山田祥平のRe:config.sys

行政手続きのオンライン申請が混み合っている

 エンドユーザーからは同じように見えるデジタルトランスフォーメーションでも、技術的な背景が異なり、その実装に違いがあり、できることに差異が発生することもある。マイナンバーカードのスマホ対応もそのひとつだ。スマートデバイスのアーキテクチャの違いといえばそれまでだが、ちょっともやもやしてしまう。

振り仮名修正届出が集中

 「戸籍への振り仮名記載についてのお知らせ」がハガキで届いた。2025年5月26日から戸籍に氏名の振り仮名が記載されるようになったことに伴うお知らせで、9月頭から順次発送されているようだ。

 2023年6月2日に戸籍法の一部改正を含む「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、同月9日に公布された。これまでは、氏名の振り仮名は戸籍に記載されていなかったが、この法律の施行によって、新たに氏名の振り仮名が戸籍に記載されることとなった。

 役所からのお知らせハガキは、役所の判断でつけたフリガナが誤っている場合には、2026年5月25日までに正しい振り仮名の届出をしてほしいというもので、氏と名について、世帯全員の振り仮名が記載されていた。それが相違ない場合には届出は不要だ。

 役所のサイトを見ると、届出が集中して混雑し、3カ月程度の時間が必要で、その間、戸籍証明書関連の書類を取得することはできないと記載されていた。正しい場合には届出をしないほうがよさそうだ。ハガキにはそんなことは一言も書いてなかった。この時代に3カ月待ちっていったいなんなのだろう。

 個人的には振り仮名が誤っていたので正しい振り仮名を届出した。具体的には「祥平」が「シヨウヘイ」となっていたのだ。正しい振り仮名は拗音なので「ショウヘイ」でなければならない。

AndroidとiPhoneで異なるマイナンバーカード実装

 届出はマイナポータルからのオンライン届出ができるほか、市区町村窓口での届出や郵送による届出も可能だ。

 郵送も出向くのも面倒なので、マイナポータルからオンライン届出をすることにした。URLが記載されているならPCでやりたかったが、QRコードしか掲載されていなかったため、面倒なのでスマホで手続きを始めた

 現行でメインに使っているスマホはまだAndroidスマホ用電子証明書搭載サービスに対応していないので、1つ前に使っていたスマホで手続きを始めたところ、この証明書では振り仮名修正の手続きはできないと表示され、プラスチックのリアルマイナンバーカードを使ってのログインを求められた。

 その場合、

  • 「利用者証明用電子証明書用」の暗証番号(数字4桁)
  • 「券面事項入力補助用」の暗証番号(数字4桁)
  • 「署名用電子証明書用」の暗証番号(英数字6~16桁)

の入力が必要だ。あとで調べるとiPhoneはそのマイナンバーカードがApple Walletの仕組みを使って実装され、電子証明書機能に加えて、属性の提示機能が使えるが、Androidでは属性の提示機能が使えないかららしい。

 仕方がないのでプラスチックのマイナンバーカードをサイフから取り出し、スマホで読み取って手続きを進めた。

 マイナポータルへのログインに「利用者証明用電子証明書用」の暗証番号を使い、既存データの引用のために「券面事項入力補助用」の暗証番号を使い、提出するのに「署名用電子証明書用」の暗証番号と、3種類の暗証番号が必要だった。

金融機関は特別!

 届出のときに留意しておきたいのは、新しい振り仮名がパスポートや年金などほかの行政手続きですでに使用しているものと異なる場合は、変更手続きが必要となる場合があるという点だ。

 実際、外務省のパスポートについてのページ を開くと、法務省の戸籍情報連携システムのメンテナンスによって、パスポートのオンライン申請ができなくなる期間が発生したりしている旨が記載されていた。また、オンライン申請はとても混み合っていて、通常より審査に日数を要する場合があるとも。

 まあ、そのくらいよく使われているから、マイナンバーの施策は大成功と考えるべきなのか、マイナンバー施策のために用意したインフラが、その利用規模をなめていたと考えるべきなのか……。

 ちなみに、振り仮名の拗音については銀行口座名義と異なっても大丈夫なようにシステムが作ってあるという。ほとんどの金融機関では拗音を自動的に処理し、普通の大文字に置き換えられる。これは、全国銀行協会が定めるデータ伝送規格で「1バイト文字のカナ小文字(半角カナ小文字)は使用できない」という制約があるからだ。金融機関間でデータをやり取りする際に文字化けや相違を防ぐための共通仕様であり、小文字は自動的に大文字に変換されることが一般的なのだという。これを機に、使えるようにしようとはならなかったのがらしいといえばらしい。

 いったん正しく動いているシステムを変えるのは大変だ。だから、たとえそれに人間があわせなければならなかったとしても変えないこともある。頑固に変わらない既存のシステムをそのまま動かしながら、割って入るデジタルトランスフォーメーション。これからはAIがその煩雑な面を引き受けてくれるだろうから、心配する必要はないということか。