多和田新也のニューアイテム診断室

L3キャッシュレスのバリュートリプルコア「Athlon II X3」



 AMDは日本時間の10月20日、L3キャッシュレスの低価格CPUブランドとして地位を固めてきたAthlon IIに、トリプルコア製品となる「Athlon II X3」を追加した。その最上位モデルとなる「Athlon II X3 435」を試してみたい。

●PropusコアをベースとしたAthlon II X3

 今回発表されたAthlon II X3シリーズには、次の4モデルがラインナップされる。TDP 95Wの標準モデルが2モデル、TDP 45Wの低消費電力版が2モデルのラインナップだ。価格は米国における参考価格である。

・Athlon II X3 435(2.9GHz/TDP 95W):87ドル
・Athlon II X3 425(2.7GHz/TDP 95W):76ドル
・Athlon II X3 405e(2.3GHz/TDP 45W):102ドル
・Athlon II X3 400e(2.2GHz/TDP 45W):97ドル

 国内で発売されるのは、このうち「Athlon II X3 435」(写真1)。動作クロックは2.9GHz(画面1)。Phenom II X3の最上位モデルであるPhenom II X3 720 Black Edition(以下、Black EditionはBEと表記)を上回るクロックとなる。また、Athlon IIブランドのなかでは、クアッドコアのAthlon II X4は最上位モデルの630が2.8GHz、Athlon II X2の最上位モデルである250は3GHzなので、Athlon II X3 435はその中間の動作クロックに位置付けられている。

 主な仕様は表1にまとめたとおり。L3キャッシュレスで、L1/L2キャッシュの仕様はAthlon II X4から1コア分減らされた格好である。このAthlon II X3シリーズは、AMDのデスクトップCPUロードマップでは「Rana」のコードネームで呼ばれていたものとなるが、コアの実体はPropusの1コアを無効にしたものであり、Athlon II X4シリーズと同じダイが使われている。

 ちなみに、こうしたコアを制限したPhenom II/Athlon IIでは、ACC(Advanced Clock Calibration)を使ったコア復活の裏技が知られているが、今回AMDから借用した個体は、ACCを使って4コアすべてを有効化すると起動しなくなった。

【表1】Athlon II X3 435eの仕様

Athlon II X3 435 Athlon II X4 630 Athlon II X4 620 Phenom II X3 720 BlackEdition
使用コア Propus Propus Deneb
OPN ADX435WFK32GI ADX630WFK42GI ADX620WFK42GI HDZ720WFK3DGI
動作クロック 2.9GHz 2.8GHz 2.6GHz 2.8GHz
L1データキャッシュ 64KB×3 64KB×4 64KB×3
L2キャッシュ 512KB×3 512KB×4 512KB×3
L3キャッシュ なし なし 6MB
HT Linkクロック 2.0GHz 2.0GHz 2.0GHz
対応メモリ DDR3-1333/DDR2-1066 DDR3-1333/DDR2-1066 DDR3-1333/DDR2-1066
動作電圧 0.875〜1.425V 0.925〜1.425V 0.850〜1.425V
周辺温度(最大) 73℃ 71℃ 73℃
TDP(最大) 95W 95W 95W

【写真1】Athlon II X3の最上位モデル「Athlon II X3 435」 【画面1】CPU-Zの結果。コードネーム欄はAMDのロードマップに示されていた「Rana」の表示になっている

●1万円弱のAMD製品を比較

 それではベンチマーク結果の紹介に移りたい。環境は表2に示したとおり。比較対象には、同価格帯のクアッドコア、デュアルコア各1製品を用意した。

 なお、22日にWindows 7が発売されることは周知のとおりで、本コラムも今回から原則としてWindows 7 Ultimate x64版でテストを行なう。また、テスト環境のメモリ容量も、4GBを基本として扱うこととする。

