鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」
第156回:2月26日~3月2日


■■キーワードが含まれる記事名
●キーワード


2月27日

■■米Seagate、シリアルATA対応ドライブとインターフェイスをデモ
   IntelとAMDがモバイルで1GHzの戦いへ突入
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010227/seagate.htm

シリアルATA(Serial ATA[SATA])
しりあるエーティーエー

 APT Technologies、DELL、IBM、Intel、Maxtor、Quantum、Seagateの7社が中心となって運営する、「Serial ATA Working Group」が2000年11月にリリースした、シリアルインターフェイスを使ったATA規格。

 ATA(AT[Advanced Technology] Attachment)は、Compaqが中心となって開発したハードディスク用のインターフェイス「IDE(Integrated Device [or Drive] Electronics)」をもとに、ANSI(American National Standards Institute~米国規格協会)によって標準化された規格で、PCの標準インターフェイスの1つとして広く使われている。

 これまでのATAは、16bit幅のデータ線(※1)を持つパラレル転送方式のインターフェイスで、物理的には、制御線やグランドを含む40ピンのインターフェイスとして規定されている。SATAは、これをシリアル転送方式に改めたもので、基本的には送受一対の信号線しか持たない(※2)シンプルなインターフェイスになっている。具体的には、信号用の7ピン(SATA Signal)と給電用の15ピン(SATA Power)のインターフェイスとして設計されており、2.5、3.5インチ共通のハーフピッチコネクタ(※3)が規定されている。ピンも、ホットプラグが実現できるように、グランドが先に接触する仕様だ。ケーブル長は1mまでと、これまでの約2倍に延長されたが、基本的には内蔵デバイスしか想定しておらず、外部接続用のコネクタやケーブルの規定は無い。

 同じ仕様であれば、データ線が多いほど高速に転送することができる。が、信号線が多くなると、信号線間の同期や干渉の問題があるため、転送クロックそのものを上げるのが難しくなってしまう。シリアル化は、インターフェイスを極限までシンプルにすることにより、転送クロックを上げて高速化を狙うアプローチであり、求めるパフォーマンスとそれを実現するための技術、コストとの関係で、現在はATAのみならず、さまざまなインターフェイスがシリアル化へと向かっている。

 例えば、ATA/ATAPI-6の「Ultra DMA Mode5」では、ストローブ信号の最小周期を40ns(※4)と規定している。すなわちタイミングクロックは25MHzだ。Ultra DMAは、クロックの両エッジを使って転送を行なうため、転送クロックは50MHzとなる。転送幅が16bitなので、データレートは100MB/secというわけだ。一方のSATAは、2000年に策定された第1世代の「SATA/1500」で、データ信号の最小周期を666.43ps(※5)と規定している。データ幅は1bitだが、信号レートが1.5GHzと大幅にアップしているのがわかる。実際の転送は、8bitを10bitに符号化するので、データレートは1.2Gbps(150MB/sec)と、パラレル仕様の1.5倍である。SATAでは、従来のように2台のデバイスが1つのバスを共有するスタイルではなく、1対1のポイントツーポイント接続になるため、この全帯域を1台で占有できることになる。ちなみに、2004年までには、同じ物理仕様でタイミングを半分に短縮した、第2世代の「SATA/3000」も予定されており、信号レートは3GHzに、データレート2.4Gbps(300MB/sec)に拡張される(※6)

 なお、ハードウェア的には、従来のATAと全く互換性のないSATAだが、規格には、ソフトウェア(BIOSやデバイスドライバ)で従来のATAをエミュレートする仕様も盛り込まれており、エミュレートモードでは、これまで通りにデバイスが制御できるようになっている。

※1 ATA-2までは、8bitだけ使用した転送モードもサポートされていた

※2 信号は、2本の信号線とグランドで構成するディファレンシャル仕様(従来はシングルエンド)で、これを送信用と受信用の2組使用する。これまで制御線を使って行なっていた操作や応答等は、全てパケットで処理され、クロックもデータ信号から検出するため、データ線以外に特別な信号線は不要なのである

※3 フルピッチは、ピン間隔が1/100インチ(2.54mm)のことで、ハーフピッチはその半分(1.27mm)。SATAでは、ピンが横一列に並んだハーフピッチコネクタを使用する

