山田祥平のRe:config.sys

海外でのスマホ利用に立ちはだかる壁

 自分が工夫したり、ちょっとした作業をすることで、大幅にコストを削減することができるなら、ぜひ、そうしたい。人それぞれで時間当たりの単価は異なるので、誰にでも当てはまることではないが、できることはやってみたいと思う。今回は、ドイツ出張時のスマートフォン運用についてレポートしておきたい。

ドイツ取材の通信手段調達

 IFA取材のために、久しぶりにドイツにやってきた。前回のドイツは2005年3月のCeBITだったので、ほぼ8年ぶりだ。当時はまだ、スマートフォンを海外でバリバリ使うというような時代ではなかったので、おとなしくガラケーで音声通話だけをローミングで使い、データ通信はオフにしてガマンしていた。

 今回、ドイツに向かうにあたって、インターネットでいろいろ調べてみたし、IFA取材では先達ライター諸氏がたくさんいるので、事前にいろいろな話を聞くことができた。

 それらで統合的に分かったことは、日本のNTTドコモに相当するT-Mobileや、au的な存在のO2といった事業者は安定した通信ができるということ。だが、これらの事業者には、1週間ほどの滞在で、それなりにヘビーなトラフィックを消費する使い方には、リーズナブルな料金のプリペイドプランはなく、それらのキャリアのMVNOを使うのがいいということだった。

 先達からの情報では、ベルリン市内なら、そのあたりの電気店で、簡単に各MVNOのSIMが買えるということだったが、心配性のぼくは、あらかじめ手配をしておくことにした。

 選んだキャリアはcongstarというところで、T-Mobile傘下のMVNOだ。ドイツのAmazonを使って、congstarを検索すると、いろいろ関連商品が出てくるのだが、今回は、安かったのでこのパッケージを選んだ。価格は5.5ユーロ、日本円にしてこのときのレートで744円だ。

各国Amazonは構造がまったく同じ

 Amazonは各国でサービスを展開しているが、どの国のAmazonもサイトの構造がほとんど同じなので、日本のAmazonを脇で開いておいて、それを頼りに商品を注文できるので、すごくラクチンだ。新規にアカウントを作る場合も同様の手順となる。これならドイツ語がまるで分からなくても心配ない。もちろん、サイトを丸ごと翻訳する方法だってある。

 ちなみに、ドイツのAmazonは、米国のAmazonとアカウントが共通のようで、過去に米国で使っていたアカウントがそのまま使えた。

 注文したパッケージは、滞在先のホテルに発送するように指定した。ホテルの住所と名前を住所欄に入力し、受取人の名前として自分の名前と一緒に括弧書きで“syohei yamada (check in Sep 2)”としておいた。送料は無料で、注文確定のメールがすぐに届いた。これも日本のAmazonとまったく一緒だ。

 注文確定メールはほぼ瞬時に届くが、これが出発間際の8月29日(木)20時だった。明けて翌日、8月30日(金)14時32分に何やらドイツ語のメールが届いた。差出人はAmazonなのだが、実際には、パッケージを扱っている業者からのものだ。ドイツ語なので、翻訳サイトで訳してみると、業者とユーザーの間のメールはAmazonが仲介し、そのまま返信すれば、Amazonが自動的に転送するとある。プライバシー保護のためだということで安心だ。

 その内容は、ドイツの電気通信事業法によって、誕生日が分からないとSIMを出荷できないというものだった。

 そこで、そのメールへの返信で、誕生日と、念のためにパスポート番号とその発行日、期限をあわせて箇条書きして送った。

 すると、2時間後、その日の16時23分にはメールが届き、congstarのカスタマーIDと一時パスワードが送られてきた。サイトを開いてログインし、パスワードを変更しろとある。一時パスワードは12時間有効だと書いてある。

 また、間をおかず、16時35分には出荷の案内がメールで届いた。送料無料を選んだので、ドイツ郵便が使われ、トレーシングは不可とある。配達予定日は9月5日(木)になっていた。もっと早く注文しておけばよかったと後悔したが後の祭りだ。まあ、現地に到着しても届いていなかったら、744円をあきらめて、別のSIMをショップで購入することにしようと自分をなぐさめた。

 届いたメールに記載されていたIDとパスワードで、congstarのサイトにログインすると、自分の電話番号やPINなどを確認できた。また連絡先のメールアドレスもここで指定できる。念のためにパスワードを変更しておく。

 今回のパッケージは、5.5ユーロながら、10ユーロ分がチャージされているはずだが、その残高を確認する方法がどうしても見つからない。とりあえず、アクティブな状態になっていることは確認できた。あとは、到着時にホテルにちゃんと届くように祈るだけだ。

 ここまでの作業にかかった時間はわずかだ。対応も迅速で好感が持てた。ただ、次回は、もう少し時間に余裕を持って作業することにしよう。間に週末がはさまらなかったので、対応が迅速だったが、そうでなければ、もう少しかかったかもしれない。

ローミングと現地SIMの合わせ技

 そして、9月2日に東京を出発、今回は、コペンハーゲン経由でベルリンに入る旅程だ。コペンハーゲンに着いたところで、日本から持っていったスマートフォンの機内モードを解除し、データローミングをオンにした。1日2,980円の海外パケホーダイだ。注意しなければならないのは、1日が日本時間の午前0時から始まるという点だ。コペンハーゲンに着いたのは現地の時間の15時30分頃で、このタイミングではまだ日本は22時30分だ。ここでデータローミングを開始すると、たった2.5時間で1日分が課金されてしまう。そこで、現地の17時になるのを待ってローミングをオンにした。成田空港を出てから約13時間ぶりに、メールなどが落ちてきた。

