PC使いこなし塾

Microsoft Office 2016をこれから使うあなたへ【第3回】

~Wordでビジネス文書を書く際の注意点とテクニック

本記事ではこのような社外向けのビジネス文書を作成するためのポイントを解説します。文書の構成要素を順序通りにレイアウトしていくと、一般的なビジネス文書の体裁になります

 この短期連載の3回目からは、Microsoftの「Office 2016」をビジネスで使う際のポイントを紹介していきます。新社会人や、これまであまりOfficeを使ってこなかった方を対象に、最低限押さえておくべきツボ、効率化のための時短テクニック、「困った!」を解決する秘訣などを解説します。日々Officeを使っている人でも意外と知らない機能もあるかと思うので、きっと役に立つでしょう。

 今回取り上げるのは、ビジネス文書の作成に欠かせない「Word」。報告書や企画書、案内状、論文、チラシなど、さまざまな文書作成に威力を発揮する定番のワープロソフトです。ここでは、社外向けのビジネス文書作成の概要を見ていきます。Wordの具体的な操作方法については、「できるネット」の記事(あいさつ文を簡単入力。Wordでビジネス文書の定型文を自動挿入する方法Wordレイアウトの基本「インデント」「タブ」「ページ区切り」をマスターする)を参照してください。

まずはビジネス文書の基本ルールを知ろう

 新社会人にとって、ビジネス文書は形式ばった難しい文書というイメージがあるかもしれません。ビジネス文書には一般的なフォーマットがあり、決められたルールに沿って作成する必要があります。このルールこそが、ビジネス文書を難しく感じさせる要因でしょう。しかし、ルールに従いさえすれば、自動的に常識的な体裁のビジネス文書ができあがるとも言えます。まずは、ビジネス文書の基本的なフォーマットを知ることが大切です。

ポイントは赤枠で囲った部分。「頭語」と「結語」、「記」と「以上」は対で使用します

書式設定は「入力を終えてから」が効率化のポイント

 ビジネス文書の作成に使用するWordの機能は、単純なものばかりです。「ホーム」タブにある文字揃えや「太字」などのボタンを使うだけで、一般的な体裁の文書を作成できます。ボタンの使い方も、設定対象を選択してボタンをクリックするだけ、と簡単です。ただし、この簡単さが初心者にとっての落とし穴。簡単ゆえに、文字を入力したら、すぐに書式設定をしてしまいたくなるようです。例えば、文書の先頭に発信年月日を入力したら、続けて右揃えを設定してしまいがちです。

 しかし、そのような段取りはNGです。右揃えにした発信年月日の行末で「Enter」キーを押して改行すると、次行も右揃えになってしまい、文字配置を解除する手間が生じるからです。Wordでは、右揃えにした行の末尾で改行すると、次行以降、延々と右揃えになります。また、太字を設定した文字の後ろに文字を入力すると、延々と太字が続きます。

右揃えにした行の末尾で改行すると、次行も右揃えになってしまいます。こんなときは、次行にカーソルがある状態で「右揃え」ボタンをクリックすると、右揃えを解除して、初期設定の「両端揃え」の状態に戻せます

 文書を段取りよく作成するコツは、あらかじめ、ある程度まとまった文章を入力することです。最後に改行して、文書末に真新しい行を確保してから、書式の設定作業をまとめて行ないましょう。そうすれば、設定した書式が延々と続いてしまう事態や、マウスとキーボードの持ち替えによる時間のロスを防げます。また、何の書式も設定されていない真新しい行を文書末に用意しておくことで、書式設定後にすぐに続きの文章を入力できます。

ある程度まとまった文章を入力し、末尾に新しい行を入れてから、書式設定を行なうと、効率よく作業できます。また、続きの文章もすぐに入力できます

書式の解除方法を覚えておけば安心

 そうは言っても、うっかり設定した書式が延々と続いてしまうということもあるでしょう。複数の書式を設定した場合、それを1つ1つ解除するのは大変です。そんなときは、「ホーム」タブにある「すべての書式をクリア」ボタンの出番です。

 一部の文字を選択してボタンをクリックすると、「フォント」、「フォントサイズ」、「太字」など、文字書式を解除できます。また、段落全体(行の先頭から改行マークまでが1段落)を選択してからボタンをクリックすると、文字書式に加え、「右揃え」や「中央揃え」などの段落書式も解除できます。

文字を選択して「すべての書式をクリア」ボタンをクリックすると
文字書式が解除されます
段落を選択して「すべての書式をクリア」ボタンをクリックすると
すべての書式が解除されます。

 「すべての書式をクリア」ボタンは、選択対象によって解除される書式が変わるので、慣れないと扱いにくいかもしれません。そんな人には、ショートカットキーがおすすめです。文字書式と段落書式のうち、解除したい方の書式を確実に解除できます。


    ・文字書式の解除:「Ctrl」キー+「スペース」キー
    ・段落書式の解除:「Ctrl」キー+「Q」キー

 「いろいろな書式設定を試しているうちに文書がぐちゃぐちゃになってしまった!」という時も、書式の解除方法を知っていると安心ですね。

Wordなら挨拶文をラクラク挿入できる

 社外向けのビジネス文書の文章は、一般的に「頭語」で始め、「結語」で結びます。結語は、頭語に対応した言葉を使用します。Wordでは、「頭語」を入力すると、対応する結語が右揃えで自動入力されるので便利です。「拝啓」と入れると「敬具」、「謹啓」と入れると「敬白」、「前略」と入れると「草々」が入力されるという具合です。「拝啓に対応する結語は……?」と、頭を悩ませずに済むのです。

