特集
AMDローエンドAPU「A4-4000」をベンチマーク
(2013/5/13 13:01)
Socket FM2対応APUのローエンドAPU
AMDの「A4-4000」はSocket FM2に対応したAPUだ。CPUに1モジュール2コアのPiledriverコアと、GPUにDirectX 11対応の「Radeon HD 7480D」を備えており、既存モデルの「A4-5300」より下位に位置する、Socket FM2対応APUの最下位モデルだ。
「A4-4000」のCPUコアは自動オーバークロック機能「AMD TurboCORE Technology」に対応しており、ベースクロックの3.0GHzから、ターボ時には最大3.2GHzまで動作クロックが上昇する。また、CPUコアは1MBのL2キャッシュを備えているほか、メモリインターフェイスはDDR3-1333のデュアルチャンネル動作をサポートしている。
GPUコアの「Radeon HD 7480D」は、128基のSP(Streaming Processor)を備えており、724MHzで動作する。このGPUは現時点でSocket FM2向けAPUのGPUコアとして、最もスペックの低いGPUコアであり、上位モデルの「A4-5300」にも搭載されている。
CPU | A4-4000 | A4-5300 |
---|---|---|
モジュール数 | 1 | 1 |
CPUコア数 | 2 | 2 |
CPU動作クロック | 3.0GHz | 3.4GHz |
Turbo COREクロック | 3.2GHz | 3.6GHz |
L2キャッシュ | 1MB | 1MB |
内蔵GPUコア | Radeon HD 7480D | Radeon HD 7480D |
Streaming Processor(GPU) | 128基 | 128基 |
GPUコアクロック | 724MHz | 723MHz |
メモリクロック | DDR3-1333 | DDR3-1600 |
TDP | 65W | 65W |
テスト機材
それでは、ベンチマークテストの結果紹介に移りたい。今回のテストでは「A4-4400」の比較対象として、従来のローエンドAPU「A4-5300」のベンチマークスコアも取得した。なお、「A4-5300」のメモリコントローラはDDR3-1600での動作をサポートしているが、今回のテストでは機材の関係上DDR3-1333動作のメモリでテストを行なっている。
その他のテスト用機材については、以下の表の通り。
APU/CPU | A4-4000 | A4-5300 |
---|---|---|
マザーボード | ASUS F2A85-V PRO (BIOS:6002) | |
メモリ | DDR3-1333 4GB×4 (9-9-9-24、1.5V) | |
ストレージ | Intel SSD 510 Series 120GB | |
電源 | Antec HCP-1200 | |
VRAM | 2GB | |
グラフィックスドライバ | Catalyst 13.4 | |
OS | Windows 8 Pro 64bit |
CPU、メモリ、システムベンチマークの結果
まずはCPUやメモリ周りのベンチマークテスト結果から紹介する。実施したテストは「Sandra 2013.SP3a 19.44」(グラフ1/2/10/11/12/13)、「CINEBENCH R10」(グラフ3)、「CINEBENCH R11.5」(グラフ4)、「x264 FHD Benchmark 1.01」(グラフ5)、「Super PI」(グラフ6)、「PiFast 4.3」(グラフ7)、「PCMark Vantage」(グラフ8)、「PCMark 7」(グラフ9)だ。
結果を見てみると、「Sandra 2013.SP3a 19.44」や「CINEBENCH」など、CPUの性能を測るベンチマークテストでは概ね10%前後の差で「A4-5300」が「A4-4000」を上回った。両APUのCPUクロックはおおよそ11~12%程度であり、このクロック差がほとんどそのままスコア差に反映された形だ。
メモリ周りのベンチマークテストでも、CPU内蔵キャッシュの帯域幅についてはCPUクロックに準じている。同じアーキテクチャを採用したAPU同士の比較で、ほぼクロック差に通りの結果が出るのは当然と言えば当然だ。
3Dベンチマークの結果
続いて、内蔵GPUを使った3Dベンチマークの結果を紹介する。実施したテストは「3DMark - Fire Strike」(グラフ14)、「3DMark11」(グラフ15,16)、「3DMark - Cloud Gate」(グラフ17)、「3DMark Vantage」(グラフ18,19)、「3DMark - Ice Storm」(グラフ20)、「3DMark06」(グラフ21,22)、「MHFベンチマーク【大討伐】」(グラフ23)、「PSO2ベンチマーク ver.2.0」(グラフ24)、「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク」(グラフ25)、だ。
3D系のベンチマークテストでは、CPUクロック差なりにスコア差がつくベンチマークテストの多かったCPU系ベンチマークテストとは異なり、「A4-4000」と「A4-5300」のスコア差はほぼ同等と言っても良い程度の差に留まっている。
両APUが備えるGPU「Radeon HD 7480D」のスペックはほぼ同等で、メモリクロックもDDR3-1333で統一しているため、これらのベンチマークテストでついた差は、主にCPUクロックの差によるものであると見ることができる。この条件下でスコア差がつかないということは、「A4-4000」と「A4-5300」のCPUクロックの差が、今回実施した3Dベンチマークテストにおいて、「Radeon HD 7480D」のボトルネックとなる程の差ではないということだ。
メインメモリをVRAMとして扱うAPUの場合、メモリクロックの差がグラフィック性能に影響を与える。このため、DDR3-1600対応の「A4-5300」とDDR3-1333の「A4-4000」では、スペック的に「A4-5300」の方が有利なのは確かだが、同じメモリを使うのであれば、両APUのグラフィックス性能は大差無いものと考えてよさそうだ。
消費電力の比較
最後に、消費電力の測定結果を紹介する。消費電力はサンワサプライのワットチェッカー(TAP-TST5)を利用して、各テスト実行中の最大消費電力を測定した。
「A4-4000」の消費電力は、アイドル時と負荷時ともに「A4-5300」を下回る数値を記録した。アイドル時の消費電力差は3Wと、個体差と言って差し支えない程度の差だが、ベンチマークテスト実行中の消費電力は最大で24Wもの差がついている。
「A4-4000」と「A4-5300」はともにTDP 65Wの製品だが、400MHzというCPUクロック差が消費電力に相当な影響を与えているようだ。
消費電力の低さは魅力だが価格的な魅力は生じるか
以上のように「A4-4000」を「A4-5300」と比較してきた結果、ベンチマークテストからは「A4-4000」が「A4-5300」のCPUクロックを引き下げたモデル以上でも以下でもない製品であるということが見て取れる。
性能よりも価格が重視されるローエンド製品であることを考えれば、メモリコントローラがDDR3-1600対応からDDR3-1333対応へスペックダウンしたことも、そこまで大きなマイナス要素とはならないだろう。むしろ、パフォーマンス差の割に消費電力の抑えられている「A4-4000」の方が魅力的に見える場合もありそうだ。
ただ、価格という面で考えた場合、現在3,000円後半から4,000円前半でも販売されている「A4-5300」に対して、円安が進行した今になって登場する「A4-4000」が、販売価格で「A4-5300」を下回るかというと微妙なところだ。発売は5月20日の予定。しばらくの間、Socket FM2のローエンドAPUについては、CPU性能か消費電力のどちらを優先するのかという形で、「A4-4000」と「A4-5300」を選ぶことになりそうだ。