レビュー

エプソンダイレクト「Endeavor NJ5950E」

~最新パーツへアップデートされた15.6型フラッグシップノート

「Endeavor NJ5950E」
発売中

価格:100,872円~

 エプソンダイレクト株式会社は、フラッグシップノートPC「Endeavor NJ5950E」を6月17日に発売した。従来の「Endeavor NJ5900E」に比べ、主にCPUとGPUを強化したのがポイントとなる。その評価機を借用したのでレポートをお届けする。

デザインは従来モデルを踏襲、Haswell Refresh+GeForce 840M構成へ

 Endeavor NJ5950Eは、2013年7月に発売されたEndeavor NJ5900Eの後継機種となる。主な強化点はCPUとGPU。まず後者のGPUは、GeForce GT 740MからGeForce 840Mへ変更された。GeForce 840MはMaxwell世代のエントリーGPUで、より低消費電力で性能を向上させている。

GPU-ZによるGeForce 840Mの仕様

 一方、CPUについては、NJ5900EではHaswell世代のCPUを採用したが、NJ5950EではHaswell Refresh世代のCPUへアップデートされた。このCPU、GPUのアップデートにより、3DMark 11のスコアが約33%増し、消費電力は約10%削減、バッテリ駆動時間は約29%延長された、というのがエプソンダイレクトが出している値となる。

 ちなみに、GeForce 840Mの詳細な仕様はNVIDIAのWebサイトでも公開されていないが、TechPowerUpの「GPU-Z 0.7.8」で確認したところ、コードネームはGM108でMaxwellコアであることを確認。384 CUDAコア、24テクスチャユニット、8 ROPの仕様で、64bit幅のメモリインターフェイスを持つGPUであることが分かる。

 また、オフィス機器の省電力プログラムである「国際エネルギースタープログラム」についても、この6月にも施行される見込みの新基準に適合する予定だ。

 本体のデザインは従来モデルを踏襲。本体サイズは374×252×30~36mm(幅×奥行き×高さ)、重量約2.5kgで、フットプリントに対してスマートな印象を受ける。また、本体色は黒を基調としているが、単なる黒ではなく、やや茶色味がかった雰囲気にすることで、機械としての無機質感を和らげている。さらに印象的なのは全体の強度で、スマートな印象でありながら、液晶パネルも本体システム部もガッシリしており、使っていて安心感を覚える。

 キーボードは各キーが独立したアイソレーションタイプで、テンキーも装備。キーピッチは実測で19mm前後。カーソル脇のCtrlキーなどごく一部のキー以外は等間隔で並んでおり、15.6型ボディの余裕が感じられる。カーソルの→キーとDelキーがテンキー側の領域に食い込んでいるのは若干慣れが必要と思ったが、気になったのはそれだけで、全体的に使い勝手の良いキーボードだ。

 キーボード手前には大型のタッチパッドを装備。左右クリックを独立したボタンとして備えるデザインとなっている。

「Endeavor NJ5950E」の天板
キーボードとタッチパッド
キーピッチはおよそ19mm
左右クリックを独立して備える大型のタッチパッド

 液晶ディスプレイは1,920×1,080ドット表示対応の非光沢15.6型液晶。使い勝手の面で特筆すべき点はなく、非光沢液晶らしい落ち着いた発色で、十分な輝度があることから視認性は悪くない。

 インターフェイスは、左側面にUSB 3.0、HDMI出力、USB 3.0/eSATA兼用ポート、Gigabit Ethernet、ミニD-Sub15ピン。右側面にマイク入力、ヘッドフォン出力、USB 2.0、USB 3.0、光学ドライブ。左手前にSDカードスロットを備える。液晶上部には92万画素Webカメラも搭載する。なお、従来モデルは192万画素のWebカメラを備えており、唯一とも言えるスペックダウンとなっている。

 バッテリは11.1V/5,600mAhのリチウムイオン。公称駆動時間は約6.2時間(JEITA測定法2.0)となっており、先述の通りNJ5900Eの約4.8時間から約29%延長したとしている。実際のところは後ほどテスト結果を紹介する。

