山田祥平のRe:config.sys

小さなスマホを大きく使いたい、けど使えない

 スマホが日常生活に欠かせない存在となって久しい。ほとんどの場合、起きている間は肌身離さずスマホ携行しているというのがここ10年ほど前からの新しい当たり前だ。だが、スマホは機種ごとに画面のサイズが異なるし、人それぞれで見やすく読みやすい感じる表示サイズも違う。万人に最適なデバイスというのは難しい。だからこその折りたたみだ。

大画面はその分、大きく表示

 スマホの画面に表示される文字やグラフィックスを自分が見やすく使いやすいサイズにするにはいくつかの方法がある。

 大きな画面の機種を選ぶのはその1つの方法だが、大きな画面では表示できる情報の量が増えるだけで情報のサイズが変わらないこともある。それでもある程度の補助にはなるだろう。

 かつて、サムスンの初代Galaxy Noteを入手し、その大画面に嬉々として喜んだのは2012年の春だったが、当時、大画面とされた液晶サイズは@@link|https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/config/526151.html|5.3型|n@だった。それでもほかのスマホに比べれば十二分に大きかったのだ。この端末を人に見られるたびに、大きいですねと感心というか、あきれられたことを思い出す。

 ちなみに現代スマホでは、先日発表されたiPhone 16が6.1型、16 Plusが6.7型、16 Proが6.3型だ。第3世代のSEが4.7型で初代Galaxy Noteの5.3型よりもかろうじて小さい。iPhone miniは、miniを称するが5.4型で当時のGlaxy Noteの大画面に近いサイズだった。AndroidではPixel 9と9 Proが6.3型、Pro XLが6.8型だ。10年とちょっとでスマホの画面はひとまわりもふたまわりも大きくなっていることが分かる。

 そして、大きくなった画面にどのくらいのスケーリングで文字を表示させるかを自由に決められる。その要素としては、フォントサイズの変更と画面全体の拡大縮小がある。

 手元のAndroid端末を確認してみると、Pixelとarrowsは設定アプリの「ディスプレイ」に、「表示サイズとテキスト」という項目があり、そこでフォントサイズ7段階、表示サイズ5段階を設定できる。一方、Galaxyは設定アプリの「ディスプレイ」に、「文字サイズとフォントスタイル」、「画面のレイアウトとズーム」という独立した項目があり、文字サイズは8段階を設定できるが、画面のズームについては2段階のみだ。

 こうした設定機能を利用して、自分のスマホを自分で使いやすいようにカスタマイズしていく。興味深いのは、Google Pixelのディスプレイ設定には「設定をリセット」というボタンが装備され、ワンタッチでデフォルトの表示に戻すことができる。Galaxyにはそれがない。

行儀の悪いアプリデザインがすべてを台無しに

 なぜ、自分で好きなサイズに設定したせっかくの画面を、デフォルト表示に戻すボタンがあるのか。想像にすぎないが、デフォルト表示でなければ困ることが起こるからなのだろう。

 具体的には行儀のよくないアプリでは、設定されたスケーリングに従って表示すると、表示仕切れないなどの不具合を起こしたりする。そのおかげで、フォーム等で値を入力したものの、OKや完了、更新を伝えるボタンが表示されないことも多い。本来なら表示されるはずのボタンなどのオブジェクト類が画面の外にはみ出して操作できないのだ。

 スクロールしてボタンが出現すればいいのだが、それもできず、結局は、デフォルト表示に戻して操作して事なきを得る。当然、その行儀のよくないアプリを使い終わったら元に戻す。けっこうな頻度でこうした場面に遭遇する。せっかくなら、表示設定をリセットしたら、そのボタンが「以前の設定に戻す」になっていればいいのにと思う。

 arrowsは、文字サイズやズームの設定意外に、別途、拡大機能が用意されていて、ボリュームボタンの両押しや画面のトリプルタップなどで一時的に拡大モードに入り、どんな画面でもピンチ操作で拡大縮小ができるようになっている。これはこれで便利だが、機能の存在を知らないと発見は難しいかもしれない。

 冒頭で紹介しているGalaxy Note入手時のコラムは2012年春のものだが、当時の実機重量184gという重量は、スマートフォンとしてはかなり重い方だとし、また、パンツのポケットに入れて歩くにはサイズ的にも大きすぎると書いている。その当たり前は今、新しい当たり前に変わり、大きなサイズのスマホも受け入れられるようになったが、干支がひとまわりしても、画面の表示についてのモヤモヤは残り続けている。そして、それはスマホに限らず、PCの画面やブラウザで表示するWebでも同じだ。

