山田祥平のRe:config.sys

デカスマホ Xperia Z Ultra の挑戦

 auから春商戦向け新製品としてソニーのXperia Z Ultra SOL24 が発売された。いわゆるファブレットとして位置付けられるAndroid 4.2.2搭載デバイスだ。しばらく試用する機会をいただいたので、そのインプレッションをお届けしよう。

丸1日を快適に過ごすためのコンパニオン

 大きい。でも薄い。それが、このデバイスを初めて手にしたときの印象だ。グローバル版は2013年の6月に発表され、9月には発売されていたが、日本国内ではauから登場となった。こういうデバイスを出す意気込みが最近のauの差異化戦略をよく表していると思う。

 発売当時、3Gのみ対応のグローバル版も少しの間使わせてもらっていたので、個人的な新鮮味という感じはないのだが、こうして日本の市場に投入されたLTE対応版を手にすることができてちょっと印象が変わった。

 心配だったのはバッテリの保ちだったが、これは杞憂に終わった。3,000mAhのバッテリを内蔵しているが、日常的に自分が使う状態に設定し、特に省電力をオンにもせずに使って、1日の使用には問題なさそうだ。

 試しに、Wi-Fiテザリングをオンにしたままで、2台のデバイスの通信をそこにぶらさげて持ち歩いてみると、1時間に6%くらいの割合でバッテリが減っていく。この製品はBluetoothテザリングもサポートしているので、そちらを使えばもっとバッテリは保つ。常々、モバイル機器は16時間のバッテリ運用が理想と言っているのだが、そこまではちょっと難しいかもしれないが、それに近いところまでは大丈夫そうだ。

オールラウンドデバイスとしてのファブレット

 実際の使い勝手はどうか。フォンとタブレットの間に位置付けられるということで、ファブレットというカテゴリに属するZ Ultraだが、そのスクリーンは約6.4型。本当に大きく感じる。ボディはそれより一回り大きいが、左右の額縁は狭く、なんとか片手でもつかんで支えられる。サイズ的にはパスポートの横幅そのままに縦方向を長くしたイメージだ。

 とはいうものの、一般的なAndroid OSの流儀に従い、戻るボタンはソフトウェアキーとして左下端に表示されるので、例えば、右手で操作をしていたとしても、とても右手親指は戻るボタンに届かない。結局は、もう片方の手を添える必要がある。逆に、スマートフォンを左手で操作するユーザーなら、片手操作は十分に可能だと思う。

 重量は214g。本体が薄いこともあって、それほど負担に感じない。また、ストラップホールも装備されているので、クビからぶら下げてシャツやコートの胸ポケットに入れて携行できる。ただ、一般的なストラップの長さでは、駅の改札でおサイフケータイをタッチするのにはちょっと短すぎるだろう。

 処理性能の点でも、使っていてストレスは感じない。フルHDのスクリーンを十分な速度で駆動できている。視認性も高い。炎天下でのスクリーン表示もそれなりに見やすいが、もっと見やすい機種もある。視野角をふくめて、もうちょっと頑張ってくれてもよかったと思う。

 このサイズのデバイスを使って通話をするかというと、やはり抵抗を感じるユーザーは少なくないだろう。でも、個人的には1台のデバイスで、通話とアプリ実行が全部まかなえることの方を嬉しく思う。パンツのポケットにもギリギリで入るし、ジャケットなら胸ポケットでOKだ。冬場はコートの大きめのポケットがあるので何の問題もない。まさに、自分にとっては、全部入りのケータイであり、スマートフォンであり、タブレットとして使うことができる、かなり要求を満たしてくれるオールインワンデバイスだと思う。

 個人的にスマートフォンで通話をすることはほとんどなくて、多くのコミュニケーションをメールやSNSのメッセージングに頼っているのだが、それでも通話ができなければ困る。だったらタブレットとガラケーの2台持ちが最強という声が聞こえてきそうなのだが、それを1台で済ませることができるのだから、そっちの方がいい。

 とはいうものの、7型超スクリーンのタブレットの画面に比べれば、より小さいからこそのファブレットであり、それを中途半端だと考える気持ちもよく分かる。だが、5型スクリーン程度では狭苦しさを感じている圧倒的多数のユーザーは十分に満足できるのではないだろうか。