※4 ns(ナノ秒)は1000,000,000分の1秒で、周波数は(1000÷ns)MHz

※5ps(ピコ秒)は、1000,000,000,000分の1秒で、周波数は(1000÷ps)GHz

※6 2007年を目処に、さらに2倍にスピードアップした規格も予定しているが、コネクタ等の互換性は未定

□Serial ATA Working Group
http://www.serialata.org/
□Technical Committee T13
http://www.t13.org/
【参考】
□IDE
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980805/key41.htm#IDE
□ATAPI
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971105/key5.htm#atapi
□Ultra DMA
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971014/key2.htm#ultaradma
□Ultra DMA(ATA)/66
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980903/key44.htm#Ultra_ATA/66
□Ultra DMA(ATA)/100
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000622/key124.htm#ATA100
□ディファレンシャル
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010222/key154.htm#differ


■■ ロジテック、FMトランスミッタ内蔵USBオーディオデバイス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010227/logitec.htm

FM(Frequency Modulation)
エフエム

 周波数変調。信号波(変調波)に応じて、搬送波の周波数を変化させる変調方式。FMラジオやテレビの音声に用いられている。

 ある信号を別の信号に乗せて伝送することを変調(modulation)といい、変調された信号から元の信号を取り出すことを復調(demodulation)という。無線通信では、音声信号等を電波に乗せて伝送しているのだが、この電波のような信号の媒介となる信号を搬送波(carrier)と呼んでいる。

 アナログ放送などでは、AM(Amplitude Modulation~振幅変調)とFMという2つの方式が用いられている。AMは、信号波によって電波の振幅を変化させる変調方式で、音声等の信号波の波形の瞬時のレベルが、そのまま電波の出力の変化に対応するタイプである。例えば音の大小は出力の変化量の大小になるので、大きなダイナミックレンジを確保するためには、大きな出力と妨害の無い良好な受信環境が必要になる。言い換えると、効率が悪くノイズに弱いということだ。音の高低(周波数)の方は、出力が変化するスピードになるので、音声のように比較的帯域の狭い信号なら、低い周波数帯の狭い帯域で伝送できる(占有周波数帯は使用帯域の2倍)。

 一方のFMは、信号波の波形を搬送波の周波数の変化(粗密)で表す。すなわち、原波形のレベルが上がると搬送波の周波数が高い方へ、下がると低い方へ遷移。音の大小は周波数の移動量に、高低は変化するスピードに対応する。したがって、AMよりも高い周波数帯で広い帯域幅を用意しなければならない。が、逆に帯域さえ確保できれば、比較的小電力で高音質な伝送が可能。搬送波の出力が常に一定なので、妨害も受け難い(※1)

 なお、デジタル信号の場合もAMやFMと同じやり方でbitの状態を伝送する変調方式があり、同様の名称で呼んだり、AMに相当する振幅変調をASK(Amplitude Shift Keying)、FM相当の周波数変調をFSK(Frequency Shift Keying)と呼ぶ。また、搬送波の位相差で表す方法がもあり、こちらはPSK(Phase Shift Keying)といい、一般にはこのPSK系の変調や、PSKとASKを組み合わせたQAM(Quadrature Amplitude Modulation~直交振幅変調)系の変調がよく用いられている。

※1AMは、電波の強弱さえ検出できれば信号波を取り出せるので、電波がかなり微弱だったり混信した状態でもそれなりに受信することができる。FMは、電波の強さは安定しているが、強度が一定のレベルを下回ったり、一定のレベルを上回る混信があると、目的の搬送波の周波数遷移が検出できなくなってしまう。したがって、AMのようにそれなりに受信できず、いきなり受信不能になったり、電波の強い方に追従する結果となる。


■■ ダイジェストニュース
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/digest/

セキュアMMC(Secure MultiMediaCard)
せきゅあエムエムシー、せきゅあマルチメディアカード

 日立製作所、Infineon Technologies(※1)が中心となって開発し、2000年にリリースした著作権保護機能を搭載したマルチメディアカード。

 MMCは、SiemensとSanDiskが共同で開発し、MMCA(MultiMediaCard Association)で管理されている小型のメモリカード規格である。リリースされた'97年当初は、メモリカードとしての機能しかなかったが、その後I/O機能も追加。32×24×1.4mm(縦×横×厚さ)という群を抜いたコンパクト性と拡張性が認められ、さまざまな携帯機器に採用されている。  MP3プレーヤーが登場し、それを迎え撃つようにSDMI(Secure Digital Music Initiative)が'98年に設立。以来、ポータブルプレーヤーへの著作権保護機構の実装が叫ばれるようになり、保護機構を内蔵した製品が次々に登場する。