折りたたみディスプレイがもたらす情報量と情報サイズ

 GoogleはPixel 9シリーズの1モデルとして「Pixel 9 Pro Fold」の発売を開始している。昨年(2023年)夏に発売された「Pixel Fold」の後継機で、2代目の折りたたみディスプレイ端末となる。たった1年でその洗練度は飛躍的に高まり、初代で感じた野暮ったさが解消されている。

 折りたたみディスプレイ機では、サムスンが「Galaxy Z Fold6」として6代目の新機種をリリースしているし、先日は、iPhone 16の発表イベントの当日に、ファーウェイが世界初の3つ折りディスプレイを持つ折りたたみ機「HUAWEI Mate XT」を発表して話題になったりもした。

 折りたたみディスプレイ機がターゲットにしているのは、価格の点でもフォームファクタの成熟度にしても、まだ、とてもニッチな市場でしかないかもしれないが、注目を集めているスマートフォンの方向性だ。

 Google Pixel 9 Pro Foldは折りたたんだ状態では6.3型の縦長スマホでPixel 9や9 Proと同じサイズ、アスペクト比の画面を使う。折りたたみを展開して拡げると内側の画面が出現する。サイズは8型で、ほぼほぼ正方形だ。折りたたみを拡げた後、さらに画面を回転させて縦長、横長を切り替えて使うことにはあまり意味がないように思う。

 ただ、テーブルトップモードと呼ばれるモードが用意され、外側画面を下にしてL字型にした状態で、動画試聴や集合写真撮影、セルフィー撮影などで役に立つ。

 テーブルトップモードはデバイスをL字型にすることで自動的にモードに入る。たとえばYouTubeアプリなどでは上画面に動画、下画面にコメントやコントロールボタンなどを表示できる。だが、L字体勢は、ユーザーがイスに腰掛けてテーブルに向かい、スマホを見下ろすような視線ではかえってみにくかったりもする。対応アプリがまだまだ少なく、その機能を活かしきれていないのも残念だ。

折りたたみスマホと折りたたみ傘

 折りたたみスマホは、クラムシェルフォームファクタの新しい当たり前だ。

 かつてのガラケー時代、ストレート端末は特殊なアクションなしで使えたのに、わざわざ開かないと使えないデバイスが大人気だったのはなぜなのだろうということを考えてみる。折りたたみガラケーはディスプレイとキーボードがセットのクラムシェルから脱皮できなかったという経緯も重要だ。

 そして、スマホの時代がやってきた。ツルンと平たいスレート端末はヒンジもいらなくなったし、数字や文字入力のためのボタンもスクリーン表示になった。可動部品がほとんどなく故障もしにくい。画面ロックのおかげで誤作動もまずない。いいところだらけなのに、メーカーはなぜ、ここにきて折りたたみを提案しようとするのか。

 やはり、モバイルには妥協がつきもので、誰かがどこかでガマンしていることを、メーカーはよく知っているのではないだろうか。

 小さな画面では機能しにくいアプリ操作もその1つだ。文字を大きくしたり、画面を拡大するにしても限度があるし破綻もある。肌身離さず携行するデバイスが、必要なときだけより大きな画面サイズになればどうか。今、各社は、そのことがもたらす恩恵をお試し中だというわけだ。

 個人的には、大きな画面が欲しい時には、迷わずカバンからPCを出す。でも、電車の中で立ったままとか、雑踏でちょっとややこしいことを、といった時には、クラムシェルPCは使いにくいので、折りたたみディスプレイのギミックはうれしい。街角で地図を確認などというときにも重宝する。開いたままのサイズではポケットに入れて携行するのは無理、というサイズを携行できる。

 個人的な使い方としては、トップ画面を使うようなことはまずなく、カバンやポケットからデバイスを取り出したらすぐに開く。2代目からは内側カメラでも顔認証ができるようになったのは嬉しい。だから外側にこんな大きなディスプレイがついていなくてもいいとさえ思う。そうか、これは折りたたみ傘なんだと。閉じて使うことはないと割り切れば、その将来が見えてくるような気もする。絶賛進化中のスマホだが、大きな文字の表示問題は未だ解決できないでいる。