瀬文茶のヒートシンクグラフィック

ZALMAN「Reserator 3 Max」

~円形状のラジエータが特徴的な120mm級オールインワン水冷

 今回はZALMAN製のトップフロー型CPUクーラー「Reserator 3 Max」を紹介する。購入金額は12,980円だった。

超弩級水冷キットの名を受け継いだオールインワン水冷

 ZALMANのReserator 3 Maxは、ポンプ一体型のウォーターブロックとラジエータで構成されたオールインワン水冷ユニットだ。ZALMANブランドにおいて、メンテナンスフリータイプのオールインワン水冷ユニットとして5つ目の製品となるReserator 3 Maxでは、従来の製品とは全く異なる円形状のラジエータを採用している。

 特徴的なラジエータは、円形状に配置された銅製パイプの周囲に銅製の放熱フィンを配置したもので、外観からは分かりにくいが内周部の小型ラジエータと、外周部の大型ラジエータの2ブロック構成となっている。銅製の放熱フィンには黒色のめっき処理が施されており、落ち着いた印象を受けるカラーリングで仕上げられている。

 冷却水を循環させるためのポンプを内蔵するウォーターブロックは、コンパクトに作られているが、内蔵するポンプは1時間あたり90Lの冷却水を循環させる能力を持つとしている。ポンプの電源は、ウォーターヘッドに設けられたFAN電源用の3ピンコネクタで供給する仕様となっている。また、Reserator 3 Maxでは冷媒にナノ粒子を混合したナノ流体冷却材を用いることで、一般的なクーラントより高い熱伝導率を実現しているとしている。

 Reserator 3 Maxは、ブルーLEDを備えた120mm径ファンを1基備えている。このファンはPWM制御に対応しており、回転数を1,000~2,200rpmの範囲で調整できる。なお、ファンは円形状ラジエータの中心部に埋め込まれており、標準ファンと市販のケースファンの交換は不可能だ。ただし、標準ファンの反対側、ケースと接触する面にケースファンを1基搭載可能なので、標準ファンと合わせてデュアルファンで運用ができる。

 ちなみに、Reserator 3 Maxが冠するReseratorという製品名は、2004年に発売された「Reserator 1」以降、ZALMANオリジナルの水冷キットに与えられてきた名称である。初代の「Reserator 1」は、ブルーアルマイト処理で鮮やかに彩られた超弩級ラジエータ兼リザーバーの鮮烈な印象から、青い巨塔との異名をとった製品だ。かつてはブランドを象徴する製品であったReseratorの名を与えるところに、Reserator 3 Maxに対するZALMANの自信のほどが伺える。

Reserator 3 Max本体
付属品一覧
ポンプ一体型のウォーターヘッド
CPU接地面は銅製
ラジエータ
ラジエータ裏面
ウォーターヘッドと周辺パーツのクリアランス(MAXIMUS V GENE)

 ウォーターブロックがコンパクトに作られているため、大型CPUクーラーで問題になるメモリや拡張スロットとの干渉問題はほぼ気にする必要がない。CPU周辺パーツとのクリアランスに余裕があるというのは、大型CPUクーラーでは実現が困難な、オールインワン水冷ユニットの魅力であると言えよう。

 円形状というユニークな形状のラジエータについては、厚みこそ約80mmと分厚いが、横幅と縦幅は既存の120mm級ラジエータ採用オールインワン水冷とほとんど変わりない。240mm級ラジエータ採用製品のようにケースを選ぶことなく、多くの環境で利用可能だろう。

冷却性能テスト結果

 それでは、冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、マザーボード側のPWM制御設定を「20%」、「50%」、「100%(フル回転)」の3段階に設定し、それぞれ負荷テストを実行した際の温度を測定した。

 検証結果を見ていくと、Core i7-2600Kの定格動作クロックである3.4GHz動作時の温度は55~60℃となっており、CPU付属クーラーに比べて25~30℃の温度低下を実現している。一方、発熱が増すオーバークロック動作時については、4.4GHz動作時に66~74℃、4.6GHz動作時には76~86℃を記録した。傑出した結果ではないが、120mm級ラジエータ採用のオールインワン水冷ユニットとしては、上々と言ったところだろう。

 動作音については、搭載ファンが約1,160rpmで動作する20%制御時は風切り音も気にならない程度で静音と呼べる動作だが、ファンの回転数が約1,650rpmになる50%制御時になると、はっきりと聞き取れるレベルの風切り音が生じ、回転数が2,280rpmに達するフル回転時は、非常に大きな風切り音が発生する。ウォーターブロック内蔵のポンプはかなり静かに動作しているが、ファンの回転数が上がった際の風切り音が特に耳につくため、静粛性については今ひとつな印象を受けた。

ヒートシンクライクなルックスが魅力のオールインワン水冷

 2009年に大ヒットしたCorsair「CWCH50」以降、多数のメーカーがオールインワン水冷ユニットを発売してきたが、ブランドは違えど製造元は同じという製品が多く、2013年現在、どれもこれも似たり寄ったりな外観と性能の製品が市場に溢れかえっている。そうした中、Reserator 3 Maxが他の製品とは明らかに異なるユニークなラジエータを採用してきたことは歓迎したいところである。

 パフォーマンスについては、ハイエンド空冷CPUクーラーを圧倒するような冷却性能ではないが、120mm級オールインワン水冷クーラーとしては上々の性能だ。これだけの性能があれば、周辺パーツとのクリアランスや、ケースサイズの制約によりハイエンドCPUクーラーが使えない状況での活躍が期待できる。

 12,980円という価格は安くないが、競合製品と比べて高すぎるというわけでもない。もし、120mm級オールインワン水冷を検討していて、静粛性にこだわりがあるというわけでないなら、ルックスでReserator 3 Maxを選んでも後悔はしないだろう。

ZALMAN「Reserator 3 Max」製品スペック
メーカーZALMAN
フロータイプオールインワン水冷ユニット
ウォーターブロック(寸法)70×85×37mm(幅×奥行き×高さ)
ラジエーター(寸法)120×145×79mm(縦×横×厚み)
搭載ファン120mm径ファン×1
電源:4ピン(PWM制御対応)
回転数:1,000~2,200rpm±10%
ノイズ:18.9~36.7dBA
対応ソケットIntel:LGA 775/1150/1155/1156/1366/2011
AMD:Socket AM2系/AM3系、Socket FM1/FM2

(瀬文茶)