鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」
第160回:3月23日~3月27日


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●キーワード


3月27日

■■ リコー、業界最高速の20/10/40倍速CD-RWドライブ
  --新開発の書き込み速度制御機能「JustSpeed」を搭載
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010327/ricoh.htm

ステッピングモーター(stepping motor)

 ディスクドライブのヘッドの駆動(アクチュエータ)などに用いられている、入力したパルス信号に応じて一定角度回転するモーター。ステップモーター、あるいはパルスモーターとも。

 磁界内に置かれた導体に電流を流すと、磁界と電流との相互作用によって一定方向に力が発生する。この性質を利用し、電流を流すと継続的に回転するように作られているのが一般的なモーターである。ステッピングモーターの場合には、パルス信号を1つ送ると1ステップだけ回転する仕組みになっており、入力したパルス数に応じてドライブのヘッドを動かしたり(※1)、一定周期のパルス信号を与えて、アナログ時計の針を動かす、などといった用途に用いられている。

 構造的には、永久磁石や歯車状の軟磁鉄を使ったローター(回転子)と、その周りを囲む複数の電磁石でできたステータ(固定子)から成る。パルス信号に従って、特定のステータに電流を流すと磁力が発生する。これがローターの歯を引き寄せたり、永久磁石の磁極との関係でローターを回転させ、バランスのとれる位置で停止する。励磁するステータを順番に切り換えてゆくことによって、任意の方向に任意のステップだけ回転できるというのが、ステッピングモーターの原理である。ちなみに、永久磁石を使うタイプをPM(Permanent Magnet)型、軟磁鉄を使うタイプをVR(Variable Reluctance)型、両方を組み合わせたタイプをハイブリッド型という。

(※1) フロッピードライブのインターフェイスには、この仕組みがほぼそのまま信号線として用意されており、ヘッドを動かす方向とステップパルスをシステム側から送る仕様になっている。


ATIP(Absolute Time In Pre-groove)
エーティーアイピー

 CD-R/RWディスクのグルーブに記録されている絶対時間。

 オーディオCDやCD-ROMの盤面には、ピット(pit)と呼ばれる窪みがスパイラル状に連なっており、ピックアップはこのピットの連なりをトレースし、ピットの有無によって生ずる僅かな反射光の変化を検出して信号を読み出している。ピットに相当するものを後から記録するCD-R/RWディスクの場合には、未記録状態でも正確なトラッキングが行なえるように、あらかじめ盤面に案内溝が形成されている。この溝をグルーブ(groove)、あるいはあらかじめ形成されていることからプリグルーブ(pre-groove)といい、CD-R/RWはグルーブをトラッキングしながら、グルーブ上にマークを記録してゆく(DVD-RAMなどは溝の間のランドと呼ばれる部分にも記録する)。

 グルーブは、単にトラックの位置を示すだけではない。溝は、半径方向に僅かに蛇行しており(ウォブリング)、反射光の変動を検出することによって、回転数を正確に同期させるためのクロック信号と、それに重畳されているメディア上の絶対時間を知るための情報(※1)が得られるようになっている。この時間情報をATIPといい、データ領域には、オーディオCDなどと同じ「分・秒・フレーム」で表された時間情報が、延々と記録されている。

 データ領域の手前(ディスクの最内周)には、インデックスなどのディスクに関する情報を格納するためのリードイン領域と呼ばれる部分がある。このリードイン領域のATIPには、メディアのタイプやレイアウト、最適なレーザーパワー、書き込み速度、製造メーカーといった特別な情報も収められている。

(※1) CDは音楽用のメディアとして設計されており、一般的なディスクでいうセクタという概念がない。レコードやテープと同じように、1本のトラック上に、延々とデータが続いているだけで、ファイルシステムとして使用する場合には、セクタ情報にあたるもの(セクタの開始位置を知るための同期信号やアドレス)を、データとして記録している。R/RWの場合も同様で、未収録状態ではATIP情報だけが頼りであり、記録時(あるいはフォーマット時)にセクタ情報を書き込み、ソフトウェア的にセクタを作成している。

□CDR Identifier(リードインのATIPを読み出すツール)
http://www.gum.de/it/download/english.htm
【参考】
□CD-R
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971224/key12.htm#cd_r
□ランド/グルーブ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000330/key114.htm#land


■■ PCMCIA、PCカードスロットをUSB対応とするCardBay規格を発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010327/cardbay.htm