本体左側面。USB 3.0、HDMI出力、USB 3.0/eSATA兼用ポート、Gigabit Ethernet、ミニD-Sub15ピンを備える
本体右側面。マイク入力、ヘッドフォン出力、USB 2.0、USB 3.0、光学ドライブを搭載。なお、借用機はDVDスーパーマルチドライブを搭載していたが、標準仕様はDVD-ROMとなる
本体前面の右手前部に、SDカードスロットと各種LEDインジケータを備えている
720pに対応する92万画素Webカメラとマイクを液晶上部に搭載
本体背面。大きめのカバーはネジ2本で簡単に外せ、ストレージやメモリへアクセスできる
付属のACアダプタ
バッテリは本体背面裏側という一般的な場所に装着。容量は11.1V/5,600mAh

 このほか、Endeavor NJ5900EからNJ5950Eへの変更点として、新たに電力管理ユーティリティ「Energy Saveユーティリティ」の搭載が挙げられる。これは主に3つの機能を持っている。1つはプロファイルからの電源プラン変更と消費電力モニター。もう1つはバッテリの劣化を抑制するために満充電量を引き下げる機能。

 そして、もう1つがピークシフト機能で、夜間などの電力使用量が少ない時間帯にAC駆動でバッテリを充電し、昼間の電力使用量が多い時間帯には強制的にバッテリで駆動させることができる。もちろんバッテリ残量が減りすぎた場合はAC駆動へ自動的に復旧するようになっており、その閾値も設定できる。ピークシフトは省エネという社会的貢献だけでなく、夜間電気料金が安いプランに加入すればコストも抑えることができる。ピークシフトを意識して実践するのは面倒なものだが、本ユーティリティなら自動的に切り替えられるので便利だ。

 設定は簡単で、1時間単位で調整可能なグラフのバーをドラッグさせ、強制的にバッテリ駆動させる開始時刻と終了時刻を指定するだけだ。設定は2つ指定できるので、昼間に2回選んだり、0時をまたぐ指定も可能。特定の曜日のみ指定した運用を行なうよう指定することもできる。

プリインストールの「Energy Saveユーティリティ」
用意されたプロファイルからの省電力設定の指定と、消費電力をグラフ化してモニタリングできる
バッテリ劣化を防ぐために、満充電量を60%/70%/80%に制限する機能
指定した時間帯に強制的にバッテリ駆動するピークシフトにも対応する

豊富なBTOメニュー、ベンチマーク結果も良好

 エプソンダイレクトの製品と言えば、その柔軟なBTOが特徴の1つ。フラッグシップである本製品は、その選択肢が充実しているモデルの1つに挙げられる。カスタマイズ可能な仕様を下記にまとめたので参考にされたい。なお太字で表記したものが標準仕様となる。

【表】Endeavor NJ5950EのBTOメニュー
OSWindows 8.1 Pro(64bit)
Windows 8.1(64bit)
Windows 7 Professional(32bit、
Windows 8.1 Pro/64bitダウングレード)
Windows 7 Professional(64bit、
Windows 8.1 Pro/64bitダウングレード)
Windows 7 Ultimate(32bit)
Windows 7 Professional(32bit)
Windows 7 Home Premium(32bit)
Windows 7 Ultimate(64bit)
Windows 7 Professional(64bit)
Windows 7 Home Premium(64bit)
CPUCore i3-4100M
Core i5-4210M
Core i7-4710MQ
Core i7-4810MQ
Core i7-4910MQ
メモリ4GB(4GB×1)
4GB(2GB×2)
8GB(8GB×1)
8GB(4GB×2)
16GB(8GB×2)
ストレージHDD(5,400rpm) 250GB
HDD(5,400rpm) 500GB
HDD(5,400rpm) 1TB
HDD(7,200rpm) 250GB
HDD(7,200rpm) 500GB
SSD 128GB
SSD 256GB
SSD 512GB
光学ドライブDVD-ROMドライブ
DVDスーパーマルチドライブ
BDXLドライブ
無線LANなし
IEEE 802.11a/b/g/n対応
IEEE 802.11ac/a/b/g/n対応

 IEEE 802.11ac対応無線LANや、上位CPU、SSDを搭載すれば、相当な性能を持たせることもできるパーツがメニューに用意されている。今どきのノートPCとして、無線LANはそろそろ標準装備して欲しいと思うが、15.6型ノートPCはオフィスで据え置き前提の使い方もされる製品だけに、少しでもコストを抑える選択肢が残っていることが重要なのだろう。

