなのだが、買ってからほぼ一カ月目、初めてイヤフォンを装着して異変に気がついた。イヤフォンのプラグを装着しても、スピーカーからしか再生音が出ないのだ。これではポータブルデジタルオーディオプレーヤーとして使えない。

 ということで、ジニアスバーを予約し、Appleストアに行ってきた。先方でチェックしてもらったところ、症状は再現し、汎用イヤフォンはもちろん、Apple純正イヤフォンでも使えないことが分かった。

 担当からは、その場でiPadを復元してみることを提案された。OSの状態とイヤフォンジャックの不具合に関連があるのかと思ったのだが、仕方がないので試すことにした。それでダメなら新品に交換するというので、とりあえず、やってもらうことにした。

 持参したVerizonのSIMを装着してiPadの復元を試みたところ、あっさりとイヤフォンが正常に使えるようになった。実に不思議なOSだ。そのあと、iCloudのバックアップを元に、勝手に状態が復元されていく。待つだけで、ほとんどすることがないのでラクチンだ。これなら復元も躊躇せずにできる。

 その場で「mio高速モバイル/D」のnano SIMに交換して接続も確認した。来週からバルセロナに行くため、交換対応などが長引いては困るので、復元にあたって確認したのだが、日本でもVerizon版iPadの新品交換対応は可能で、購入時と同じ状態になるということだった。

 少なくとも、担当ジニアスの話によれば、VerizonのSIMはデバイスそのものとは紐付けされていないので、純粋にハードウェアのみの交換となるとのことで、ごくまれに正常な動作ができないこともあるが、その場合はできるようになるまで何度でも無償で交換してくれるということだった。これでひとまず安心して使い続けることができる。

グローバルゆえのおもてなし

 Appleストアのおもてなしは、何度か経験しているし、このコラムでも紹介したことがあるが、悪い印象が全くない。ただ、予約した時間通りに行っても、結構長く待たされることがあり、座る場所もないのには閉口する。それでも、質の高い対応をしてくれるので安心感はある。

 Appleがこうしたおもてなしをできるのは、やはり、製品の種類が少ないからなのだろう。世界中、どこのAppleストアにいっても、同じOSが稼働する同じハードウェアしかない。同じ製品で異なる仕様のハードウェアがあるとしても、たかだか数種類だ。それによって、最小限の従業員教育で均質なサービスをどこでも提供できるし、交換対応などのためのストックも最小限ですむ。

 地方への出張時、さらには見知らぬ異国の地で、充電のためのケーブルを持参し忘れたことに気がついても、まず困らない。なんらかのトラブルに遭遇しても、Appleストアを見つけられれば、きっと問題は解決するだろう。

 Microsoftの場合、OSの開発元は同社であっても、それがプリインストールされたPCのサポートは、PCのベンダーにゆだねられる。

 一方、AndroidはGoogleが開発したOSだが、キャリアの要求に基づいて端末ベンダーがカスタマイズし、サポートはキャリアが行なう場合がほとんどだ。

 Appleは、OSベンダーであると同時に、ハードウェアベンダーでもあるため、キャリアでのサポートに加えてと、どのキャリアを経由して販売されたハードウェアであっても分け隔てなくApple自身もサポートしてくれる。故障や不具合に遭遇しなければ、こういう心配をする必要はないのだが、機械である以上、そういうわけにはいかない。

 日本国内のキャリアショップは、新旧取り混ぜ、さまざまなベンダーの端末についての知識を保有しなければならないのは大変だ。かといって、Samsungショップやシャープショップがあるわけでもない。これらのベンダーは基本的にエンドユーザーサポートをキャリアにゆだねているからだ。

 OSのバージョンアップもキャリア主導だから、ずいぶん古い機種であるグローバル版のGALAXY Nexusには、すでにAndroid 4.2.2がOTA配信されているというのに、日本では、新製品はともかく、1年前に出荷が開始されたような比較的新しい各社端末でも4.2.2どころか、4.1(JB)にもならず、まだまだ4.0(ICS)のものがほとんどだ。こうしてOSのバージョンがまちまちになっていけば、サポートは余計に大変になるだろう。

 大人の事情はたくさんあるのだろうし、それも分からないのではないのだが、それによって、Androidはやっかいだという風説がまことしやかにささやかれるのでは、Googleがちょっとかわいそうな気もする。

 グローバルスタンダードの時代である。PCの世界では、あの栄光のNEC 98シリーズが衰退し、各社独自のパーソナルワープロが駆逐されていったことの意味を、携帯電話の業界は、もう少し真剣に考える必要があるんじゃないだろうか。

(山田 祥平)