イベントレポート
【詳報】マウスのWindows Hello対応3Dカメラと指紋認証リーダ、その価格は?
~マウス記者会見レポート、MADOSMA後継機の開発状況も明らかに
2016年6月2日 11:55
日本マイクロソフト株式会社、株式会社マウスコンピューター(以下マウス)は、COMPUTEX TAIPEIが開催されている会場近くにおいて、共同で記者説明会を開催した。この中でマウスは、同社が開発してきた「Windows Hello」に対応した3Dカメラと指紋認証センサーを公開して注目を集めた。
会見には、株式会社マウスコンピューター代表取締役社長の小松永門氏、同社ゼネラルマネージャーの平井健裕氏、日本マイクロソフト側からは、日本マイクロソフト株式会社執行役 コンシューマー&パートナーグループ OEM統括本部長の金古毅氏、日本マイクロソフト株式会社業務執行役員 Windows&デバイス本部長の三上智子氏が出席した。
Microsoftの基調講演やBlogで全世界に紹介されたマウスの周辺機器
今回マウスが公開した新しいデバイスは、USBで接続するWindows Helloに対応した3Dカメラと指紋認証センサーの2製品だ。Windows 10では、パスワードを使わなくてもWindowsにログインなどができる生体認証機能として、3Dカメラを利用した顔認証、虹彩認証、指紋認証などをサポートしている。Microsoft自身のデバイスでは「Surface Pro 4」が顔認証を標準で、オプションで用意されている指紋認証付きキーボードで指紋認証を、米国などで販売しているスマートフォンの「Lumia 950/950XL」で虹彩認証をサポートしている。
上記のように、これらの機能を利用するには顔認証なら3Dカメラ、指紋認証なら指紋認証リーダというハードウェアが必須になる。しかし、Windows 10へのアップグレード対象となるWindows 7/8世代のPCにはそれらのハードウェアは搭載されていない上、Windows 10リリース後に販売開始されたPCでも、そうした機能を搭載している製品は少ないというのが現状だ。
株式会社マウスコンピューター ゼネラルマネージャーの平井健裕氏は「最終的にはPC自体にそれらの機能が実装されるのが一番だと考えている。しかし、一緒にPCを設計していくODMメーカーのレベルでも、まだWindows Helloがとても便利だということが理解されず、採用が進まないのが現状。そこで、その中間解としてこうした外付けのデバイスが必要なのではないかと考えた」と、その企画意図について説明する。
要するに、現段階ではWindows Helloの普及が“鶏と卵のジレンマ”(鶏が先か、卵が先かの議論ばかりで、話が先に進まないこと)に陥っているということを平井氏は指摘している。
ユーザーがWindows Helloが便利だと体験できないから、OEM/ODMメーカーが必要ないと思うのでPCへの実装が進まない、PCへの実装が進まないからWindows Helloを体験できるユーザーが増えない、そういう鶏と卵のジレンマを解消するために、こうしたUSB接続という中間解が必要だと言うことだ。
実は、Windows Helloを体験できるカメラというのは、世の中に販売されていない訳ではない。例えば、IntelがRealSenseの開発者向けに販売しているフロントカメラは、Windows Helloの利用要件を満たしているので、実はWindows Helloの顔認証用カメラとして利用することができる。しかし、開発者向けということもあり、送料を含めると100ドルを超えてしまう価格になっている。マウスとしては「野良的に使えるものではなく、きちんとMicrosoftの認証を獲得し、かつそれなりの価格で提供することを目指した」(平井氏)と、比較的安価に、かつMicrosoftも認めた製品として販売することを目指しているのだという。
そうしたこともあり、6月1日に行なわれたMicrosoftの基調講演では、この指紋認証リーダがMicrosoft OEM部門担当 副社長のニック・パーカー氏により紹介されている。実はステージにはWindows Hello用カメラも置かれており、両製品が同時に紹介されるはずだったのだが、何かの手違いで実際に紹介されたのは指紋認証リーダだけになってしまったのだという。しかし、パーカー氏のBlogで3Dカメラの写真が紹介されるなど、Microsoft側もかなり好意的に扱っている様子が窺えた。
3Dカメラも指紋認証リーダもさほど高くない価格に設定される見通し
3Dカメラのスペックは、既報の通り200万画素のCCDと、30万画素のIRから構成されており、機能としてはシンプルにWindows Helloの顔認証に絞ったものとなる。また、指紋認証リーダは、USBポートなどに挿してもさほどはみ出さない上、スワイプではなくタッチのセンサーとなるので、リーダに触れるだけで簡単にWindows 10にログインすることができ、非常に使い勝手が良い。
株式会社マウスコンピューター代表取締役社長の小松永門氏は「カメラはデスクトップPC用、指紋認証の方はノートPCでの利用を前提にしている」と説明している通りで、3Dカメラは液晶ディスプレイや据え置き型のノートPCなどで利用し、指紋認証の方はWindowsタブレットや2in1デバイスなどのモバイルPCでの利用が想定されている。なお、ドライバーなどもWindows Updateを経由して配布できるように(つまりUSBポートに挿せば勝手にドライバーが当たるように)、Microsoftなどと調整中だという。
気になる価格については、今回は非公表とのことだが、「今回の製品ではWindows Helloに絞った設計を行なっている。例えば、指紋リーダの方は元々は企業向けの製品で、そこからリーダの中にパスワードを格納できる機能などを削っている。それにより低価格を実現できている」(平井氏)と説明する。3Dカメラの方も、視野角などにあまりこだわらず、Windows Helloで使うことを前提にした設計にしているため、驚くほど高い価格ではないという。具体的な価格に関してはノーコメントということだったが、その仕様やスペックから考えると、筆者の予想だが、おそらく数千円の前半ぐらいではないだろうか。
MADOSMA Q601の開発は最終段階に突入、発表はもうまもなくか?
マウスは2月に行なわれたMWCの会場において、Windows 10 Mobile搭載スマートフォン「MADOSMA」の後継機となる「MADOSMA Q601」の開発意向表明を行なっている(別記事参照)。そのQ601の進捗状況はどうなのだろうかと平井氏に質問が出たが、「ハードウェアとしては完成しており、最終の作り込みを行なっている。MWCの時にも説明した通り、マルチバンドに対応させようと考えているが、そのままでは日本のバンドでやや弱くなってしまっている。そこで、まずは日本で使え、あわよくば海外でも使えるという基本に立ち返って最終調整をしている。もう少しお待ち頂きたい」と述べ、開発が最終段階に入っていることを明らかにした。
実際、平井氏が持ってきた端末を確認したところ、2月のMWCの段階では開発中ということで2GBだったメインメモリが、現在のサンプルでは3GBになっていたり、日本の技術適合認定が取れているなど、実機からもかなり完成度が上がってきていることが分かった。平井氏は具体的なリリース時期は明らかにしなかったが、そうした完成度から見ても、さほど遠くない時期に製品として発表される可能性が高いのではないだろうか。