 メモリカード側からのアプローチとしては、'99年に、SmartMediaとMMCが、メディアに固有のIDを埋め込んだ製品をリリース。ちなみに、ID付きMMCを共同で開発したのが、日立とInfineonである。その後、ソニーは自社開発のメモリースティック(MemoryStick)に著作権保護機構を付けた「MG(MagicGate)メモリースティック」を発表。翌2000年には、東芝、松下、SanDiskの3社が共同で、著作権保護機構付きの「SD(Secure Digital)メモリーカード」を発売している。ID付きメディアが、書き換え不能な一意のIDを提供し、何らかの著作権保護機構を実現してもらおうというアプローチであるのに対し、これらは、それぞれMagicGate、CPRM(Content Protection for Recordable Media)という著作権保護機構を含んだ形の製品であるという点が大きく異なる(※3)。また、SDカードに関しては、MMCの提唱者でもあるSanDiskと、SmartMediaの提唱者である東芝が参加し、メディアはMMCとの互換性(※2)も提供しているという点で大きな話題となった。

 日立製作所と三洋電機、富士通の3社は、'99年12月にPHS向けの音楽配信システム「ケータイdeミュージック」を発表する。そしてそのためのメディアとして、SDメモリーカードやMGメモリースティック等と同様の著作権保護機構を実装した新しいタイプのMMCを、Infineonと共に開発。2000年にリリースしたのが、このセキュアMMCである。

 セキュアMMCの著作権保護機構は、日立、三洋、富士通の3社が共同で開発したUDAC-MB(Universal Distribution with Access Control-Media Base)を使用。基本的には、SDやMGと同じような仕組みを提供するのだが、セキュアMMCでは、カードにプロセッサ(日立のSuperH)が組み込まれ、カード自身が暗号化や復号化の機能を提供している点が大きく異なる。デバイスがカードから必要な情報を取り出して処理を行なうのではなく、カードに必要な情報を渡し、カード側に処理させるというアプローチである。

※1 Semensグループの企業で、MultiMediaCardは同社の商標

※2 SDメモリーカードは、MMCと同形でやや厚目の仕様になっており、両脇に1本ずつ端子が追加されている。したがって、MMC機器でSDを使うことは物理的に出来ないが、基本部分はMMC互換であり、SD機器は容易にMMCにも対応できる

※3 基本的には認証と暗号化によるセキュリティで、カード内には認証を受けてはじめてアクセスできる領域を用意。ここに、保護したいデータ(例えばコンテンツを復号化するための鍵)を格納する

□MMCA
http://www.mmca.org/
□ケータイdeミュージック・コンソシアム
http://www.keitaide-music.org/
【参考】
□MultiMediaCard(MMC)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990128/key62.htm#MMC
□SmartMedia
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971209/key10.htm#smartmedia
□Miniature Card
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980701/key36.htm#MC
□Memory Stick
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990218/key65.htm#Memory_Stick
□SDメモリカード
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000323/key113.htm#SD


2月28日

■■ 元麻布春男の週刊PCホットライン
   Ethernetをそのまま無線化するアダプタを試す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010228/kaigai02.htm

Registered、Unbuffered
レジスタード、アンバッファード あるいは レジスタ、アンバッファ

 主にメモリモジュールの種類を指す用語で、入出力にレジスタ/バッファを持つタイプ(Registered)と、持たないタイプ(Unbuffered)。デスクトップPCでは一般に後者が、サーバー向けのマシンでは前者も使われる。

 入出力に際し、データを送る側とそれを受ける側の間に立って、両者の衝突(タイミングや信号の微妙な違いなど)を調整する機構をバッファ(緩衝器)という。「Unbuffered」は、このような機構がないということで、バッファを備えたタイプは「Buffered」という。以前は、この通りの呼び名だったのだが、最近は(おそらくPC-100 SDRAMあたりから)、バッファを備えたタイプを「Registered」と呼んでいる。レジスタは、入出力に使う小さなメモリのことで、この場合の役割はバッファそのものである。

 一般に、バッファは入出力を安定させ効率よく行なうためのもので、メモリの場合も基本的にはそのためのものである。ただし、メモリコントローラにとっては、個々のDRAMチップを相手に入出力を行なうのか、単一のバッファを相手に行なうのかという大きな違いがある。Registeredメモリは、その向こうがどのようなチップ構成であっても、コントローラにとっては同じであり、Unbufferedタイプよりも大容量のメモリモジュールを構成することが可能なのである。ただし、余分な機構が備わる分、メモリモジュールが高価になるため、もっぱら大容量を必要とするサーバーやワークステーションでのみ使われ、一般向けのPCではUnbufferedタイプが用いられている。どちらをサポートするか(あるいは両方をサポート)は、マザーボード(コントローラ)次第だ。

[Text by 鈴木直美]


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