瀬文茶のヒートシンクグラフィック
Phanteks「PH-TC12DX_RD」
~鮮やかなカラーリングのナロータイプ・サイドフロー
(2013/7/24 00:00)
PH-TC12DXシリーズの赤モデル
鮮やかな赤に着色された放熱フィンが特徴的なPH-TC12DX_RDは、Phanteksが2012年末に発表したサイドフロー型CPUクーラー「PH-TC12DXシリーズ」のカラーバリエーションモデルである。PH-TC12DXシリーズには、赤色のほかに、白、黒、青、橙、全5色のバリエーションが用意されている。
PH-TC12DX_RDのヒートシンクは、120mm角ファン向けに最適化されたオーソドックスなサイドフローレイアウトを採用し、6mm径ヒートパイプ4本と、銅製ベースプレートを備えたベースユニット、192枚のアルミニウム製放熱フィンからなる2ブロックの放熱ユニットを備えている。ベースユニットや放熱フィンとヒートパイプの接続部は、ろう付けされており、放熱フィンとヒートパイプの接続部については、2枚1組の放熱フィンでヒートパイプを挟み込むという、採用メーカーの少ない接続方法を採用している。
PH-TC12DX_RDには、120mm角25mm厚ファンの「PH-F120HP」が2基同梱されている。このファンはPWM制御に対応しており、回転数を600~1,800rpmの範囲で調整できる。かなりの低速から中~高速までの回転数域をカバーしており、静音重視と冷却重視、どちらにも対応することができる。ヒートシンクへの取り付けは金属クリップと樹脂製のアダプタを用いる少々特殊なものだが、リブ無しタイプの120mm角25mm厚ファンであれば交換が可能な場合もある。
120mmファン向けのサイドフロー型ヒートシンクであるため、拡張スロットと一定の距離が確保されている。また、放熱ユニットが薄いため、検証に用いたASUS MAXIMUS V GENEとの組み合わせでは、メモリスロット上にファンが被ることはなかった。
ヒートシンクの全高も157mmと、大型のサイドフロー型ヒートシンクとしては低めであり、多くのタワー型ケースへの内蔵が可能だ。周辺パーツにせよケースにせよ、組み合わせるパーツを選ばないというのは、PH-TC12DX_RDの長所である。
冷却性能テスト結果
それでは、冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、マザーボード側のPWM制御設定を「20%」、「50%」、「100%(フル回転)」の3段階に設定し、それぞれ負荷テストを実行した際の温度を取得した。
検証結果を確認すると、CPUの定格設定に近い3.4GHz動作時のCPU温度は57~63℃で、85℃を記録したCPU付属クーラーより28~22℃低い結果を記録した。CPU付属クーラーとの格の違いがハッキリ見て取れる結果ではあるのだが、約1万円という価格からすれば、この程度は当然の結果として期待するレベルである。
発熱が増すオーバークロック動作時は、4.4GHz動作時に68℃~75℃、4.6GHz動作時は78~90℃を記録した。デュアルファン構成であることもあってか、ファンの回転数を引き下げても、測定できなくなる程温度が上昇することはなく、全ての条件で記録を残すことができた。薄型の放熱部を備えるナロータイプ・サイドフロー製品としては、かなり優秀なパフォーマンスであると言えるだろう。
動作音については、約1,830rpmで動作する100%制御時は風切り音がかなり大きく、ケースに収めた程度では無視できないレベルである。この風切り音は、50%制御時(約1,100rpm)には大きく改善され、20%制御時には(約640rpm)ほとんど聞き取れなくなる。マザーボード側でどの程度PWM制御の内容を設定できるのかに依存するが、標準ファンのままでも静音動作は実現できそうだ。
ナロータイプ・サイドフローの最上級ヒートシンク
PH-TC12DX_RDが冷却性能テストで記録した温度は、ナロータイプのCPUクーラーとしてはなかなか優秀なものだ。6mm径ヒートパイプ4本構成という、同系統のヒートシンクに比べ貧弱なスペックから想像していた性能より、数段上の結果には驚きだ。ヒートシンク本体はもちろん、リテンションや付属ファンのクオリティも上等で、CPUクーラーとしての完成度は高い。ナロータイプのサイドフローCPUクーラーの上級製品を求めているなら、PH-TC12DXシリーズは候補に加えるべきだ。
ナロータイプ・サイドフローとして高い完成度を誇るPH-TC12DX_RDだが、その完成度を考慮しても約1万円という価格は高い。この金額なら、冷却性能や静粛性でPH-TC12DX_RDを上回る製品は珍しくない。ナロータイプのサイドフローCPUクーラーである必然性がないのであれば、突出した特性を持ったヒートシンクを選択するのが賢明である。
もっとも、カラーバリエーションが存在するPH-TC12DXシリーズの魅力は、CPUクーラーとしての性能やコストパフォーマンスだけではない。CPUの高性能化と低発熱化が進んだ現在、見て愉しめる外観というのも、CPUクーラーに求められる要素の1つだ。
見て愉しむパーツとしてのPH-TC12DX_RDは、アルミ製のフィンにカラーアルマイトを施した後で組立を行なうためか、多少のキズや剥がれは見られるものの、PCパーツとして窓付きケースに納めて観賞する分には問題ないだろう。使っているPCケース、あるいはこれから購入するPCケースが、窓付きのサイドパネルを備えているのであれば、ケース内を彩るアクセサリーとして、PH-TC12DXシリーズを選択するのも面白いだろう。
【表】Phanteks「PH-TC12DX_RD」製品スペック | |
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メーカー | Phanteks |
フロータイプ | サイドフロー |
ヒートパイプ | 6mm径×4本 |
放熱フィン | 192枚(96組)+ 装飾プレート×1 |
対応ファン | 120mm角25mm厚ファン ×2 電源:4ピン(PWM制御対応) 回転数:600~1,800rpm±10% 最大風量:23~68.5CFM サイズ:120×120×25mm |
対応ソケット | Intel:LGA 775/115x/1366/2011 AMD(※):Socket AM2系/AM3系、Socket FM1/FM2 ※マザーボード標準のバックプレートが必要 |