鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」
第157回:3月2日~3月9日


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3月2日

■■Intel Developer Forum Conference Spring 2001基調講演レポート
IntelがGHz級次世代高速I/Oバスの開発意向を表明
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010302/idf08.htm

MCA(Micro Channel Architecture)
エムシーエー

 IBMが開発し、'87年にリリースした同社のPS/2(※1)に搭載した、32bit(および16bit)の拡張バス規格。

 ATバス(ISA)に代わる32bit時代に向けた新しい拡張バスとして設計されたもので、データバス、アドレスバスともに32bit仕様。カードの自動設定機能(※2)や割り込みを共有するための仕組み(※3)、ストリーミングデータモードと呼ばれる高速なバースト転送(※4)やバスマスタといった、現在PCIでサポートされている諸機能が早々と採り入れられており、高速かつ高機能なバスアーキテクチャとなっていた。

 性能的には、バスクロックが10MHzなので、通常の転送モードで最大20MB/Sec(32bitバス使用時)、バースト転送で最大40MB/Secとなる。ISAバスの8MB/Sec(※5)に比べれば、これでも充分高速なのだが、MCAではさらなる工夫が凝らされている。バースト転送時のアドレスバスは、最初にアドレスを出力するだけで、転送中には使用していない。そこで、この空いているアドレスバスもデータ用に使い、64bitで転送してしまおうというのである。これを、マルチプレックスストリーミングデータモードといい、ハードウェアに全く手を加えることなく80MB/Secの高速転送を実現。さらに、10MHzの両エッジを使って20MHzのタイミングで転送するモードも提供している。64bit転送と併用すれば、最大で160MB/Secという高速転送が実現できるのである。

 仕様的にはたいへん優れていたMCAだったのだが、ISAバスとの互換性が全く無い上、使用にあたっては高額なライセンス料を要求するというクローズドな規格だったため、市場には受け入れられず、'90年代半ばにほぼ死滅している。

(※1) PC/ATの後継マシンで、Personal System 2の略。リリース当初のモデルでは、CPUに80286を搭載した「Model 50」、「Model 60」に16bit MCA、80386を搭載した「Model 80」に32bit MCAを採用。このほかに8086を搭載した「Model 30」もあり、こちらには、従来のAT(ISA)バスが使われていた。

(※2) ハードからOSまで含むプラグ&プレイが実現されている現在とは異なり、当時の自動設定は、カードの初期設定に必要な情報が記録されたファイル(Adapter Description File[ADF])とユーティリティを使ってソフトウェア的に行なうスタイルである。

(※3) ATバスは、CPUの管理下で複数のデバイスがバスを共有していたが、MCAではバスの使用権を調停する機能(バスアービトレーション)をハードウェアで実装。割り込信号は、信号線のレベルが変化した瞬間に割り込みが発生する従来のエッジトリガ方式から、割り込みを認識されるまで信号線のレベルを一定に保つレベルトリガ方式に改められている。

(※4) 通常は、アドレスの指定とデータの出力という2ステップで転送を行なう。したがって、10MHzのバスクロックに対し、転送クロックは5MHzで、32bitバスで最大20MB/Secとなる。MCAのバースト転送は、連続するアドレスに対し一気にデータを転送する方式で、転送中のアドレス指定が省略され、1クロックでデータが転送できる。

(※5) 16bit/8MHzバスのメモリ転送の場合。I/Oの場合には、1回の転送に3クロック要するため、5.33MB/Sec。

□VESA
http://www.vesa.org/
【参考】
□ISA
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980723/key39.htm#ISA
□PCI
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980617/key34.htm#PCI
□バスマスタ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981217/key58.htm#bus_master


EISA(Enhanced Industry Standard Architecture)
イーサ

 AST Research、Compaq Computer、Hewlett-Packard、NEC、Olivetti、Seiko Epson、Tandy、Wyse Technology、Zenith Data Systemsの9社が中心となって'88年に開発した、32bitの拡張バス規格。

 IBMのMCAに対抗すべく、互換機ベンダーによって開発された拡張バスで、従来のISAバスの延長線上でデータバスとアドレスバスを32bitに拡張。カードの自動設定機能(※1)や高速なバースト転送、バスマスタといった機能強化も図られている。