CardBay
カードベイ

 PCMCIAが2001年に標準化した、PCカードインターフェイスにUSBやIEEE 1394を収納するための規格。

 PCカードは、もともとはメモリカード用のインターフェイスとして開発されたもので、国内ではJEIDA(※1)が'85年から標準化に着手。海外では、'89年にPCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)が設立され、'90年には、日米統一規格の最初の規格(PCMCIA 1.0/JEIDA 4.0)がリリースされた。

 当初は、メモリカードのみの規格だったが、'91年には、さまざまなデバイスに応用するためのI/Oインターフェイス仕様が策定され、翌'92年には、ハードディスク向けのATAインターフェイス(PC Card ATA)も追加された。これらは、ベースとなったメモリカードからの拡張で、それぞれに合わせてピンの使い方が若干異なっており、メモリカードとして起動した後に、それぞれのモードに移行する仕組みになっている。また、バス仕様が16bitであることから、これらを総称して「16bit PC Card」と呼んでいる。

 これに対し、'95年には32bitバスに拡張された「CardBus」が登場する。16bit PC CardがISAバスの延長であるのに対し、こちらは、PCIバスを外部に引き出そうというコンセプトである。当然、インターフェイスの仕様は全く異なり、電源やカード検出等の一部を除き、全てPCIバスライクな信号に変更されている。PC Cardはこの頃から、1つのカードスロットをさまざまなインターフェイス向けにアレンジするという、シングルスロット/マルチインターフェイスの方向性を強く打ち出しており、ベンダーがピン定義を自由に設定して、全く異なるインターフェイスに利用できるようにする仕組み(カスタムインターフェイス)を提供。その具体例として、'96年には、AV用のインターフェイスである「ZV Port」もリリースされている。

 CardBayは、16bit PC Card、CardBusに続く、3番目の汎用インターフェイスとして、2001年3月にリリースされた。従来のインターフェイスが、16bitや32bitのパラレル仕様であるのに対し、こちらは、今後主流になると考えられているシリアルインターフェイスを想定。PCカードの機械的な仕様とコンフィギュレーションメカニズムを使い、USBやIEEE 1394なども収納できるようにしようという規格である(インターフェイス的には、入出力のデータラインと電源だけなので実にシンプル)。16bit PC CardやCardBusと同様、CardBayもまた、カードの検出機構を使ってハードウェアレベルで検出されるが、CardBayではさらに、10本のピンをCardBayカードのコンフィギュレーション用に定義。CardBay対応カードのタイプもハードウェアレベルで検出する仕組みが用意されている。

 年を追うごとに複雑に分化していくPCカードだが、これは、用途別にさまざまなスロットを実装することが難しい小型機器にとっては都合の良い仕様であり、PCカードの普及を促進した大きな要因でもある。がその一方では、ホスト側の対応がますます大変になる(CardBayをサポートするためには、16bit PC CardやCardBus、カスタムインターフェイスにも対応しなければならない)という問題も抱えている。

□PCMCIA
http://www.pcmcia.org/
□JEITA
http://www.jeita.or.jp/
□PCカード技術専門委員会
http://www.pc-card.gr.jp/
【参考】
□PCMCIA
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980120/key14.htm#pcmcia
□CardBus
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971028/key4.htm#cardbus
□ZV Port
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971202/key9.htm#zv_port


3月28日

■■ ソニー、1.3GB「DDCD」対応CD-RWドライブ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010328/sony.htm

DDCD(Double Density Compact Disc)
ディーディーシーディー

 ソニーとPhilipsが開発し2000年に発表した、従来の2倍の容量を持つ倍密度のCD-ROM/R/RW用フォーマット。規格書は「Purple Book」として2000年9月にライセンシングを開始、2001年3月にソニーから最初の製品がリリースされた。

 トラックピッチとピット長を縮小することによって、従来の2倍の高密度化を実現した規格で、8cmメディアで400MB、12cmメディアで1,300MBの容量を持つ。記録密度を向上させるためには、レーザーのビームスポットをこれまで以上に絞らなければならない。そのためには、より光波長の短いレーザーを採用したり、レンズの開口数(Naumerial Aperture[NA])を上げることで対処するのだが、DDCDの場合は、これまでと同じ780nmのレーザーを使用。NAを0.05上げることによって高密度化に対応している。

 高密度化に伴なってエラー訂正も強化されており、CIRC(Cross Interleaved Reed-Solomon Code)のインターリーブ遅延を4フレームから7フレームに拡張した「CIRC7」を採用。バーストエラーの訂正能力(C2エラー訂正)を向上させている。