 ドコモの海外パケホーダイは、国をまたいでも同一料金なので、今回のように国を経由する場合には便利だ。数時間の待ち時間をガマンすればいいのだが、それでも乗り換えの待ち時間と、目的地に到着してすぐに使えて、翌日あたりに現地のSIMを調達するまでの間を乗り切るには、2,980円ならまあ仕方がないかなと諦めている。

 というわけで、無事にベルリンに到着、空港からはタクシーでホテルに向かった。もちろん車中では、スマートフォンのマップを使って、とんでもない方向を走っていないかどうかをチェックしながらだ。

 そして、ホテル到着。チェックインのときに、郵便が届いていると封筒を渡された。これはラッキーだ。その時点で21時30分だったので、部屋に荷物を置いてすぐに外に出て、スーパーマーケットを探して閉店間際に飛び込む。

 スーパーに行ったのは、congstarの追加チャージ用バウチャーを調達するためだ。だが、ほかのキャリアのものは豊富にあるのに、congstarのものだけがない。店員に聞いてみると、パッケージはなくて、レジで口頭で伝えると、コードを書いたバウチャーを発行してくれるという。現時点ではSIM残高は10ユーロあるはずで、これを音声通話用として全て残しておき、20ユーロを追加して目的のプランを申し込もうと思っていた。だが、20ユーロの追加はできず、15ユーロまたは30ユーロとなるということだった。

 今回congstarを使おうと思ったのは、「congstar Surf Flat Option 3000」というプランがあるからだ。これは19.9ユーロで、30日間/3GBが使え、それを過ぎると64Kに帯域が制限されるというプランだ。これならテザリングを含めて、それなりにヘビーに使っても大丈夫だと思う。

 結局、15ユーロのバウチャーを購入し、それを使って追加チャージし、そこから19.9ユーロでプランを申し込んだ。残高さえあれば、申し込みはサイトからできるようになっている。今回は、チャージの追加を説明書に従って携帯を使って行ない、その上でプランをインターネットから申し込んだ。

 届いたSIMは標準サイズだが、Micro SIMサイズにも切り取れるようになっていた。念のためにSIMカッターも持参していたがその必要はなかったようだ。

 SIMをスマートフォンに装着して電源を入れる。SIMを認識して電波をつかんだところで、すばやくデータ通信をオフにする。これは、プランの申し込みを完了する前に余分なデータ通信が起こらないようにするためだ。

 バウチャーに書かれたコードは12桁。これをスマートフォンから、

*101*コード番号12桁#

として入力するとチャージは完了だ。残高確認は、

*100#

とすればいい。確認するとちゃんと25ユーロになっている。もちろん、この作業はサイトからでもできるのだが、通信ができることの確認のために、スマートフォンから直接行なった。

 この状態で、PCに向かい、ホテルの無料Wi-Fiに接続してサイトを開き、congstar Surf Flat Option 3000を申し込んだ。残高は5ユーロを切ったが、めったに通話はしないので、まあこれでよしとしよう。APNの設定なども自動的に行なわれた。

 このSIMの有効期限は分からないが、もし、来年もドイツに来るようなことがあれば役に立つかもしれない。チャージの代行をしてくれるサイトもあるようなので、これを使って、日本で各種の手続きを済ませてからでかけることもできるかもしれない。ドイツのAmazonから日本に送ってもらうことも考えたのだが、残念ながら、日本への配送はできないようだ。

 また、帰国前には、congstar Surf Flat Option 3000プランの取り消しをしておくのを忘れないようにしないといけない。そうでないと、毎月自動更新されてしまう。残高がなければ問題ないが、1ユーロでも残っていて、それが来年も使えるなら、ちょっともったいない。

 結局、ドイツ滞在の5泊7日の通信費は、合計約20ユーロとなるはずだ。日本円にして3,000円以下、まあ、それほど高くはないと思う。それと初日のローミングがほぼ同額というのは、やっぱりちょっと高い。

 現地で使っているのはSIMロックフリーの初代Galaxy Noteだ。2年前に買ったもので、さすがに遅くてイライラさせられることもあるが、この画面サイズとアスペクト比は大いに気に入っている。日本のスマートフォンを使わないのは、Bluetoothテザリングができないからだ。Wi-Fiテザリングではバッテリの消費がハンパではないので、ちょっと心配だ。

海外スマートフォンは怖くない

 かくして、無事に、泥縄で調達したSIMは十分に役に立ってくれている。この簡単さに比べて、日本の状況はまだまだだなとも思うのだ。まさにさまざまな壁が立ちはだかっている。

 先日、知り合いが子ども連れで夏休みを利用してアメリカに遊びに行くという話を聞いた。自分はガラケーだが、高校生の息子がスマートフォンを持っているけれど、法外な料金をとられる可能性があるので、それは日本においておき、成田で海外ケータイをレンタルしておくというのだ。

 にわかには信じられない話だが、近所のショップで海外でスマートフォンを使ったときに、青天井に近い料金を取られる可能性があるのでやめた方がいいと言われたらしいのだ。

 まあ、データ通信が1日2,980円。一緒に行った家族と通話を繰り返したりすると、けっこうな金額がかかるのも確かだが、青天井とも思えない。せっかくの海外旅行、現地に着いてから、スマートフォンで地図を見たり、Webでいろいろ調べたり、分からない言葉を翻訳したりといったことができるとできないでは、遊びの旅行とはいえ、その楽しみは大きく変わってくるだろう。

 確かに、各通信事業者のサイトは、海外ローミングの解説ページがとても分かりにくいということもある。現地に着いてから事業者を変更しなくてもよくなってからも、それほど時間が経過しているわけではない。このあたりは責任として、きちんと周知していただきたいものだ。

(山田 祥平)