山田祥平のRe:config.sys
モダンの先にあるもの
2019年10月18日 06:00
初代のSurfaceがデビューしたのは2012年。すでに7年目だ。PCの未来を見据え、PCはどうあるべきか、どの方向に進むべきかを、PCを知り尽くしたMicrosoftが提案する製品シリーズとして、その役割を遂行してきたSurface。このPCは何を見つめ、何をしてきたのだろうか。
モダンPCとしてのSurface
米国での発表から間をおかず、日本でもMicrosoft Surface Pro 7やSurface Laptop 3の予約受付が始まっている。7代目となるSurfaceだが、フォームファクタそのものは、直近の第6世代と比べたときにどうかというと、それほど大きな違いはないように感じる。
ちなみに新Surfaceは、そのすべてにUSB-C ポートが搭載され、1時間で約80% まで充電可能な急速充電に対応している。
Surface Pro 7は究極の2in1 PCとして、Surface Laptopは究極のクラムシェルノートとしてMicrosoftが考える、ほぼ理想のモダンPCを具現化している。
また、Surface Laptopは、従来の13.5型に加えて、15型が追加され、AMDのRyzen Microsoft Surface Edition プロセッサを採用するなどの話題もある。
さらに、これらとは別にSurface Pro Xが、Armアーキテクチャを基盤とする Microsoft SQ1 SoCを採用した製品として追加発売される。Intelプロセッサにこだわらなくなってきているところも7年目を迎えたSurfaceの貫禄、いや、サティア・ナデラの采配天晴れといったところだろうか。
眠らないPC
いずれにしても、Surafaceは、ずっと、眠らないPCとして提案されてきた。IntelによってHaswellこと第4世代Core以降で実装されたS0iXという新たなプロセッサのステータスを利用したもので、かつては、Connected Standby、そして、Always Connected PCを経てモダンスタンバイへと名前が変わってきた。OSのバージョン的にはWindows 8以降で提供された機能となる。
具体的には、スリープで完全に機能を停止してしまうのではなく、モダンアプリが必要な通信をOSに申告しておき、OSが数十秒に一度起きてはその通信をまとめて実行し、使う側から見ると、ずっと起きて通信が継続しているかに見えるというものだ。
もっとも、この機能はサポートされているのがモダンアプリだけで、デスクトップアプリは完全に停止してしまうことから、それほど大きなムーブメントにはならなかった。何しろ今ではスリープ中は通信しないモードも用意される始末だ。呼び名が変わってモダンスタンバイとなったのも、こうした経緯があったのかもしれない。その要件も、ずいぶんハードルが下がったという話もきこえてくる。ただし、手元のSurface 3は、他社機にはある「PCがバッテリー電源の使用中にスリープ状態になった場合はネットワークから切断する」かどうかを指定する項目が用意されていない……。
その代わりというわけではないが、モダンスタンバイはスリープ状態の新しい体験を提案している。とにかく復帰が速いのだ。30秒に一度起きて通信して、すぐに眠りにつくといったことを繰り返すには、相当速いレスポンスでプロセッサのみならず、各種周辺回路が寝起きできなければならない。
MicrosoftやIntelは、スリープからの復帰に際して1秒以内を提案しているが、実際、1秒というのはかなり長い時間だ。Surfaceではそんなに時間はかからない。ちょっとびっくりする。装着したTypeカバーを開くと、まるで、ずっと稼働していたかのように画面が復帰する。そして、Windows Helloで即座に顔認証が行われて使える状態になる。認証に要する時間を入れても1秒どころではない。
なんちゃってモダン
とにかく、まるでスマホのように寝ているようで寝ていない。使いたいときにすぐに使えるという感覚を、PCでも得られるようにするというのがMicrosoftやIntelがめざしてきた世界だ。本当に、そのことなしにはPCは使う気になれないという気持ちも理解できる。
これに、スクリーンのタッチ対応、ペン対応、WAN通信、PD高速充電対応で、Thunderbolt3対応USB Type-C端子が装備されていれば、もうそれでモダンPCと呼んでいいと個人的には思っている。これらは珍しい機能でもなんでもなく、すでに10年選手の機能ばかりだが、それでも、これらすべてをサポートしたPCというのは、そんなに数が多くなかったりするわけだ。
Surfaceは、完成の域に達したように見える。だが、そこで終わらないのがMicrosoftだ。来年リリース予定としてチラ見せしたデュアルディスプレイのSurface Neo と Surface Duoがある。OSとして、前者はWindows 10から派生したWindows 10X、後者は実にAndroidが稼働するという。実機をわりと至近距離で見たが、ちょっとそそられる。だが、使ってみないと真価はわからない。
発売はずいぶん先のようで、普通なら、参考出品といったムードのものだが、本気でやるつもりらしい。デュアルディスプレイというのがミソで、ハードウェア的にはすぐにでもできそうで、何も1年近く待つ必要はないように感じる。同社によれば、関連アプリの開発者開拓に時間を要するとのことだ。
想像にすぎないが、これは、今後、モバイルPCをビジネスマンが携行し、いつでもどこでも働くようになったときに、13~15型程度のノートPCのディスプレイでは満足な生産性が得られないことから、2つめのスクリーンをノートに接続する使い方まで含めたWindowsそのもののソリューションとしてデュアルスクリーンに特化した機能を提供することまで含めたMicrosoftの提案に発展させようとしているのかもしれない。
さて、次は
いずれにしても、Surfaceは、次のモダンを考える時期に来ているのだろう。今、目の前にある7代目のSurfaceは、確かに志半ばかもしれないが、Windowsそのものと同様に変わりたいけれども、変われない状態になりつつあるようにも感じる。
本当は、そのSurfaceに感化されて、次の一手をOEMが考えなければならないのだが、それがさほどできていないことに、ちょっとした残念感もある。その喚起こそがSurfaceの役割だったはずなのだが、ちょっと成功しすぎたということか。