 EMF変調(Eight to Fourteen Modulation)やフレームフォーマットなどの仕様は従来のCDフォーマットをそのまま継承してはいるものの、基本部分で互換性が無く、DDCDメディアは対応ドライブでしか扱えない。容量は増えるが、CD-Rが大ヒットとなった最大の要因である、どのドライブでも読める(古いドライブにはダメな物もあるが)というメリットが失われてしまうため、今後の動向は、各社の対応次第ということになるだろう。

【DDCDの倍密度化】
 CDDDCD倍率
トラックピッチ1.6μm1.1μm1.4545
最小ピット長0.833μm0.623μm1.3371
データ領域25-58mm24-58mm1.0303

【DDCDの基本仕様】
 Double Density CD-ROM/-R/-RWCD-ROM/-R/-RW
データ容量1.3GB (2,048B/sector)650MB (2,048B/sector)
レーザ波長780 nm
対物レンズ再生: NA=0.50
記録/再生: NA=0.55
再生: NA=0.45
記録/再生: NA=0.50
ディスクサイズ直径 : 120 mm
厚さ : 1.2 mm
トラックピッチ1.1 μm1.6 μm
最小ピット長0.623 μm0.833 μm
線速度0.90 m/秒1.2~1.4 m/秒
誤り訂正方式CIRC7CIRC
変調方式EFM

【参考】
□トラックピッチ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000713/key127.htm#track
□最小ピット長
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000713/key127.htm#minimum
□CIRC
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000713/key127.htm#CIRC
□EFM
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000713/key127.htm#EFM
□CDファミリーのフォーマット(Red/Yellow/Green/Orange/White/Blue Book)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981007/key49.htm#Orangebook_part3


■■ プラネックス、19,800円のGigabit Ethernetカード
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010328/planex.htm

Gigabit Ethernet(GbE)
ギガbitイーサネット

 IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)で標準化された、1Gbps(1,000Mbps)の伝送速度を持つEthernet規格。

 LANのメディアとして広く使われているEthernetの原形は、'70年代にXeroxのPARC(Palo Alto Research Center)で開発されたものである。'79年には、IntelとDEC(Digital Equipment Corporation '98年にCompaq Computerに買収)がこれに加わり、俗にDIX仕様と呼ばれている最初の規格が'80年にリリースされている。

 現在使われているのは、これをベースにIEEEの802.3委員会によって標準化されてたもので、'83年に最初の規格として太い同軸ケーブルを使った「10BASE-5」の仕様を策定。この規格は、委員会の名称から「IEEE 802.3」と呼ばれ、アクセス制御方式のCSMA/CD(※1)やフレームフォーマット等の上位プロトコルをそのまま継承しつつ、その後もさまざまな物理層が追加されていった。ちなみに一連の規格は、ISO/IEC(International Organization for Standardization/International ElectrotechnicalCommission)の国際規格にも盛り込まれており、こちらは「ISO/IEC 8802-3」という規格になっている。

 物理層の伝送速度は、オリジナルの10Mbpsに対し、100Mbps、1Gbpsと高速化(Ethernetの場合は、信号レートではなく実効レート)。現在は、さらに10倍高速な10Gbpsタイプの標準化も進められており、それぞれ「Fast Ethernet」、「Gigabit Ethernet」、「10 Gigabit Ethernet」と呼ばれている。

 802.3委員会で現在標準化されている1Gbps仕様には、符号化方式の異なる2つのタイプと計4種類の物理層がある。

 「1000Base-X」と呼ばれている802.3zは、物理層にファイバーチャネル(Fibre Channel)の技術を応用したもので、波長の長い(1,300nm)光ファイバを使う「1000Base-LX」、波長の短い(850nm)光ファイバを使う「1000Base-SX」、平衡型の同軸ケーブルを使う「1000Base-CX」の3種類がある。使用するメディアは異なるものの、信号は共通で、8bitのデータを10bitのコードを使って符号化(8B10B)したものを、1.25GHzのタイミングで伝送。1.25GHz×8/10=1Gbpsという伝送速度を実現している。 なお、光ファイバーを使用する2タイプを称して「1000Base-FX」と呼ぶこともある。

 「1000Base-T」と呼ばれているもう1つの802.3abは、100Base-T2の技術を発展させたもので、ケーブルには、一般に使われている100Base-TXと同じ、カテゴリ5(CAT5)のUTP(Unshielded Twisted-Pair)ケーブル(※2)を使用する。