 なお、今回の試用機は、Core i7-4910MQ、メモリ16GB、SSD 256GB、DVDスーパーマルチドライブ、IEEE 802.11ac/a/b/g/n無線LAN、Windows 8.1(64bit)の構成となっている。

 この環境での性能を見るために、いくつかベンチマークを走らせてみた。使用したベンチマークソフトは「PCMark Vantage Ver.1.2.0」、「PCMark 7 Ver.1.4.0」、「3DMark Ver.1.2.362」、「3DMark 11 Ver.1.0.132」、「ファイナルファンタジー XIオフィシャルベンチマーク3」、「MHFベンチマーク【大討伐】」である。PCMark Vantageは一部テストでスコアを取得できなかったためN/Aとしてある。

【表】ベンチマーク結果
PCMark Vantage(32bit)PCMark19,114
Memories10,584
TV and MoviesN/A
Gaming16,305
Music18,831
CommunicationsN/A
Productivity21,233
HDD32,566
PCMark Vantage(64bit)PCMark21,225
Memories11,493
TV and MoviesN/A
Gaming18,105
Music21,504
CommunicationsN/A
Productivity24,636
HDD39,020
PCMark 7PCMark6,169
Lightweight5,883
Productivity5,156
Entertainment4,703
Creativity10,600
Computation20,298
System storage5,119
Raw system storage4,459
3DMark 11(Extreme)Overall780
Graphics700
Physics8,352
Combined788
3DMark 11(Performance)Overall2,719
Graphics2,512
Physics8,400
Combined1,950
3DMark 11(Entry)Overall4,384
Graphics4,330
Physics8,391
Combined2,348
3DMarkIce Storm(Normal)75,795
Ice Storm(Extreme)57,843
Cloud Gate8,532
Fire Strike(Normal)1,479
Fire Strike(Extreme)717
FF11Low11,448
High7,878
モンスターハンターフロンティア
ベンチマーク【大討伐】
1,280×720ドット(標準)5,944
1,920×1,080ドット(標準)3,009

 スタンダードノートPCとしての性能はいたって良好な結果と言えるだろう。CPU、メモリが充実した試用機の上、ストレージにSSDを搭載していることで足を引っ張ることもなく、一般用途を想定したベンチマークテストは軒並み水準以上のスコアをマークしている。

 前モデルからの変更点となるGPUは、エントリー向けからエントリー向けへの切り替えということもあり、3Dベンチマークについては目立ったスコアにはなっていない。しかしながら、軽量なゲームで解像度を落とせば遊べる程度のスコアは出ており、本製品で想定される主な用途を考えれば十分な性能と言える。

 GPUがMaxwellに変わったことで期待されるバッテリ駆動時間については、「BBench」(海人氏作) でキーストロークと無線LANによるWeb巡回を有効にし、液晶輝度最大の状態で測定したところ、18,380秒(=約5時間6分)という結果になった。公称駆動時間の約6.2時間は標準仕様での測定のため、より充実した仕様の試用機で公称を下回るのは致し方ない。

 もっとも、モバイルPCとは異なり、電源供給ができない場所で長時間利用することを想定しにくい製品だけに、このハイスペックで5時間持つというのは十分過ぎる数字だ。むしろ、先に紹介したEnergy Saveユーティリティで満充電容量を制限して、バッテリ劣化を抑えるという使い方を検討できる余地があるように思う。

道具として安心して使える15.6型ノート

 エプソンダイレクトの新フラッグシップノートとなったEndeavor NJ5950Eを試してきたが、デザインは従来機を踏襲し、無駄のない設計が場所を選ばない良さを感じる。スペック面ではHaswell Refresh+Maxwellへとプラットフォームが底上げされた。

 試用機はリッチな構成で、この構成では税込みで212,652円(7月28日まではキャンペーンで16,200円の値引きがあり196,452円)と、それなりの価格になってしまう。ただ、最小構成価格は10万円前後から。BTOメニューが豊富なので、予算に合わせて柔軟に組み立てていけるのも魅力だ。

 この豊富なBTOメニューもあり、欠点らしい欠点が見当たらないのが本製品に対する印象だ。言い換えると、使い始めた後で選んで失敗したと思う可能性が低い製品だと思える。道具として本気で使える15.6型クラスのノートPCを求める人にお勧めできる製品だ。

(多和田 新也)