イベントレポート
Huawei、フラッグシップスマホ「Ascend Mate 7」を発表
~6型では最小クラス、独自のオクタコアSoCを搭載
(2014/9/5 11:19)
中国Huaweiは、IFA開幕の前日にあたる9月4日にベルリン市内でメディア向けの新製品発表会を開催、スマートフォンの新モデル「Ascend Mate 7」と「Ascend G7」を発表した。Ascend Mate 7は、事実上の同社製オクタコア(8コア)SoC「KIRIN 925」を搭載する6型のフラッグシップモデル。Ascend G7は、普及価格帯の5.5型モデルになる。
登壇したHuaweiのコンシューマ部門マーケティング最高責任者のリチャード・ユー氏は、コンシューマ向け製品戦略を「Product」、「Brand」、「Partnership」の3つに定義。プレミアムデザイン、品質、LTE対応などを製品の価値とした。またブランド戦略では「MAKE it POSSIBLE」のキャッチフレーズと、欧州サッカークラブチームへのスポンサーなどでブランド価値を高めているという。また、パートナーシップでは、小売店店頭におけるディスプレイや専用コーナーの設置などが2012年比で5~7倍あまりへと、飛躍的に伸びている点を強調した。
モバイル通信の基地局分野ではEricssonに次ぐ世界2位のシェアを持つものの、コンシューマ向け製品はOEM中心で、自社ブランドの訴求を目的に積極的な活動を始めたのが2012年頃。スライドで示されたMAKE it POSSIBLEのキャッチフレーズも、日本人としては、つい「with Canon」が浮かんでしまうが、世界的には急速にブランドの認知も進んでいる。従来の中国製品という価値観から脱し、製品の品質やブランドについてここまで自信をもったプレゼンテーションを行なえるまでの急速な変化を遂げつつあるという見方もできる。
リチャード・ユー氏は、3つの製品を発表することを冒頭でコメントした。1つは、5月にパリでグローバル発表を行なった世界最薄スマートフォン(※当時)「Ascend P7」のバリエーションモデル。Sapphire editionという名称どおり、前面をサファイアガラスに変更したモデルとなる。金属のフレーム部分も、ローズゴールドに色を変更し、背面パネルもセラミックとした。両面の硬度を高めたことで、キーホルダーと一緒にポケットに入れても、ひっかきキズが出来にくいことを、実際にステージ上で鍵を前面ガラスに擦りつけて見せて。Gorilla Glassを始めとする強化ガラスでは定番のデモンストレーションの1つだ。
続いて、ユー氏が発表したのが、フラッグシップモデルの「Ascend Mate 7」だ。なお、“7”は7番目のモデルの意味で、画面サイズではない。画面サイズは6型を採用。「ユーザーはより広い画面を求めている」と言う。液晶パネルはジャパンディスプレイ製の「IPS-NEO」を世界初採用。6型としながらも、狭額縁化やユーザーインターフェイスの改良で、片手操作が可能な大きさであるとコメントしている。
冒頭に述べたとおり、HiSilicon製のオクタコアSoC「KIRIN 925」を採用。HiSiliconはHuawei子会社のため、事実上の自社製SoCとなる。いわゆるbig.LITTLE構成のプロセッサで、Cortex-A15の高性能コア4基、Cortex-A7のコア4基で構成される。それぞれのクロック周波数は、1.8GHzと1.3GHz。これに、メモリ、GPU、コプロセッサ、LTE Cat.6モデム、セキュリティトラストゾーンなどで1チップ化されている。プロセスルールは28nm。動作するコア数は動的に切り替わり、例えば高負荷の3Dゲームなどでは、4基のA15コアと、3基のA7コアがフル稼働。一方で、SMSや通話などではA7コア1基の稼働で、省電力を実現する。アプリケーションの最適化を行なうことで、バッテリ消費は20~50%改善されるとした。
モバイル通信機能では、グローバルモデルとしてLTEの対応バンドが多いのも特徴。さらにデュアルSIMに対応する。これまではLTE対応製品でも、デュアルSIMでは一方がLTE、もう一方GSMという使い方をする製品が多かったが、Ascend Mate 7は、両方のSIMスロットがLTEに対応する。SIMスロットは2つで、1つはMicro SIM、もう1つはmicroSDカードスロットと共用でNano SIMに対応というユニークな仕組みだ。
UIは、同社のEMUIを3.0にバージョンアップ。前述したとおり6型液晶でも片手操作がしやすいように、加速度センサーなどを利用してダイアログや入力位置を自動的に変更できるように工夫がしてある。
背面には指紋センサーも搭載。SoCのセキュリティトラストゾーンに最大5つの指紋を登録して、認証を行なうことができる。登録する指紋ごとにパーミッションを設定することが可能で、指ごとにビジネス用、個人用、ゲスト用などに分けて利用できるアプリケーションやフォルダなどを個別設定できるという。
カラーバリエーションは3色。シルバーとブラックは標準モデルで、2GBのメモリと16GBのストレージ、ゴールドはプレミアムモデルで、3GBのメモリと32GBのストレージを搭載する。予想される店頭価格はそれぞれ、499ユーロと599ユーロ。10月にアジア市場とヨーロッパ市場を中心とした地域で出荷を開始する。初期出荷地域に、日本と米国は含まれていない。
発表内容は上記の通りだが、率直に言ってオリジナル性は乏しい。確かに高品質、高機能で数年前とは桁違いの完成度を見せているが、見方によってはさまざまな模倣のかたまりとも言える。カラーバリエーションは顕著で、iPhone 5sのそれとまったく同一。人気カラーと言ってしまえばそれまでだが、Ascend G7では背面パネルが“ツートーン”のところまで似ている。UIもiOSに似た部分がかなりある。フォルダ表示などはそっくりだ。特に2013年からはiOSに限らず、アイコンやインターフェイスのフラット化が進んだことで、差別化がどんどん難しくなっている。ミニマル化の弊害とも言える部分だ。誤解を怖れずに言えば、デザインやインターフェイスを中心に、追い付くことはたやすい時期になりつつある。一方で先行するところも追いかけるところも、それを超える何かを生み出せない状態で皆が足踏みしていると言ってもいいかも知れない。
続いては、ドイツの現地法人コンシューマ部門のバイスプレジデント、ロバート・グラフ氏から、普及価格帯の「Ascend G7」が発表された。こちらもGシリーズで7番目のモデルの意味で、画面サイズは5.5型。解像度は1,280×720ドット(HD)表示で、Qualcomm製のクアッドコアを搭載する。動作周波数は1.2GHz。メモリは2GBで、ストレージは16GB。ヨーロッパにおける店頭価格は299ユーロと想定されている。同製品は、発表時のスライドとハンズオンの写真を中心に紹介する。
発表された3製品のいずれも、日本市場における展開は明らかにされていない。Huawei日本法人は、キャリアモデルのほか、SIMロックフリーのスマートフォンを流通させており、MVNOのユーザーなどをターゲットにして、いずれかの製品を国内市場にも投入する可能性はあるだろう。