日本HP、東京でのPC生産10周年を振り返る
~昭島工場を公開

昭島工場

8月26日 開催



 日本ヒューレット・パッカード株式会社(日本HP)は26日、東京でのPC生産10周年を迎えるに当たり、記念式典を開催し昭島工場を公開。また、昭島市に対してPC 15台を寄贈し、地域社会への参画をアピール。昭島市 副市長 佐藤清氏が感謝状を贈呈し、今後の協力関係を確かめた。

●東京生産10周年 記念式典
日本HP 岡隆史氏

 式典ではまず、日本HP 取締役 副社長執行役員 パーソナルシステムズ事業部統括 岡隆史氏が挨拶。

 「Hewlet-Packard(HP)の本社は'39年に設立され、2009年で70周年を迎えるが、同時に東京でのPC生産も10周年を迎える。生産開始当時は、コスト高のためまさに逆張りの展開だったが、取り組みにより生産ボリュームを拡大し、今回10周年を迎えることができた」と述べた。

 続けて、「HPは売上高が1兆円を超え、世界でナンバー1のIT企業となったが、その企業方針には常にグローバルシチズンシップがあり、地域社会への取り組みを行なってきた」とアピール。

 今回、10周年を迎え、昭島市に対し、市民図書館や児童センターなど向けに、「HP Compaq Business Desktop dc 5850 グリーンモデル」を15台寄贈する。また、10月1日には、市内の小学校16校を対象にPC組立体験教室を開催し、児童が組み上げたPCを学校に寄贈する。

 昭島市 副市長 佐藤清氏は、その目録を受け取り感謝状を贈呈。「大変大きな寄付を受け、御礼を申し上げる。昭島市は多摩地区でも先端産業が非常に多く集積している地域。都市のイメージが重要視さているが、それを高めるのは行政だけでは難しい。良いイメージを持った企業が来るだけで大変高まることを実感している。また、地域に対する貢献をありがたく思っている」と述べた。

生産ボリュームの拡大グローバルシチズンシップの元に地域社会へ取り組む昭島市 副市長 佐藤清氏

●昭島工場は日本HPの生産物流拠点

日本HP 清水直行氏

 式典の後半では、日本HP パーソナルシステムズ事業統括 PSGサプライチェーン本部 本部長兼昭島事業所長 清水直行氏が登場。「昭島工場は日本HPにおける生産/物流の拠点である」とした上で、歴史と取り組みを紹介した。

 日本HPは国内に3つの物流拠点を持っており、ディスプレイなどを扱う厚木倉庫、プリンタなどを扱う大井倉庫、そしてPC本体を生産する昭島工場がある。その昭島工場の従業員数は、協力会社を含めて400~450名程度。2シフト体制を採用し、最大24時間稼働可能という。注文に応じてカスタマイズする「完全注文仕様生産方式」を基本に、PC/ワークステーション/x86サーバーを生産している。

 元々は、シンガポールで生産したものを日本へ輸入していたが、'99年7月より旧Compaqがあきる野市で国内生産を開始。2002年11月にはHPとCompaqが合併し、昭島工場へラインを移設して生産を開始した。2004年10月には「MADE IN TOKYO」ステッカーの貼り付けを開始し、2007年3月にはPavilion Desktop PCの生産を開始し、コンシューマPCへと再参入した。

 その生産製品は多品種少量生産または変量生産となっており、オーダーのパターンの90%は5台未満、70%は1台。組み立てラインは約6m(最大4ライン)で、1日に5,000台のPCを生産できる。

 この生産体制の基礎として、HPの世界規模のサプライチェーンによるコストメリットがあるものの、日本ならではメリットとして、市場に近い生産拠点による短納期、カスタマイズ能力、高品質などを挙げた。また日本HP独自に、振動検査やリサイクル可能な段ボール製パレットなどを導入し、品質とコスト低減を実施している。

 コストについては、在庫関連/物流/人件費/設備の4つがあるが、中国工場でのサポートと比較した場合には、人件費が8%から31%に向上するものの、物流コストが45%から19%へ低下し、トータルで15%のコストをカットできるという。

 その成果として、顧客満足度調査で1位を獲得したという。また、デスクトップのシェアでは企業向けで'98年の8.6%から2009年第2四半期には19.5%に向上。コンシューマ向けでは2007年で1.1%だったものが同四半期で4.5%という速いペースで伸びていることをアピールした。

昭島工場は日本HPにおける生産/物流の拠点東京生産の歴史生産体制においては、ショートライン方式や保税倉庫/預託在庫などを導入
東京生産10年の遷移サプライチェーンコストの日中比較

●昭島工場ツアー

 ツアーでは、稼働中の組立工場にて、作業の様子や取り組みが紹介された。以下より写真で紹介する。

昭島工場の概略図。4Fが部材倉庫、3Fが製造ライン、2Fがオフィス、1Fが入出荷エリアとなっている製造されているのはUltra SlimタイプのデスクトップPC。まずは4Fから3Fに搬入された筐体をパレットにのせるPC組み立て工場では一般的なバーコードによる資材管理を導入している。左手のCRTにCTOのオーダーが表示され、その通りに各種パーツを用意する。また、シート状のロゴシールは、間違いが起こらない様に工夫され、不要な部分が黒く印刷されている
HDDや光学ドライブといったパーツが人間の手で組み込まれる。ここでアセンブリの工程が終了する次はプリテストの工程。ネットワークからクライアントを起動し、チェックプログラムを動作させる。ここで各種パーツが、サーバーにあるバーコードにひもづけられたオーダーと照合され、適切なパーツが組み込まれているか確認されるテストは慣れによるミスを防ぐため、単純にリターンキーを押すわけではなく、乱数化された数字を表示通りに入力する必要がある
ランイン(連続動作試験)の工程。ここでは電源とネットワークだけが接続され、電源のや各種ファンがテストされる次の工程ではオーダーにそったOSやOfficeなどのアプリケーションがサーバーから自動的にインストールされる。抜き取り検査の工程。4%以上の製品が抜き取られ、実利用に近い環境でテストされる。マイク入力や各種カードリーダなどもテストされるほか、6kgの漬け物石を載せて耐久力を試す日本独自の取り組みも行なわれている
梱包の工程。手作業で箱詰めされ、機械がビニールで封をする。バーコードを読み取ることで、添付される保証書などが自動的に出力される仕組みになっている。ここでも梱包された製品の4%が抜き取り検査され、外装や内容物がチェックされる日本独自で行なっている耐震検査。トラックのアイドル時や高速走行を模した振動が加えられる。1日に製造された各モデルの最初の製品が試験にかけられる。これはいち早く問題を察知するためという梱包された製品はエレベータで1回へと移送される
日本HPと協力会社で開発したパレット。段ボール製のため、傷んだ場合には協力会社が100%再生利用する。木製のパレットの処分コストがカットできたという1階より、一般向けにはクロネコヤマトが発送を行なう。当初は昭島にディスプレイやプリンタを運び込み、同時に購入したユーザーにまとめて発送していたが、現在ではクロネコヤマトがユーザー宅のそばでまとめ届ける仕組みになっているここでもバーコードを読み取ることで、発送用の伝票が自動的に出力される仕組みになっている
そのほか、サーバーは各セル(小部屋)で1人の担当者が組み立てる。その後同様に各種テストが行なわれるブレードサーバーを組み立てるところHP Factory Expressとし、インストールや設定まで工場の同一フロアで実施するのは昭島工場だけという
HPが取り扱うすべてのマシンに対応できるように、各種電源用のソケットが設置されている

(2009年 8月 26日)

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