【表2】テスト環境
CPU Athlon II X3 435(2.9GHz)
Athlon II X4 620(2.6GHz)
Phenom II X2 550 Black Edition(3.1GHz)
チップセット AMD 785G+SB710
マザーボード ASUSTeK M4A785TD-V EVO
メモリ DDR3-1333(1GB×4/9-9-9-24)
グラフィックス機能
(ドライバ)
Radeon HD 4200
(CATALYST 9.9)
HDD Seagete Barracuda 7200.12(ST3500418AS)
OS Windows 7 Ultimate x64

 では順に結果を見ていきたい。まずは、CPU性能を見るSandra 2009 SP4のProcessor Arithmetic/Processor Multi-Media Benchmark(グラフ1)、PassMark Performance Test 7のCPU Test(グラフ2)、PCMark05のCPU Test(グラフ3〜4)の結果。そして、メモリ性能を見るSandra 2009のCache & Memory Benchmark(グラフ5)とPCMark05のMemory Latency Test(グラフ6)の結果である。

 SandraのProcessor Benchmarkと、PassMarkは、いずれもマルチスレッド化が進んだベンチマークソフトであることから、結果は似通ったものとなった。今回のテスト対象間では、コア数が少ないほどクロックが高いが、これらのテストはコア数が多いほど良い結果となっている。

 PCMark05では、シングルタスクではコア数に関係なくクロックが高いCPUのスコアが良く、マルチタスクテストではタスク数に応じてトリプルコアやクアッドコアの良さが出てくる。

 こうした一連の結果は過去に行なったテストの結果でも出ていた傾向であり、今回の結果も予測できる妥当な結果といえるだろう。

 メモリ性能を見るベンチマークテストの結果は、まず、キャッシュ周りは各製品の容量は動作クロックに応じた妥当な結果が出ている。

 16MBを超えるサイズを転送する場合には実メモリのアクセスが発生するわけだが、Phenom II X2 550 BEのみ結果が著しく劣る結果となった。CPU-Zなどでメモリクロックが落ちていないことは確認しているし、PCMark05のメモリレイテンシの結果も目立って悪いというほどでもない。

 Phenom II X2 550 BEについては、過去にDDR2-800でテストを行なった際にも、ほかに比べてメインメモリのアクセス速度が遅く出る傾向があり、未だ原因は分からないが、他製品に比べて性能が伸びない何らかの問題があるのかも知れない。

 少し話が横道に逸れたが、本題であるAthlon II X3 435については、キャッシュ周りはもちろん、メインメモリのアクセス速度もAthlon II X4 620に近い結果。メモリレイテンシの結果も、Athlon II X4 620よりやや良いものの同等といえるレベルにあり、ほかのAthlon IIと同等の能力を持っていると見て良い結果だ。

【グラフ1】Sandra 2009 SP4 (Processor Arithmetic/Multi-Media Benchmark)
【グラフ2】PassMark Performance Test 7(CPU Test)
【グラフ3】PCMark05 Build 1.2.0(CPU Test−シングルタスク)
【グラフ4】PCMark05 Build 1.2.0(CPU Test−マルチタスク)
【グラフ5】Sandra 2009 SP4(Cache & Memory Benchmark)
【グラフ6】PCMark05 Build 1.2.0(Memory Latancy Test)

 次はアプリケーションを用いたベンチマーク結果である。テストは、SYSmark 2007 Preview(グラフ7)、CineBench R10(グラフ8)、POV-Ray(グラフ9)、ProShow Gold(グラフ10)、TMPGEnc 4.0 XPressによる動画エンコード(グラフ11)だ。

 基本的にマルチスレッドに強いAthlon II X4 620、動作クロックの高いPhenom II X2 550 BE、その中間のAthlon II X3 435という構図があるわけだが、多くはAthlon II X4またはPhenom II X2 550 BEがもっとも良いスコアで、中間にAthlon II X3 435が入るという結果を見せている。