 100Base-TXでは、4bitを5bitに符号化した信号を125MHz(※3)で伝送し、100Mbps(125MHz×4/5)の伝送速度を実現していた。1000Base-Tでは、100Base-TXでは未使用だった2対も合わせた4対を使用。各信号線は、それぞれ送受双方向の仕様になっており、伝送時には4回路全てが使われる。信号の伝送には、「+2、+1、0、-1、-2」の5レベルを使用するPAM(Pulse Amplitude Modulation)、を採用。125MHzで1クロックあたり2bitの送信になるので、4回路×2bit×125MHz=1Gbpsとなる。ちなみに100Base-T2の場合は、2回路×2bit×25MHz=100Mbpsなので、10Base-Tと同じカテゴリ3のUTPケーブルが使用できる。

データレート IEEE規格 リリース 名称(タイプ) 符号化方式 ケーブル セグメント長 接続形態
10Mbps 802.3 '83年 10Base-5 マンチェスター 同軸(12mm径) 500m バス型
802.3a '85年 10Base-2 同軸(6mm径) 185m
802.3i '90年 10Base-T UTP(2対CAT3) 100m スター型
802.3j '93年 10Base-F 10Base-FP 光(850nm) 1000m スター型
10Base-FL 2000m
10Base-FB 2000m
100Mbps 802.3u '95年 100Base-T 100Base-X 100Base-FX 4B5B(NRZI) 光(1300nm) 2000m スター型
100Base-TX 4B5B(MLT-3) UTP(2対CAT5) 100m
100Base-T4 8B6T UTP(4対CAT3)
802.3y '97年 100Base-T2 PAM5 UTP(2対CAT3)
1Gbps 802.3z '98年 1000Base-X 1000Base-FX 1000Base-LX 8B10B 光(1300nm) 5000m スター型
1000Base-SX 光(850nm) 550m
1000Base-CX 同軸(2芯平衡) 25m
802.3ab '99年 1000Base-T PAM5 UTP(4対CAT5) 100m
規格書自体は、単独でリリース後、順次802.3本編に統合されている

(※1) CSM/CD(Carrier Sense Multiple Access/Collision Detection)は、1つの通信経路を複数のノードで共有するための方式。その名の通り、アクセス時には、バスが使用中でないことをチェックし(carrier sense)、空いていたら送信。送信中も、常にバスをチェックし、送信が競合しているか検出(collision detection)、衝突したら、各ノードがランダムな時間待機し、最初からやりなおすという仕組みになっている。

(※2) ANSI/TIA/EIA-568Aで規定されるケーブルの品質(伝送特性)のカテゴリ。10Base-Tでは、カテゴリ3(伝送帯域16MHz)以上を、100Base-TXや1000Base-Tでは、より高品質なカテゴリ5(伝送帯域100MHz)以上を使用する。

(※3) ここでいう125MHzは、符号化変調された伝送上のレート(ボーレート)のことである。10Base系のマンチェスター符号は、ビット区間の前半で補数をとり(0なら1、1なら0)、後半はそのままという変調を行ない、データとクロック成分を一緒に伝送している。この場合、ピーク時(1や0が連続)にはビットレート通りのパルス波(10Mbpsなら10MHz)がそのままケーブル上を流れることになる。100Base-FXや1000Base-Xでは、2値の信号レベルを「1」の状態で変化させるNRZI(Non Return to Zero Inverted)を用いている。「1、1」で1クロック分の変化なので、ピーク時(「1」の連続)の周波数成分は、ボーレートの半分(125Mbpsで62.5MHz)になる。この変調方法では、「0」が延々と続くと信号が変化せず、クロックが検出できなくなるので、10bitのコードの中から「1」が適度に出現するコードを選ぶ8B10B符号化が行われている。100Base-TXの信号伝送には、単純な高低2値ではなく「+、0、-」の3レベルを使い、「1」で信号レベルを1ステップ変化させるMLT-3(Multi Level Transmission-3 level)という変調方式を用いている。この場合、「1、1、1、1」の4bitで1クロック分遷移するので、ケーブル上の実質的な周波数成分は、1/4の31.25MHzに押さえられる。こちらも、クロックが適度に遷移するよう、4bitを5bitで表す4B5Bという符号化が行なわれる。

【参考】
□100Base-TX
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980421/key27.htm#100base
□UTP
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001214/key147.htm#UTP
□EFM(Eight to Fourteen Modulation)~CDに用いられている符号化方式
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000713/key127.htm#EFM

[Text by 鈴木直美]


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