 16bitのISAバス(ATバス)は、それまでの8bitバス(PC/XTバス)を拡張する形でコネクタが定義されている。具体的には、8bitバス用に使われていた31×2列のスロットはそのまま利用。16bit用の拡張分を新たに定義した18×2列のコネクタに収め、8bitバスの後に継ぎ足す形で拡張している。片方だけなら8bitバス、両方使えば16bitバスとして利用できるようにし、これまでの資産が流用できるように配慮したのである。

 EISAスロットは、この16bitのISAコネクタをそっくりそのまま2階建てにした構造になっており、上段(スロット面)には従来のISAバスそのままのピンを配置。下段(マザーボード面)にEISA用に拡張された信号を配線している。スロットの内部には、ISAカードが下段まで挿さらないようにするためのキーが設けてあり、ISAカードを挿せば、上段だけを使って従来のISAスロットとして機能。キーの部分が切られているEISAカードを挿せば、上段と下段を使ったEISAスロットとして機能する。

 バスクロックは、互換性の関係から6~8.33MHzと従来のISAと同じだが、EISA特有の転送モードとして、コンプレスドとバーストの2つの高速転送モードをサポートしている。前者は、転送タイミングを圧縮するモードで、通常2クロックで行なっている転送を、1クロック半で実行する。後者は、クロックの両エッジを使い、アドレスとデータを交互に出力するモードで、こちらは1クロックで転送を完結。8.33MHz時のバースト転送は、最大33.32MB/Secとなる。

 互換機ベンダー主導でスタートしたEISAだが、コスト的な問題がなかなか解決されず、結局は各社のハイエンド機にラインアップされるに留まり、メインストリームは、ISAからVL-Busを経てPCIへと進むことになる。

※1 カードの初期設定に必要な情報が記録されたファイル(EISA Information File あるいはCFGファイル)とユーティリティ(EISA Configuration Utility[ECU])を使ってソフトウェア的に行なうスタイルで、これら自動設定の機構やカードが持つ識別用のID等は、後のプラグ&プレイISA(PnP ISA)にも流用されている。


VL(VESA Local Bus[VL-Bus])
ブイエル、ブイエルバス

 VESAが'92年に標準化した、32bitの拡張バス規格。

 Windowsの大ヒット(※1)以来、特にビデオカードのパフォーマンスが大きくクローズアップされるようになり、ボトルネックであるISAバスの改善が急務となってきた。'91年の後半から'92年にかけて、OPTiやUMC、HiNT等から「Local Bus」と呼ばれる独自仕様の高速バスをサポートした製品が次々にリリースされる。ローカルバスと呼ばれるゆえんは、ISAバスを経由せずに、CPU(当時は486)のバスにほぼそのまま直結する仕様だったからで、当初は、物理的にも電気的にも各社各様の製品が乱立していた。PCのビデオ関連規格で知られる業界団体「VESA(Video Electronics Standards Association)」が、これをまとめる形で標準化したのがVL-Busで、最初の規格は'92年8月に策定。一時は、大半のコンシューマ機に、このVL-Busが搭載された。

 バスクロックは、通常CPUのバスクロックと同じであり、33MHzバスならば、最大133MB/Secのバースト転送を行なうことができる(※2)。バスのアービトレーション機能やバスマスタ等もサポートされているのだが、チップレベルのバスと汎用バスの中間的な存在であるため電気的な制約が厳しく、33MHzで3、40MHzで2、50MHzで1というのが、スロット数の推奨値となっている。物理的には、ISAバス(もちろんEISAやMCAでも良いのだが)の後に58×2列(ピン数は112)のコネクタを並べた形で設計されており、通常のスロットと兼用できるようになっている。ただし、このためにVL-Bus用のカードは非常に大きく(長く)なってしまうという欠点があった。

 なお、VESAでは翌'93年11月に、64bit/66MHzまでサポートしたVersion 2.0をリリース。Pentiumにも対応できるように規格が拡張されたのだが、市場は「Pentium+PCIバス」という形で進んだため、2.0対応の製品が出てくることはほとんどなかった。486時代後期のほんの一時に、瞬く間に普及してあっという間に消えていった、33MHzや50MHzで動作する32bitバス……というのがVL-Busの実体といって良いだろう。

(※1) 国内では、Windows 3.1の日本語版がリリースされる'93年以降まで、Windowsの普及が持ち越された感があるが、世界的には'90年の3.0で、一気にWindows市場が立ち上がりはじめている。

(※2) 転送周期30ns(33.333MHz)で計算した場合のピーク値。バースト転送は、実際には4回しか行なえないので、5クロックで32bit×4と見なすと実質106.6MB/Secが最大。

[Text by 鈴木直美]


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