後藤弘茂のWeekly海外ニュース

IntelがRDRAM路線に一気に揺り戻し
--エルピーダ、Samsung、東芝がRDRAM増産計画を発表



●DDR SDRAMにはクエスチョンマークがついた

Intelのメモリ戦略の説明を行ったPeter MacWilliams氏(Intel Architecture Labs、Intel Fellow)
 IntelがRDRAM路線に大きく揺り戻した。2月26日から米サンノゼで開催されているIntelの開発者向けカンファレンス「Intel Developer Forum(IDF)」のメモリセッションでの説明では、デスクトップPCでのDDR SDRAMのポジションは限りなく縮小した。IDFのメモリロードマップでは、DDR SDRAMは存在するものの「?」マークつきとなっている。DDR SDRAMはSDRAMの置き換えがメインであり、RDRAMの価格が下がるならその役割も縮小するとIntelは説明した。つまり、DDR SDRAMの役割は当座のつなぎ程度といわんがばかり。過去数カ月間、OEMメーカーに説明してきたDDR SDRAM路線は、ほぼ白紙に戻った格好だ。

 DDR SDRAMに代わってIntelのメモリ戦略に登場したのは「4i(4インディペンデントバンク構成)」デザインのRDRAM。4iは、RDRAMチップの低コスト化を実現するもので、すでに製品化をしたSamsung Electronicsに加え、今回エルピーダメモリ(NECと日立製作所のメモリジョントベンチャ)と東芝も4iデザインの製品化を発表した。来年前半には3社から4iのローコストRDRAMが提供されるようになる。

 また、3社はRDRAMの大増産計画も発表し、RDRAMシフトを進める方向性を明確にした。IDFでの発表によると、今年末までに、エルピーダとSamsungは生産量の30%程度、東芝は60%程度をRDRAMに持って行く見込みだ。そのため、RDRAMの生産量は倍増することになる。また、3社は、RDRAMの高速規格である「PC1066(コードネームHastings:ヘイスティングス)」、つまり、通称1GHz RDRAMと呼ばれていたLong Channnelの1,066Mb/sec RDRAMも製品化する。

 IntelのRDRAM路線復活を象徴するのが、RDRAMベースの次世代チップセットだ。このチップセットの存在については、今月始めのコラム「IntelがRDRAM路線に揺り戻し?--i850後継RDRAMチップセットを計画」でもレポートしたが、OEMメーカーにもほとんど知られていなかった。しかし、今回のIDFでは、Intelはその概要も明確にした。それによると、次世代RDRAMチップセットは4iデザインとPC1066をサポートし、2002年中盤に登場するという。

 RDRAMの低コスト化とRDRAM御三家のDRAMベンダーのサポート。Intelはこうした動きを受けて、メインストリームデスクトップPCの大半が2002年末までにRDRAMに置き換わり、遅くとも2003年末までにメインストリームは完全にRDRAM化するというロードマップを描いた。Intelは、RDRAM戦略がつまづいた前回のIDFではメモリロードマップを提示することをやめた。しかし、今回、RDRAMシフト戦略の復活とともにロードマップも復活した。





●半年で激変したIntelのDRAM戦略


 Intelは、昨年7月に、RDRAM中心だったPentium 4デスクトップのメモリ戦略を大胆に転換。SDRAM/DDR SDRAMへのシフトをOEMにアナウンスした。それまでは、今年中盤に第2世代のRDRAMベースチップセット「Tulloch(タラクまたはトゥルッシュ)」を投入、RDRAMの浸透を加速する計画でいたのだが、夏頃にTullochをキャンセル。新たにSDRAM/DDR SDRAM対応チップセット「Brookdale(ブルックデール)」を今年後半に投入することをOEMに通知した。BrookdaleのDDR SDRAM対応版「Brookdale-DDR」は、SDRAM版に遅れて来年頭頃に投入されることになっている。

 IntelがDDR SDRAMのサポートを表明したことで、昨秋以降は、Pentium 4プラットフォームの本命がBrookdale-DDRになるという期待が盛り上がった。あるOEMメーカーによると、Intel側もDDR SDRAMに注力する(RDRAMには先がない)というニュアンスの説明を行なっていたという。また、Intelのサポートが得られたことで、DRAMベンダーもDDR SDRAMを次世代メモリの本命と位置づけた。これが昨秋から今年頭までの状況だった。

 だが、今回の方針転換で、こうしたDDR SDRAMへの潮流は大きく変わる。もっとも、今回のIDFでのアナウンスが、RDRAMを復活させるための勢いづけで、本音ではRDRAMとDDR SDRAMの両天秤路線を考えている可能性はまだ残されている。しかし、IDFでこれだけ派手に発表し、しかもDRAMベンダー3社が支持を表だって表明するからには、Intelの天秤はRDRAMにかなり傾いたと見ていいだろう。Brookdale-DDRもやるが、あくまでも「もう1つの価格/パフォーマンスオプション」に過ぎないというのが、Intelの姿勢のようだ。




●サーバーではDDR SDRAM

 もっとも、IntelはサーバーエリアではDDR SDRAMを積極的に後押しする。実際に、Intelの次世代サーバー向けチップセットのPlumasやIntel 870、また、Intelがバスライセンスを与えたサードパーティ(ServerWorksやMicron Technology)のサーバー向けチップセット群は、いずれもDDR SDRAMをサポートする。そのため、サーバーとデスクトップで、完全にメモリはわかれることになる。

 また、IntelはDDR SDRAMについて独自のバリデーションも開始する。まず、JEDECのDDR SDRAMスペックに追加する形で(規格化されていない部分の)定義を行なう。また、そのスペックをベースに、バリデーションプログラムも行なってゆく。このバリデーションに関しても、サーバー向けのDDR200のRegistered DIMMを先にフォーカスする。第2四半期には、DDR200 Registered DIMMのシステムテスティングに入るという。だが、デスクトップPC向けのUnbuffered DIMMはそのあとに回されており、実際のテスティングは今年後半になる。

 こうしたバリデーションのスケジュールからも、IntelがDDR SDRAMはサーバーメインに考えていることが明確だ。そのため、IntelのデスクトップPCでのDDR SDRAMサポートは、RDRAMの生産数や価格によって、さらに遅延あるいは縮小する可能性がある。3ベンダー以外にもRDRAMへシフトするDRAMメーカーが出てくると、どうなるかわからない状況だ。

 いきなりに見えるIntelとDRAMベンダーのRDRAMへの方向転回だが、じつは、今年に入ってからこの兆候は徐々に見えてきていた。例えば、昨年末以降、DRAMベンダーの半数はDDR SDRAMに対してトーンダウンしていた。

 その背景には、Micron TechnologyのDDR SDRAMとSDRAM同価格戦略や、SDRAMの暴落によるメモリ事業の収益の悪化、256Mbitチップ以降に深刻化するメモリのグラニュラリティ(granularity:最小増設単位)の壁、DDR SDRAMのインプリメンテーションの難しさなどさまざまな要素が絡んでいる。今後、何回かのコラムで、そうした背景をレポートしてゆきたい。



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(2001年2月28日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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