瀬文茶のヒートシンクグラフィック
ZALMAN「CNPS2X」
~重量83gでTDP 120W対応を謳う超ローハイト・トップフロー
(2013/8/7 00:00)
全高27mm、直径84mmの小型軽量クーラー
ZALMANがMini-ITX用CPUクーラーとして開発した「CNPS2X」は、全高をわずか27mmに抑えた超ローハイト仕様のトップフロー型CPUクーラーだ。一見すると全銅製に見えるヒートシンクは、アルミ製放熱フィンに銅メッキを施したものだ。そのため、83gという超軽量を実現している。
ヒートシンクの構成は、1本の6mm径ヒートパイプと、CPUにヒートパイプが直接設置するタイプのベースユニット、放射状に配置された99枚のアルミ製放熱フィンというものだ。CPUから受け取った熱は、ベースユニット中央を横断する形で埋め込まれたS字形ヒートパイプによって、放熱フィン外周部へと運ばれ放熱される。
CNPS2Xのヒートシンク中心部には、80mm径のファンが搭載されている。PWM制御に対応するこのファンは、1,500~2,600rpm(±10%)の範囲で回転数を調整できる。ヒートシンクにはスナップフィットで固定されており、標準搭載のファンを取り外すことは可能だが、市販のケースファンに交換することはできない。
一般的なCPU付属クーラーよりも小型なヒートシンクであるCNPS2Xの場合、ヒートシンク本体とCPUソケット周辺パーツの干渉問題については、ほぼ起こらないものと考えて良いだろう。マザーボードの表側で干渉問題が起こるとすれば、LGA 115x系やLGA 775ソケットにおいて、Intel共用リテンションが周辺パーツと干渉する可能性がある程度だろう。
ただ、CNPS2XがターゲットとしているMini-ITXマザーボードの場合、ヒートシンクの固定にバックプレートを用いるCNPS2Xのリテンションキットが、Mini-ITXマザーボードでは珍しくないボード裏面の実装部品と干渉する可能性は存在する。この点についてはマザーボード次第なので、あらかじめ使用するマザーボードの裏面を確認しておきたい。
冷却性能テスト結果
それでは、冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、マザーボード側のPWM制御設定を「20%」、「50%」、「100%(フル回転)」の3段階に設定し、それぞれ負荷テストを実行した際の温度を測定した。
検証の結果、本連載のテストで定めたレギュレーションでは、いずれも過昇温によりテストを中止せざるを得ないという結果に終わった。参考までの記録として、3.4GHz動作時にPWM制御100%設定で負荷テストを継続した結果、20分経過時点でCPU温度は98℃まで上昇した。
本連載の冷却性能テストは、大型CPUクーラーのテストを想定してレギュレーションを決めているため、CNPS2Xのような小型ヒートシンクや、ファンレスCPUクーラーのテストに適していないのは確かである。しかし、それを考慮したとしても、TDP 120W対応を謳うCPUクーラーが、TDP 95WのCore i7-2600Kでストレステストを実行すると、98℃までCPU温度が上昇してしまうというのは、到底満足のいくパフォーマンスとは言えないものである。
いい機会なので、本連載における過昇温判定の基準についても説明しておきたい。グラフ中で過昇温扱いとしている「94℃超」という温度は、マザーボード側の保護機能により、PWM制御の設定値に関わらずファンがフル回転で動作しはじめる温度だ。この温度を超えると回転数毎の温度を取得できなくなってしまうため、本連載ではこの温度をテスト打ち切りの基準としている。
ファンの動作音については、搭載ファンの径が小さいため120mmファンや140mmファンと比べると静かに動作している印象を受けた。PWM制御100%設定時はある程度の風切り音がするものの、20%制御時や50%制御時は風切り音が大きく減少し、軸音もさほど気にならなかった。ケースに収めてしまえば、動作音が気にならなくなる程度の静音動作は実現できそうだ。
TDP 120W対応クーラーとしては期待値未満。超ローハイト設計こそセールスポイント
さて、結論から言ってしまえば、CNPS2XはCPU付属クーラーから性能向上を期待して購入するCPUクーラーではない。CPU付属クーラーの搭載が不可能なほど、スペースの限られた環境で使用できることこそがCNPS2Xのセールスポイントであり、他の選択肢が無い条件で使えることこそが、CNPS2Xの魅力なのである。
とはいえ、TDP 120W対応というインパクトのある数字を提示して登場した以上、冷却性能に対して期待を抱いてしまうのは無理からぬことだ。発熱の大きいハイエンドCPUのTDP(125Wや130W)を避けた、なんとも絶妙な数字をチョイスしたものだと、ある意味で感心してしまうのだが、この数字を掲げるには些か実力不足である。
一般的なアプリケーションよりも負荷の高いストレステスト実行時に、Intel Core i7-2600Kの温度が98℃に達したからと言って、Core i7-2600Kの常用が不可能というわけではないのだが、CNPS2Xの魅力が生きるような狭いケースで、TDP 100W程度のCPUを冷却するのは難しい。数あるローハイトCPUクーラーからCNPS2Xを選ぶなら、高さ27mmという超ローハイト設計が活かせるコンパクトケースで、TDP 65W程度のCPUと組み合わせて使いたい。
ZALMAN「CNPS2X」製品スペック | |
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メーカー | ZALMAN |
フロータイプ | トップフロー |
ヒートパイプ | 6mm径×1本 |
放熱フィン | 99枚 |
対応ファン | 80mm径ファン ×1 電源:4ピン(PWM制御対応) 回転数:1,500~2,600rpm±10% ノイズ:17.4~22.7dBA |
対応ソケット | Intel:LGA 775/1150/1155/1156 AMD:Socket AM2系/AM3系、Socket FM1/FM2 |