 このなかで、SYSmarkはいくつか面白い結果が出ている。3Dテストの結果は僅差であるが、Athlon II X3 435がもっとも良い結果で、次点がPhenom II X2 550 BEとなった。マルチスレッド化されてはいるがクロックの高さも求められるというテストでAthlon II X3 435のバランスの良さが出た格好だ。

 ただ、ProductivityテストやE-learningテストのように、Athlon II X4よりは良いスコアを出すが、Phenom II X2 550 BEに大きく引き離されるというスコアもある。こうしたデータ処理が重要なテストでは、L3キャッシュレスであることの影響が出てしまうのだろう。

 動画エンコードもおおよそコアが多いほど良い結果になるが、WMV9だけはAthlon II X3 435が奮わない。これは、WMVエンコーダが3コアをうまく活用できないからで、デュアルコアやクアッドコアでは2スレッド/4スレッドでエンコード処理が行なわれるが、トリプルコア製品では2スレッドまでの並列処理になるためだ。これは以前から出ていた傾向であり、相変わらずの結果といえるものである。

【グラフ7】SYSmark 2007 Preview(Ver. 1.06)
【グラフ8】CineBench R10
【グラフ9】POV-Ray v3.7 beta 34
【グラフ10】Photodex ProShow Gold 4.0
【グラフ11】動画エンコード(SD動画)

 次は3Dベンチマークの結果だ。テストは3DMark06(グラフ12、13)、3DMark05(グラフ14)、BIOHAZARD 5 ベンチマーク(グラフ15)、ストリートファイターIV ベンチマーク(グラフ16)である。BIOHAZARD5はすべてLowの設定、ストリートファイターIVベンチマークはBackGroungのみHigh、ほかはLowの設定としている。

 3DMark06のCPUテストはグラフィックス性能が問われず、かつマルチスレッド化されているのでCPUのコア数に応じた結果が出ている。ほかのテストはグラフィックス描画の性能がボトルネックとなる格好で、いずれも僅差の結果ながら、Phenom II X2 550 BEがもっとも良いスコアをマークした。動作クロックもさることながらL3キャッシュを持つことが好結果につながったと見られる。

【グラフ12】3DMark06 Build 1.1.0(CPU Test)
【グラフ13】3DMark06 Build 1.0.1(SM2.0 Test,HDR/SM3.0 Test)
【グラフ14】3DMark05 Build 1.3.0
【グラフ15】BIOHAZARD 5 ベンチマーク
【グラフ16】ストリートファイターIV ベンチマーク

 最後に消費電力の測定結果である(グラフ17)。アイドル時はいずれも800MHzまで落ちるが、結果は似たようなものだ。わずかにAthlon II X4 620の結果が優れるが、3W程度であれば誤差と見ていいだろう。

 高負荷時の結果は全体に大きな差はないものの、Athlon II X4 620は他2製品に比べるとやや突出した消費電力となっている。Athlon II X3はPhenom II X2 550 BEに比べると高消費電力ではあるが、僅差といっていい違いとなっている。

【グラフ17】消費電力

●なにをやらせてもそこそこの性能を見せる製品

 以上のとおり結果を見てきたわけだが、1万円弱という価格帯の同社製品の比較において、多くのテストで次点の結果に収まった。目立って良いと言えるところはなく、強いていえば消費電力がDenebコアのPhenom II X2 550 BEに近いあたりがポイントになるだろうか。

 ただ、本製品が1万円以下の価格帯の製品であることを考えると、突出したところはないが何をやらせても同価格帯製品の中位をキープできる性能を持つ、という特徴は意味あるものだと思う。なにをやらせてもそこそこの性能を持つということは、低価格製品につきものの弱点も緩やかなものといえるからだ。

 自作市場では倍率ロックフリーやコア復活の魅力もあってPhenom II X2 550 BEの存在感のほうが大きいように思うが、弱点の少ない堅実な低価格PCが欲しいというユーザにとって、Athlon X3は良い選択肢になるのではないだろうか。

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