瀬文茶のヒートシンクグラフィック
Thermalright「AXP-200」
~大口径ファンを搭載するローハイト高性能トップフロー
(2013/12/4 06:00)
AXP-100を大型化したトップフローCPUクーラー
AXP-200は、ヒートシンクの全高を60mmに抑えたローハイト設計を特徴とするトップフローCPUクーラーだ。2012年12月に発売されたMini-ITX向けCPUクーラー「AXP-100」のデザインを踏襲しており、その外観は140mmファン向けに大型化したAXP-100と言った印象である。
ヒートシンクは、6本の6mm径ヒートパイプと、純銅(C1100)板を接地面に備えるベースユニット、49枚のアルミフィンからなる放熱ユニットで構成されている。ヒートシンクには、全面に光沢感のあるメッキ処理が施してあり、シルバーで統一された高級感ある仕上がりとなっている。
AXP-200には、IntelおよびAMDの主要ソケットに対応するリテンションキットが採用されている。このリテンションキットでは、バックプレートを用いて土台を組み、マザーボード表面側から固定バーを取り付けてヒートシンクを固定する。マザーボード裏面の実装パーツなどによりバックプレートが利用できない場合、前回紹介したTRUE Spirit 120M(BW) Rev.Aと同じ要領で、樹脂ワッシャとネジのみでの固定も可能だ。
標準ファンには、新設計の薄型140mm径ファン「TY-14013」を採用。ファンの厚みを13mmに抑えたこのファンは、PWM制御に対応しており、700~1,300rpm(±15%)の範囲で回転数を調節できる。TY-14013を直接搭載したAXP-200の全高は約73mmとなる。
ファンの固定はねじ止め式で、ファンをヒートシンク本体のファンステイにねじ止めする。また、AXP-200には、120mm/140mmファン対応の金属製ファンマウンタが同梱されており、これをファンとヒートシンクの間に取り付けることで、ファン搭載位置の微調整と、140mm角ファンの取り付けが可能となる。なお、ファン固定用のネジは、TY-14013用のほか、25mm厚ファン対応の28mm長のものが用意されている。
AXP-200では、ベースユニットを放熱ユニットの重心から大きくずらして配置しているため、 周辺パーツとのクリアランスについては、 取り付け方向によって大きく変化する。
今回は、冷却性能テストを行なうにあたって、メモリスロットを放熱ユニットが覆う方向で取り付けた。この場合、基板サイズより大きなヒートシンクを搭載するメモリモジュールの取り付けは困難で、AXP-200取り付け後はメモリの着脱が不可能となる。また、拡張スロットにヒートシンクは被らないものの、ファンのフレームが被ってしまう。
なお、ファンが拡張スロットに被る問題については、前述のファンマウンタを用いることで回避可能なほか、ヒートシンクの取り付け方向を180度変えれば、メモリスロットとのクリアランス問題は解消する。このように、取り付け方向や、ファンマウンタを活用することである程度は物理干渉問題をクリアできるAXP-200だが、VRMやメモリモジュールのヒートシンクのサイズによっては、取り付けられない場合もあるので注意したい。
冷却性能テスト
それでは、冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、マザーボード側のPWM制御設定を「20%」、「50%」、「100%(フル回転)」の3段階に設定し、それぞれ負荷テストを実行した際の温度を測定した。
冷却性能テストの結果を見てみると、3.4GHz動作時のCPU温度は53~57℃で、CPU付属クーラーの85℃より28~32℃低い結果となった。また、発熱が増大するオーバークロック設定時についても、過昇温によりテストを中断することなく、4.4GHz動作時に70~75℃、4.6GHz動作時に80~86℃をそれぞれ記録した。
一般に、CPU冷却性能においてサイドフロー型に劣ることの多いトップフロー型、それもローハイト設計のヒートシンクであることを考えれば、AXP-200が示した冷却性能はかなり優秀なものと言える。
動作音については、搭載ファンのTY-14013が700~1,300rpmという低~中速ファンであるため、致命的に大きな風切り音などは発生していない。フル回転時の約1,350rpm動作時については、ファンの口径が大きいこともあって、それなりの風切り音が生じるが、1,000rpm以下で動作させれば、まずまずの静音動作が可能だ。
優れた冷却性能を持つローハイト・トップフローの最高峰
4.6GHz動作のCore i7-2600Kを冷やしきれるAXP-200は、ローハイト仕様のトップフローCPUクーラーとしては、相当に優秀な冷却性能を持った製品だ。Mini-ITXケースやHTPC向けの横置きケースに、高発熱なCPUを組み込むのであれば、ローハイト設計ながら高い冷却性能を持つAXP-200は有力な選択肢となる。
高い冷却性能と美しいヒートシンクが大変魅力的なAXP-100だが、7,980円という価格はかなり高価だ。筆者の場合、性能とヒートシンクのクオリティを考慮すれば、約8,000円という価格に見合う価値がAXP-200にあると感じるが、この辺りは判断が分かれるところだろう。
価格の高さから人を選ぶ製品ではあるが、ローハイト設計のCPUクーラーを検討するのであれば、最上級の冷却性能を持った製品として、AXP-200を選択肢に加えることをお勧めする。
Thermalright「AXP-200」製品スペック | |
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メーカー | Thermalright |
フロータイプ | トップフロー |
ヒートパイプ | 6mm径×6本 |
放熱フィン | 49枚 |
サイズ(ヒートシンクのみ) | 140×153×60mm (幅×奥行き×高さ) |
重量(ヒートシンクのみ) | 475g |
対応ファン | 140mm径ファン「TY-14013」 電源:4ピン(PWM制御対応) 回転数:700~1,300rpm ±15% 風量:64.52CFM ノイズ:30.6dBA(最大) サイズ:150×140×13mm(同) |
対応ソケット | Intel:LGA 775/1150/1155/1156/1366/2011 AMD:Socket AM2/AM2+/AM3/AM3+/FM1/FM2 |