スクリーンとdensity

 圧倒的多数が満足すると書いたが、ぼく自身はたぶん少数派だ、このデバイスを常用しようとは思わなかった。なぜなら、表示される文字がちょっと小さいからだ。

 Z Ultraは、Androidの設定における画面設定のフォントサイズ「小」、「中」、「大」、「特大」という4段階の中から「大」を既定値として出荷される。ぼくとしては迷わず「特大」に設定変更するわけだが、それでも文字が小さく感じられるのだ。

 もちろん、それは、使うアプリの問題もある。例えば、Twitterの公式アプリはフォントサイズを変更できるが20ポイントが最大サイズだ。また、facebookの公式アプリはフォントサイズの変更ができず、それはもう、嫌がらせじゃないかと思うくらいに文字が小さい。

 立ち止まってじっくりとスクリーンを凝視することができるのなら、Twitterの20ポイントというのはまだ許せるサイズなのだが、通知に気がついてサッとポケットから取り出し、その場でザッと見るようなときには小さく感じる。

 このくらいのスクリーンサイズなら、カーナビとしても十分に使えそうなのだが、実際にGoogleマップのナビを実行し、本体をダッシュボードあたりに固定して使おうとすると、運転中の目線では地図上の文字がよく見えない。運転しながらチラッと見ても、地図上の通り名やランドマーク名が分かるようでなければつらいだろう。

 一方、Chromeブラウザでは、設定のユーザー補助で、テキストの拡大/縮小を「%」で設定でき、その設定幅も大きく、閲覧にあまり問題は感じない。

 そもそも、Android OSは、同じ解像度でも、デバイスごとにスクリーンサイズはまちまちで、表示をどのようにするのかを決める一定の基準がない。そういう意味ではWindowsと同じ宿命を背負っているわけだ。そして、同じような不便をユーザーに強いる。

 仮に、1,920×1,080というフルHD解像度を、5型スクリーン(Xperia Z1)、5.7型スクリーン(Galaxy Note 3)、そして、この6.4型スクリーン(Xperia Z Ultra)、タブレットなどの7型、8型といった異なるサイズのスクリーンに表示させるとしよう。スクリーンサイズに応じて文字が順次大きくなっていくかというと決してそうではない。

 Android OSでは、スクリーンサイズと解像度の関係をdensityという考え方で司っている。日本語では画素密度(ピクセル密度)と呼ばれるもので、スクリーンのサイズや解像度に依存しない仮想的なピクセルを想定するわけだ。具体的には160dpiをdensity=1とし、スクリーンサイズに応じて、この値を増減させる。

 density値がどのくらいになっているかの目安は、ホームスクリーンに並ぶアプリアイコンの数を見ると想像がつく。例えば、5.7型スクリーンのGalaxy Note 3は横に4つで、5型スクリーンのXpreria Z1と同じだが、Z Ultraは6つ並ぶ。アイコンのサイズも小さいのでdensityが低目に設定されているのだということが分かる。このdensityの値をどうするかは、端末ベンダーが決める。

 ホームスクリーンに並ぶアイコンの数が6個というのは、Nexus 7と同じだ。つまり、7型スクリーンに表示されるくらいの情報量を、6.4型に凝縮していると考えてもいい。

 ソニーの技術者によれば、Z ultraの場合、densityを低めに設定することで、スクリーン上に、より多くの情報を表示させるようにしたかったのだという。ここでコンセプトの違いが分かる。個人的は、もう少しdensityを高くしてくれればよかったのになと思う。

猫も杓子もフルHD超

 今や、スマートフォンもタブレットもフルHDが当たり前、デバイスによっては、それをはるかに超えるような解像度を持っている場合がある。デバイススクリーンは、今後ますます多様化していくだろう。

 そのため、フォームファクタが気に入ったとしても、ソフトウェア的な内部設定によって、使える使えない、好ましい好ましくないが分かれる結果になっていく。もちろん、アプリケーションのコンテンツ表示における見栄えのバランスなどの関係もあるので、文字サイズが自由になればそれでいいかというと、そうでもないところが悩ましい。

 Z Ultraに関していえば、4段階のフォントサイズを6段階にして「超特大」、「最大」を追加すれば、このデバイスを気に入って手放せなくなるユーザーは、さらに増えると思う。少なくともぼくはそうだ。スクリーンの多様化と同じように、スマートフォンを使うユーザーも多様化している。それをフォローするのは、フォームファクタだけではなく、こうした気遣いも重要になっていくのではないだろうか。

(山田 祥平)