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Dell、新Xeon SP搭載タワー型ワークステーション
~AMD Radeon SSG搭載で8K動画リアルタイム編集もデモ
2017年8月2日 09:56
Dellは、7月30日~8月3日に米国ロサンゼルス市で開催されているSIGGRAPH 2017に出展し、同社の最新製品などを展示した。この中でDellは、Skylake-SPの開発コードネームで知られる新Xeonを搭載したタワー型ワークステーションPCとなる「Precision 7920 Tower」などを展示した。
また、Dellは先日から日本でも販売が開始された8Kディスプレイとなる「デジタルハイエンドシリーズ UP3218K 31.5インチ 8Kモニタ」(記事デルの8K液晶がついに本日発売参照)と、AMDから発表されたRadeon Pro SSGを利用して8K動画をリアルタイムに編集するソリューションの展示を行なった。
Xeonスケーラブル・プロセッサを搭載したPrecision 7920 Towerが発表、展示される
Dellが発表したPrecision 7920 Towerは、IntelのXeonプロセッサを搭載するワークステーションPCになる。採用されているXeonプロセッサは、先日(米国時間7月11日、記事:Intel、PurleyことXeonスケーラブル・プラットフォームを発表参照)Intelから発表されている開発コードネームSkylake-SPこと、Xeonスケーラブル・プロセッサになる。
ただし、現時点で発表されているのはデータセンター向けのSKUだけで、ワークステーション向けのSKUは発表されていない。このため、Dellからの発表も“Xeonプロセッサ”とだけ述べられ、詳細(例えばどのSKUが搭載されているのかなど)は語られなかった。Intelの正式発表を待って出荷ということになるのだろう。なお、Dellによれば、デュアルソケットとシングルソケットの2つの製品がラインナップされる予定で、CTO時に顧客が選べられるようになるということだった。
Precision 7920 Towerの最大の特徴は、ストレージの拡張性にある。前面からアクセス可能で、SATAないしはPCI Express接続できる3.5インチベイが4つ用意されており、5インチベイが1つとDellがスリムベイと呼んでいるスリム光学ドライブ入るベイが1つ用意されている。3.5インチベイには、M.2のNVMeストレージが入るドッキング型のモジュールも用意され、その場合はPCI Expressでシステム側と接続することが可能になる。
また、PCI Expressスロットに、M.2のNVMeストレージを装着する拡張カードが用意されており、2モジュール版ないしは4モジュール版が用意される。それぞれのNVMeストレージはx4で接続されるため、4モジュール版ではx16のPCI Expressの拡張カードとなっている。また、Intelが提供するソフトウェアによるNVMe RAID機能にも対応可能なので、RAID構成で利用することが可能だ。Dellによれば、前面のストレージモジュール、内蔵のカードなどを利用すると、合計で48TBというストレージ構成が可能になるとのことだ。
なお、セキュリティに関しても配慮されており、ストレージベイをロックする鍵をオプションで選ぶことができたり、スリムベイには光学ドライブの代わりにスマートカードリーダーを装着して、スマートカードを持っているユーザーのみがログインできるようにすることが可能になる。
最も重要なグラフィックスカードだが、PCI Express x16のカードが最大で3枚まで搭載可能で、NVIDIAのQuadroシリーズないしはAMDのRadeon Proを搭載可能。Quadroの場合は最大で現時点で最上位SKUとなるQuadro GP100に対応可能で、AMDの場合にはRadeon Pro WX9100ないしはRadeon Pro SSGに対応可能だ。
このほか、DellはPrecision 5820 Tower、Precision 7820 Tower、Precision 7920 Rackという3製品をリリースしたが、今回のSIGGRAPH 2017では展示されていなかった(Precision 7820 Towerに関しては後述)。現時点では価格などは公開されていないが、いずれの製品も米国ではdell.comにおいて10月3日から販売が開始される予定だ。
AMD Radeon Pro SSGで8K動画のリアルタイム編集が可能に
もう1つDellのブースで注目を集めていたのが、同社が日本でも販売を開始したばかりの8Kディスプレイ「デジタルハイエンドシリーズ UP3218K 31.5インチ 8Kモニタ」と、AMDが先日発表したばかりのRadeon Pro SSGを利用した8Kリアルタイム編集のソリューションだ。
従来のGPUを利用して8K動画のリアルタイム編集を行なう場合、GPUはシステム(CPU)に接続されているSSDは、ほかのデバイスと帯域幅をシェアするPCI Expressを経由してアクセスすることになる。このため、データのサイズが大きい8Kの動画の生データをリアルタイムに再生すると、PCI Expressなどがボトルネックになってしまいデータの読み込みが追いつかなくなり、コマ落ちが発生する。このため、8K動画を編集する場合には、オフラインで圧縮した動画にした後で再生して確認するしかなかった。
そこでRadeon Pro SSGでは、システム側のPCI ExpressのコントローラとGPUの間にPCI Expressスイッチを入れ、そこにNVMeのフラッシュメモリをぶらさげる形にした。こうしておくと、GPUがPCI Expressの帯域を占有できるほか、高速にフラッシュメモリにアクセスできるようになる。
Radeon Pro SSGでは、このNVMeのフラッシュメモリ(2TB)をフレームバッファ(平たく言えばビデオメモリ)として利用することができる。Radeon Pro SSGはVega 10がGPUとして採用されているので、ローカルのビデオメモリとしてHBM2の16GBが内蔵されているが、それは一種のキャッシュとして利用され、グラフィックスのレンダリングなどレイテンシが求められる処理の時はそちらを利用する仕組みになっている。
このGPU内蔵SSDとも言っていいSSG(Solid State Graphics)をアプリケーションが利用するには、SSG APIと呼ばれるAMDが規定するAPIをサポートする必要がある。SSGにいち早く対応したのがAdobeのPremiere Pro CCで、今後公開される予定のアップデートでこのSSG APIが追加される予定だという。今回Dellブースで使われていたのはそのベータ版となる。
今回のデモでは8Kの動画を編集しながら、同時に4K動画を編集するというデモが行なわれた。8Kの動画を編集しても、まだ余裕がありますよいうところをアピールする狙いがあるものと考えられる。
デモではPrecision 7820 TowerにRadeon Pro SSGが内蔵された製品が利用されており、UP3218Kとの組み合わせがデモされていた。現状で8KのPC用ディスプレイを発売しているのは、DellとSamsung Electronicsだけで、日本ではUP3218Kのみが発売されている状況。米国では10月3日以降に新Precision Towerが販売開始される予定で、おそらくその頃にはPremiere ProのSSG API対応版もリリースされると考えられる。その意味では、この秋にはPCにおける8Kリアルタイム編集が現実のものとなりそうだ。
AMDはRadeon Pro SSGの価格は6,999ドルであるとしているので、ワークステーションのグレード次第だが、ディスプレイの50万円も含めて百数十万円程度で一式揃えることが可能になりそうだ。
今後は、現在数百万円単位の価格となっている8Kカメラがどこまで下がるか次第だが、こういうものは鶏と卵の関係にあるので、PCでの編集環境が整えば、8Kの動画で撮影したいというコンテンツクリエイターの人が増えてくる可能性があるだけに、今後の動向にも要注目だ。