 ちなみに、記書きの体裁も、「記」と入力するだけで整います。

「拝啓」と入力して「Enter」キーを押すと、「敬具」が右揃えで自動入力されます。また、「記」と入力して「Enter」キーを押すと、「記」が自動的に中央揃えになり、さらに「以上」が右揃えで自動入力されます

 頭語を入れたら、続けて時候の挨拶、安否の挨拶、感謝の挨拶を入力します。季節に合った適切な挨拶や、ビジネスにふさわしい挨拶を考えるのは難しいものです。一歩間違えれば、失礼な印象を与えかねません。

 しかし、心配は無用。「あいさつ文の挿入」機能を利用すれば、「月」を指定して一覧から選ぶだけで、挨拶文を自動挿入できます。Wordを使えば、作文に自信がない人でも、定型的な挨拶文をサクサク書けるというわけです。

「挿入」タブにある「あいさつ文の挿入」ボタンをクリックして、「あいさつ文の挿入」を選択します。設定画面が表示されるので、「月」を指定して、時候と安否、感謝の挨拶を選ぶと
カーソルが置いてあった位置に、あいさつ文が自動挿入されます

文書を美しく見せる要はレイアウト

 相手に見てもらうことを目的とした文書では、レイアウトの美しさにこだわりたいものです。特に、書き出し位置をきちんと揃えることは、レイアウトの基本です。Wordには、レイアウト用のさまざまな機能が用意されているので、活用しましょう。

 例えば、行頭を右にずらすには、「ホーム」タブにある「インデントを増やす」ボタンを使います。1回クリックするごとに、1文字分ずつ字下げできます。複数の行を選択して、まとめて字下げすることもできます。その隣にある「インデントを減らす」ボタンをクリックすれば、1文字分ずつ字下げを解除できます。

 Wordに不慣れだと、「スペース」キーを押して字下げしがちですが、そのやり方は御法度です。1行ずつ手作業でスペースを入れていくのは面倒ですし、「字下げの幅を5文字から3文字に変更したい」といった時にも修正の手間がかかります。「インデント」を利用して、こうした手間を省きましょう。

複数の行を選択して「インデントを増やす」ボタンを数回押すと、押した回数分だけ字下げできます

 各行の項目と項目の間に空白を入れたいときは、「Tab」キーを使います。挿入される空白の大きさは1項目目の文字数によってマチマチになりますが、この時点では気にしなくても大丈夫。なお、「ホーム」タブにある「編集記号の表示/非表示」ボタンをオンにしておくと、タブを入れた位置に「→」記号が表示され、タブが入っていることが一目で分かるようになります。この「→」記号は、改行マークと同じ編集記号なので、印刷はされません。

1項目目の後ろで「Tab」キーを押すと、空白が入ります。このとき、「ホーム」タブの「編集記号の表示/非表示」ボタンがオンになっていると、「スペース」キーで入れた全角の空白は「□」、半角の空白は「・」、「Tab」キーで入れた空白は「→」という具合に編集記号が表示され、空白の種類を区別できます

 単にタブを入れただけでは、空白の大きさもマチマチだし、2項目目の位置もバラバラで、見た目は最悪です。しかし、タブが本領を発揮するのは、ここからです。ルーラー(画面の上にある目盛りのこと)をクリックすると、クリックした位置に「L」マークが表示され、その位置に2項目目の先頭が揃います。「L」マークをルーラー上で左右にドラッグすれば、書き出し位置を修正することも可能です。「スペース」キーで空白を入れるより、断然便利ですね。

ルーラー上をクリックすると、ルーラーに「L」マークが表示され、2項目目の書き出し位置が揃います。ルーラーが表示されていない場合は、「表示」タブの「ルーラー」にチェックを付けると表示できます

 文字が詰まりすぎて読みにくいと感じるときは、「ホーム」タブにある「行間」ボタンを使用して、「行間」を広げましょう。この時、まちがっても「Enter」キーで改行して行間を広げてはいけません。後から数文字追加することになった場合、すべての行で数文字分をずらしていく羽目になります。必ず「ホーム」タブにある「行間」ボタンを使いましょう。

設定対象の段落を選択して、「ホーム」タブの「行間」ボタンの一覧からサイズを選ぶと、行間が変わります。「行間」の初期値は「1.0」です

 ちなみに、切りのよい位置でページを切り替えるときも、改行による調整は禁物です。1ページ目の行に削除があった場合に、2ページ目の先頭行が1ページ目にずれてしまうからです。1ページの末尾で「Ctrl」キーを押しながら「Enter」キーを押すと、「改ページ」が挿入され、2ページ目の先頭にカーソルを移動できます。

 今回見てきた通り、Wordにはビジネス文書の作成に役立つさまざまな機能が搭載されています。ビジネス文書の一般的なルールを踏まえ、Wordの力を借りながら、整った文書を作成しましょう。

製作協力:日本マイクロソフト

(きたみ あきこ)