イベントレポート
Galaxy Note 4をディスプレイに使うHMD「Samsung Gear VR」
~ウェアラブルデバイスとして、単独で3G接続可能な「Samsung Gear S」
(2014/9/5 06:00)
韓国Samsung Electronicsが3日(ドイツ時間)に開催したプライベートイベント「Samsung Unpacked 2014 Episode 2」では、「Galaxy Note 4」、「Galaxy Note Edge」のほかに、2つのウェアラブルデバイスも公開されている。1つは8月28日付けで製品発表を行なっている「Samsung Gear S」、もう1つはヘッドマウントゴーグルの「Samsung Gear VR」だ。
ヘッドマウントゴーグルを使ったVR(バーチャルリアリティ)体験は、さまざまな手段で各社が開発に乗り出している。大きなブレイクスルーとなったOculusの「Oculus Rift」は、先日「DK2(Developer Kit 2)」の出荷を開始した。経営面での独立は保たれているが、Oculusは買収によりFacebook傘下となっている。
また、ソニー・コンピュータエンタテインメントも「Project Mopheus」を開発しており、CES、GDC、アニメフェア、E3などのイベントで積極的にデモンストレーションを行なっているほか、9月1日(日本時間)に開催された同社カンファレンスでは、バンダイナムコゲームスの鉄拳チームによる新作デモンストレーションも披露している。
Googleは、Google I/O 2014でNexus 5と段ボールやレンズなどを使って簡易的にVRゴーグルを制作する「Cardboard」という仕組みを提供するなど、大手がこぞって開発に乗り出しているのが現状だ。
今回Samsungが発表した「Samsung Gear VR」は、表示する画面とセンサーに「Galaxy Note 4」を利用することなどから、手法としてはGoogleのCardboardを個人利用にも耐えられるレベルで製品化した形に近いが、技術やコンテンツについてはOculusと提携するしている。ステージにはiD Softwareの創業者で、Unreal Engineの開発などにも携わったゲーム業界の大物、ジョン・カーマック氏がOculusのCTOとして登壇し、VR技術の可能性と今回の提携についてコメントした。
Oculus Riftの場合は、ゴーグル本体に各種センサーが内蔵されているほか、ゴーグルの位置を読み取るセンサーカメラによって、体験者の位置や姿勢などを認識し、適切な映像を提供する。一方「Samsung Gear VR」は、ゴーグルには操作部分があるだけで、Galaxy Note 4のセンサーを利用する。外部センサーカメラは使わない。一方、Oculus Riftはコンテンツを映像入力する必要があるが、Gear VRの場合はNote 4内のコンテンツを再生することでゴーグル単体で完結できる。
ハンズオンエリアでは、コンテンツパートナーが提供するVR映像を体験することができた。筆者はOculus Rift、Mopheusともにすでに体験しているが、クリエイターではなくユーザーとして利用するなら、いずれも十分に楽しめるレベルと言える。突き詰めれば、専用ハードウェアであるOcules RiftやMopheusが、より高度なことができる一方で、GoogleのCardboardやGear VRはより手軽な手段と言える。
スマートフォンの画面を2分割して、右目と左目に視差のついた映像を表示させる手法は同じ。Cardboardは、レンズや操作用のマグネットの入手、段ボールの工作、アプリのインストールやコンテンツの準備など手間はかかるが、全体をホビーとして体験できる。Gear VRは、アクセサリーを入手すれば、あとはコンテンツを消費するだけという手軽さに違いがある。
単独でもモバイル通信が可能な「Samsung Gear S」
現在、ウェアラブルデバイスの代名詞ともなっているのが、リストバンド型の機器である。「Nike fuelband」や「JawBone Up」、「Fitbit」など活動量計をベースにした健康志向の製品がある一方、ソニーが「Smart Watch」、Samsungが「Galaxy Gear」で口火を切った、腕時計スタイルのスマートウォッチなどが次々と市場に投入されている。
まだまだ発展途上の分野であるだけに、製品の登場間隔も非常に短い。Samsungの場合、2013年のIFAで、前述の「Galaxy Gear」を発表。2014年のMWCでは「Gear Fit」、「Gear 2」など、半年間隔で製品が登場し、今回の「Samsung Gear S」へと続いている。
もちろんその背景にはさまざまな事情があり、例えば最初の「Galaxy Gear」では、AndroidのサブセットというOSを搭載していたが、Gear Fit、Gear 2以降はTizenをOSとして採用している。当初の製品名にGalaxyが付いているのはAndroidベースだからであり、Gear FitやGear 2にGalaxyが付いていないのはそうした理由だ。今年(2014年)の6月に米サンフランシスコで開催されたGoogle I/Oでは、ウェアラブルデバイス向けのプラットホームとしてAndroid Wearが発表されたが、今回の「Samusung Gear S」はTizen OSを採用した製品となっている。
Samusung Gear Sの最大の特徴は、これまで発表された製品群とは異なり、本体にSIMカードを搭載でき、2G/3Gを使った単体でのモバイル通信が可能なことだ。無線はほかにBuletooth、Wi-Fi機能を搭載している。ディスプレイ部分は2型サイズで、360×480ドットのAMOLEDパネルを採用する。パネル面は腕まわりに沿う曲面ディスプレイとなっている。
搭載するプロセッサは1GHz駆動。メモリは512MBで本体内に4GBのストレージを備える。本体サイズは大きさは39.9×58.1×12.5mm(幅×奥行き×高さ)。バッテリ容量は300mAhと発表されている。
写真で見ても、実際に装着しても、やはり2型級のディスプレイを採用している点、SIMカードとそれに伴うアンテナなどの機能やパーツを搭載していることから、本体サイズは大きめに感じられる。腕時計というよりは、大きめのアクセサリー腕輪といった感じだ。液晶サイズが拡大したことで、時計としての盤面は画面表示ではあるものの、いわゆる針が動くリッチなデザインがいくつか用意されている。クロノグラフタイプでは、小窓の針がバッテリ残量を示すような工夫もある。
操作方法は従来製品とよく似ており、画面を上下左右にスワイプすることでメニューを切り替えて、発着信や通知の確認、ウィジェットの表示を行なう。マイクとスピーカーを備えているので、Gear S単体での通話が可能だ。ほかにも、GPSを内蔵するので、地図表示や、駐車場に止めた車の位置を記録して、あとから音声制御で地図上に位置を表示させるようなこともできるようになっている。画面は小さいが、文字入力も可能だ。
なお、Gear VR、Gear Sのいずれも国内向け販売については明らかにされていない。