瀬文茶のヒートシンクグラフィック

RAIJINTEK「PALLAS」

~TDP 180Wに対応するRAIJINTEKブランドのトップフローCPUクーラー

 今回はRAIJINTEKのトップフローCPUクーラー「PALLAS」を紹介する。購入金額は4,298円だった。

TDP180W対応のローハイト・トップフロー

 RAIJINTEK PALLASは、140mm径の大口径ファンを搭載するトップフロー型のCPUクーラー。マルチプラットフォーム対応製品で、IntelのLGA775/115x/2011と、AMDのSocket AM2/AM2+/AM3/AM3+/FM1/FM2/FM2+をサポートする。対応TDPは180W。

 トップフロー型のレイアウトを採用するPALLASのヒートシンクは、付属の冷却ファンを搭載した状態での高さが68mmというローハイト設計を採用。6mm径のヒートパイプ6本、接地面に銅板を採用したベースユニット、68枚のアルミニウムフィンからなる放熱ユニットによって構成されている。ヒートシンクの全面にはニッケルめっきが施されており、光沢感のある銀色で統一された外観に仕上がっている。

 同梱の冷却ファンは、ローハイト設計のヒートシンクに合わせた13mm厚の薄型140mm径ファン。PWM制御に対応しており、650~1,400rpmの範囲で回転数を調整できる。ヒートシンクへの取り付けには専用の金属製ファンクリップを用いる。このファンクリップは、13mm厚ファン専用であり、標準の冷却ファンと厚みが一致しない市販のケースファンは搭載できない。

RAIJINTEK PALLAS ヒートシンク本体
リテンションキット
放熱ユニットの重心からベースユニットをずらしたオフセット設計を採用
放熱ユニットには、リテンションキット固定時にドライバーを差し込むため、フィンのない箇所が設けられている
標準で付属する140mm径ファン。フレームのサイズは140×150×13mm(幅×奥行き×高さ)
専用のファンクリップとサーマルグリス
ファン取り付け時。ファンクリップは13mm厚ファン専用であり、ファンを交換する場合、120mmファンとネジ穴位置が同じで、13mm厚のフレームを採用していることが条件となる
メモリスロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE取り付け時)
拡張スロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE取り付け時)

 PALLASのヒートシンクは、放熱ユニットの重心に対して、ベースユニットを大きくずらしたオフセット設計を採用しているため、CPUソケット周辺パーツと干渉具合は取り付け方向によって大きく変わってくる。今回、ASUS MAXIMUS V GENEに搭載するにあたり、ソケット周りの電源回路に放熱ユニットが被る方向で取り付けたため、メモリスロットとは一切干渉しない代わりに、最上段のPCI Expressスロットにファンとファンクリップが被ってしまった。

 リテンションキットは、マザーボード表面に組み立てた土台に対し、金属製のバーでヒートシンクを固定するブリッジ式のリテンションを採用。固定時にドライバーを差し込めるよう、ヒートシンクの放熱ユニットにはフィンの無い部分が用意されているが、オフセット設計の影響で自立しない程度にバランスの悪いヒートシンクを支えつつ、ネジを締め無ければならないため、作業性がいいとは言い難い。なお、LGA2011用スタッドナットは、ソケットへ差し込むネジ部分の長さが約4mmなので、LGA2011-v3マザーボードにも問題なく固定可能。

冷却性能テスト

 それでは、冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、マザーボード側のPWM制御設定を「20%」、「50%」、「100%(フル回転)」の3段階に設定。それぞれ負荷テストを実行した際の温度を測定した。

【グラフ】テスト結果

 PALLASが記録した結果を確認してみると、3.4GHz動作時のCPU温度は56~60℃だった。これは、CPU付属クーラーに比べ25~29℃低い結果であり、大幅な冷却性能向上が期待できる結果であると言える。

 オーバークロック動作時のCPU温度は、4.4GHz動作時に73~80℃を記録。4.6GHz動作時については、ファン制御を20%に設定した場合は94℃を超えたためテストを中断したものの、残る2つの設定で85~89℃を記録した。サイドフロー型の大型CPUクーラーより一段劣るものの、トップフロー型CPUクーラーとしては十分に優秀と言えるだけの冷却性能をPALLASは持っているようだ。

 ファンの動作音については、PWM制御を20%に設定した場合でも無音というほどでは無いものの、1,000rpmを切るようにすれば、そこそこ静かに運用できる印象だ。1,000rpmを超えると風切り音は大きくなるが、フル回転でも約1,400rpm程度までしか回らないため、極端に大きな動作音は生じない。

低価格ながらよく冷えるトップフローCPUクーラー

 サイドフロー型に比べ、CPUの冷却能力で劣る製品の多いトップフロー型のCPUクーラーでありながら、4.6GHzにオーバークロックしたCore i7-2600Kの発熱に対応できるPALLASは、優れた冷却性能を持つトップフロー型CPUクーラーの1つに数えられる製品だ。

 ローハイト設計のトップフローCPUクーラーで、これ以上の冷却性能を期待できる製品と言えば、Thermalright「AXP-200」やCRYORIG「C1」あたりだが、これらの製品に比べ3,000円近く安い価格がPALLASの武器となる。

 ローハイト設計のヒートシンクが必要となるコンパクトなPCケースの場合、ケース内温度が上昇しやすいため、CPUクーラーの持つ冷却性能より、ケース内エアフローの優劣がCPU温度に影響することが多い。高級CPUクーラーとPALLASの差額で、ケース内のエアフロー改善を図った方が、結果としてCPUをしっかり冷却できる場合も少なくない。なるべく安くて冷えるローハイト・トップフロー型CPUクーラーを求めているなら、RAIJINTEK PALLASは積極的に選択肢に加えたい製品だ。

RAIJINTEK「PALLAS」製品スペック
メーカーRAIJINTEK
フロータイプトップフロー
ヒートパイプ6mm径×6本
放熱フィン68枚
サイズ(ファン搭載時)153×150×68mm (幅×奥行き×高さ)
重量(ヒートシンクのみ)420g
付属ファン(140mm径)140mm径ファン
電源:4ピン (PWM制御対応)
回転数:650~1,400rpm
風量(最大):56.5CFM
ノイズ(最大):28dBA
サイズ:140×150×13mm
対応ソケットIntel:LGA 775/115x/1366/2011
AMD:Socket AM2/AM2+/AM3/AM3+/FM1/FM2/FM2+

(瀬文茶)